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2005年10月10日
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さて昨日登場した照明係の本○君ですが、彼は劇団「円」に所属するれっきとした舞台照明のプロでした。お父様がやはり同様の職人であったらしく、彼も18歳で大道具・照明の世界へ入った筋金入りの職人でした。
毎日が面白ければ良いなどとテキトー極まりない生き方をしていた委員長とは正反対で、舞台照明という仕事にプライドを持ち、自身の生き方をきちんと見極めた人生を歩んでいる若者でした。(同い年とは思えないくらいしっかりしてましたね)

でも、結局彼も言うなれば道楽者ですから好きなことだけでは生活していけません。
ということで、人生賭けた照明係の仕事を続けるためにディスコ、キャバレーなど照明に携わる仕事で生活を維持していたのでした。
相変わらずお調子者の委員長は、ちょっと興味のあることには何でも首を突っ込みたがる性格をしていましたから、この彼の所属する劇団「円」の舞台公演なんぞを新宿紀伊国屋ホールとかに見に行ったりしました。
座長は故仲谷昇さんで、演劇というものには結局馴染めませんでしたが、ひとつの舞台を皆で作るという作業は音楽も同様で、幾人もの職人さん、裏方さんの支えで成り立っていることをあらためて勉強させられた良い経験でした。
差し入れには必ず「裏方さん一同様」と筆入れしてもらうことが喜ばれることもこの時覚え、後の世渡り人生ではこの教訓が大変に役に立ったりしました。

この本○君と委員長は結構ウマが合って、時々おねーちゃんをナンパして一緒に飲みに行ったりしたんですが(って結局はそーゆーオチかぁ)、彼の偉いところはどんなに酔っ払って朝方まで呑んでても、翌日が舞台稽古だと始発にはしゃきっとして自宅に帰るんですね。決してそのまま仕事に行くようなことはありませんでした。中々気合の入ったヤツでした。ある時などは腰が抜けるほど酔っ払ってしまったにも関わらず、居酒屋に委員長とおねーちゃんたちを残したままふらふらと新宿駅に終電めがけて突き進んで行ったのです。いくら道楽者のスケベ野郎とはいっても、おねーちゃん二人を相手に頑張るほどの根性者でもありませんから、その夜は電車で帰ろうと二人をエスコートして新宿駅まで来ると、突然尿意を催した委員長は構内のトイレに駆け込みました。
終電間際は結構トイレも混雑してますから、イライラしつつ大用の方を除くとそのドアは半開き、そこにしゃがみこんでいる男のGパンはどうも見覚えがあります。


お~っと、なんとこのギャオスは本○君ではありませんか。
すかさず脇に寄って肩を貸すと、「す、すいません」としょげ顔の本○君、委員長とは気付きもせずかなり酔いが回っておリます。

「本○君、大丈夫かよ」と声をかける委員長にドキッとした様子の彼。

「あ、あれ、ロニー、なんでこんなとこに居るの」

「なんでじゃないよ、こんなんで帰れんのかよ」

「だ、大丈夫、明日は8時集合だから、家帰って道具持って用意しなきゃ」

「さっきの娘たちもまだそこにいるから、このままホテルでも行って寝た方が良いんじゃねーの?」

「だめだめ、明日は稽古だから、家から出ないといけないんだ」

何ゆえそこまで彼がこだわるのかはわかりませんが、そうまで言われては後に続く言葉もありません。

「ロニー、俺のことならほっといて良いから、先に行ってよ」

「行ってよ、ったって本当に大丈夫かよ」



そうまで言うなら仕方ありません。肩をはずすとまたその場にへたり込む本○君。(そう簡単にダチを見捨てるなよなぁ)

「じゃ、俺行くけど、ホントにだいじょぶだね?」

弱々しく上げた手でシッシッの仕草をされ、その場を立ち去る委員長。
用済ませてトイレから出るとおねーちゃん二人もだいぶ酔っ払っていて、二人で肩を組んで立ってます。

「遅かったねぇ~、早くしないと乗り遅れるよ~っ」



すっかり何事も無かったかのようにさっさと総武線のホームに向かう薄情者でした。
さてかろうじて終電に乗り込んだ委員長とおねーちゃん二人ですが、どうもおねーちゃん二人の様子が変です。小柄な二人組の片割れ赤毛の丸顔がニヤニヤして委員長に耳打ちします。

「XX子、だいぶ酔ったみたいでさ、気持ち悪いんだって」

えっ、こいつもかよ。やだなぁ~、まさかこんなところでギャオスに変身なんてこたぁねーだろうなぁ。

「だ、大丈夫か?」

と彼女の顔色を伺いましたが、別に悪酔いしたようには見えません。

電車は大久保駅に到着。

赤毛の丸顔が委員長とXX子の肩を押し出して無理やり降車させました。
なるほど、そういうことかい。
プシューっとドアが閉まって、車内の赤毛の丸顔が二人に手を振ってます。
ということでいつものコースへと向かう委員長でした。

さて翌日は何故かべったりと張り付かれてしまったXX子と夕方まで一緒にいて、そのまま出勤と相成りました。
本○君も無事出勤しております。

「本○君、昨日はちゃんと家に帰れたの?」

「ああ、何とかたどり着いたよ」

「そりゃ良かった。ほったらかしにして帰っちゃったから心配だったんだよね」

「大丈夫。親父のゲン担ぎでね、舞台のある日は必ず家から仕事に出ないと公演が無事終わらないって言うんだよ」

「へぇ~、そんなもんなんだ」

「ああ、長いのになると1ヶ月以上続くから、どうしても気が弛むだろ。だから必ず家に帰るって縛りがないと緊張が保てないんだよね」

「へぇ~、プロの職人って感じだなぁ」(お前も爪の垢でも煎じて飲め!)

とまあ、彼とは馬鹿な付き合いもしてはおりましたが、そんな職人肌というか玄人気質が好きで一目置いておりました。

さて、その晩はC子が仕事の帰りに委員長をお迎えに来ました。
昨夜は本○君を介抱して終電に乗り遅れたから実家に帰るという、真っ赤なウソの電話を入れてしっかり脂ぎってしまった委員長、まさかC子がお迎えに来るなどと言う荒技にでるとは思ってもいませんでした。
こういう後ろめたい気持ちのときはどうしても一人では不安です。
早速、生き証人本○君を巻き込んで、帰りに一緒にご飯などを食べて帰りましょう、などとお誘いしたのでした。

委員長はC子と本○君を連れて歌舞伎町裏の炉辺焼き屋へ入りました。

「あんた昨日から着替えてないの?」(清水弁では気軽にあんたと言います)

委員長はほぼ毎日衣装を着替える習慣がありましたので一瞬背中に冷や汗が流れます。(やばっ!)

「おふくろはさぁ、洗濯とかしてくれないから、着替えらんなかったんだよ」

(疑惑の眼差しのC子)

「髭も剃ってないじゃん」

(ぎくっ!)

「いや、あの、昨日はさ、ロニー、俺が酔っ払い過ぎて付き合わせちゃったから、寝坊させちゃったみたいだね」

(本○君の助け舟、ナイスフォローです)

「そう、昨日は大変だったよな。こいつ駅のトイレでゲーゲーいっちゃってさあ」

「あんたも飲んだのかね?」(マジになると清水弁がモロ出ます)

「いや、俺は飲めないから介抱できたんじゃん」

とまあそれとなくC子の追求も交わしながら、牡蠣の土手鍋などを突付きつつ杯も進みます。ちなみにC子は酒が強いので、本○君とふたり結構早いピッチで日本酒が入ります。特にこの夜はC子の頭は疑惑で溢れていますから、いつものペースよりかなり早く出来上がって行きました。
昨夜と同様終電間際まで飲んで、店を出た後は早足で新宿駅へ向かいます。
息せき切って駅になだれ込むと同時に本○君が言いました。

「俺ちょっとトイレ行くから先に行っていいよ」

「大丈夫か、また昨日みたいにゲロンパしないだろうな」

「大丈夫、大丈夫、今日はオシッコだけだよ」

「じゃ今日も俺たち先に帰るぜ」

語るに落ちるとはまさにこういうことです。
この後しばらく亀屋マンションを出入り差し止めとなった委員長でした。





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最終更新日  2005年10月22日 22時47分53秒
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