スキルス胃癌 サポート

スキルス胃癌 サポート

スキルス胃癌の経緯



4月頃から食事の後、胃の部分をさすりながら首を良く傾げるようになった。
どうも、最近あまり量が食べられないのだと言う。
市販の胃薬を飲むものの改善が見られない。
家族が病院に行くように薦めても腰を上げようとしない。
今思うとこれは不思議で仕方ない。
何故なら、父は少しでも不調を感じると自分から進んで病院に行く人なのだ。
それなのに、この時に限って行こうとしなかった。

食事量が少ないからすぐにお腹がすくと言って、ちょくちょくお菓子を食べるようになった。
夏になる頃はチョコレートがコーティングされているミントのアイスを好んで食べるようになった。
お酒好きの父が、こんな甘い物を頻繁に食べるなんてどうしたんだろう?
これは今思うと、癌患者さんにままある「嗜好の変化」という症状だろう。
だけど、この時は「癌」なんてこれっぽちも考えていなかった。
病院に行かないまま、半年もの時間が過ぎてしまった。
明らかに体重が減っていった。


2001年9月

ようやく自宅近くの個人病院で胃の検査を受ける。
ここは一般的な「内科」の病院で、風邪を引いた時に良く行く病院だ。
胃カメラの写真を見ると、胃の幽門部(胃の出口)付近に何らかの腫瘍があった。
ここの医者は、
「これは癌ではないだろうけれど、これが食べ物を塞いでしまって胃の通りが悪くなり食事があまり摂れないのだろう。特に急がないけど、切った方が良い。手術設備のある大学病院を紹介しますよ。」と言った。
コメントはこの腫瘍に関する事だけだった。
後からわかった事だが、実はこの腫瘍は「癌」ではなかった。
今、見直すとこの腫瘍はピンク色をした塊だ。
今なら「癌」は口内炎のような白いもので、この腫瘍は「癌」ではないとわかるけど、あの頃はわからなかった。


2001年9月下旬

隣町の大きな病院で再度検査を受ける。

検査結果が出る前に、新車を購入したので思いつきだったけど那須に家族旅行に行く事が急に決まった。
私の父、母、主人と私の4人で1泊で出かけた。
私の希望で行った「東武ワールドスクエア」に、父はすごく喜んだ。
「ここはおもしろいなぁ」と言って子供のようにはしゃいだ。
何の不安も心配もなく楽しめた、最後の旅行になった。
「来年も来よう」と笑顔で言った父。
まさか、1年後にいなくなるなんて思いもしなかった。


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