温泉三昧

倉本 聰・豊かさの根っこ

         あなたは文明に 麻痺していませんか
         車と足は どっちが大事ですか
         石油と水は どっちが大事ですか
         知識と知恵は どっちが大事ですか
         理屈と行動は どっちが大事ですか
         批評と創造は どっちが大事ですか
         あなたは感動を忘れていませんか
         あなたは結局何のかのと云いながら
         わが世の春を謳歌していませんか


   「起草文」   倉本 聰

 今年20周年を迎えることになった富良野塾の起草文である。
 20年前、厳冬の山小屋で、薪をくべながらこの文を書いた。外では吹雪が唸りをあげていた。
 シナリオライターと役者の塾を作る。金は一切取ることことをしない。彼らの生活費は農業で稼がせる。住む家は自らの力で建てる。僕にあったのはそれだけの計画。想像しようとしてもそれ以上の具体の姿は浮かばず、只漠とした強い夢だけが、吹雪に閉ざされた小さな山小屋の暖炉の中でめらめらと燃えていた。
 正直云って僕はその時、若者たちを信じていなかった。応募者はどっと押し寄せて来たが、その中の何人が果たして本気で僕の意図を理解し、行動してくれるのか。そういう力を若者たちが持ち得るのか。全ては全く闇の中だった。一期生15人を採用し、荒れ果てた谷での開拓が始まった。僕は彼らに最初に云った。急ぐことはない。ゆっくりとやろう。建物を建てるのも、勉強するのも。これは農業じゃない。いわば林業だ。春蒔いたものが秋作物になると思うな。実るのは20年、30年先だ。遅れることを決して恐れるな。遅れることは絶対に恥じゃない。
 たちまち2名が脱落した。しかし後のものはがんばった。それこそ全身泥まみれで、信じられないぐらいがんばった。
 1年経ったとき若者たちの顔つきは変わり、2棟の建物が完成していた。そこへ二期生が入って来た。彼らは先輩たちの泥まみれの姿に、生きる姿勢に衝撃を受けた。そしてたちまち同化した。
 僕は若者を信じなかったことを恥じた。
 彼らは僕をはるかに超えていた。


三井住友ファイナンシャルグループの新聞広告より


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