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2007.10.02
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カテゴリ: カテゴリ未分類
「32年後の市街劇~『ノック』ドキュメンタリービデオ2007年版を観る」
(原 達也)

 ビデオはその市街劇というか今流に言えばパフォーマンスと言うべきか、それらを寺山自身に依頼されて何人かの実験映画やビデオアーチストたちが撮影したものだ。白黒画面に映し出された風景は32年という時間経過以上に古びて見える。同時多発的である以上その全てを撮影する事は不可能であり、上映されたのは市街劇の一部である。それらを観てまず印象に残ったのは画面に映りこむ観客たちの、どちらかと言えば「物見遊山」風な佇まいだ。演劇に取り込まれ、目隠しされて乗せられたり箱の中に閉じ込められて見知らぬ場所へと移動した観客もいたが、多くの観客は不動産屋で手渡されたマップ(それを見ると何処でどのような事が行われているのか、一応は把握できる)を手に、阿佐ヶ谷周辺をうろつき回る事に。銭湯の男湯では浴室で全裸芝居する役者を、脱衣場から眺めるような状態になっている。銭湯に入っている役者以外の人は、一般の入浴客ばかりらしい。
 役者とそれを取り巻く観客の集団という構図は、その他の場所でもほぼ同じである。『ノック』は安穏とした日常に埋没している一般市民を市街劇という形式で挑発し、日常性が孕む危機感を煽るという主旨だったのだろうが、寺山としてはそれを見る観客をも巻き込み一種の騒乱状態をも仮想していたのではないか、と僕は推測する。例えば事情の判らぬ老人たちに執拗に即興芝居に参加する事を強制する『天井桟敷』の企てに、観客側からの何らかのリアクション(老人たちに同情し、芝居を阻止しようとする観客の登場とか)もあり得るだろう、との読みだ。それは渋谷公会堂『邪宗門』の時に騒然となった会場の空気を、街頭劇の場に再現しようという試みとも言える。もっと大きく言えば一部のデモ隊の騒ぎが、野次馬などの一般人を巻き込んで騒乱状態と化した「新宿騒乱事件」の再現をも目論んでいたのかもしれないのだ。
 果たしてビデオで観る限りその時程の熱は、取り巻く観客や一般市民には感じられない。時代の流れ、演劇という仕掛けの限界性、予想以上に素早かった警察の対応(寺山が最も拘って目論んでいた「書簡演劇」の一部が、それに協力しないようとの一般市民に向けての通達で成立しなかった)などなど、当初の狙い通りにはいかなかった理由は色々と考えられるだろう。象徴的だったのは狭い室内で芝居が行われている為入場できず、見れないとの観客のもっとも過ぎる抗議に、些か戸惑いながらも弁解?する寺山の声である。観客の立場に安穏する物言いなどもっての他と寺山なら言いそうだなと思ったが、そうではなかった。実際『ノック』の評価は『天井桟敷』内でも賛否両論だったようで、それが元で演出を手掛けた劇団員は直後に退団している。
 上映されたビデオは市街劇が行われた場所の、変わり果てた現在の風景が撮り足してあった。旧映像には上映会場前の付近でも撮られた物もあり、撮り足した新しい映像と重ねると否応無しに時の風化を実感させる。
木造家屋が当り前だった32年前の街並は小奇麗な店舗が立ち並び、空き地という空き地は全てマンションで埋め尽くされ、亡くなった寺山や無謀な企てに参加した劇団員、そしていかにも当時らしいファッションに身を包んだ観客の若者たちも、今はその姿を止めてはいない。何か大切な物を落っことしてしまったような気持ちに駆られつつ、僕は会場を後にしたのであった…。






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ここにも出てました。 ↓

http://buff.cocolog-nifty.com/buff/2007/09/post_28c6.html



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Last updated  2007.10.29 10:35:52
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