[中途半端者の、成れの果て]




久しぶりに、僕は、鏡を見たくなったんだ。
何か変わっているはず。 そう、思い込んでいた。
時間が解決してくれているはず。 そう、考えていた。

鏡の中には、2年前と、何ら変わっていない、黒い、黒い、翼。
いや・・・変わっているのか。 ところどころ剥げ落ちたペンキ。
失われた艶。 僕の、造り上げた、黒い翼。

僕は、翼を自ら引き千切った、飛べない畸形・・・。
だから、偽翼で武装した。 誰にも見下げられたくなかった。

今の姿は、まるで、死にかけのカラスのようで、醜悪で。


「僕は、結局、何も変われなかったんだ。 2年間の間、何も、変われなかった。」

『アナタをそうさせているのは、何?』

「僕は、変わりたかったんだ! 本当に、本当に、変わりたかったんだ・・・」

『情けないよね。 今でも、まだ、アレに囚われているなんて。』

「黙れよ! お前になんか、分からないよぉっっ!!」

『当然。 理解してなんてあげない。 アナタは、ただ逃げてるだけ』

「・・・」

『ただ、逃げ続けていただけなの。 2年間、解決すら求めなかった。』

「・・・ちが、う」

『アナタの姿、それが、中途半端者の成れの果てよ。』


鏡を叩き割った。 握った手の先端から垂れる鮮血。 キラキラと光り輝く破片。

誰にとも無く、呟いてみる。

「・・・翼が欲しい。 どんな翼でも構わない。 魂だって売り渡す。 これ以上、
 人間でいるコトなんて、望まない。 一枚の羽根でもいい。 自分だけの翼が欲しい・・・。」

・・・嘘だ。 本当は、まだ、空を飛ぶ事を望んでいないだけ。
ゆっくりと、体を丸め、うずくまる。

僕が裁かれるとしたら、きっと永遠に空に漂わされるのだろう。
飛べない事より、飛ばない罪は、重いのだろうから。

きっと、僕の本当の羽根は、雪のように白かったのだろう。
もう、今は、思い出せないのだけれど。


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