薬剤師Stephenのよろずブログ

薬剤師Stephenのよろずブログ

PR

Profile

Stephen1969

Stephen1969

Calendar

Favorite Blog

2025年11月25日… New! 藻緯羅さん

源氏物語〔34帖 若菜… New! USM1さん

忙し週末。・゚・(ノД`)・゚… New! し〜子さんさん

ジョ・ジョ・ガン … New! an-daleさん

2025秋旅 九州編(11… New! ナイト1960さん

Comments

聖書預言@ Re:ご案内:ブログ異動いたしました。(06/29) 神の御子イエス・キリストを信じる者は永…
ミリオン@ Re:MS、オフィス製品にVoIPやWeb会議を統合(11/03) こんばんは。 嬉しいです。頑張って下さい…
ミリオン@ Re:「検索」だけでない検索サービスの使い方・ウェブサービス虎の巻 その弐(11/03) こんばんは。 嬉しいです。頑張って下さい…
ミリオン@ Re:女性比率が5倍に、Windowsスマートフォンは脱PDAで成功(11/03) こんばんは。 嬉しいです。頑張って下さい…
ミリオン@ Re:医師へ提供情報の分類(11/03) こんにちは。 アンケートを書きましたね。…
2016.06.21
XML
カテゴリ: 臨床薬学
症例65歳 男性

「主訴」
労作時の胸痛

「現病歴」
2カ月前より、重たい物を運んだり軽く走ったりする際に胸部の違和感を感じるようになったため受診した。外来での12誘導心電図で安静時のT波平低化を認め、負荷心電図で運動時のST低下を認めたため、入院精査となった。冠動脈造影検査にて左冠動脈前下肢の90%狭窄が認められたため、安定狭心症の診断のもと責任冠動脈に対して経皮的冠動脈形成術を施行(ステント留置)した。

「既往歴」
高血圧:
カルバサルタンシレキセチル(ブロプレス錠4mg)1回1錠 1日1回 朝食後

2型糖尿病:

ボクリボース(ベイスン錠0.3mg)1回1錠 1日3回 毎食後

脂質異常症:
アトルバスタチンCa(リピトール錠10mg)1回1錠 1日1回 夕食後

「生活歴」
喫煙習慣(20本/日を45年間)、機会飲酒(+)、運動習慣(-)

「家族歴」
父:心筋梗塞(58歳でに発症)

「身体所見」
身長160cm、体重68kg、体格指数26.6kg/m2、腹囲80cm、血圧125/79mmHg、心拍数70回/分

「検査所見」
LDL-C 135mg/dL、HDL-C 52mg/dL、TG 108mg/dL、FPG 165mg/dL、HbA1c(JDS値)9.8%、AST 21IU/L、ALT 22IU/L、LDH 185IU/L、Scr 0.91mg/dL、BUN 22mg/dL


1、
狭心症では、胸痛や胸部違和感と心電図上でT波の平低化がよく認められるが、ST低下は狭心症発作時でなければ確認できない。それゆえ、心電図モニター下で運動負荷試験を行って狭心症発作の確認が行われる。また、冠動脈造影検査では狭窄した冠動脈を画像から確認でき、狭心症発作を引き起こす病変部が発見できる。

2、
狭心症には、運動時に発作を起こす労作性狭心症と、夜間安静時などに発作を起こす安静時(異型)狭心症がある。この患者は、発症誘因分類からは労作性狭心症である。発症機序からは、動脈硬化による冠動脈狭窄が原因である器質性狭心症であり、最近2カ月間症状が安定しているため安定性狭心症(臨床経過分類)と分類できる。
狭心症分類.JPG

3、


4、
狭心症患者の管理においては、1)狭心症自体に対する治療と2)患者教育やリスク因子の是正の両者が重要。本患者は喫煙習慣のある肥満男性で、心筋梗塞の家族歴があり、高血圧、糖尿病、脂質異常症を合併していることにも注目しておこう

狭心症は心筋梗塞の前ぶれ

狭心症の胸痛は、動脈硬化プラークなどで冠動脈狭窄を有する患者で、運動により心筋酸素需要が高まった際に、十分量の血流を供給できないために生じる心筋虚血が原因となり生じる。その性状は鋭い痛みではなく、締め付けられるような感じ(絞扼感)や圧迫感である。発作時の胸痛の強さ・持続時間はさまざまであるが、安静により数十秒~数分間で胸痛は軽快する。また、ニトログリセリンの舌下投与によって胸痛が改善するのも特徴である。冠動脈が狭窄する原因の多くは、高血圧や糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病によって引き起こされた動脈硬化によるものであり(日本人では冠動脈のけいれんによる一時的な狭窄も諸外国に比べると多い)、さらに動脈硬化が進行すると冠動脈が完全に閉塞して心筋梗塞を発症するおそれがある。

経皮的冠動脈形成術と抗血小板療法

狭窄した冠動脈を広げるために、PTCAがよく行われる。これは、大腿動脈などの末梢血管から大動脈を経由して冠動脈の狭窄した部位までカテーテルと呼ばれる細いワイヤーを挿入し、カテーテル先端のバルーンを膨らませることで病変部を拡げる低侵襲性の手術である。多くの場合、バルーンで拡張すると同時にステントよ呼ばれる金属の筒を病変部に留置する。ステントの留置は、冠動脈疾患患者の治療においてとても有益であるが、ステント留置直後はステント内に急速に血栓が形成されて心筋梗塞症を起こす(ステント血栓症)ことがある。これを予防するために、禁忌のない限り全例で抗血小板薬のアスピリン75~325mg(とクロピドグレル硫酸塩の併用)投与を行う。チクロピジン塩酸塩やシロスタゾールが併用されることもある。
ステントには金属ステント(BMS)と留置後の内皮増殖による再狭窄を低減した薬物溶出ステント(DES)がある。DESにはパクリタキセル溶出ステント(TAXUSステント)、ゾタロリムス溶出ステント(Endeavorステント)、エベロリムス溶出ステント(Xieneceステント)などがある。DES留置後には、遅延性ステント血栓症を予防するために、アスピリンとクロピドグレル硫酸塩などのチェノピリジン抗血症薬の併用療法を最低6カ月継続する必要がある。

安定狭心症治療の長期管理(ABCDE)

安定狭心症では冠動脈疾患発症の危険因子を適切に管理することが重要であり、そのための治療要素は”ABCDE”と覚えるとよい(A:アスピリンと抗狭心症薬の投与)、(B:β遮断薬の投与と血圧管理)、(C:コレステロール管理と禁煙)、(D:食事と糖尿病の管理)、(E:患者教育と運動)。各危険因子の管理目標は、患者の合併症(腎不全など)によっても多少異なるが、一般的に血圧130~140/80~90mmHg未満、LDLコレステロール100mg/dL、HDLコレステロール40mg/dL以上、中性脂肪150mg/dL未満、体格指数18.5~24.9kg/m2、HbA1c(JDS値)6.5%未満を目標とした食事療法・薬物療法を行うことが望ましい。

処方例
アスピリン(バイアスピリン錠100mg)1回1錠 1日1回 朝食後
アテノロール(テノーミン錠25mg)1回1錠 1日1回 朝食後
アトルバスタチンCa(リピトール錠10mg)1回2錠 1日1回 朝食後
生活習慣の是正:1日最低30分,週3~4回以上の有酸素運動(歩行など)と1日の摂取カロリーの見直し、目標体重は63kg未満
*血糖コントロールに関しては専門医に照会

処方の解説と服薬指導

1、
アスピリンはステント血栓症の予防と狭心症長期管理にとって必要不可欠であり、生涯にわたって服用する。

2、
血圧はARBであるカンデサルタンシレキセチルの服用にてコントロール良好であったが、狭心症の予後改善効果も期待してβ遮断薬のアテノロールへと変更、過度の血圧低下や徐脈を避けるため25mgから開始、その後は、心拍数が55~60回/分程度とばるように用量を調節していく。

3、
アトルバスタチンca10mg/日の服用にてLDLコレステロールが135mg/dLと効果不十分であったため、20mg/日へ増量して経過を観察した。なお、コレステロール合成は夜高いので、理論的には夕食後の服用が望ましいが、本患者のように他の薬剤との服用時刻を服薬コンプライアンスの向上が期待できる場合にはあえてこだわる必要はない。

4、
血糖コントロールに関しては、ボグリボース最大量とグリベンクラミド5mg/日(最大量は10mg/日)の服用にてFPG165mg/dL、HbA1c(JDS値)9.8%とコントロール不良であるため、糖尿病専門医と相談のもとで1日血糖推移やインスリン抵抗性などの評価を行ったうえで血糖降下療法を再考する必要があるだろう。

5、
冠動脈に明らかな残存狭窄が存在する場合には、硝酸薬(ニトロダームTTS)が処方されることもある(狭心症発作が出現した際の速やかな発作寛解を目的として処方される「頓服用の」硝酸薬には種々の剤形が存在する。剤形によって使用法が異なるので確認しておこう)
狭心症発作治療薬.JPG

知っておくべきこと

1、
狭心症の自覚症状(胸痛や胸部違和感)、検査所見(発作時や運動負荷時の心電図でのST変化、冠動脈造影での冠動脈狭窄)を列挙し、患者の評価に利用できる。

2、
狭心症発作の特徴(頻度、運動時・安静時・夜間等の発作出現時期など)をもとに狭心症の分類について述べることができる

3、
PTCAにてステント留置した際に注意すべき合併症(ステント血栓症)を挙げ、その予防目的での薬物治療(アスピリン、チクロピジン塩酸塩、クロピドグレル硫酸塩、シロスタゾール)を提案できる

4、
狭心症をはじめとする冠動脈疾患発症の危険因子(年齢、性別、家族歴、喫煙、肥満(運動不足)、高血圧症、脂質異常症、糖尿病)を列挙し、患者の長期管理計画の評価に利用できる。

5、
狭心症発作治療薬として硝酸薬が処方された患者に対して、その硝酸薬の使用法を説明できる。ニトログリセリン錠は薬物の揮発性や光分解性のため保管が厄介であった。最近は、保管性にすぐれたスプレー剤型が好んで用いられる。


《送料無料》症例で身につける臨床薬学ハンドブック 124症例から学べる薬物治療の考え方と服薬指導のポイント





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2016.06.21 10:39:00
コメントを書く
[臨床薬学] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X

Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: