卑劣の道、極めます(仮)

君が君であるために


「そうですよね、ゴブさん。」

 何気ないギルメンの一言にあいつは苦笑した。

「出来たら、その呼び方、してほしくないな。」

 私はといえば、多分、『鳩が豆鉄砲くらった』ような、そんな顔をしていたと思う・・・。



『ゴブ』と呼ぶこと。

 私の中で当たり前になりすぎて、呼ばれてる方の気持ちなんて考えてなかったな。

 今はなき両手剣の聖騎士と私が面白がってつけたあいつのあだ名。本名で呼ぶことより、このあだ名で呼んだことの方が断然多い。

 それだけ付き合いも長いってことなんだよな・・・。

 ギルドを結成する前からそう呼んでいた。

 結成して2年。あいつがギルドマスター、両手剣の聖騎士がサブマスター。私は三番手でやいのやいの言ってるだけのお気楽ポジションだった。

 ギルドを結成して、立場が変わったにも関わらず、あだ名で呼び続けたのはまずかったんだろうか。

 2年の月日が経って、ギルドメンバーも変わっていった。両手剣の聖騎士の後を継いで、私の立場も変わった。

 いや、私自身は何も変わってない。変わらなければいけなかったのだろうか。

 私がそう呼ぶからなのだろう。あいつのことを『ゴブ』と呼ぶ人が増えた。


 ん・・・。


 うだうだ考えるのは性に合わん。イヤだと言っているのだから、呼び方を変えればいいだけの話。


 でもなぁ・・・。


 今更、って思ってしまう自分も何処かにいるのがわかるわけで、そこがジレンマなわけで・・・。

「うがぁ・・・。」

 思わず声に出して頭を抱えたところへ、何か硬い物がこつこつと頭に当たる。

 反射的に顔を上げると、バトスタの柄で私の頭を小突いているあいつの姿が目に入る。

「またろくでもないこと考えてるだろ?」

 小突く手を止めずにぼそっとつぶやく。

「なんだよぉ~。」

 誰のことで悩んでんと思ってるんだよ、まったく。

 つい恨めしげに見上げてしまったのだろう。あいつはちょっと困った顔をした。

「あのさぁ・・・。」

 ばしっ。


 ・・・最後の一撃はちょっと痛かったぞ。

 そんなことはまったく気にした風はなく、あいつはバトスタを肩に担ぎ上げた。

「いいんだよ、お前さんはね。」


 ・・・・・・・・・。


 私はといえば、またおかしな顔をしていたに違いない。

 ゴブが珍しく笑っていた。




 合成着色料ばりばりでお送りしましたw

 半端な終わり方してる気もするが・・・、まぁ、いっかw



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