3月20日に入院したとき病室は2階にあり,4月5日御復活の休暇で殆どの入院患者が家に帰り,帰れない患者が3階に集められるまで毎日顔を合わせたのが2階の掃除を担当していたイタリア人のおばちゃんでした。 「ブォンジョルノ」の大きな声で病室に入ってくるなり,大きな声で歌ったり,鼻歌だったりとそのときの気分によって違いましたが,とにかく歌の好きなおばちゃんでした。ある日のこと,いつものように部屋に来て掃除を始めるのが早いか,歌い出すのが早いかといった感じで,始まりました。その歌も最初は何気なく聞いていたのですが,「あれっ,どこかで聞いたようなメロディだ。はて,何という曲だったかな?」と思っていましたが,さわりの部分に入ったときは,一緒に歌い出していました。なんと約30年前に日本でヒットした,メアリー・ホプキンの『悲しき天使:英題 Those were the days』だったのです。 原曲はジプシーの『花の季節』という曲で東欧のジプシーの間で歌いつがれた歌でした。歌には無縁のような能面のように無表情な東洋人が,いきなり歌い出したものだから,おばちゃんは気をよくして,その日から急に打ち解けて,カンツォーネを色々歌ってくれました。ところが,私が知っているイタリア人と特定出来る歌手は,テノールのパヴァロッティとポピュラーのジリオラ・チンックエッティだけですが,私が知っている歌はないかと,掃除にやってくるたびに歌ってくれました。