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2008.08.29
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カテゴリ: 医療
 28日の朝日新聞「私の視点」に、大野病院事件について 「産科医無罪」で終わるな と言うタイトルで鳥集徹(とりだまりとおる)氏が寄稿している。肩書きはジャーナリストとある。ジャーナリストであれば、それなりに深い考察を述べているのだろうと思ったら、遺族と同じことを述べているだけだった。ネットでググって見ると、私が知らなかっただけで、遺族側の代弁者として結構有名な人だったらしい。

 寄稿文の内容は、医師が医療に関して捜査機関の介入を排除したがっていることへの批判である。大野病院の件でも、捜査によって真実が明らかになった面があるという。明らかになった真実とはこういうことらしい。

 大野病院事件の場合、女性は手術を受ける1ヶ月前から入院していた。その間に、執刀医は助産師から「大きな病院で手術した方がいい」と助言され、先輩医師からも女性と同様の症例で「大量出血して大変だった」と教えられていた。これらは警察が捜査に入ったことで、初めて明らかになった事実だ。

 亡くなった女性の父親も同様のことを言っている。どちらが先に言いだしたのか判らないが、明らかになった「事実」が重大なのだという認識なのだろう。どれくらい重大なのかというと、たった1人の産科医として、夜間も休日も毎日待機当番状態で自分の生活を犠牲にして地域の医療に貢献していた医師を、逮捕して留置場に放り込み、犯罪被疑者として過酷な取り調べを受けさせるほど重大なのだろう。

 普通の市民なら、その様な仕打ちを受けることは耐え難い屈辱であり、恐怖でもある。医師をその様な目に逢わせる必要があるほど、その「事実」は本当に重大なのか。

 そのような「事実」が有りながら、転送せずに大野病院で手術を強行したのが悪いという認識だと思うが、それなら、前置胎盤の手術の多くは大病院に送られていたという認識なのだろう。でも、裁判を取材してきたというのなら、大野病院よりも環境の悪いところでも、前置胎盤の手術が行われていることは分かったはずだ。少なくとも、それが福島県のスタンダードであったことは、裁判の過程で明らかになっている。スタンダードが悪いというのであれば、責めるべきは医療体制であり、医師個人ではないはずだ。

 被告自身は 第七回公判 で以下のように述べている。
弁護人:  大野病院で前置胎盤の症例を取り扱うことに問題があると思いますか。

加藤医師: 問題あるとは思っていません。

弁護人:  なぜですか。

加藤医師: 施設スタッフがしっかりしていますし、 同規模の施設でも引き受けていますので



 被告だけでは信頼が置けないと言うのであれば、先輩医師も 第二回公判

弁護 先生は前置胎盤の帝王切開は何人でされましたか?

証人 今年に入って、一月にやりましたが、それは人をたのみました。

弁護 それ以前の9例は全部1人でしたか?

証人 そうです。

弁護 麻酔は?

証人 ひとりで全部やります。

弁護 助手は誰がするのですか?

証人 手術室の看護師です。

弁護 前回帝王切開、前置胎盤の患者さんで、術前にわかっており、大量出血の可能性がある場合も。

証人 はい。

弁護 前置胎盤で搬送しようと考えませんか?

証人 これだけではhigh riskではないので、ひとりで対応できます。

弁護 県立大野病院では、加藤医師の体制では、外科医1名、麻酔科医1名、助産師などスタッフ全9名。この体制は不十分だと考えられますか?

証人 私どもの施設に比べかなり恵まれていると思います。

弁護 同じような症例に対して先生はひとりでされているのですね。

証人 はい。


 これが福島県の当時の実情だ。今では産科を取りやめたところが多く、1人では手術をしないようになっているだろうが、そのために産科難民と言われる人々が増えている。医療を受けられないまま亡くなった命もあるのではないかと言うのは杞憂だろうか。 

 設備が整っていた方が良いのはその通りだし、人員も豊富な方が良いこともその通り。それは前置胎盤だけでなく、たとえ正常分娩でも同じなのだ。正常分娩だと思っていたら、突然大出血と言うこともあり得る。万全を期すなら、都市部の大きな病院の方が良いというのはその通りだけど、それ以外の施設は無くして良いのだろうか。リスクはあろうとも、医療を受けられないよりは受けられた方が良いのではないだろうか。

 でも、もう後戻りは出来ない。集約化と言えば聞こえは良いが、実体は地方切り捨てだ。今でも過酷な勤務状態で働く産科医は多いが、そのモチベーションは以前ほど高くない。「難民」が押し寄せてくれば耐えられないだろう。ドミノ倒しは粛々と続いて行くと思う。





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Last updated  2008.08.29 10:43:46
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医療に興味があるのなら  
GreenーNote さん
医療に興味があり意見があるのなら、建設的な発想で世間に発信してほしいものです。
医師に迎合する必要はもちろんありませんが、社会にとって役立つ知識や意見を展開してほしい。
単純な医療批判・医師批判が前時代的だということに気づいていない時点で、氏のジャーナリストとしての資質を疑いたくなりした。 (2008.08.29 12:14:15)

色つきのジャーナリスト  
Drbamboo  さん
GreenーNoteさん、コメントありがとうございます。

既に「被害者の会」の陣営の一員になっている模様です。
ジャーナリストに必要な中立性は望めないでしょう。 (2008.08.29 17:42:38)

少なくとも  
wadja さん
検察は控訴を断念する方向のようです。これで完全に終わりとは言い切れませんが、そうなって欲しいと思います。そうなったら、加藤先生にはおめでとうを言いたいですね。

ただ、検察が納得して控訴を諦める訳ではなくって、単純に新しい承認を提示できないのが直接の理由のようです。
http://dailynews.yahoo.co.jp/fc/domestic/medical_malpractice/

反省の色が無いな。 (2008.08.30 01:11:23)

医療不信は残りそう  
Drbamboo  さん
wadjaさん、コメントありがとうございます。

控訴断念と言っても、医者全体がグルになって、壁を突き破れないから断念したみたいな言い方をする人もいて、医療の不確実性が理解されたわけではないと思っています。 (2008.08.30 09:02:33)

法務大臣は  
元外科医 さん
もっと謙抑的にふるまう。といってるので、この起訴が妥当でなく、不適切だった事を認めているのでしょう。
(2008.08.30 09:40:07)

法的には何も変わっていないから  
Drbamboo  さん
元外科医さん、コメントありがとうございます。

少なくとも今後は安易に刑事事件にならないと思いますが、災害と同じで、こういうのも忘れた頃にやってくるのでしょうね。 (2008.09.01 05:08:37)

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