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カテゴリ: 書評
見出し:奇譚で世界をひとめぐり。

G・カブレラ=インファンテ・、レイモン・クノー、ナギーブ・マフフーズほか、 若島正編『 エソルド座の怪人 アンソロジー/世界篇 [異色作家短篇集] (異色作家短篇集 20 アンソロジー 世界篇)』(早川書房)

 過去の書評でも書いているとおり、私はミステリ小説をあまり読まない。特定の作品を単体として読むことがあっても、ジャンルとして網羅していくような嗜好はない。今回本書を手にしたのは、普段あまり接することがない国の文学作品を読んでみたい、という目的と、純然たるミステリというよりは、奇譚を集めた短編集というコンセプトに食指を動かされたからである。また、レイモン・クノーの実験的作品が採録されている点も決め手となった。
本書では、順にエジプト、チェコ、カナダ、ウルグアイ、フランス、ポーランド、イタリア、台湾、ベルギー、スコットランド、キューバ各国の作家が筆比べを繰り広げるわけだが、個人的には南米圏作家には、この本をきっかけに注目したい。
 作品からいえば、ロバートソン・デイヴィス「トリニティ・カレッジに逃げた猫」(カ)、アイザック・バシェヴィス・シンガー(ポ)「死んだバイオリン弾き」あたりの怪奇譚、“これぞ大衆短編小説”的痛快さを味わえるジャン・レイ(ベ)「金歯」、壮大で歴史ロマン的要素もあるヨゼフ・シュクヴォレツキー(チ)「奇妙な考古学」、少なくとも私の知る範囲では、きわめて南米文学的なオラシオ・キローガ(ウ)「オレンジ・ブランデーをつくる男たち」あたりがお気に入りだ。
 心理描写を軸にした象徴主義的作品であるリー・アン(台)「セクシードール」は、土俗的・呪術的な神秘感と、洗練された透明度の高い官能美で驚かせてくれる。レイモン・クノー(フ)の「トロイの馬」は、まさに不条理な実験小説。アンソロジーとしては唐突な感も。同じ理湯で、タイトルにもなっているG・カブレラ=インファンテ(キ)「エソルド座の怪人」は、スラップスティックな印象が強すぎて、元ネタとなる作品に私の思い入れが強い分だけ、ちょっと悪ノリが過ぎる感じがして、違和感を覚えてしまった。
 が同時に、「エソルド座の怪人」などの扱いを見るにつけても、そこには選者の一貫したコンセプトが存在しているのであり、げにアンソロジーというものは、目利きのなせる業にて、余人の考えの及ばぬ別個の目線を必要不可欠とするものなのだと再認識したのである。(了)


エソルド座の怪人

著作です: 何のために生き、死ぬの? 。推薦文に帯津良一・帯津三敬病院名誉院長。





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Last updated  2008/04/03 10:09:43 PM
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