巨人日記


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注:原監督在任中に書いたものです。

巨人日記


井上一馬 文藝春秋

この本は1992年のジャイアンツをキャンプの初日から130試合終了まで、1人の作家が追いかけたものだ。

スポーツ新聞の番記者でも、交代で休みをとるので全試合は追いかけないらしい。

そうすると、この作業がいかに大変かわかろうというものだ。

それにしても、野球ファンなら1年ぐらいなら他の仕事なしで、

好きな球団の全試合見るために行動をともにしてみたいと思うのではないだろうか。

(ぼくはしてみたいです。)



92年の巨人について説明するには、90年の日本シリーズを語らねばならない。

90年セ・リーグをぶっちぎって優勝した巨人だったが、

日本シリーズでは西武に4勝0敗の完敗。「球界の盟主」交代を印象づけるシリーズだった。

92年はまだこの後遺症が残った状態。

このころ(91年~93年)の巨人は、戦力的にはすでに他球団を圧倒するものがなく、

他球団と同じレベルなのだが、「球界に盟主」であるという意地とプライドだけで

「我々は優勝が使命だ!」とがんばっている・・・そんな状態だ。



この本は巨人ファンしか面白くないかというとそんなことはない。

92年は歴史に残る大混戦だった。

なんと10月1日の時点で

阪  神 64勝58敗2分 .525

巨  人 66勝61敗0分 .520

ヤクルト 64勝60敗1分 .516

といった具合である。

また全球団なにかと時代の節目を迎えているのである。

巨人・・・結果的に藤田監督最後の年。翌年、長嶋政権スタート&松井秀喜入団。

ヤクルト・・・野村監督3年目。ID野球結実のとき!?

阪神・・・優勝以来じつに7年ぶり優勝争い。亀山、新庄がブレイク。

広島・・・前年優勝チーム。この年、達川光男引退。

中日・・・前年星野第一次政権終了。この年より高木監督就任。

大洋・・・須藤監督シーズン途中で辞任。翌年より球団名が「横浜ベイスターズ」に。盛田、佐々木のリレーはこの年から。



なにより、現在の巨人と違い、「普通の戦力」の普通のチームがペナントを戦っているのは、

十分感情移入できる。

そして、いろいろ筆者がチームについて分析することは、

現在のFA・自由枠に無縁のチームにはそのままあてはめることができるのだ。



井上一馬氏はスポーツライターではなく、ボブ・グリーンの訳者などで知られていて、

現在でも、英語やアメリカ文化についての著作が多い。

つまり、畑ちがいの仕事で、スポーツマスコミに対しても第三者的視点で書かれている。

巨人ファンで、ファンとして、連敗すれば愚痴るし、勝てば喜んでいる。

でも、抑制は効いていていやな感じはしない。



それにしても、面白い本だが文庫化されていない。

なぜなら、時代が変わってFA、逆指名が始まると、

なかで、筆者が分析していることの意味が薄れていくことになったからだ。(もちろん全てではない)

たとえば、投手陣の年齢構成について、江川が早く引退したため、

当時28歳の槙原が最年長になっていることを問題視している。

しかし、FAが始まれば、簡単に槙原より4歳上の川口和久(広島)だってとれるのだ。



では、今読んで面白いのはなにか?

僕は、原監督にとって、「勝てる監督」のイメージとして最も強いのは藤田監督だと思う。

入団した年の監督であり、最も優勝を味あわせてくれた監督だからだ。

ちなみにV9のあとの20年間で巨人は2回しか日本一になってないが

その2回は藤田監督によるものだ。

藤田監督について巨人ファンはどういう評価をしているだろうか?

「長嶋や王が育てた選手を使って、おいしいところだけもっていったんじゃ・・・」とか

「ヘッドコーチに恵まれていただけだろう。」とか

いうのが一般的ではないだろうか?

この年は、結果的に藤田監督集大成の年となった。

藤田監督とはどういう監督なのか・・・を知って原采配を眺めるとまた新たな発見があるのではないだろうか?

実際に似ている部分は多いと思います。




(2003.5月)



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