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September 6, 2009
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カテゴリ: カテゴリ未分類
論文捏造 (中公新書ラクレ)

中央公論新社 2006.09

例えばですよ、あくまでも仮に、茂木健一郎氏の研究が全部捏造だったとして、「捏造しましたね」と誰が言えるかということですよ。

無名の脳科学者の誰かが学会に告発したって茂木氏が「やってない」といえば学会はスター茂木を信じる。というかスターは正しいことのほうが捏造より優先する(面倒なものには目をつぶる)。逆に告発した無名の科学者は悪者扱いとなり、脳科学の世界に居られなくなる。

「捏造」の証拠を掴もうと誰かが頑張っても、確実にやったという証拠が出せる保証はないし、そんなことをやっていたら自分自身の研究はできなくなる。

逆に、捏造の論文を信じてしまった科学者は、論文と同じことを再現しようとしても全然できない(捏造なんだから当たり前)。
できないことを間違っているのではないか、捏造ではないかと疑うことはせず、それは自分自身に腕がないんだ、彼は神の腕を持っているんだ、魔法の手を持っているからできるんだと、逆に神格化してしまう。再現性がないことは科学的にウソと知っているのに。

科学における論文捏造はこれだけ深い罪を持っているということです。

そんな事件が近年日本でも世界でも起きている。
この本は、2003年前後、ドイツ出身の若手物理学者・シェーンが高温超伝導の世界で一躍スターになり、論文捏造が発覚して追放されるまでの足取りを辿ったドキュメント番組(NHKスペシャル)を書籍化したもの。

上で例えたような問題が起こる中で、どのようにシェーンの論文捏造が暴かれていったかを数々の証言で追いかけていく。淡々とした語り口はいかにもNHKドキュメント。

文系の人でも人間の心理状況を推理することが好きな人には面白く読めると思います。行われていることは、食品偽装事件などとほとんど変わらない。

個人的には、学生時代やっていた超伝導研究がシェーンとかぶる部分が多いので、4年次から修士までの3年間をどうしても思い出す。

薄膜製造装置を使って薄膜(ミクロンの1/10くらいの厚さ)サンプルを作り(真空状態を作るために約1日、成膜で半日)、感光させて回路作って半田で配線して、液体ヘリウム(マイナス270度)で冷やして測定して(48時間、3交代とか)、考察してサンプルの組成が思い通りでなかったらイチからやり直して、空いてる時間は図書館でひたすら論文読んで、測定装置作るために旋盤で真鍮棒をひたすら削って。たぶん実験系の物理屋さんならどこもそんなに変わらないでしょう。

それを考えると、どう見てもシェーンの成果は怪しいわけで、実験の場を見ていなかったり、サンプルがなかったりと怪しいことばかりなことに共同実験者たち、特に論文筆頭のボスが気づかないのはおかしいことがよくわかる。

そのあたりも功績とかノーベル賞がちらついたと考えれば納得できるわけで。科学だなんだかんだといっても結局は業の肯定あたりに帰結するんだなあと普通の結論に至る。





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Last updated  September 7, 2009 01:46:57 AM
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