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2005年10月04日
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スタジオ入りするとディレクターが待ってましたとばかりに、まずはヨンタナのギターソロから入りました。4~5テイクで完了。
続いてコーラス、ようやくC子の出番です。
今回は一応歌の唄える女性三人が揃いました。

でもやっぱり素人です。
キーも違えばハーモニーを揃えるだけでもすぐにはできません。
ディレクターのオジサンが出てきて、スタジオの中の生ピアノを使ってハーモニーを作ります。素人とはいえさすがに素養のある人たちですから、声量のばらつきはあるもののハーモニーはバッチリでした。
コーラスも3回ほど重ねて厚みを付けていきますが、最終パートではキーの調整が整わずピッチを落として録音しました。
へーっ、こんな技もあったのかあって感じでした。


さて、歌入れの前にもうひとつ大事なお仕事が残っています。
そうです。委員長ロニーの雄叫びMCです。
しかも今回は手拍子と嬌声も入れることになりました。
当時はクラッピングマシーンやサンプリングマシーンみたいなもんはありませでしたから(あったとしてもこんなトコで使わしてくれないよね)、手拍子を合わせるのも結構大変です。

カモンガール、チャッチャッ!、カモンボーイ、チャッチャッ!
手拍子だけ録るってのも結構間抜けな作業でした。
そしてエンディングパートで叫びます。
「All Right! Come on!」(何がオーライなのでしょうか?)
委員長のMCに扇動されて嬌声や笑い声、はしゃいだ様子のYeah!とかUhoo!とか悪ノリはお手の物って感じで、ディスコっぽい雰囲気が出ました。

さて、これでひととおりインストは終了です。

さあ、お待たせしました。

何故オカマ・シンガーと呼ばれたかと言いますと、レコードを聴いた誰もが、アッちゃんの声が男のものか女のものか解らなかったからですね。
例によって赤のボタンダウンシャツに黒のスリムジーンズのアッちゃん、丸々2日の出番待ちにもめげず個性的なだみ声をご披露してくれました。
(しかし今にして思えば彼の声って「トクナガ・ヒデアキ」そのものですよね。ってことはボクら時代を先取りしていたのでしょうか)

「リズムに時は過ぎる、真夜中のパーティー~」

おなじみ新宿ディスコナイトのヴォーカルが六本木のスタジオに響き渡ります。

なんとかハサミをジョキジョキ入れてつなぎます。
って言っても、本当にテープをハサミでちょん切っじゃったりするわけではありません。
数テイクを録っておいて、良い所だけをうまくつないでいく方法ですね。
この方法はDJがやっているツナギ(当時は未だやってません)に似たようなやり方で、各トラックのフェーダーを操って良い部分のパートだけを新たなトラックに録音していきます。(そういえば昔はピンポン録音なんていう技術もありましたネ)

ということで、ようやく全て終了したのが夜の11時過ぎ終電間際でした。
最後の仕上げ、ミックスダウンは更に翌日ということになりましたが、これは自由参加ということで最後まで見届けたいヤツは来い、みたいなことで、これでひとまずレコーディング作業から開放されたメンバーでした。
皆相当に疲れた様子で、帰りは言葉も少なげに帰宅していきました。
委員長も意気揚々と引き上げましたが、どうもこのあたりからムラちゃんの態度がおかしくなっていったのです。
どことなくイライラした様子で不機嫌で、委員長とムラちゃんの二人きりになると、渡部氏のやり方にどうも不満気なようでした。

元々の原盤の権利は俺達にあるはずなのに、その話が一切ないとか、B面はそのまま自主制作盤の音源を使うのは納得がいかない等々、かなりの不満が鬱積しているというような感じでした。
結局オイシイ所はジュリーに持っていかれたみたいだし、これじゃ俺達はうまく利用されただけじゃないかとも言い出しました。
委員長は正直言って、このメージャーレーベルでのリリースはオマケみたいに考えていましたから、率直に渡部氏の好意とも受け取っていました。
もちろんジュリーもピカイチ(渡部氏のことです)のおかげだってことを連発してましたから、ムラちゃんにとっては多少は鬱陶しく思うのも仕方ないかなと思いました。

「でも結局渡部氏(日本フォノグラム)もこれで金儲けするわけなんだからさ、奇麗事ばかりじゃないと思うんだよね」

そう言われてみれば確かにそうかもしれませんが、委員長自身の中では自主制作盤が完成した時点でケジメがついていましたし、本物のレコードになったんだから良いじゃないってな軽い気持ちしか持っていませんでした。
どうもこのあたりからムラちゃんが精神的におかしくなり始めていったようでした。
加えて、昔馴染みのヨンタナも、なんで俺がこんな仕事をタダで手伝わなきゃなんないだ、みたいなことを大っぴらに言い出すようになり、ジュリーにしても、みんなもっとピカイチ(渡部氏)に感謝すべきだろみたいなことを言い出す始末です。

道楽者が遊びで作った1枚のレコードが、ジワジワと利害関係を紡ぎ出していきました。
元はと言えば、ジュリーの鼻を明かしてやりたいという極単純、しかも私怨に近い感情から始まったこの遊びでしたが、実際に形となって現れてみると当人たちも気づかぬうちに意外な展開となっていってしまったのでした。
なんのかんの言っても周りは皆生活苦に喘ぐゴミ連中だし、将来に不安を抱く気持ちは誰も同じで、きっかけさえあればなんとか食いつこうと考えるのは当然の成り行きです。
委員長にしてもさほど欲は無いといいつつも、これがきっかけで這い上がれればといった下心が無かったわけではありません。
ムラちゃんと委員長が開けた突破口に、皆が何とかぶら下がろうと思ったのも仕方の無い話です。
まるで芥川龍之介の「蜘蛛の糸」のようでした。
まあ小説のように生死に関わるほど切羽詰った状態ではありませんでしたが、妬みや抜け駆けなど精神的に疑心暗鬼と化したゴミ仲間ほど手のつけられないものはありません。
「遊び」から「欲」が生まれると必ずこういう展開になります。

まずジュリーから委員長に話がありました。

「ピカイチ(渡部氏)がロニーと組んで何かしたいって言ってるよ」

渡部氏は以前からジュリーを通じ、委員長のキャラを気に入ってくれていたようで、当時話題になり始めていた「ヴィレッジ・ピープル」のようなキャラクター・タレントをプロデュースしてみたいような話でした。本人も洋楽から邦楽への転進を考えていたのだと思います。
そんな話を聞かされた委員長は当然悪い気がするはずもなく、これはチャンスかもしれないと欲をかいたのも事実です。

さあ、このあたりから泥仕合の様相を見せ始めていきます。
まずはこの後のバンドをどうするかってことになれば、当然今回のレコーディングに関わったメンバーを使わない手はありません。
とは言うものの、身内のシゲル以外は一応それなりのポリシーやプライドのあるミュージシャンたちですから、タレント・バンドなどはもちろんやりたがりません。
でも、メージャーへの足掛かりという点では、このまま縁切りはもったいない、といったところです。
更にギタリスト・ヨンタナはムラちゃんと高校生の時分からバンドを組んできた仲間として、ムラちゃんに対する不信感を当初から抱いていました。
彼はジュリーとロニーが相乗りしてくるなら話に載るが、ムラとはやらないという姿勢を打ち出していました。
ジュリーにしてみれば長いこと一緒に仕事をしてきた仲間とはいえ、委員長に頭を越されるのは面白くありません。なんとか優位な立場で自分も関わっていきたいという思惑があります。
そして肝心のムラちゃんといえば未だシゲルとの確執もあり、委員長がシゲルを指名することにいささか不満を持っていました。
ムラちゃん自身もベーシストとしてミュージシャンをやっていきたい気持ちが残っていますから、できればこの機会になんとかミュージシャンとして喰い込みたいという思惑があったのでしょう。ここまでやってきて、果たして自分には何一つウマミがない、と感じたのも無理ないことです。
考えてみれば、「新宿ディスコナイト」という1枚のレコードに皆の欲望を主体とした思惑が乗り始めたということです。
そしていよいよ修羅場を迎えることになります。





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最終更新日  2005年10月04日 07時02分11秒
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