トカトントン 2.1

トカトントン 2.1

2006/05/15
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カテゴリ: サッカー
rokugatsu1

■ヴェルディの凱旋行進曲の調べは必ずしも勇壮なタッチで奏でられるばかりではない。この作品の冒頭ピアノとギターの単音で流れるそれはどこかもの悲しく戦いの後の寂寥感に満ちているようにきこえる。熱狂が大きければ大きいほど寂しさも大きいということだな。

■練習風景はさすが日本代表。ひとつひとつのパスの速さ正確さ、そしてひとりひとりのポテンシャルの高さ。あんなボールに追いつけるのか、あんな所に蹴れるのか。日本で一番サッカーのうまい23人はだてに選ばれたわけじゃない。特に長回しで撮されるゴールキーパーの練習風景に鳥肌が立った。川口、楢崎、曽ヶ端、誰がでてもおかしくないくらい伯仲していたし、トルシエもこの時はまだ先発を決めていなかったはずだ。

■練習中や試合前に熱く語るトルシエであるが、こうして見るとやはり選手たちとの距離感はかなりあったと思う。性格的にもいくらかエキセントリックに見えるし、時々興奮して行う不思議な練習も何やらわけのわからないものが多い。ミーティングにしても言葉の違い、文化の違いは大きい。その前のフランス大会の岡田監督には選手を鼓舞するたくさんの名言や引用があったのに対し、トルシエのそれは戦術も含めて最後には選手の頭の上を通り過ぎるだけの虚しい叫び声にしかなっていなかった。

■このドキュメンタリーが貴重なのはそんな監督の指示の向こう側で選手同士がお互いに戦術やフォーメーションに対し議論をぶつけていく様子、彼ら自身で修正していく様子がうかがえるところにある。トルシエであったからこそ23人がかえってまとまったと言うことは否定できない。そういう人望の無さはある意味監督の美点のひとつなのかもしれない。このあたりはジーコには真似のできないところだろう。

■意外にお調子者の明神、歌が上手い小野、脱ぎたがる稲本、やんちゃな松田、酔っぱらい中田浩二、さびしがりやサントス、いじられキャラ森島、森岡、楢崎、秋田、曽ヶ端のアゴカルテット、すでに一目置かれているヒデ・・・そんな彼らの中で秋田と中山に求められた役割はとても大きかった。ともすればプレッシャーに押し潰されそうな自国開催、そんな集団に明るさと落ち着きをもたらせたのはこのふたりだった。

■第1巻は代表合宿スタートからロシア戦前日まで。試合の模様は著作権の関係で岩井俊二自らが作ったアニメーションによる復元。これがまたよくできているのだが、本物の画力にはやはりかなわない。この場面はもう一度ビデオで見るほかないだろう。第2巻はロシア戦から代表解散まで。これはまた後日感想を書いてみたい。

■さていよいよドイツに向けての代表が発表された。久保に代わって巻が選ばれたことにジーコのリアリストぶりを見たような気がする。秋田や中山の役目をしなければならない人物はもういない。成熟という意味ではこれから先もこんなメンバーがこんな年齢で揃う大会はまずないと思う。ぜひともいい準備をして万全で初戦を迎えて欲しい。

PS






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Last updated  2006/05/21 05:14:37 PM
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ミリオン@ Re:「北の国から」を友達にすすめてみる(01/02) こんばんは。 嬉しいです。頑張って下さい…
Dehe@ Re[1]:カルトQ 2005 北の国から(10/18) adventさんへ ご指摘の通りです。例によ…
advent@ Re:カルトQ 2005 北の国から(10/18) 五郎が読んだ大江健三郎> 開口健ではなく…
しょうゆ@ Re:家庭教師 / 岡村靖幸(09/09) …最後まで岡村靖幸はわからなかったのでは…
背番号のないエース0829 @ Re:ヒトラー 映画〈ジョジョ・ラビット〉に上記の内容…
Dehe @ Re[1]:センチメンタル通り / はちみつぱい(04/17) Mr.Zokuさんへ 情報ありがとうございまし…

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