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2016.06.30
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カテゴリ: 臨床薬学
症例 70歳 男性

中学卒業後から布団などの綿製品を扱う、ほこりっぽい仕事場で40年間仕事をしてきた。煙草は40年以上(1日20~25本)吸っている。60歳を過ぎた頃から常に咳が出現し(熱はない)、労作性の呼吸困難も出現するようになった。そこで、近医を受診し、検査のため大学病院呼吸器科を紹介された。胸部X線検査では、肺の過膨張、横隔膜の近位、滴状心が認められ、肺機能検査では、1秒率・1秒量の低下、残気量の増加が認められた。血液検査では、IgEの上昇は認められず、CRPの軽度上昇0.8mg/dL(基準値:0.5mg/dL以下)は認められたが、白血球増多は認められなかった。また、心電図検査で異常は認められなかった。

ポイント

1、
職業柄ほこりっぽいところに40年間もいて、煙草も40年以上(1日20~25本)吸っている(喫煙歴が長い)

2、
年を取ってから咳が出現している

3、
胸部X線検査にて、肺の過膨張、横隔膜の低位、滴状心が認められ、肺機能検査では気管支喘息と同様に1秒率・1秒量の低下、残気量の増加が認められ、閉塞性肺疾患のパターン(空気を吸えても十分空気を吐き出せない)を示している:肺気腫、慢性気管支炎など


胸部X線検査で、心拡大、肺うっ血の像が無く(心電図異常がない)ことから、左心不全による肺うっ血で心臓喘息(肺にうっ血が生じるために、努力呼吸、起坐呼吸、陥没呼吸が出現し、さらに発作性の夜間呼吸困難が出現して、発作が強い時には喘鳴を伴うため、心臓喘息といわれる)が出現しているわけではないことがわかる

5、
慢性の咳は、アレルギーや何らかの急性性炎症によって出現しているのではない(IgEの上昇が認められず、熱がなく、白血球増多もないため)。ただし、CRPの軽度上昇があることは、以前の炎症性疾患のなごりか、慢性炎症が続いているのかは否定できない。

慢性閉塞性肺疾患とは

胸部X線検査、肺機能検査から閉塞性肺疾患、すなわち、肺気腫と慢性気管支炎が考えられる。肺気腫は、WHOの基準によって、”終末細気管支より末梢の気腔が異常に拡大した状態で、呼吸細気管支壁あるいは肺胞壁の破壊を伴うことを特徴とする”と病理学的に定義される。一方、慢性気管支炎は、”咳と痰が2年以上続く”という臨床症状から定義されている。個々の患者にそれぞれ別々に認められるわけでなく、両者の病変が同時に存在するため、臨床的な病名としては、慢性閉塞性肺疾患(COPD)と呼ばれる。
・上記症例は、長期間ほこりっぽい環境で仕事をしてきたこと、喫煙歴が長いことなどから肺気腫が考えられる。さらに、軽度のCRPの上昇は慢性炎症(慢性気管支炎)も伴っていることが想定される。
・肺気腫自体は不可逆的で、もとに戻らない疾患である。このため、治療は対症療法が主体となる。

処方例

テオフィリン徐放剤(テオドール)200mg 1回1錠 1日2回 朝食後、就寝前
ツロブテロール(ホクナリン)テープ2mg 1日1枚
イプラトロピウム臭化物水和物(アトロベント エロゾル)1回2吸入 1日4回 朝、昼、夕、就寝前 吸入



1、
テオフィリン徐放剤(テオドール)はcyclic AMPの代謝に関与するphosphodiesteraseを阻害し、このためcyclic AMPが代謝されずに、気管支は拡張し続ける

2、
ツロブテロール(ホクナリン)テープはβ2選択性の強い気管支拡張薬で、気管支平滑筋のアドレナリンβ2受容体に作用して、adebylcyclaseを活性化させて、ATPをcyclic AMPにする。このcyclic AMPが気管支を拡張させる。
テープは前胸部、背部、前腕部など、どこの皮膚に貼っても効果は変わらない。汗をかかないところに貼るようにするとよい。また、テープ中のツロブテロールは塩酸塩ではないので、風呂に入っても溶け出すことはない。1日1回貼りかえるが、少し場所を変えて貼ると皮膚がかぶれなくてすむ。


コリン作動性神経支配の平滑筋のトーヌス(筋緊張)が気道閉塞の主要な因子と考えられており、イプラトロピウム臭化物水和物(アトロベント)は、神経末端でのアセチルコリンの作用をブロックすることにより、気管支拡張作用を発揮する。

知っておくべきこと

1、
肺気腫は病気の末期像であるため、治ることはない。したがって、治癒は期待できないが、薬は内服し続ける必要がある。特に副腎皮質ステロイド性薬などを長期間服用する場合は、副作用の出現に注意を払っておく必要がある。

2、
患者さんは、呼吸器リハビリテーションとして、腹式呼吸、筋肉のリハビリテーション、歩行を中心とした運動療法を行っていたり、在宅酸素療法を受けていることがある。

3、
肺気腫の患者は呼吸器感染症を発症すると重篤化するため、インフルエンザや肺炎球菌に対するワクチン接種をしておく必要がある。

参照:
《送料無料》症例で身につける臨床薬学ハンドブック 124症例から学べる薬物治療の考え方と服薬指導のポイント 改訂第2版






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Last updated  2016.06.30 11:58:55
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