サリエリの独り言日記

サリエリの独り言日記

2015.07.20
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カテゴリ: スポーツ
なでしこ流サッカー・マインド

 サッカーというのは攻撃に注力しすぎると、どうしても守りが薄くなるというところがある。作戦通り得点出来ればいいものの、そこは相手があるわけですから、前回大会のようにまったく不発に終わり、戦力を消耗する恐れも実際にはあるのです。しかしアメリカはそうしたリスクを犯しても、序盤の波状攻撃を止めなかった。それは先の「どうしても2点、出来れば3点(想像ですよ)」という想念に引っぱられているからで、なぜ「出来れば3点」なのかと言えば、それは過去二回の決戦の経験から来たものだったでしょう。「2点では必ず追いついて来る。試合を完全に支配するためには、成し得るなら3点」というのが正直なところだったのではないか。
 アメリカとしてはまことに珍しい「サインプレー」を採用したのも、たぶんこのような一種「脅迫観念」に駆られたものだったのではないか。それがあまりにも見事に当たったので、4点めのロイドのロングループシュートは、いわば行き掛けの駄賃みたいな余裕から生まれたものでしょう。しかし結果的にはこの4点めが、この後の試合に微妙に影響したようにも思えます。

 さて、対する「なでしこ」は文字通り完全に「虚を突かれた」ので、しばらく自慢の防御網は崩壊していたと言っていい。ロイドが遊兵の位置にいるということが分かってみると、そちらにも気を使わなければならない。しかし組織的防御というのは、ガタイ高さに劣る「なでしこ」がギリギリのところで編み出したものなので、警戒すべき新たな因子が一つ入ると、バランスを大きく損なったということでしょう。という意味で、最初のグラウンダーは単なる先制点以上の効果を、アメリカにもたらしたと言っていい。いつも薄っすらと張られたような紗幕が今は破れていると、とくにラピノーやロイドなどは嗅ぎ取ったに違いない。
 と言うわけで、序盤の失点だけを見れば、双方の実力差だの力の壁だの、おなじみの慨嘆的感想が溢れ返りそうですが、実はそれほどでもなくて、上のような経緯の結果と見るべきです。先の鮫島さんの「この時点で『負ける』という選択肢はなかった」というのは、そういう文脈で見ればよく分かる。まあ、一つにはまだ試合のムードというか、ニオイも固まらないうちに、バタバタと取られてしまったので、サッカーをしている気がしなかったのかもしれませんが。

 こうした状況に追い込められた時、男子サッカーではどういう振舞いかたをするだろうと思ってしまう。まあ申し訳ないですが、昨年のワールドカップ・ブラジル大会での準決勝、ドイツ対ブラジル戦はあるいはその好個の例かもしれない。ブラジルの防御が完全に崩壊して7-1という歴史的大敗を喫した試合です。これには伏線があって守備の要の選手が、累積カードで本戦に出場出来ない事情があったとはいえ、後半は仲間内で怒鳴りあうなど、試合そのものを自ら壊しているようで残念でした。
 これほどではないにしても、得点差が開くとファウルやイエローカードを連発して、自ら試合を壊すチームというのは世界に結構多い。ひょっとすると「なでしこ」のように振舞えるチームのほうが少ないのではないか、とさえ思ってしまいます。これは何も「なでしこ」のフェアプレー精神を称揚しているのではない。もちろんそれは立派な態度であって、普通なら揉めそうな判定の場面でも、素っ気無いくらいさっさと次のプレーに入る。微妙な判定で身構えている審判の前を、さっそうとすり抜けていく彼女たちを観ていると、時々噴出しそうになります。
 しかしこれらはたぶん訓練の結果というよりも、彼女たちのサッカーに対する基本的な「取り組み姿勢」、あるいはサッカー・マインドから来ているのではないか?一言でいえば、「自分のプレーでピッチを汚したくない」みたいな。





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Last updated  2015.07.20 20:37:55
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TNサリエリ @ Re[1]:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) ナガノさんへ  コメントいただき、ありが…
ナガノ@ Re:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) 2年遅れで、この文章を読んで泣けてしまっ…
TNサリエリ@ ふたたび、コメントありがとうございます。 cocolateさんへ 私自身、彼女の演奏に刺激…
cocolate@ Re:エレクトーンというガラパゴス 1.(06/17) 再びおじゃまします。 826askaさんのYouT…
cocolateさんへ@ コメントありがとうございます。 三年ほど前に826asukaさんのことを知り、…

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