スキルス胃癌 サポート

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キヨカさん



サイトの仲間達と、福井に住むmidoriさんに会う為に1泊旅行を計画した時です。
福井まで行くので途中、私達に会いたい方いませんか?とサイトで呼びかけたらメールをくれたのでした。

待ち合わせの場所にキヨカさんとご主人の二人がいました。
キヨカさんは30代の女性です。
お子さんを産んで間もなくスキルスが発覚。
術前化学療法をしている最中で、外泊許可を貰って病院を抜け出している時でした。
私達の経験談を、ご夫婦揃って熱心に耳を傾けていました。
久しぶりの外泊で、ついうっかり首元が開いた服を着てしまったらIVHのポートが丸見えで恥ずかしい・・・って笑って言っていました。
2時間くらいだったか・・・笑いだらけの時間でした。
とても楽しい一時でした。

術前に1クール化学療法をした後に、手術の予定でした。
病気が発覚した時には、最悪の話ばかり聞いたそうで、とても不安になったお二人は念の為、もう1クール化学療法をオーダーして手術をもう少し先に延ばしました。
初回手術の重要性を充分に認識されていて、1クール後の化学療法が劇的に効いた訳ではなかったので、念を入れたかったようです。
ところが、2クール目の化学療法の最中に何かに感染したようで高熱を出し、化学療法が中断されました。
数種の抗生物質を投与されましたが、高熱がなかなか下がりません。

この時、キヨカさんから時折ケータイメールを頂きましたが、精神状態がもう一杯一杯でした。
この頃、キヨカさんはmidoriさんとも交流が出来ていて、そもそも「キヨちゃんが大変です!!」ってmidoriさんからSOSが私に届いたのです。
midoriさんと二人で、もう毎日のようにメール送りまくりで必死にキヨカさんをなだめた記憶があります。
ようやく熱が下がり、もう手術を待てないからと手術に踏み切りました。
手術出来るとわかった頃には、もういつものキヨカさんに戻っていました。
とにかくこれで一安心しました。
2004年の12月でした。

ところが、この半年後に再発がわかり、再度キヨカさんからメールが届くようになりました。
ご主人の方から頂く事の方が多かったです。
セカンドオピニオンを再度受けたいと希望され、2005年7月に静岡に来られるというので、主人と二人で会いに行きました。
約9ヶ月ぶりの再会です。

この日のことは、よく覚えています。
可愛らしい娘さんと、ご主人と、ご主人のお母様と長旅の中来られました。
ご家族が側にいない時、キヨカさんとこっそり話したおしゃべり・・・
術前化学療法の2クール目、高熱を出してイライラしている時にした夫婦喧嘩の事。
いたずらを白状するかのように、首をすくめて笑いながら話してくれました。
再発したと言っても、この頃はお元気で病院の展望レストランで一緒にオムライスを食べました。
キヨカさんはほぼ完食。
「美味しい」を連発して食べていました。
またここまでオムライスを食べに来るから、一緒に食べようってキヨカさんが言った時の笑顔・・・忘れません。

その後、度々ご主人からもキヨカさんからもメールが届きましたが、状態が段段芳しくなくなっているのがわかりました。
度々高熱に悩まされるようで、メールを送ってもしばらく返事が来ない事が度々ありました。
そんなある日、突然キヨカさんから電話がありました。
高熱で息苦しい様子が、伝わってきます。
「めぇ・・る・・しようと思ったけど、電話しちゃったぁ・・・」
数分間の電話でした・・・この時何を話したのか・・・どうして覚えていないのでしょう・・

それから少ししてご主人から、あと1ヶ月くらいだろうと余命を主治医から宣告されたとメールが届き、お見舞いに行く事にしました。
2006年1月です。
個室に入院されていました。
もう、かなり長期にわたる入院だと言っていました。
この日も、ついおしゃべりに花が咲き、長居してしまいました。
疲れさせてはいけないと、一旦腰を上げたのですが
「まだ、帰らないで」とキヨカさんに引き止められました。

この2ヶ月前にmidoriさんは旅立ていて、その事をとても悲しんでいました。
「midoriさんが先に逝くなんて・・・絶対に私の方が先だと思っていたのに・・」と。

キヨカさんはお友達に恵まれていたようで、私がいる時に電話がかかってきたり、ほぼ毎日のように会いに来てくれるというお友達が現れたりしていました。
この会いに来てくれるお友達は、ご主人と出会うきっかけを作ってくれた言わば、キューピットなのだそうです。

病室に私と二人になった時、天井の一点を見つめながら
「まだ、死にたくないな・・・」
と、つぶやいたキヨカさんの声はずっと私の中に残っています。
帰り際、又会おうねって言って指きりして別れました。

2006年2月14日、キヨカさんは旅立ちました。






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