-鈴白の自由詩-

☆銀河鉄道☆





電車の窓はガタガタ鳴く 生きた街を遠ざける
見送る人もいなかった僕の生きた街を遠ざける
知っている景色と知らない景色が
僕を騙すようにいつの間にか入れ替わる

僕の体は止まったままで時速200kmを超えている
考える程におかしな話だ 僕は止まったままなのに
こんなに可笑しな事 黙っちゃいられない
そう思って間もなく ひとりだったって思い出す


誰もがそれぞれの切符を買ってきたのだろう
今までの物語を鞄に詰めてきたのだろう


リボン付のクマ転がって来る 迷ったけど拾ってやる
同時に女の子が駆け寄って来る 僕を見て怖じ気づく
後悔した僕からクマを奪うと 礼も言わず逃げていく
もういいや 寝ようかな シートを倒す 後ろから舌打ちが聴こえる

聴こえない振りをして 保たれかかって
目を閉じてみたけど 気になるから 眠れない


誰もがそれぞれの切符を買ってきたのだろう
荷物の置き場所を必死で守ってきたのだろう


人は年を取る度 終わりに近づいていく
動いていない様に見えても 確かに進んでいる

自転車を漕いで手を振る人 見送りたい人が居るのだろう
相手を想うならやめてやれよ ちょっと恥ずかし過ぎるだろう
僕の体は止まったままで あの自転車を遠ざける
本当はとても羨ましかった 僕は止まったままだから

役には立てないし 邪魔はしちゃうし
目を閉じてみたけど 辛くなるから 目を開けた

真っ赤なキャンディが差し出されている 驚いたけど貰ってみる
笑った女の子が席に戻る 誰にも知られず僕が泣く
電車の窓はガタガタ鳴く 生きる街を近付ける
出迎える人も居ないであろう僕の 生きる街を近付ける


誰もが それぞれの切符を買ってきたのだろう
今までの物語を鞄に詰めてきたのだろう
荷物の置き場所を必死で守ってきたのだろう
これからの物語を夢に見てきたのだろう


人は年を取る度 始まりから離れていく
動いていないように思えていた 僕だって進んでいる






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