雪香楼箚記

恋(2)_憂き身をば






                                      藤原俊成
       憂き身をばわれだにいとふいとへただそをだに同じ心と思はん





 あなたに嫌われるこの身を、私自身でさえ嫌っています、ですからあなたもご遠慮なく嫌ってください、その「嫌う」というお気持だけでもあなたと同じであると、そう思いますから、の意。意味するところは複雑で、歌の調子はすらりと、そして余情は深い。いかにも新古今集らしい恋歌で、式子内親王の作風にもやや通じるところがあると言えるでしょう。

「いとふ」心と、愛情と、相反するふたつの感情が織りなすアイロニー。恋愛というものは、すべからく矛盾とアイロニーであるということを、かすかに苦い微笑みを持って教えてくれる歌でしょう。片恋のつらさをはかなく描いて、絶品であると思います。余計な言葉は、いらない。


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