2004年5月(銀色夏生特集)



マリカの永い夜

マリカの永い夜/バリ夢日記  吉本ばなな(幻冬舎・1300円)

 私は「旅もの」の本が好き。行ったことのない国を旅している気持ちになれるし、同じ国でも書く人によって全く表情が違っていたりして面白い。
 吉本ばななさんの「旅もの」を読むのは初めて。バリ島を舞台にした小説と、紀行文がセットになった贅沢な一冊。

 親の虐待を受けた事で、多重人格になったマリカが、近所のジュンコ先生(マリカは友達を先生と呼ぶ)とバリに行く物語。バリの神秘の中で、人格のひとり、オレンジがマリカに別れを告げる。マリカとオレンジの絆が印象的。登場人物がそれぞれを思いやっているのが伝わってくる文章。

 「短い滞在の旅人にあんなにもすべてをさらけだしてくれたバリよ。私は
  移動するたびにいろいろな生命体を感じ、自分のなかに息づく自然の
  気配を確かに感じた。日に日に感覚はとぎすまされた。自分がどんどん
  自然と親和していくのがわかった。決して人を拒まず、しかし何者にも
  侵されない。いくらでも与え、しかし枯れたりしない。たっぷりと満ちて
  いる。あそこはそういう島だった。」(本文より)

 読んでいるとプールに入ったあとの心地よい気だるさが身をおそい、熱い
 夏が恋しくなる。装丁もページ中の写真も美しく、この本は図書館で借りた
 のですがぜひ手元においておきたいなと思います。






■さて今月は、「銀色夏生」さんの詩集を特集します■


高校生の青春真っ只中!の頃に、友人が夏生さんの”ロマンス”を持って
 きたのをきっかけに、私達のブームとなる。名前から、「絶対男の人だよ
 ね、だってナツ「ヲ」だもん!」と、こんなにも繊細な男性がいるのかと
 私達は憧れていた。
  でもある日私はある雑誌で、夏生さん本人を見つけてしまった。そこに
 は素敵な女性が・・・・。
  私が詩を書くきっかけでもある、永遠に大好きな方です。
  ここでは、詩集のタイトルと、その一冊の中で私が特に好きな言葉を
 載せてみます。でも、夏生さんの本は写真にもとても感動するので、ぜひ
 本屋さんでごらんになってくださいね。

ロマンス 「きっと誰もが輝く悲しい詩人である」「ロマンスの道は
         遠かりき 我とわが身を励まさん」
    ・夏生さんの詩の原点のような気がする。恋愛にも人生にも、
     バイブルのような一冊。



LESSON 「迷わずにいこう。笑えることが素敵。」
    ・淡い片想いを思い出す。忘れかけている昔に返りたくなったら
     開きたい一冊。





Balance  「季節といえばいつもいつも、次にくる季節が一番好きだ。」
    ・あらゆる気持ちの言葉にするその仕方に、虜になりました。



あの空は夏の中 「わけもなく悲しいとか、わけもなく楽しいとかいう言葉を
         私はよく使ったけど、本当はいつもちゃんと理由があった」
    ・この一冊全体に漂うのは”孤独”かな?誰にでもある思い出の夏を
     切なく思い出します。



そしてまた 波音
    ・何かの縁で出会えた人たち。でも人との関係に詰まることは多々。
     心の底にある、限りなく繊細なシャボン玉みたいな場所・・。
     ふと一人になりたくなったとき、開きます。




恋が彼等を連れ去った 「愛する人の幸せを祈るというのが 最も基本的な
            愛の形だろう ただ相手の幸せをいのる それ以外
            に なにを望もう」
    ・勢いのある恋を描く一冊。私は、まっすぐ恋愛を捉えたものより、
     もっと違う本にある恋の詩のほうが好きです。



散リユク夕べ 「これは私を救うかもしれない その時そう思った」
    ・写真のない、詩だけの一冊。夏生さんの言葉がひきたちます。



好きなままで長く 「好きなままで長く いられたらいいな」
    ・出会う全ての人を、物を。ずっと好きなままでいられたら、どんなに
     幸せだろう。本当に、悲しいくらい人は、物は、変わっていく。
     それをつらく思う私に静かに勇気をくれた一冊。多分変化は、面白い
     ことでもあるんだと。



しかくのアイコンこれもすべて同じ一日 「私が私の願いをみつめているようにあなたがあ       なたの願いをみつめてると、信じることができれば、それこそがた       ったひとつの私の愛の形。」
    ・陽がのぼり、陽が沈むまで。どんな出来事も、全てはその間に起きて
     いるんだなと、表紙の空の絵に納得できてしまう一冊。それならば、
     多分どんなことも、受け入れていけると。




しかくのアイコン葉っぱ 「生きているということ 生きていくということ 生きるとは
     どんなことだろう ありがたくうれしい気持ちの時もあるし
     イヤな気分になる時もある 他の人はどんなつもりで
     生きているのだろう こんなにたくさんの人がいるのに
     心がわかるのは自分のだけ みんなひとりずつ 自分の心を
     内にかかえて 外の世界を共有してる」
    ・葉っぱの写真がとても綺麗。素敵な詩がたくさん。



しかくのアイコン春の野原 満点の星の下 「よくよく考えてみると どんな成り行きも
             どんな結果も その人らしい」
    ・空の写真と言葉がおりなす世界。



しかくのアイコンとにかくあてもなくてもこのドアをあけようよ
      「完全な沈黙が 糸電話の糸が ふいにゆるんで ゆらめく笑い」
    ・ページをめくると、くらくらします。写真が、どこか違う世界に
     私を連れて行きます。行った事のある懐かしいような。



しかくのアイコン雨は見ている 川は知ってる
    ・新刊。今よんでいるところで~す。




© Rakuten Group, Inc.
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: