生活日記

生活日記

親父

親 父


真っ白になった親父の頭を散発する様になって、
もう5年になるだろうか。
  停年退職後すっかり年老いてしまって毎日病院通いと、
近所の老人憩いの家、福祉センタ―へ気怠そうに
靴をひきずり遊びに出掛けて行く。
 昔、私が小学生の頃、腕白仲間と親父の勤務先の鉄工所へ夏、
冷たい水を貰いに行った時に、汗にまみれ真っ黒に汚れた作業服で
働いている父さんの姿をその時、初めて見た。
 「おっ-良く来たなァ-」と汗ばんだ顔で言った。
仲間の一人が「あれ、お前の父さんか!」と、侮辱された時、
私は幼な心に目の前が真っ暗になったのを記憶している。
心の中で「父さんの馬鹿やろう!」と叫んだ。
冷たい水も飲まずに空の魔法瓶を持って逃げるように帰ったのを
私は一生忘れない-。
 私は夜間高校に通いながら、世間を知るまでそれ程、
時を必要としなかった。
 貧乏ながら生活の柱を呉れた、親父に感謝以外に何ものもありません。
私を殴りつけた、あの頃の元気な頃の姿は今は無く
懐かしいと思うばかりです。
狭い庭先で椅子に腰掛け私に頭を向け
「こっくり、こっくり」と、居眠りを始めた白い頭。
 四人目の孫のお祖父ちゃんに成ろうとしている、親父。
 私も親父に負けない位に真っ黒になって働いていますが、
この生活を懸命に支えて行く一ツの骨にしたいと思っています。

川柳

爺ちゃん




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