世界のまんなかにあるもの



折に触れて思い出すことがあります。
おととしの春、母が子宮筋腫の為、子宮摘出をしたのです。
手術は無事にすみ、待合室にいた父と私は確認をと医師にいわれ、病室に
入り子宮を見ました。
まるでハムのかたまりのようでした。

 その後私は英語を専門とする為学校に入り勉強を始めたのですが、
あるときふと、「子宮」を英語で「womb」というということを知りました。
そしてそれからまたしばらくして、wombという単語には
「(事物の)発生、
成長する場所、核心」という意味もあると知ったのです。
言葉って面白いなと感じると同時に、それからの私は、なぜか折にふれて
wombの姿を思い出すようになりました。
つらく苦しいときも、嬉しいときも。
そこはまぎれもなく私という人間が「存在」し始めた場所、ふるさとなのです。
思い出す度に、尊いような、何ともいえない穏やかな気持ちに包まれます。

 私はこれからも、思い出すと思います。
そしてその時は自分という存在を、肯定するでも否定するでもなく、
ただ見つめるのだと思います。
ただ私がこの塊から生まれてきたという事実。
そして今確かに生きているという事実を。

そしてまた、自分の道をしっかり踏みしめて歩いていこうと決意をかためる
のでしょう。
この世に存在する誰もが、自分だけのwombを持っています。
だから今生きているのです。そう思うと自分がどんな状態の時であっても、
周りのすべての人に、優しくなれるような気がしています。






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