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2021.04.06
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テーマ: 法律(494)
カテゴリ: 法律
判例タイムズの2021年4月号(NO.1481)を読んでいたら,発信者情報開示請求の証明度についての論文と,関連する裁判例が2つ掲載されている。
いま流行の,というわけでもないが,ちょっと書いておこう。


インターネット関係仮処分の実務 [ 関述之 ]

まずは,巻頭に掲載されている論文から。
東京高裁の部総括,近藤晶昭裁判官の『 民事事実認定の基本構造と証明度について 』というものだ。
色々書かれているけれど,最も言いたいことははプロバイダ責任制限法4条の,発信者情報開示請求の要件にあげられている「権利侵害が明らか」の解釈論だろう。
ここで,「権利侵害が明らか」というのは「権利侵害があること」に加え,「違法性阻却事由のないこと」の立証まで必要になる。

ところが,近年は被告のプロバイダが発信者への照会の結果,発信者作成の陳述書を提出すると,多くの一審は原告側において違法性阻却事由の不存在の立証ができていない,として請求を棄却されてしまうことが多いというのだ。

確かに,字義通り解釈するのならば,「権利侵害が明らか」について,多くの一審のように,発信者側から一応陳述書が出てくれば,違法性阻却事由があることが一応程度にはうかがわれる。
なので,基本的に被告側が発信者作成の陳述書を出せば,まず原告側の請求が認容されることは難しかろう。
近藤裁判官が問題だ,と指摘している点としては,その発信者作成の陳述書の内容が,具体的な日時場所の特定もなく,およそ原告において反論することが難しいと言う点だ。
「権利侵害が明らか」,という文言についても,権利を侵害された者が権利回復を図ることがdけいないような解釈運用がされるべきではない,というのである。
そこで,近藤裁判官は発信者作成の陳述書が匿名で,日時場所も明らかでなく,反論が難しい場合,実質的証明力を低いとみてよいのではないかと結んでいる。

個人的に,ここからが面白い話なのだが,この判例タイムズ4月号,なんと近藤裁判官が担当した発信者情報開示請求にかかわる東京高裁の判決が2つも掲載されている(東京高裁R2.11.11,東京高裁R2.12.19)。
ある意味で前記論文の答え合わせというか,あてはめみたいな感じになっているのが面白い。
僕は,普通に判例タイムズを読んでいて,「あぁ,巻頭の論文のやり方で判断している裁判例があるなぁ・・・。有力な見解なのかな?」と思って担当裁判官の名前を見て,思わず声に出して笑ってしまった。そりゃ,そういう判断になるわぁ,と。

収録されているいずれの裁判例も,一審では原告の請求は棄却されている。主要な理由としては,被告のプロバイダ側から発信者作成の陳述書が提出されているためだ。
それを,いずれも近藤裁判官が高裁でひっくり返した形になる。
もっとも,,東京高裁R2.12.19については一部の書き込みについて,発信者作成の陳述書以外の資料,たとえば国民生活センターやらの照会結果により,原告についてある程度の苦情相談事例があったことから,開示は認めていない。


以下は私見であるが,実務上,「権利侵害が明らか」となるのはどういうケースなのであろうかと。
裁判例の分析をするにせよ,論文中で近藤裁判官が概要,「近年は発信者作成の陳述書があれば,一審はたいてい原告の請求を棄却することが多いように思う」と述べている。統計はないようだが,裁判官の肌感覚であるから間違いはないだろう。実際のところ,発信者作成の陳述書が出れば原告は敗訴する可能性が高いのだろう。
そうすると,1人の弁護士としては,あくまでこの論文と収録されている高裁判決2つは例外的なものだと考えつつ,安易に「発信者作成の陳述書が出たけど,恐れる必要はないぞ!」と思っちゃいけないのだろうな。

最後に,このこの問題については,あまりに原告側に酷だということで法改正の動きも出ている。
その場合はこの論点が消滅することになるのだろう。できたら,そうなって欲しいものである。


インターネットにおける誹謗中傷法的対策マニュアル 中澤佑一/著





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最終更新日  2021.04.06 13:08:31
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