夏風

2007/12/22
XML
カテゴリ: ロスチャイルド
これから年末そして来年にかけて、世界では、危機がいくつも待ち受けている。

 その一つは、東欧のコソボだ。コソボをめぐっては、12月10日に、セルビアとコソボの交渉の期限がくる。コソボは、もともとセルビア(旧ユーゴスラビア)の一部であるが、1990年代後半、旧ユーゴの各地域が分離独立を希求した際、コソボもセルビアからの分離独立に動き、それをアメリカが「人道」の名目で支援し、コソボの独立を武力で阻止しようとしたセルビアを空爆するところまでやったため、コソボ人(アルバニア人)は独立心を煽られ、引っ込みがつかなくなっている。

 90年代末に定められた和平策では、コソボはセルビアの領内に残りつつ、セルビア側と話し合って独立の可否を決めることになったが、話し合いは「絶対独立」のコソボと「絶対ダメ」のセルビアは平行線を続け、12月10日に交渉期限がきてしまう。

 欧米と国連の「国際社会」は、期間を延長して交渉を続けることを提案している。だが、アメリカが表向きはコソボ独立に反対しつつも「実際に独立を宣言したら承認する」という「どうぞ独立を宣言してください」といわんばかりの姿勢なので、コソボは交渉延長を拒否し、12月10日の期限到来直後に独立を宣言しそうな様相となっている。(関連記事)

 アメリカがコソボを支援しているのに対し、ロシアはセルビアを支援している。コソボの独立宣言は、米ソ対立の再現になる。間にはさまる欧州諸国は、何とか外交交渉で対立を解消しようとしてきたが、もう時間切れである。コソボの住民は、9割のアルバニア系と1割のセルビア系で構成されている。コソボが独立したら、アルバニア系によるセルビア系への弾圧が強まり、セルビア系を応援するためにセルビアがコソボに軍事介入する可能性が強まる。セルビア軍がコソボに入ったら、アルバニアもコソボのアルバニア系勢力を支援するためにコソボに軍を入れ、セルビアとアルバニアの戦争に発展するかもしれない。すでにアルバニア軍はコソボ国境近くに兵力を移動している。(関連記事)

 旧ユーゴスラビア諸国では、コソボ以外にも、ボスニアで、セルビア系住民とボスニャック人などの対立があり、欧米の仲介で1990年代以来、何とか内戦が回避されてきた。コソボが独立宣言すると、連鎖的にボスニアの和平も崩れ、セルビア系が独立宣言し、セルビア政府がそれを支援してボスニアも内戦になるかもしれない。来年にかけて、90年代のバルカン戦争が再発するおそれがある。(関連記事)

▼アナポリス会議後のパレスチナも

 年末にかけて危機に陥る懸念がある2つ目の地域は、パレスチナである。11月27日から30日まで、アメリカ東海岸の町アナポリスにアメリカ、イスラエル、パレスチナ、アラブ諸国などの代表が集まって中東和平会議を開いているが、これはほとんど何の成果も生めないだろうと、多くの関係者が考えている。中東和平の目標は、イスラエルとアラブが和解する前提としてパレスチナ国家を作ることで、アナポリス会議が成功するには、パレスチナ国家の「国境」もしくは「首都」についての問題を解決する必要がある。

 しかし、それらはいずれも解決できそうもない。「国境」の問題は、イスラエルの右派がパレスチナ国家の領域となるべきヨルダン川西岸地域に無数に作っている入植地を撤去して、イスラエルとパレスチナの間の国境を確定することだが、イスラエル政府や軍内には右派勢力が多く入り込んでおり、今のイスラエルには、入植地の撤去は不可能である。「首都」の方は、エルサレムを2つに分割し、東エルサレムをパレスチナ人に委譲し、パレスチナ国家の首都にしてやることだが、これもイスラエル内部での調整が頓挫している。



 イスラエルの北のレバノンでも政情は不安定化しており、選挙が何度も延期され、シリア寄りの大統領は任期が切れて辞任した。レバノンでは、親欧米派のみが政府に残り、反米反イスラエルのヒズボラなど、他の諸勢力は在野で反政府活動を強めており、再び内戦の危険が高まっている。11月末のアナポリス和平会議の失敗で、パレスチナ情勢が悪化したら、その悪化はほぼ確実にレバノンにも飛び火し、イスラエルは、ハマスとヒズボラの両方と戦争せねばならなくなる。私が以前から何度も書いている「中東大戦争」の展開である。12月中に、事態が悪化する懸念がある。(関連記事)

▼アメリカに頼れず、ロシアを頼るイスラエル

 何とかしてイスラム側との和平を実現しないと国家滅亡につながりかねないイスラエルの政府は、ブッシュ政権のアメリカに仲裁を頼むと、かえって事態を悪化させられるため、アナポリス和平会議の失敗後は、ロシアに和平仲裁を頼むことにしている。プーチンのロシアが考えているとおぼしき和平策は、イスラエルがイランとその傘下のヒズボラやハマスの存在を認める代わりに、イラン・ヒズボラ・ハマスはイスラエルへの攻撃をやめる、というシナリオである。

 10月下旬、プーチン大統領がロシア(旧ソ連含む)のトップとしては60年ぶりにイランを訪問し「イランは中東の大国だ」「イランが核兵器を開発している証拠は何もない」とぶち上げ、イランとロシアの親密ぶりを宣伝したが、プーチンがモスクワに戻った翌日、イスラエルのオルメルトが訪露してプーチンに会った。この訪問の目的は表向き「オルメルトがプーチンにイラン制裁を要請した」と報じられているが、真相はそんなことではなく、イスラエルはプーチンに、イランとの対立緩和の可能性を探ってほしいと頼み、プーチンはイラン訪問時に最高指導者のハメネイ師にそのことを話し、帰国後、オルメルトと会ったのだろうというのが私の読みである。(関連記事その1、その2)

 オルメルトの訪露の直後、イスラエル外相のリブニは北京を訪問している。イスラエルは、アメリカに和平を頼んでも無駄だとわかり、代わりに中露の「非米同盟」に仲裁を頼んだのだろう。すでにイスラエルなどのメディアでは「本当の和平交渉はアナポリス会議の直後から始まる」といった言い方がなされている。(関連記事)

 とはいえ、たとえロシアが仲裁しても、和平が成功する望みは低いと私には思える。イランやヒズボラ、ハマスの最近の中東での人気は、彼らが反米反イスラエルを貫いているからこその人気であり、イスラエルと和解したら人気は落ち、弱くなる。和平を何としても破壊しようとするイスラエルの右派も、誰が仲裁しようと和平には反対である。

▼キルクーク帰属で再燃するクルド問題

 年末にかけて再燃しそうな危機の3つめは「クルド」である。イラク北部の大油田地帯にある100万人都市キルクークでは、年末までに住民投票が行われ、クルド人自治地域に編入されるか、それとも従来どおりクルド人地域とは別の存在として残るかを決定することになっている。キルクークは歴史的に、クルド人と非クルドのアラブ人とが混住する町で、フセイン政権時代に「クルド人追放策」が行われた後、米軍占領後は反対に「アラブ人追放策」がクルド人の手で行われている。いずれの政策も、石油利権確保のためである。

 キルクークがクルドに編入されると、クルド人は巨額の石油利権を手にして、トルコやシリア、イランでのクルド人独立運動に資金援助するだろう。トルコはこれを嫌って、キルクークでの住民投票が行われる場合には、テロ組織PKK掃討を口実に北イラクに侵攻し、キルクークを占領する構えを見せている。キルクークの住民投票は、アメリカの監視下で作られたイラクの新憲法に、今年末までに実施すると明記されている。イラク政府のシーア派や、イランは、戦争を避けるため住民投票は延期した方が良いと言っているが、北イラクのクルド人側は「延期は2カ月が限度だ」と言っている。年末から来年はじめにかけて、事態が再び緊張する可能性が高い。(関連記事)






お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2007/12/27 01:32:20 AM
コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: