◆EREBOS◆

PR

Calendar

Comments

luciferxxx666 @ Re:意外とね(03/06) *たまき*さん あははー、今ドールと同…
*たまき* @ 意外とね HP運営って、初めは大変だけど、テンプ…
luciferxxx666 @ Re:えるちもそうかも。(11/25) エルチ555さん だねー。期待はずれじゃ申…
エルチ555 @ えるちもそうかも。 なんか、それ、わかるよ。 (誰も見てない…
luciferxxx666 @ Re:えっ★☆(11/23) エルチ555さん にし☆これは番外なので主…

Archives

2025/11
2025/10
2025/09
2025/08
2025/07
2006/08/07
XML
カテゴリ: オリジナル小説


 シヴァがカイラーサの頂上に篭もってから一月余りが経った。
 喪失の悲しみも多少薄らいでは来たがただひたすら瞑想する日々を送っていた。
 篭もり始めた頃には、自分の不甲斐なさが大切な妻をしに至らしめたのだと言う考えと、妻の祖父と父の心無い仕打ちが妻を苦しめたのだと言う憎しみに囚われていたが、ただ孤独に日々を過ごすうちに彼女がもうどこにもいないのだと言うことだけは受け止めることが出来た。
 ゆったりとした時間の中、荒れ狂っていた感情を沈めてくれた幼馴染の顔を思い出す。
「・・・結局どこにも逃れられていない・・・」
 ポツリと呟くとシヴァはまた深い瞑想に戻る。
 少し離れたところでヴィシュヌが様子を見守っていたことには気付かなかった。


 サティの死から半年がすぎた頃、シヴァはカイラーサから下りもとの生活に戻っていた。


 <光の神殿>でヴィシュヌとクヴェーラはお茶を飲みながらくつろいでいた。 
「・・・シヴァ様がまた新しい奥様をお迎えなさるとか」
 ユリウスはヴィシュヌの気持ちを知らずにいたので軽い世間話として話した。
「ああ、サティに似た感じの・・・なんだけっけ。あ、パールヴァティーと言ったかな。」
 クヴェーラも自分の妹の夫がよもやシヴァに恋情を抱いているなどとは考えもするはずなく会話に乗る。
「似てますか?少し淑やか目の・・・他の方々とは趣きがまったく違う方ですよ?」
「そうかぁ?」
 ユリウスとクヴェーラはシヴァの他の妻達を思い浮かべているらしい。
 その様子をため息をつきながら眺めていたアルスは扉の向こうから人の気配がするのに気がついた。
 会話を切り上げさせるのにちょうどいいと自ら扉を開けに向かうと訪れたのが滅多にこちらにやってこない妻であることに気付き、しばらく固まってしまう。

 エウリアはにこやかにアルスに微笑む。
 アルスは久方ぶりに会えた喜びを隠すこともせず笑みを見せる。そんなアルスの様子をまた愛しそうにエウリアが見つめるものだからユリウスたちは居心地を悪くする。
 部屋の中でヴィシュヌとクヴェーラがくつろいでいるのを見るとエウリアはそちらに向かって礼をとる。
「お邪魔でしょうか?」
 ゆったりとした微笑を浮かべるエウリアをヴィシュヌは嫌そうに見つめる。

「あら、そのようなことは思ってもいませんでしたわ。」
 肩を竦めて答えるとそのまま奥に移動していたユリウスに近づき何事か話し始める。
「白銀の君。私貴方にお願いがあって参りましたの。」
 相変わらず嫌な女だと苦々しく見つめているとアルスが寂しげに二人を見つめていることに気がつく。こちらも何とか手には入れたものの片思いのようなものだ。
 少しだけ同情をしつつもエウリアがきちんと妻であることを受け入れていることに嫉妬を感じる。
 ぼんやりと眺めているとユリウスが慌てたように騒ぎ出す。
「そんなこと私には無理です。」
「あら別に無茶を頼んでいるわけではありませぬよ?」
「無茶です。」
 泡を食っているユリウスをどこか楽しげに追い詰めているらしいエウリアは重ねて何か頼んでいる。
「・・・本当に知りませんよ。」
 どうやら押され負けしたらしいユリウスは少し青ざめて了承したようだ。
「一体どうしたんですか?」
 話しに加われずにいたアルスは二人に説明を求める。
 了承を取り付けたからかエウリアはあっさりと答える。
「しばらく実家に帰りますので<闇の神殿>の留守を頼みましたの。」
「・・・は?」
 アルスは呆然としてエウリアを眺める。
 実家に帰るとかはまず夫に言うべきではないだろうか、などと言う事も言えずに固まっている。「私の仕事まではやらせはしませんから。」 
 にこやかに言うとエウリアはさっさと出て行ってしまった。
「・・・実家って・・・」
 アルスはそのままぽそりと呟いた。
 少々かわいそうだと思いつつヴィシュヌは慌ててエウリアの後を追うことにした。

続く。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2006/08/07 05:38:16 PM
コメントを書く
[オリジナル小説] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: