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カテゴリ: 映画/エンタメ
 ちょっと劇場での鑑賞は見送りかな、タイミング的に…と思ってましたけど、『 レッドクリフ 』、観ちゃいました。
 感想。うーん、難しい。50点かな。大きなところでは、まず、二部作にする必要があったのか?という点。レッドクリフ、つまり訳せば赤壁。史上名高く、また三国志エピソードの中でも大きな話しの一つである、赤壁の戦いを描くこの作品、第一部ではそこにいたるまでの話しで「続く」。え?じゃ、レッドクリフじゃないじゃん(苦笑)。結局、前フリしておいて、パート2で、赤壁の戦いを描く、という流れなのですが、そこでそもそも、果たしてジョン・ウーは歴史映画を作りたかったのか?という次なる疑問が残るのです。
 三国志は超メジャーな物語。でも、実際には壮大すぎるし、細部までの認知度がどの程度かと言えば、そんなに期待は出来ないハズ。そうなると、赤壁の戦いを描く、ということがどんなにスゴいことなのか、というインパクトそのものも弱まってしまうワケです。それで、あえて前フリを作ったのかな、という感触なのですが、むしろ、歴史的な流れや事実関係などはすべて削ぎ落として、まさに赤壁の戦いそのものに絞り込んだエンタテインメント映画(もちろん、一作完結型)にしてしまっても良かったんじゃないかな、という気がするのです。パート1で語られた前フリも、結局、三国志を知りたい人も知らない人も、そんなに詳しくなりたいわけでもない人にとっても、同じ程度の意味しか持たないのではないか。だったら、十分にストーリー性があり、劇的な赤壁の戦いのみを、あの躍動感やスピード感を存分にフル稼働したジョン・ウー節で料理してしまった方が強かったんじゃないか、と思えてならないのです(実際、映画本編の前に流れる、おそらくはタイアップした関係会社が作成したであろう、よく大河ドラマや年末時代劇でも使われる「導入」はよく出来ていましたし、マス向けの意味においては、これで十分パート1一本分の役割を果たしていました)。
 つまりは、ジョン・ウー監督なら、三国志を知っているか否かに関わらず、誰でも楽しめて、かつ三国志的世界観のエッセンスは十分に味わえる、スペクタクルを作ることが出来たのではないか、と。これは、とにかくパート2を観てから、総合評価するしかなさそうだ、というのが正直な感想。これまで作られて来た“三国志映画”に比べて、明らかに鳴り物入りの本作なのに、なんだかビデオ・オンリーみたいな中国作品とそんなに変わらない地味な内容。
 でも収穫がなかった訳ではありません。キャスティングが、いや、金城武氏が本当に良かったんです。コアなファンではなかったので、あまりハッキリは言えないのですが、個人的に知る範囲では、彼自身の最高のアタリ役&名演技ではないかと。一般的にイメージされる諸葛亮孔明像を暗示させながら、日本人が好む諸葛亮像をうまく作り上げています。のみならず、知謀神に通ずる諸葛亮を、ただの怜悧な軍師の枠に収めていない。温かくて、人情もあって、静かだけど情熱があって、何より、茶目っ気がある。チクリとハチの一刺し、皮肉たっぷりの台詞にも嫌みよりさわやかさが残り、飄々としてとぼけたフリの、なんともいえない魅力が滲み出ているのです。切れ切れなのに、ユーモアを失わない。傑物なのに、どこか浮世離れしている。赤壁の戦い当時は青年であったろう諸葛亮孔明の、あまり描かれてこなかった快男児的側面が実に新鮮で、金城氏の演技と絶妙にマッチしているのです。
 物語中盤で、出ましたハトーーーーbyジョン・ウー。なんだ、今日は群れて飛ばないんだ…。でも、孔明の意外な小道具として飛びますよ、今回も。
 中村獅童氏@甘興。これって、甘寧興覇のことですよね、間違いなく。巧いなぁ。やっぱり。地顔もまた、なんか水賊出身の荒くれ風ながら、ひとたび仕えれば忠心較ぶ者なき猛将、ってな佇まいが漂ってるし。ご本人もきっと、水を得た魚のようにのびのびと演じられたのではないか、と伺えるような演技。
 トニー・レオン@周瑜。やっぱりスクリーン映えしますねぇ。清廉潔白な感じがババーッン、と。ただ、一般的なイメージに較べると、かなり家庭的&庶民派な周瑜になっちゃってるんですけど(苦笑)。かなりマイホームな旦那さん。ま、奥さん美人ですしね(個人的には、評判ほどには演技面でのオーラをもう一つ感じなかったのですが)。

 孫権、イケメン。この人は日本人ウケしそうだなぁ。ちょっと青さが残る雰囲気も、孫権らしくてイイですね。
 魯粛がまた、なんかイイ感じに魯粛っぽいんだ。ちょっと三の線入った風間杜夫氏風の妙演が、作中に描かれる人間関係にいいテンポを作ってます。
孫尚香も合ってますね、ヴィッキー。
 関羽を演じたのは、正真正銘のチンギス・ハーンの末裔さんだとか。でも…なんかイメージよりも小柄なんだよなぁ。魯粛より小柄なのが…気になる。いや、もうハッキリ言おう。気に入らない(苦笑)。
 張飛は…ヤバいですね。一歩間違うと、燕人・張飛ではなく、猿人になってしまいます。あと、走り方がちょっとしずかちゃん@ドラえもん、ぽいんですが。
 しかし日本人って三国志好きですよね。勿論私も大好きなんです。そして、日本人にとっては、いかに横山光輝大先生の『三国志』の影響が強いか、ということを再認識したわけで、もしかしたら日本人の方が中国の人よりも三国志に詳しいかも知れない、とすら思ってしまうのです。
 あ、それとやっぱり、画面が地味に見えたのは、あの繊細にして優美な、川本喜八郎先生の人形劇『三国志』のイメージがどこかにあるからに相違ないのです。うん、やっぱり三国志を愛し、歴史から神話へと翻案したのは、ほかならぬ日本人なのかも知れません。(了)


レッドクリフパーフェクトガイド


レッドクリフ公式ビジュアルBOOK


(CD)レッドクリフ Part I オリジナル・サウンドトラック/音楽:岩代太郎

「旅から、音楽から、映画から、体験から生死が見える。」 著書です:『 何のために生き、死ぬの? 』(地湧社)。推薦文に帯津良一・帯津三敬病院名誉院長。





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Last updated  2008/11/21 05:18:38 PM
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