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すっかり冷え込む季節になりましたね。日記を書くのも相当久しぶりで、約半年ぶりと言ったところでしょうか。次に書くのもいつになるか全くわかりませんがwさて、このブログのメインとなっているブーン系小説のことについて少しお知らせをしたいと思います。小説をまとめるときはいつも、一話ごとに「フリーページ」というものを一つずつ使ってまとめているわけですがその「フリーページ」には一つのブログあたり300ページまで、という規定があります。そして現在このブログが使っているのは298ページ。つまり、実質的にはあと2話分しかまとめるスペースがありません。今の現行小説は異能者と夢の中の出会うの二つがあり、少なくともあと20ページぐらいは必要になりそうです。そこで困っているわけですが・・・ちなみに1つのページあたり40000文字までという規定もあるので、一つのページで大量にまとめることもできません。今のところ、途中終了になってしまった小説を消してスペースを空けようかなあと考えていますが、他に何か良い考えがあれば、と思っています。こんな日記なんぞを見てくれる方はいないとは思いますが、もしアイデアを出してくれる優しい方がいらっしゃったら米欄の方に書いてもらえば有難いです。
Dec 5, 2007
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( ^ω^)ブーン達は異能者だったようです 携帯用http://p16.fileseek.net/cgi-bin/p.cgi?uR=http%3A%2F%2Fplaza.rakuten.co.jp%2Fuzakopr%2F43000&sZ=5PC用http://plaza.rakuten.co.jp/uzakopr/43000('A`)ドクオと川 ゚ -゚)クーは夢の中で出会うようです携帯用http://p24.fileseek.net/cgi-bin/p.cgi?uR=http%3A%2F%2Fplaza.rakuten.co.jp%2Fuzakopr%2F46000&sZ=5PC用http://plaza.rakuten.co.jp/uzakopr/46000 携帯からのアクセスだと日記しか見れないことがあるのでファイルシークを通したものを載せておきます。
Apr 18, 2007
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19 : AA職人(茨城県):2007/03/15(木) 19:43:40.49 ID:bjpGI8cC0キンコンカンコン 六時間目の終わりを告げるチャイムが鳴る。 ( ^ω^)「ドクオ早くするお!電車の時間に間に合わなくなるお!」 ('A`)「そんなにあせることないだろ。このままのペースで十分間に合うさ」 ドクオは一時間目に見た不可思議な夢の話を誰にも話さなかった。 話したところで理解してもらえないだろうし、そもそも自分も完全に理解できていたわけではなかったからだ。 「今夜の夢の中で話そう」と言う言葉は頭の片隅に追いやられていたものの しっかりとドクオの記憶の中に焼き付けられていた。 ( ^ω^)「じゃあまた明日だお!」 ('A`)「おう、じゃあな」 ブーンはドクオが降りる二つ前の駅で降りていった。 ('A`)(あれは何だったんだろう) ミカンの当たる衝撃やコタツの暖かさ、全ての感覚が鮮明だったもののどう考えてもあれは夢。 ('A`)(まぁ……今夜になれば分かるか) 一旦取り出した謎をもう一度同じ場所にしまいなおす。 電車から見える景色はいつものようにそのスピードを緩めることなく流れていった。 20 : AA職人(茨城県):2007/03/15(木) 19:45:51.05 ID:bjpGI8cC0('A`)「ただいま」 帰宅の挨拶を済ませ二階に上がり、夕食の時間まで勉強をする。 授業を全く聞かないドクオは自主学習で遅れを取り戻す。 元々効率はいい方だったので、この二時間程の学習だけで定期テストは困らずに済んだ。 ('A`)「ごちそうさん」 夕食を食べ終え風呂に入り、テレビを見た後歯を磨く。 ('A`)「おやすみ」 面倒なことは嫌いと言っても挨拶はきちんとする。親との会話も人並みにするし手伝いもする。 今の高校生から見ると十分すぎるほどの親孝行者だった。 ('A`)(さて、どうなることやら) ベッドに入り電気を消す。 目を瞑ると、すぐに意識は眠りの中へと落ちていった。 21 : AA職人(茨城県):2007/03/15(木) 19:48:26.30 ID:bjpGI8cC0背中にひんやりとした感触。畳の上に寝そべっていることがすぐに分かった。 ('A`)「……本当にまたここに来るとは」 川 ゚ -゚)「待っていたぞ。ドクゥオ」 無機質な顔が、そこにはあった。 ('A`)「だからドクゥオじゃなくてドクオだって」 川 ゚ -゚)「それではいきなりだが話の続きをしようか」 ('A`)「なんというスルー……」 川 ゚ -゚)「どこまで話したか覚えているか?」 ('A`)「ええと、確か『おでかけ』がどうたら言ってたな」 川 ゚ -゚)「正解だ。褒美としてミカンをくれてやる」 (#)'A`)「いたああああああああああああい!!!」 22 : AA職人(茨城県):2007/03/15(木) 19:50:32.37 ID:bjpGI8cC0川 ゚ -゚)「で、『おでかけ』についてだが」 (#)'A`)「食べ物を粗末にするなよ……」 川 ゚ -゚)「文字通りここから『おでかけ』することを指す。 つまり君の夢のスペースから他人の夢のスペースへ移動すると言うことだ」 ('A`)「はぁ」 川 ゚ -゚)「人は眠っている間しか夢を見れないが夢のスペースは君たちが起きている間も存在している。 そこに私が飛び込むことでその人を内部から操作してやろうと言うのが私の目論見だ」 ('A`)「へぇ」 川 ゚ -゚)「そこで君にはここで『おるすばん』をしていてもらいたいのだ。 私が他人の夢のスペースへ移動する時にその人と入れ替わる。 その人をここで『おもてなし』しておいてもらいたい」 ('A`)「なんかすごく面倒って言うかそんなことしていいのか?」 川 ゚ -゚)「元に戻るときに記憶を消去するから問題ない。元に戻る寸前に電話で連絡するからそしたらこの……」 コタツの上に錠剤が入ったビンが置かれた。ラベルに書いてある文字を読む前にクーが言う。 川 ゚ -゚)「このナンデモデルデールを飲ませてくれ」 ('A`)「ナンデモデルデールワロタwwwwwwwwww」 23 : AA職人(茨城県):2007/03/15(木) 19:52:27.59 ID:bjpGI8cC0川 ゚ -゚)「……まぁ名前からして分かるだろうがこれは強力な下剤だ。 これを飲めばここから脱出できる、とでも言えばみんな喜んで飲むだろう」 (#)'A`(#)「ぼくアンパンマン」 川 ゚ -゚)「記憶が便となって放出されるようになっている。 それが確認できたら私がここに戻ってくるという寸法だ」 ('A`)「なんつーか本当になんでもアリだな」 川 ゚ -゚)「他にもいろいろあるが後は実際にやってみてから追々説明する」 クーはそう言うと一息つきお茶をすすりはじめた。 ('A`)「あれ?お茶なんてあったか?」 川 ゚ -゚)「君がいない間に物を増やしておいた。お茶以外にもいろいろあるぞ。 布団、冷蔵庫、電話からメリケンサックまで生活必需品はあらかた揃えた」 (;'A`)「メリケンサックは必需品じゃないだろ」 川 ゚ -゚)「とにかく明日からよろしく頼むぞ。今日の話はここまでだ」 ('A`)「よろしくも何も俺はまだやるなんて一言も言ってないんだが」 25 : AA職人(茨城県):2007/03/15(木) 19:54:50.89 ID:bjpGI8cC0川 ゚ -゚)「でも君は退屈が死ぬほど嫌いなんだろ?十分すぎるほどの暇つぶしになると思うのだが」 ('A`)「そりゃそうだけど……あれ?俺そんなこと言ったっけ?」 確かそんなことは話していないはずだ。そう記憶を辿りながら尋ねる。 川 ゚ -゚)「こんな生活臭のする空間だから実感が湧かないかもしれないが 一応ここも君の頭の中だ。君が呆けた面で考えてることなどあらかた把握している」 (;'A`)「ちょ、ちょっとまて!ってことは俺の行動全てがあんたに筒抜けってことか!?」 川 ゚ -゚)「全てとまではいかない。私が一人でここにいる間そこのテレビに君の視界が映る程度だ」 (;'A`)「えぇ……それでもやっぱり見られてることに変わりないじゃないか」 川 ゚ -゚)「わかった。そこまで言うならなるべくテレビはつけない。思考を読むことも極力避けることを約束しよう」 ('A`)「いまいち信用出来ないんだよなぁ……」 川 ゚ -゚)「男は度胸!!」 グダグダと気持ちのいい返事を返さないドクオに痺れを切らしたのか コタツを激しく叩き、クーは叫んだ。 川 ゚ -゚)「……何でも試してみるのさ」 26 : AA職人(茨城県):2007/03/15(木) 19:57:00.81 ID:bjpGI8cC0川 ゚ -゚)「と、父がいつも言っていた」 (;'A`)「それって……」 川 ゚ -゚)「やりますか?やりませんか?」 (;'A`)「それもまた……」 クーはもう何も言わなかった。 ただドクオの目を一心にみつめたままその口が開くのを待っていた。 (;'A`)「…………っ……」 川 ゚ -゚) (;'A`) 川 ゚ -゚) ('A`)「……わかったよ」 27 : AA職人(茨城県):2007/03/15(木) 19:59:31.92 ID:bjpGI8cC0('A`)「ただし、俺が耐えられなくなるようなことが起きでもしたらすぐに出て行ってもらうからな」 ヽ川 ゚ -゚)ノ「バンザーイ」 両手を上げ喜びを体全体で表したクーであったが、その顔は未だに無表情のままだった。 ('A`)「あんたは表情に変化がないから感情を読み取りづらいわ」 川 ゚ -゚)「生まれつきそういうのが苦手でな。だから体全体で表現するよう心がけている」 ('A`)「そうなのか。で、クーさんとやら」 川 ゚ -゚)「クーでいい。同い年だからな」 ('A`)「これまた新情報。で、クーに一つ質問があるんだ。 クーが他人の体に移ってる最中、俺がここで『おるすばん』とやらをするんだよな?」 川 ゚ -゚)「そうだ。『おもてなし』もな」 ('A`)「ということは、だ。現実の世界の俺はその時どうなっているんだ?」 川 ゚ -゚)「君はどうやってここに来た?」 来たと言う言葉に違和感を覚えた。 夢に来ると言う感覚をドクオは体験したことがない。 ('A`)「どうやってって……夢の中なんだからもちろん寝て……」 川 ゚ -゚)「そう。私が『おでかけ』している間、君の体は眠りについている」 28 : AA職人(茨城県):2007/03/15(木) 20:00:55.62 ID:bjpGI8cC0(;'A`)「それじゃ、俺はクーの都合で眠りにつかなきゃいけないってことか!?」 川 ゚ -゚)「正確に言えばつかされるかな。 『おでかけ』する前に君に合図することは基本的にない。自然と眠気に襲われそのまま眠りにつくだけだ」 (;'A`)「ちょ……一応時と場所ってものがあるんだけど……」 川 ゚ -゚)「分かっている。そこは大船に乗ったつもりで私に任せてくれ」 ('A`)「大船どころか割り箸で作ったイカダに乗った気分だよ」 川 ゚ -゚)「質問はそれだけか?」 ('A`)「ああ、後はなんか面倒だからいいや」 川 ゚ -゚)「そうか。それじゃどうする? 目覚めのヘッドバットをかませばすぐに朝を迎えることが出来るが?」 (;'A`)「正直ヘッドバットは嫌なんだけどなぁ……」 川 ゚ -゚)「ヘッドバットはそんなに嫌か? 他には目覚めのアイアンメイデンや目覚めの青酸カリ等があるが、そっちの方がいいか?」 ('A`)「ヘッドバットでお願いします」 川 ゚ -゚)「そうかそうか。では湯のみを片付けてくるから少し待っていてくれ」 29 : AA職人(茨城県):2007/03/15(木) 20:02:06.16 ID:bjpGI8cC0クーが台所に向かった後、ドクオは考えていた。 ('A`)「……ふー」 多少変わった性格と暴力癖を除けば自分にはもったいないくらいのルックスを持つ女子高生と、夢の中とは言え二人きり 現実では考えられないような条件を提示されても大抵の人なら首を縦に振ってしまうだろう。 だが、ドクオにとってそれはあまり関係なかった。 面倒なことを押し付けられるとは言え、あまりに現実離れした彼女の計画にドクオは少なからず興味を抱いていた。 表面では素っ気無い態度を見せていたが頭の中では彼女の話に夢中だったのである。 ('A`)「まぁ俺が操られる心配はないみたいだし、見てる分には面白そうだし。それに……」 そして彼の心を動かした大きな要素。 ('A`)「……あの目で見られちゃあな……」 何も見ていないかのようで全てを見透かしているかのような漆黒の瞳。 本来黒とは相反するはずの光をドクオは見たような気がした。 31 : AA職人(茨城県):2007/03/15(木) 20:03:09.31 ID:bjpGI8cC0ガシャン!! 何かが割れるような音が台所から響いた。 ('A`)「なんだ?」 音のした方へ向かう。下を見る。 ('A`)「……またか」 今日見るのは三回目であろう。 うつ伏せになっているクーとその近くに湯のみの破片。 ('A`)「何があった?」 川 - )「……棚が……私の小指を……」 若干の涙声でクーは答えた。左足の小指を見てみると確かに赤くなっていた。 ('A`)「とりあえず、湯のみ片付けておくぞ」 湯飲みを片付けている最中、ドクオは小さな嗚咽のようなものが聞こえた気がした。 クーの方をふと見ると少し湿った袖。 割れた湯飲みからこぼれた水分が、母の教えをただただ守る少女を救った。
Apr 6, 2007
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10 : AA職人(茨城県):2007/03/15(木) 19:26:33.47 ID:bjpGI8cC0川 ゚ -゚)「……聞かないのか?」 永遠に続くかとさえ思われた沈黙は突然破られた。 ('A`)「何を?」 川 ゚ -゚)「いろいろあるだろ。氏名、年齢、住所、電話番号とか」 ('A`)「じゃあそれ全部教えてくれ」 川 ゚ -゚)「教えられるわけないだろ。個人情報だぞ」 さっき自分で言ったことなど記憶にないかのように少女は言った。 ('A`)「ああ、そっすか……」 その理不尽ささせ感じさせる発言にただただ圧倒されるドクオ。 また沈黙が続く。 11 : AA職人(茨城県):2007/03/15(木) 19:29:25.36 ID:bjpGI8cC0川 ゚ -゚)「私の名前はクーだ」 ('A`)「……教えてんじゃねえか」 川 ゚ -゚)「君の名前はドクゥオだろ?」 ('A`)「ドクオな」 川 ゚ -゚)「何故私が君の名前を知っていると思う?」 ('A`)「夢だからだろ」 川 ゚ -゚)「ブッブー、残念でした。正解知りたいか?」 ('A`)「別に」 川 ゚ -゚)「知りたいだろ?」 ('A`)「別に」 川 ゚ -゚)「知りたいと言え」 ('A`)「何で?」 川#゚ -゚)「いいから知りたいと言え!!このヘチマ野郎!!」 (;'A`)「ぎゃああああああああああ!!!」 12 : AA職人(茨城県):2007/03/15(木) 19:31:26.24 ID:bjpGI8cC0クーの激昂と共にコタツは宙高く舞い上がった。 (;'A`)「ミカンが……俺のミカンが……」 先ほどまでドクオが食べていたミカンたちはコタツの下敷きになり、見るも無残な姿に変わり果てていた。 川 ゚ -゚)「そこまで知りたいと言うなら教えてやろう」 ('A`)「知りたいなんて一言も言って――」 ドクオの発言はクーの投げたミカンによって遮られた。 鈍い音と共にドクオの顔が無理やりにその方向を変えられる。 (#)'A`)「夢なのに痛い……」 川 ゚ -゚)「当たり前だ。これはただの夢じゃない」 13 : AA職人(茨城県):2007/03/15(木) 19:33:22.69 ID:bjpGI8cC0('A`)「……どういうこと?」 川 ゚ -゚)「これは確かに夢だが今まで君が見てきた夢とは違う」 川 ゚ -゚)「正確に言うと君が今まで見てきた夢のスペースを私が占領させてもらったということだ」 ('A`)「……はぁ?」 今まで聞いたこともないような単語を口にされ、訳の分からない表情で返事を返す。 川 ゚ -゚)「人間は眠りにつくと夢をみる。 その夢とは夢のスペースに毎晩毎晩ランダムに設置される。 そのスペースに私が定住したと言えば少しは理解してもらえるかな」 ('A`)「……はぁ」 理屈は何となく理解できたが何故そのようなことをしなければならなかったのか?何が目的なのか? 重要な部分が、未だにドクオの中で理解できていなかった。 ('A`)「で、そのクーさんとやらは何でそんなことをしたのかな?」 川 ゚ -゚)「……私は他人になりたかった。君もそう思ったこと、一度はあるだろ?」 ('A`)「俺は別にないかな」 クーはいつの間にかうつ伏せになっていた。 15 : AA職人(茨城県):2007/03/15(木) 19:36:06.97 ID:bjpGI8cC0('A`)「あのー、クーさん?」 呼びかけても何も言わず、うつ伏せになり腕の上に顔を伏せた状態でピクリとも動かない。 その姿はコタツの中で見たそれとほぼ同じだった。 ('A`)「なんなんだよこの人……」 川 ゚ -゚)「涙を人に見せてはいけない」 ('A`)「は?」 川 ゚ -゚)「そう母に教えられた」 体を起こしながら答える。 どうやら表情に出た悲しさを悟られまいとしてうつ伏せになっていたらしい。 16 : AA職人(茨城県):2007/03/15(木) 19:39:23.35 ID:bjpGI8cC0('A`)「そうですか……で?さっきの話の続きは?」 川 ゚ -゚)「そうだそうだ忘れていたな。 とにかく、君のような無粋者には分からないのかもしれないが、 時に人は他人になってみたいと思うことがあるのだ。私はその気持ちが人一倍強かった」 ('A`)「無粋者って意味分かって言ってんのかな」 川 ゚ -゚)「その気持ちが届いたのか私は人の夢に住めるようになった。 もちろん住むだけでは他人になったとは言えん。 そこから『おでかけ』をしなければならないのだ」 ('A`)「『おでかけ』?」 川 ゚ -゚)「それについては今夜の夢の中で話そう。 そろそろ一時間目が終わる頃だ。私が夢から解き放ってやる」 ('A`)「解き放つって……え……?」 クーが近づいてくる。体だけでなく顔まで。 (*'A`)「ちょwwwwwこれってまさか目覚めの……」 ドクオの中にちょっとした期待が湧き上がる。 川 ゚ -゚)「そう。目覚めのヘッドバットだ」 近づいてきた無機質な顔はゆっくりとその距離を離していき、弾かれたパチンコ玉のようにドクオに衝突した。 少年の心に生まれた青臭い希望は脆くも崩れ去ったのだった。 18 : AA職人(茨城県):2007/03/15(木) 19:41:34.39 ID:bjpGI8cC0「ド……起き…………」 ('A`)「……ん……?」 ( ^ω^)「ドクオ起きるお!もう1時間目終わっちゃったお!」 先ほど衝突した顔とは対照的な、暑苦しい顔が目の前に現れた。 ( ^ω^)「1時間目から寝るなんてドクオは学校に何しに来てるんだお」 ('A`)「……まぁいいじゃねぇか」 ブーンとなんてことのない会話をこなしている内に二時間目の教師が教室に現れた。 いつもどおりの授業風景。ドクオはその時間を睡眠か考え事に当てている。 この後も三時間目と五時間目を睡眠に当てたがクーが夢に現れることはなかった。 そして、普通の夢を見ることもなかった。
Apr 6, 2007
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1 : AA職人(茨城県):2007/03/15(木) 19:08:27.42 ID:bjpGI8cC0第一話 「コタツとミカンとうつ伏せ少女」 全てが止まっていた。 ('A`)(……なんだこれ) 目の前には小太りな少年。その手には包丁。その刃の先には自分の体。 ('A`)(俺刺されてるのか……) 何故か痛みはなかった。刺されていると言う事実を目で知覚することは出来ても、痛覚で感じることは出来なかった。 ('A`)(後ろにも誰かいる…のか?) 背後には少し巻いた金髪が鮮やかに光を反射している美しい少女。 これもまた何故だか分からないが、姿を視認せずともそれは自然と脳内に飛び込んできた。 ('A`)(よく分からんが、人に刺されるなんて初めて体験したな) けたたましい不快音が耳を劈く。 ('A`)(うるせーな……今度は何だよ) 目の前の異常な状況は徐々に消え失せ、不快音だけが耳に張り付いて離れない。 ('A`)(ああ……もしかして……) 2 : AA職人(茨城県):2007/03/15(木) 19:10:28.70 ID:bjpGI8cC0('A`)「…………」 窓から射す日の光と今なお身を震わせ朝を告げる目覚まし時計がドクオの頭を刺激する。 それと共に先ほど感じた謎がゆっくりと解けていく。 ('A`)「夢……だったか」 視界より思考のほうが先に明晰さを取り戻した。 目覚まし時計を止めてベッドから降り、大あくびをしてから部屋を出た。 階段を降りてダイニングに行き、両親に朝の挨拶をしてから朝食にありついた。 いつもと変わらない朝の風景。眠い目をこすりながら一口一口ゆっくりと口に運ぶ。 ('A`)「ごちそうさん」 朝食を終えるとすぐに制服へと着替え始める。ゆっくりだがスムーズに朝の準備は整っていく。 面倒臭がりなドクオは朝の準備に時間をかけない。そんなことに時間を費やすくらいならもっと寝ていたい、という考えだ。 歯を磨き顔を洗い鼻毛チェックを終えた後、荷物を取りに二階へ上がる。 ('A`)「いってきます」 二階から降りたらそのままの足で玄関を開け、学校へと向かった。 3 : AA職人(茨城県):2007/03/15(木) 19:12:18.54 ID:bjpGI8cC0――VIP高校―― ('A`)「おはようさん」 ( ^ω^)「またHR開始五分前ぴったりだお! もしかして廊下で時計見ながら待ってたりしてるんじゃないかお!?」 教室に入るやいなや元気のいい声で話しかけてくるのは小太りな少年。 まだ朝だと言うのにその額には汗が滲んでいた。 ('A`)「そんな面倒なことしねーよ。ただ時間通りに行動してるだけだ」 ξ゚△゚)ξ「時間通りに行動する方がよっぽど面倒だと思うんだけど」 ドクオの発言にすかさず突っ込みを入れる金髪の少女。 まだ朝だと言うのにその言葉には何かトゲトゲしいものが感じられる。 ('A`)「ブーンもツンも朝の挨拶ぐらいしろよ」 小太りな少年と金髪の少女に注意する。そこで朝見た夢の記憶がじわじわと蘇ってきた。 ('A`)「あー、お前ら見て朝見た夢のこと思い出したわ」 ( ^ω^)「僕たちが夢に出てたのかお?」 ξ゚△゚)ξ「ふーん、一応その夢の内容聞いといてあげるわ」 相変わらずトゲのある言葉。 ('A`)「俺がブーンに刺されててツンが俺の後ろにいた」 5 : AA職人(茨城県):2007/03/15(木) 19:14:36.22 ID:bjpGI8cC0(;^ω^)「ちょwwwwwそれ何て昼ドラwwwww」 ξ;゚△゚)ξ「それじゃ私がドクオにかばわれてるみたいじゃない」 自分の予想とは反した答えが返ってきたせいか、二人は少し驚いた表情で返した。 ('A`)「多分そんな感じだろうな。まぁ痛みは感じなかったし結構面白かったぞ」 ( ^ω^)「どうせなら白馬に乗った王子様役とかで出演したかったお」 ξ゚△゚)ξ「あんたが王子様になれるわけないじゃない。せいぜい豚小屋がいいとこだわ」 ブーンの言葉にすかさず毒を吐くツン。 (;^ω^)「せめて豚小屋じゃなくて豚と言ってほしかったお」 ξ;゚△゚)ξ「ちょ、豚でいいの!?もう少し自分にプライド持ったらどうなのよ」 ( ^ω^)「別にいいお。ブーブー言ってるだけで餌をもらえるなんて十分幸せじゃないかお」 (;'A`)「なんかお前が可哀想に思えてきたよ」 6 : AA職人(茨城県):2007/03/15(木) 19:16:48.26 ID:bjpGI8cC0朝のHRの始まりを告げるチャイムが鳴った。 一分もしない内に教師がやってきて教室はやっと本来あるべき姿へと戻った。 从'ー'从 「朝のHRをはじめまーす。まずは出席からねー」 教師は教室全体を見回した後出席簿をつけ話を始めた。話と言っても特別な行事がない限りそう長くは話さない。 ('A`)(今日の夢は面白かったな) 教師の話など気にも留めず考え事にふける。 昔の思い出だとかトラウマだとかを夢で見るというのは、マンガや映画などではよくある話だ。 ドクオはいつもそれを不思議な気持ちで見ていた。 自分はそんな夢を見たことがないし、夢とは意味のないものだと思っているからだ。 意味なく現れる異形の怪物に怯え、逃げ惑い、最後の逃走手段として目を覚ます。 昔恨みを買った人物と、思い出の場所で出会い、トラウマの引き金となる言葉を放たれ恐怖で目が覚める。 前者はよくあることだが、後者は見たことがないしこれからも見ることはないだろう。 夢とは所詮、夢でしかない。 ('A`)(また面白い夢が見れると良いな……) ドクオは面倒と同じくらい退屈を嫌った。寝てる間でさえも。 从'ー'从 「――と言うことで朝のHRは終わり。それじゃみんなお勉強がんばってねー」 教師が教室から出て行く前にドクオは眠りについていた。 7 : AA職人(茨城県):2007/03/15(木) 19:19:01.29 ID:bjpGI8cC0目を開く。教室とは違う空間が目の前に広がる。 ('A`)「なんだここ」 体を起こすとここが六畳ほどの広さの部屋だということが分かった。 畳が敷かれ部屋の中央にはコタツがあり、部屋の端には20インチほどのテレビも置かれていた。 他にも中はよく見えないが台所らしき空間、トイレや風呂と言ったようなものも確認できた。 畳を触れば感触があるし電灯の明かりをまぶしく感じることも出来る。全てが夢の中では初めての体験だった。 ('A`)「いいねいいねー、これまた面白い夢だ。まさか夢の中でコタツに入れるとはなー………ん?」 スイッチをオンにしてコタツに入ろうとしたドクオの足の裏に何かが触れた。冷たい髪の毛のような感触。 恐る恐るコタツをあけて中を見る。 ('A`)「……何やってんの?」 うつぶせでうずくまっている少女らしき影が見えた。長い黒髪を床に垂らしたまま微動だにしない。 ('A`)「……まぁいいか夢だし。ご丁寧にミカンまで置いてあることだし食べようか―――」 何かが勢いよく衝突したような音と共に、コタツが振動した。 ('A`)「まさか」 もう一度コタツの中を見る。未だにうつ伏せのままの少女がそこにはいた。 だが、そのシルエットは先ほどよりひどく悲しげだ。 8 : AA職人(茨城県):2007/03/15(木) 19:21:02.67 ID:bjpGI8cC0('A`)「あんた頭ぶつけたろ?」 先程と同じく返事はなかったものの、今度はスルスルと足の方から器用にコタツの外へ出て行った。 無表情ながら、ドクオの目をじっと見つめている制服姿の少女がそこにいた。 艶々しく長い黒髪。それと同じ純粋な黒を帯びた瞳。 意味を知らずとも、思わず「大和撫子」と形容したくなるような美しい顔立ちを、その少女は持っていた。 川 ゚ -゚)「痛い」 ('A`)「どこが?」 川 ゚ -゚)「後頭部が」 特に痛がる素振りも見せず、少女は言う。 ('A`)「やっぱり頭ぶつけたんだな。あんなとこでうつ伏せになってるからだ」 川 ゚ -゚)「コタツをくぐりぬけたくなる衝動にかられてしまった。 もう出口だろうと思って頭を上げたらやられた」 ('A`)「それ、さっきの話か?」 川 ゚ -゚)「いや、十分ほど前のことだ。 悲しみを拭い前を向いて歩いていこうと決意した瞬間またやられたのがさっきのこと」 ('A`)「よくわかんないけど萌えた」 9 : AA職人(茨城県):2007/03/15(木) 19:23:06.72 ID:bjpGI8cC0突然現れた奇妙な少女に興味はそそられたものの ドクオは何も話さずに黙々とミカンを食べ始めた。 ('A`)「…………」 川 ゚ -゚)「…………」 不思議な静けさ。 感情のない視線だけが自分の体に突き刺さり、ドクオは思わず尋ねた。 ('A`)「あんたも食うか?」 川 ゚ -゚)「……食べる」 剥きかけのミカンをそのまま手渡す。 また新しいミカンへと手を伸ばす。 ('A`)「………」 川 ゚ -゚)「………」 会話のないまま、時だけがゆっくりと過ぎていった。
Apr 6, 2007
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11 名前: ◆A4U6gCcMs2 [] 投稿日:2007/03/04(日) 22:02:52.88 ID:XAMO4Drr0「ねえ、キミは私のことが好きなのかな?」今となっては最早遠い日、カウンターに座った彼女が唐突にそう呟いた。グラスを傾け、どこか寂しそうに。(´・ω・`)「どうしてそんなこと、今更聞くんだ?」僕はできるだけ小声で囁く。便宜上、カウンター内で喋ることは許されないのだ。でも、そのルールを僕は自ら壊していた。仕方がない。その時の僕はそう考えていた。「なんていったらいいんだろう。ほら、私が一方的に好きになって今の関係になってるじゃん」(´・ω・`)「……」彼女の言葉に黙するほかない。それは事実なのだ。今思えば、反論すべきだったのかも知れない。数秒後、彼女はハッとしたような顔になって、努めて明るい声を出した。「あ、ごめんごめん。なんか夜中にすんごい暗い雰囲気にしちゃったね。 忘れて忘れて」12 名前: ◆A4U6gCcMs2 [] 投稿日:2007/03/04(日) 22:03:28.49 ID:XAMO4Drr0その後、しばらく会話は途切れていた。そのうち、みるみるお客が減っていって、遂に彼女一人だけという状態になった。もっとも、その頃にはもう閉店間際になっていたけれど。(´・ω・`)「もう時間だよ」卓上にうつ伏せになっている彼女に告げる。のろのろと顔を上げた彼女は、不安そうに周囲を見回した。そして、自分がどこにいるのかやっと思い出したかのように手を打つ。どうやら、少し眠っていたらしい。「今日は泊まってく」(´・ω・`)「ダメだよ。親が心配するだろ?」すると、彼女は顔をしかめた。いつものやりとりだ。ここに来ると、大抵彼女は駄々をこねていた。僕も、そのうちに軽くあしらうようになっていた。「わかったよ……それじゃ、いつものとこまで送ってくれる?」13 名前: ◆A4U6gCcMs2 [] 投稿日:2007/03/04(日) 22:04:03.73 ID:XAMO4Drr0(´・ω・`)「……ごめん、今日はムリなんだ」「え?」僕の答えは、彼女にとって意外だったはずだ。目を見ることができなかった。それどころか、僕は彼女を視界の端に入れることすら拒んでいた。彼女の視線は痛いほど感じていた。まるで見透かされているかのように。おそらく目を丸くしていただろう。そして、何らかの疑いを持っただろう。案の定、彼女は言った。「今日のしょぼんくん、なんか変だね」(´・ω・`)「そんなこと、ないよ」僕は彼女を見ていない。彼女は僕を見ている。なんともいえない矛盾を感じた。「まったく。隠してもダメだよ? しょぼんくんのことぐらい、すぐにわかっちゃうし」14 名前: ◆A4U6gCcMs2 [] 投稿日:2007/03/04(日) 22:04:38.58 ID:XAMO4Drr0(´・ω・`)「そうなのか?」僕は心底驚いて彼女に尋ねた。そんな反応が意外だったのか、彼女もまた驚いているようだった。「その反応はないよー。 だって、私からキミを好きになったんだから。 好きになるって言うことは、それだけ相手を知っているってコトだよ?」彼女の、演説にも似た長い台詞を僕はぼうっと聞き入っていた。逡巡し、やがてそれが正論であると納得する。同時に、奇妙な新鮮味を感じていた。人を好きになるとはつまり、そういうことなのだろうか。相手を知ること。でも、僕は。相手、そして相手の環境を知らなかったから、彼女を裏切ることになりそうだ。ここにきて指先が小刻みに震え始めた。僕は、単純に恐れていたのだ。これから、彼女が死んでいくのを遠い場所から見守る自分を。「それじゃ、帰るね。また、明日来るよ」15 名前: ◆A4U6gCcMs2 [] 投稿日:2007/03/04(日) 22:05:25.28 ID:XAMO4Drr0僕は、店からの出入りを告げる鈴の音が鳴るその瞬間まで、彼女の姿を直視できなかった。グラスを磨く手を止めてガラス越しに彼女を見やる。(´・ω・`)「……ごめん」いつの間にか僕はそう呟いて……いつも通り、店の片付けを徐々に始めていた。心の中で決意していた。彼女のことは一切忘れ、これからを生きていこうと。それは、自分の精神を保護するための、愚劣な手段に過ぎなかった――「……さん、しょぼんさん!」至近距離からの呼び声に、僕はふと顔を上げた。( ・∀・)「……そろそろ、お店の準備をしなければならないのでは?」言われてやっと、まどろみの世界から帰還する。時計を見ると、開店時間一時間前をさしていた。16 名前: ◆A4U6gCcMs2 [] 投稿日:2007/03/04(日) 22:06:20.52 ID:XAMO4Drr0(´・ω・`)「あ、ありがとうございます……つい、眠ってしまったようで」僕は慌てて、食卓の椅子から立ち上がる。季節にそぐわぬ汗で背中や掌がぐっしょり濡れていて、異常に気持ち悪い。( ・∀・)「顔色が悪いですよ。 風邪でもひいたんじゃないですか?」訝しむモララーさんに恐怖を覚える。今見た夢など言えるはずがない。(´・ω・`)「大丈夫、大丈夫ですから……気にしなくて結構です」言ってから、しまった、と思った。自分でもわかるほど、自信に似合わぬ口調で物言いしてしまった。まるで相手を突き放すような、怒気を露わにした言葉。( ・∀・)「……そうですか、わかりました。 では、部屋に戻りますね」モララーさんはそう言い残して廊下の向こうに消えていった。しばらく立ち尽くす。すぐに引き下がったのはおそらく、僕の感情を察したからなのだろう。17 名前: ◆A4U6gCcMs2 [] 投稿日:2007/03/04(日) 22:07:01.62 ID:XAMO4Drr0彼女を忘れるなど不可能なのだ。いよいよ僕は悟っていた。これからもあの刑事は頻繁にやってくるだろう。それに、今のような悪夢を見ることも段階的に増えていくことが予想される。そうなった場合に、僕は耐えられるのか。答えは否、だろう。でも、今の生活を維持していく以外、僕には道がないのだ。なぜなら、自身でそう決めたから。……一ヶ月と少し前の過去に思いを馳せる。あの時、僕の友人は確かにこう言ったのだ。「僕からあの女を奪ったのは、確かにお前なんだ」と。知らなかったんだ、だから仕方ないだろう。それに、彼女の方から僕に……。ふと、我に返る。そこは誰もいない孤独なリビング。僕は、いったい誰に言い訳しているのだろう……18 名前: ◆A4U6gCcMs2 [] 投稿日:2007/03/04(日) 22:07:38.19 ID:XAMO4Drr0階下に向かって開店準備を始める。しかし、今日は細かなミスが多い。笑ってしまうほど、挙動不審だ。挙げ句の果てにはグラスを一つ、落として割ってしまうほどである。やがて、開店時間を迎える。僕は初めて、カウンター内に立つことに沈鬱の念を覚えていた。でも、休むなんて選択肢はないのである。早速やってきた客の応対をしながらも、僕はどこか虚ろだ。白昼夢のような光景が見えていた。目の前に座ったお客の顔に焦点が合わない。そのお客が何かを告げた。飲み物かな。今日は暑いし。振り返って棚にあるグラスを一つ手に取ろうとして……唐突に響いた鋭い音。瞬間、世界がくっきりと見え始めた。後ろからお客が、「大丈夫か?」と声をかけてくる。それに適当に相づちを打つと、僕はガラスの破片を無視して、注文を聞き返した。しっかり、しないと……。
Mar 28, 2007
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2 名前: ◆A4U6gCcMs2 [] 投稿日:2007/03/04(日) 21:56:30.02 ID:XAMO4Drr0第六話予想はできていたはずだ。しかし、私の衝撃は計り知れないものがある。もしかしたら、このことについて考えようとしていなかったのかもしれない。あの日以降、私は行方不明者として扱われたのだろう。二十年も消失していれば、おそらく私と彼女は離婚したものとして処理されている。彼女とて、私のことは早く忘れたかったに違いない。この場所を引き払い、新天地を求めるのはおよそ当たり前の行動だ。そして、住み手のいなくなった居住空間はある種当然の末路を辿った。道行く人は、不審な目で眺めているだろうか。駐車場となった土地の前で佇んでいる私を。3 名前: ◆A4U6gCcMs2 [] 投稿日:2007/03/04(日) 21:57:15.07 ID:XAMO4Drr0住宅地の一画は、二十年前の面影を全く残していない。父から譲り受けた、それなりに広い家は完全に取り壊され、今では自動で運営される駐車場に成り変わっている。あのあたりは風呂場だったろうか。その上には確か私の部屋があったはずだ。そこは父が生前使っていた場所で……。二階には一つ空き部屋があった。「この子が大きくなったらここに配置しよう」としぃが娘を抱きながら、目を輝かせていた光景が脳裏をよぎった。しぃの部屋は一階にあったはずだ。リビングから廊下に出て、右手にある畳の部屋が彼女の寝室だった。……どうやら自分は、思っていたよりも彼女たちのことを覚えているようだ。途方もない脱力が私を襲う。目の前に広がる狭苦しい景色がまるで幻想であるような感触さえ覚えた。4 名前: ◆A4U6gCcMs2 [] 投稿日:2007/03/04(日) 21:58:27.38 ID:XAMO4Drr0おそらく私は救いを求めていたのだろう。ここに来ることで、自分の内面的な変化が生じることに期待していたのだ。そうすることで解決の糸口が見出せる……そう、信じ込んでいる部分があった。だが、私は何も見ることができなかった。今になって後悔する。自宅の写真の一枚ぐらい、持ってくればよかった。……だが、自分に対する別の見方も浮かんでいた。もしや自分は懐古したかっただけではないか。あの頃、当たり前のように得ていた日常を取り戻したかったのではないか。私は単純な事に、今更気づいたようだ。結局、自分は受け入れてくれる場所を求めていたのだ。そのためにタイムマシンを作り、あまつさえ未来に飛んだ。そこにはもしや、楽園が広がっているのではないかと想望していた。そしてそれは、しょぼんさんとバーボンハウスによって少しばかり叶えられた。5 名前: ◆A4U6gCcMs2 [] 投稿日:2007/03/04(日) 21:59:01.43 ID:XAMO4Drr0彼は私に安らぎを与えてくれた。私は甘え、あまつさえ虚言を吐いてまですがろうとしている。そしてそのうち、娘が殺されていることを知った。葬式に出たわけでもない、彼女の墓がどこにあるのかも知らない。それを、贖罪という大義名分を振りかざして横やりを入れようとしているわけだ。なんと情けないことだろう。それをしたところで誰も喜ばない、むしろ嘲られるのではないか。しぃはどこにいるのだろう。そんな疑問が浮かんだ。彼女に謝罪したかった。自らの行いを悔い、許しを請いたかった。しかし彼女がどこにいるのか、見当も付かない。それに、彼女は今の私の姿を見てどう思うだろう。受け入れてくれるとは思えない。老いてもいない私は、彼女の目にはゾンビのように映るのではないだろうか。6 名前: ◆A4U6gCcMs2 [] 投稿日:2007/03/04(日) 21:59:54.10 ID:XAMO4Drr0( ,,゚Д゚)「ん、お前はモララーじゃないのか」背後から肩を叩く者が一人。そこにギコが、創痍した表情で佇立していた。( ,,゚Д゚)「何をやってんだ、こんなところで。 駐車場なんかを眺めてよ」( ・∀・)「いえ、別に」( ,,゚Д゚)「ふうん……ああ、そうだ、一つ二つ聞きたいことがある。 あれから、しょぼんは何か喋ってくれたか?」私が首を振ると、彼は肩を落とした。予想通りだったのだろう。そうかい、と呟くがあまり落胆したようには見えない。( ,,゚Д゚)「もうすぐ二ヶ月になるが…… このまま永遠にだんまりを続けるんだろうな」私は一つ、画策する。この男から、何か情報を引き出すことはできないか、と。7 名前: ◆A4U6gCcMs2 [] 投稿日:2007/03/04(日) 22:00:25.66 ID:XAMO4Drr0そこに最早贖罪は関係ない。ただ好奇心による追究。その方が気分的に楽である。開き直り、と誰もが言うだろうが、それでもいいと思った。( ・∀・)「あの、よければ事件についての情報を教えてくれませんか? いえ、特に意味はないのです。ただ、知っていることが多いほど彼からも聞き出しやすいと思いまして」するとギコは、特に怪しむこともなく口を開いた。彼も、情報に枯渇しているのかもしれない。( ,,゚Д゚)「まぁ大体は報道されてるだろ。 本来ならすぐに解決できそうなんだが、発生時刻や場所が悪い。 目撃者がいないんだよな。 一度目の女は然り、ホームレスにしてもわざわざすみかに近づく奴もいないだろう?」彼の言葉に適当に相づちを打つ。頭の中は、情報を整理する作業で必死なのだ。ギコが歩き始めたので、私も歩調を合わせた。8 名前: ◆A4U6gCcMs2 [] 投稿日:2007/03/04(日) 22:00:56.35 ID:XAMO4Drr0( ,,゚Д゚)「それに証拠も乏しいんだよな。 現場に凶器が落ちていたわけでもない。 返り血を浴びた可能性は高そうだが…… 何せ闇夜だ、通りすがっても気づかれない可能性が高い」聞いているうち、私は言いようのない空気に怖じ気づき始めていた。なぜ、この男はここまで私に語ってくれるのだろう。最初は、単純に情報が欲しいのだと解釈していた。しかしどうもそれだけではないようだ。私は、古き時代に見たサスペンスドラマを思い出す。大抵、そこには警察と関係のない人物が登場し、事件のことを聞き出す。そういうとき、刑事は何を意図して情報を明かすのか。一つは探偵などを信頼している場合。一つはコメディチックに脅されている場合。もう一つは、刑事自体が情報に枯渇している場合……今のギコのように。そしてそういう場合、刑事はすべからく事件に異常な前に固執しているのだ。( ,,゚Д゚)「だがな……一つだけ、犯人の落とし物があったんだよ」9 名前: ◆A4U6gCcMs2 [] 投稿日:2007/03/04(日) 22:01:44.79 ID:XAMO4Drr0ギコは私に、一枚の写真を差し出した。そこに、小さなストラップが映し出されている。デフォルメされたクマのついた、かわいげのあるものだ。( ,,゚Д゚)「二度目の殺人現場で発見された。 ま、残念ながら犯人の痕跡を見つけることはできなかったが。 ただ、少しばかり年齢層を絞り込むことができる」( ・∀・)「そんなもんですかね」興味なさげに返すと、彼はそれを大事そうにポケットにしまいこんだ。( ・∀・)「しかし……そんな大切そうな証拠を、刑事個人が勝手に持ち歩いていいのですか?」( ,,゚Д゚)「厳しいことを言うね」ギコはただ苦笑し、答えるということをしなかった。いよいよ私が抑えきれぬ疑問を抱いたところで、彼は「さてと」と呟いた。( ,,゚Д゚)「そろそろ、署の方に戻る。 あんまり勝手な行動をしていると、うるさく言われるからな」10 名前: ◆A4U6gCcMs2 [] 投稿日:2007/03/04(日) 22:02:17.83 ID:XAMO4Drr0( ・∀・)「待ってください!」一礼して立ち去ろうとするギコを慌てて呼び止める。彼は柔和な笑顔で振り返った。( ,,゚Д゚)「何か、問題でもあるかい?」( ・∀・)「いえ。ただ、気になるのです。 あなたの、この事件に対する固執のしかたが、少し異常に思えて」くだらない。そう言いたげに、ギコは再び私に背を向けた。そして、今度は止まらずに歩き出す。( ,,゚Д゚)「その理由は、気づいているはずだ。 お前の眼が、そう言ってるよ」数秒後、我に返った私が彼にその意味を問いただそうとしたとき。すでに、彼の姿は曲がり角の向こうに消えかかっていた。□□□□□□□□□
Mar 28, 2007
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サイドバーの内容をちょっと改装してみました。突然ですが、最近気になった曲がいくつかあるので羅列したいと思います。まずはクラシックの曲ショパン作曲の「幻想即興曲」です。http://www.youtube.com/watch?v=NL3Ag-2yRUA友人の演奏を聴いて心を打たれたので、ピアノの楽譜を手に入れて3ヶ月くらい頑張って弾いてみたんですが、未だにこの動画の1分あたりまでしか弾けませんorzこんな難しい曲を作るなんてショパンの嫌がらせとしか思えない><ちなみにこの曲をギターとベースで弾いちゃった猛者もいるようです。http://www.youtube.com/watch?v=UyLxujpC59U続いてはJ-POPhare-brained unityの「ORION」という曲ですhttp://www.youtube.com/watch?v=6DLzT4NNXC4テレビ番組「アンビリーバボー」のEDになってていいなあと思ったのでようつべで探してみました。最近はPVがようつべで見られるんだなあとちょっと感動したり。良い曲ってほどでもないけど、聴き心地がいい曲です。もう一曲J-POPRADWIMPSの「ふたりごと」が好きですね。http://www.youtube.com/watch?v=WCcA7Ubu-VA曲はいいんだけどこのボーカルがブサなのはどうにかならんかね・・・おまけムーディー勝山の漫才http://www.youtube.com/watch?v=wdPadscDMTI
Mar 25, 2007
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29 名前: ◆A4U6gCcMs2 [sage] 投稿日:2007/02/25(日) 18:37:39.59 ID:tepVhUWG0線路を渡ってコンビニの前に通りかかった頃には、もうすっかり涙は乾いていた。顔の紅潮も少しはましになっただろう。またコンビニで立ち読みしようかと思案していたとき、店から出てきた男と鉢合わせた。どこかで見たことのある顔だ。そう思い凝視すると相手は少々たじろいだ。そこで気づく。あの日、私を拾ったジョルジュだ。( ゚∀゚)「おう、元気か?」仕事は……と問おうとして、今日が日曜日であることを悟った。彼は片手にビニール袋をぶら下げていた。ビールや各種つまみやらが隙間からのぞいている。( ゚∀゚)「どうよ最近。記憶は戻ったか?」( ・∀・)「いえ、まだ……」( ゚∀゚)「そうか。まぁそのうちなんとかなるって。 アルツハイマーとかじゃねえんだから、な!」私の背中を強く叩く。不器用というか、無粋な男だと思った。30 名前: ◆A4U6gCcMs2 [sage] 投稿日:2007/02/25(日) 18:38:28.33 ID:tepVhUWG0( ゚∀゚)「ま、俺たちの夫婦関係じゃねえんだしな」( ・∀・)「はい?」そういえば、奥さんに逃げられた、というようなことを言っていたな。( ゚∀゚)「ああ、そうだ。どっかで話しないか? マスターにしてもいいんだが、たまには別の人間とも腹割って話がしたい」奥さんにすればよかったのに。そう考えて、すぐに心の中で苦笑した。そんなことをいう資格が、自分のどこにあるというのだろう。私が承諾すると、ジョルジュは近くのスーパーに歩を進めた。そのスーパーの隅に、狭い休憩室があった。自販機と血圧測定器、そしていくつかのテーブルと椅子が設置されているだけの簡素なものだ。その中の一つに腰を下ろすと、ジョルジュは袋をテーブルに無造作に置いた。はずみで、中に入っているものがテーブルに広がる。31 名前: ◆A4U6gCcMs2 [sage] 投稿日:2007/02/25(日) 18:39:20.62 ID:tepVhUWG0( ゚∀゚)「お前、嫁さんはいたのか?」( ・∀・)「いや、いませんよ」反射的にそう答えると、ジョルジュは若干不機嫌な顔になった。( ゚∀゚)「そんなことわからねえだろう。 もしかしたら今も、どこかで帰りを待っている嫁さんがいるかもしれねえよ」何か、ざらりとした感触が身体の中で蠢いたような気がした。この男が私のことを知ったうえで口にしていないことはわかっている。ただ、愚痴を吐露したいだけのことだろう。それでも、心の闇が落ちたようだ。( ゚∀゚)「いいか、若者。結婚ってのは難しいんだ」ジョルジュは散らばったつまみの中からサラミソーセージを取り上げた。袋を破って裸にすると、それを二つに割った。32 名前: ◆A4U6gCcMs2 [sage] 投稿日:2007/02/25(日) 18:39:51.13 ID:tepVhUWG0当然ながら裂けた部分には凹凸ができている。( ゚∀゚)「仮に右手のサラミを夫、左のサラミを嫁としようか。 結婚ってのはこういうふうにピッタリ、何もかもを互いが受け入れられるようじゃないとしちゃいけないんだ 独身時代とは違う。この二つの間には甘酸っぱい思い出もクソも挟まっちゃいねえ 補正が効かないんだ」当然ながら、二つの部品は凹凸までもが合致している。( ゚∀゚)「そうでもない二人が無理矢理結婚生活を続けようとすると……」ジョルジュは両の手に力を込めた。サラミの接着部分が潰れ、破片がテーブルに落ちた。( ゚∀゚)「こういう風に破綻しちまうんだよなあ。 ま、失敗した俺が言うのもなんだが だがこれは結構大切だと思うぜ」感慨深げにそう呟いたあと、おもむろに囓り始めるジョルジュ。私は、こういう人生哲学を持っているからこの男は妻に嫌われたんだな、と思った。33 名前: ◆A4U6gCcMs2 [sage] 投稿日:2007/02/25(日) 18:40:23.02 ID:tepVhUWG0( ゚∀゚)「はあ。できることなら過去に戻ってやり直してみたいもんだ」私はある考えを巡らせていた。この男はバーボンハウスの常連だと聞く。ならば、事件当時の状況やしょぼんの恋人について知っているかもしれない。( ・∀・)「少し聞きたいことがあるのです」若干陶酔に浸っていたジョルジュを現実に戻し、尋ねる。( ・∀・)「連続殺人の被害者について、何か知っていますか?」ジョルジュは眉を潜めて黙する。やがて、ああ、と軽く呟いて頷いた。( ゚∀゚)「あの子のことか。 マスターの彼女だった」私は、不安と好奇心の混ぜながらジョルジュを追及する。彼は逡巡した後、ぽつりぽつりと語り始めた。34 名前: ◆A4U6gCcMs2 [sage] 投稿日:2007/02/25(日) 18:41:03.12 ID:tepVhUWG0あの子を初めて見たのは、一年ぐらい前だったかなあ。その頃はまだしょぼんと深い付き合いをしていたって感じじゃなかった。ただお仲間数人と飲みに来てたみたいだな。……いや、別に観察していたわけじゃねえんだ。可愛かったから目に付いただけだよ、多分な。それから一ヶ月ぐらい経った頃に、また俺はあの子と鉢合わせたよ。驚いたね。あの子は一人で、しょぼんに向かってしきりに話しかけているんだ。それに、しょぼんは言葉を発することはなかったが、反応を見せていた。頷いたり、微笑んだりな。マスター失格じゃねえかと思ったよ。他の客も、不審そうな目つきで二人を見ていたのを覚えている。それからも何度か彼女を見たよ。そのうち気づいた。ああ、こいつら恋人同士かよ、ってな。35 名前: ◆A4U6gCcMs2 [sage] 投稿日:2007/02/25(日) 18:41:35.25 ID:tepVhUWG0一息ついたジョルジュが立ち上がり、自販機でコーヒーを二本購入した。私の前に一本置かれたので、ひとまず礼を述べておく。( ゚∀゚)「それにしても、なんであの子のことが知りたいんだ? 別に知っている奴ってわけでもないんだろう?」問われて私は惑った。( ・∀・)「少し気になったんですよ。彼は恋人について一言も口にしませんから。 それに、この前連続殺人を調べているという刑事が訪れたのですが、 その時はその存在すらも否定していたので」私は素直に真実を吐いた。ただ、核心に触れることなく。そいつはおかしいなあ、とジョルジュは缶コーヒーを傾けながら器用に首を傾げる。( ゚∀゚)「一言も口にしないのはいいとして、存在を否定か……。 嫌がっている風には見えなかったがな。 むしろ、ああ、今時のカップルだなあと感じたよ」この時代における今時とはどこまで進んでいるのだろう。ともかく、私は続きを催促した。36 名前: ◆A4U6gCcMs2 [sage] 投稿日:2007/02/25(日) 18:42:16.53 ID:tepVhUWG0しょぼんはよく頑張っていたと思うよ。できるだけ店内の空気を壊さないように、な。だから彼らが言葉を交わすことはなかったと思う。それで……十二月の初めかな、俺はいつも通りバーボンハウスに入った。俺の推測じゃあその日は彼女が来る日だった。いや、別に計算していたわけじゃねえのよ、なんつーか、パターン?ともかく、二人を見て和もうとか親父なことを考えていたわけじゃない。でも、その日結局あの子は来なかった。俺はあまり新聞とか読まないタチなんだよ。それで、彼女が死んだのを知ったのは少し後のことだった。でも、しょぼんは全く普通に振る舞っていたな。まるで恋人が死んだ、なんて事実は無いみたいにさ。だから俺も、その話を掘り起こすのはやめておいたんだよ。あいつは忘れようと気丈に努めている……それぐらいに思っていたな。37 名前: ◆A4U6gCcMs2 [sage] 投稿日:2007/02/25(日) 18:43:04.14 ID:tepVhUWG0スーパーを出たところで、私はジョルジュと別れた。正直なところ、途方に暮れていた。記憶喪失の身元不明者という身分である以上、あまり大胆な行動を取ることはできない。だからといってしょぼんが何かを話してくれるわけでもなさそうだ。一歩でも先に進みたい。なぜかそう思っていた。おかしな話だ、自分は娘や、妻を捨てた男だというのに。私の中で何か変化が生じているようだった。過去と向き合う……といえば高尚過ぎる言いぐさかもしれない。しかしそれに準ずる何か……。いつしか、私の足の方向はバーボンハウスとは別の場所を向いていた。これまでその存在すらも忘れようとしていた場所……。住宅街を抜け、見慣れた郵便ポストの角を曲がる。もうすぐ、長年住んでいた自宅が見えるはずだ。
Mar 18, 2007
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21 名前: ◆A4U6gCcMs2 [sage] 投稿日:2007/02/25(日) 18:30:14.52 ID:tepVhUWG0第五話午前、私は駅の近くにある図書館へ向かった。事件のことを調べるためである。ここに来た翌日、コンビニでなぜ事件の詳細を読まなかったのか。そんな後悔の念に包まれる。昨日、私はしょぼんさんの家にもう少し滞在すると宣言してしまった。それも無意味に。やはり、自分の娘が被害者になっている可能性を見いだしたからだろうか。しかし娘の顔を見る、或いは触れた回数は、片手で数えるほどでしかないような気がする。なめらかな肌や純粋な瞳は、私とは別種の生物であるような恐怖を感じたことを覚えている。中にはいると、古された木製の壁や床が独特の匂いを漂わせていた。二十年間改築もされなかったらしい。何か、公園では感じなかった懐古的な気分に一瞬浸る。古新聞を漁る。現在進行中の事件であるため、その記事を見つけるのは容易だった。一面に飾られた記事を食い入るように見る。彼が言ったように、昨年十一月二十八日・金曜日に……娘と思われる女性は殺されていた。その発生場所がバーボンハウスから近しい場所であることに驚く。死亡推定時刻まで記されている記事もあった。それによると彼女が殺されたのは午後十時から十一時半の間。……だとすれば、しょぼんさんが犯人でありえない。その頃、バーボンハウスは営業中だったはずだ。22 名前: ◆A4U6gCcMs2 [sage] 投稿日:2007/02/25(日) 18:30:49.61 ID:tepVhUWG0そこで自分の思考回路の異常に気づく。しょぼんが犯人である可能性など最初から皆無なのだ。それなのに、私はほぼ無意識に彼を疑っていた。やはり、気になる。彼がなぜ、恋人の存在を否定するのか。聞くに聞けない問題だ。そして、あまり理由を知りたくない問題でもある。探索を続けているうち、一つの記事が目にとまった。見出しの隣に、被害者の顔写真が掲載されていたのだ。線の細い輪郭、大きな瞳。頬がやや染まっているのが、モノクロ写真でもわかった。長い黒髪は背中まで伸びているようで、カメラに向かって歯を見せている。写真の下に、彼女の名前と年齢が記載されている。それは、あまりにもしぃに似ていた。まるで私の記憶に在るしぃがそのまま映し出されたかのように。しぃもよく、このような無邪気な笑顔を私に見せていた。だが、彼女の笑顔は今、どこにもない。この子がこの先、純粋な喜びを得ることは永遠にないのだ。23 名前: ◆A4U6gCcMs2 [sage] 投稿日:2007/02/25(日) 18:31:25.00 ID:tepVhUWG0気づけば涙が流れていた。脆くなったと自嘲しつつ、それは止まらない。彼女とはほとんど接点がない。例えるなら、中学時代一度だけ同じクラスになり、言葉すら交わさなかった異性……程度である。それなのに、なぜ。血の繋がりなどという運命論は信じたくもない。しぃに似ているから、というのも理由になり得ない気がする。彼女に対しても何も思い残しはない……そう、自己暗示をかけて未来に来たのだから。肩を振るわせている私を、通りすがる人は不思議に見ていることだろう。私は新聞を片付けて、図書館を出た。陽光が、私の顔に涙の線を象っているような気がした。24 名前: ◆A4U6gCcMs2 [sage] 投稿日:2007/02/25(日) 18:31:58.00 ID:tepVhUWG0そして、結局私は決心していた。事件を追う、ということを。未来にやってきて転がり込んだ先の男は、自分の娘と交際していた。そして、娘は殺された。その連続殺人犯は、未だ捕まっていない。この、筋立てられたような展開は偶然なのだろうか。いや、偶然なのだ。そうとしか考えられない。だが犯人はこの手で捕まえなければいけないような気がする。それが義務であり、私のできる最低の贖罪である。今頃、しぃはどうしているのだろうか。まだこの近くに住んでいるのだろうか。そういえば、私は彼女が家を出た後のことについて少しも考慮しなかった。多分、実家に帰ったのだろう……そんな漠然とした想像だけで彼女の問題を片付けていたのだ。屑人間であるとは自覚している。それでも私は逃げたかった。あの時代から……そしてそれも、身勝手な理由なのだ。25 名前: ◆A4U6gCcMs2 [sage] 投稿日:2007/02/25(日) 18:32:51.22 ID:tepVhUWG0しぃと最後に会話したのは、時間跳躍する前日のことだった。その少し前から、私は旅行カバンに荷物を詰めたりして着実に準備を整えていた。旅行気分ではなかった。夜逃げ気分の方が正しい。その日、私が自室に入るとなぜか彼女がそこにいた。何か挙動不審だったので一応声をかけてみる。すると「いやあ、逃げ込んだネズミを探していたんだよ」という答えが返ってきた。(*゚ー゚)「ところで、モララーくん」彼女は結婚してからも私のことを君付けで呼んだ。それは、他人の目から見れば珍妙なことらしい。私は、それが別におかしいとも思わなかった。一般的な感覚が欠如していたのだろう。私も、彼女も。(*゚ー゚)「明日ぐらい、どこかにご飯を食べに行かないかい?」( ・∀・)「娘、どうするつもりだ?」(*゚ー゚)「最近は預かってくれるところもあるんだよー」しぃはそして、イノセントな笑みを浮かべた。私は、しかし、それに賛同しなかった。理由は言わずもがな。26 名前: ◆A4U6gCcMs2 [sage] 投稿日:2007/02/25(日) 18:33:52.96 ID:tepVhUWG0そういうやりとりは日常茶飯事だった。常にしぃは私を、例えば遊園地やレストランなどに誘い、そのたびに私は断りを入れる。すると彼女は頬をふくらませ、「なんだい」とふて腐れたように自室に閉じこもる。とはいえそれを憂いだことはない。そういうとき、彼女は大抵テレビを見てバカのように笑っているからだ。その声が廊下にまで響き渡ることは、私にとって安堵の材料となっていた。その時もしぃはいつもと変わらず頬をふくらませて部屋を出て行こうとした。しかしその背中を呼び止める。しぃは訝って私を見ていた。しばし躊躇い、私は心のなかで練っていた台詞を吐いた。( ・∀・)「そろそろ、別れようと思う」立つ鳥跡を濁さず。私はそれを、愚かな方法で実践しようとしていた。27 名前: ◆A4U6gCcMs2 [sage] 投稿日:2007/02/25(日) 18:34:48.80 ID:tepVhUWG0(*゚ー゚)「ん?」彼女は全く理解していなかった。( ・∀・)「私と結婚してくれたことには感謝している。 しかしこれ以上自堕落な生活を進めることはきみのためにならないな。 本当に申し訳ないと思う。きみはまだ若いんだ。」私は遠回しに離婚を要求していた。いや、そういう事実は作れなくてもいい。ただ、私は彼女の見限るという心理状態を欲していた。それをなぜ、切羽詰まった状況で言ったのか。それまで踏ん切りが付かなかったからに他ならない。あまりにも怠慢で、利己的な理由だ。しかししぃはなおも首を傾げた。未だ理解していないようだった。(*゚ー゚)「んん、んんん? よくわかんないことをいうね。 私みたいな人間を受け入れてくれる人間がキミ以外にいるだろうか?」28 名前: ◆A4U6gCcMs2 [sage] 投稿日:2007/02/25(日) 18:36:52.81 ID:tepVhUWG0迷わず私は肯定した。妻であるという事実を除いても、彼女は十分美人だった。特に長い黒髪は純和風という言葉を彷彿とさせ、大きな瞳はまるで水晶のように透き通っていた。わかってないねえ。そう、しぃは溜息をついた。(*゚ー゚)「そういえば、モララーくん。 キミは私の血液型を知ってるかな?」私は、不覚にも考え込んでしまった。何かの書類で見たような気がする。そして彼女からも幾度か聞かされたはずだ。しかし思い出せない。それとは関係ない、とお茶を濁すと、しぃは笑って部屋を出て行った。結局、彼女がなぜ血液型の話を持ち出したのかは不明のままであった。翌日、私はしぃや娘が寝静まっている頃に家を出た。彼女の説得に失敗したが、だからといって予定を狂わせる気は無かった。そして今に至る。私は、絶望と悲哀以外に何か手に入れることができただろうか。
Mar 18, 2007
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11 名前: ◆A4U6gCcMs2 [sage] 投稿日:2007/02/25(日) 18:20:33.41 ID:tepVhUWG0彼は、何を言っているのだろう。最後の客が帰り、一旦閉店した薄暗いバーボンハウスで僕は考える。今日は久しぶりにあの男がやってきた。もうこないと思っていたのに。彼はここにくるたび僕に妄言を吐く。僕に恋人がいただとか、その恋人は連続殺人の被害者だとか。そんなもの全て嘘っぱちだ。僕には、まぁ悲しい事実ではあるが恋人がいたことなど一度もない。それなのに、彼は何度も何度も問いかけてくるのだ。答えも、何もかも決まっているというのに。本当にそっとしておいて欲しい。今日はモララーさんにも何やら話していたらしい。モララーさんはさっき、思い詰めた表情で二階に上がっていった。彼に何を言われたのだろう。いてもたってもいられなくなり、僕は片付けを中断して二階に向かった。12 名前: ◆A4U6gCcMs2 [sage] 投稿日:2007/02/25(日) 18:21:07.34 ID:tepVhUWG0彼は父の部屋で、特に何をするわけでもなく座り込んでいた。表情がうつろで覇気がない。やはり、先ほどあの刑事に言われたことを気にしているのだろうか。声をかけると、彼は今気づいたという風に視線をこちらに移した。(´・ω・`)「気にしなくていいですから。 あの男の言ってることなんて、全部デタラメですよ」モララーさんは憔悴気味に頷いた。それ以上話しかけても無駄に思える。だから、僕は彼に背を向け、夕飯を作るためにキッチンに向かおうとした。( ・∀・)「あの」その声に、なぜか焦りを覚えて立ち止まる。振り返ると、彼は音も無く立ち上がった。そして僕を見据え、悲壮な感情を隠しているような、複雑な表情を作った。13 名前: ◆A4U6gCcMs2 [sage] 投稿日:2007/02/25(日) 18:21:46.40 ID:tepVhUWG0( ・∀・)「もう少し、ここにいてもいいでしょうか」申し訳なさそうに言うので、思わず聞き返す。しかし彼の発する文言は同じだった。(´・ω・`)「そんなこと、今更言わなくても。 大体、記憶喪失が治るまで出て行っちゃダメですよ」( ・∀・)「いやあ、まあ。そうですね。 申し訳ないです。これからもう少しだけ、よろしくお願いします」僕は言葉を返さないまま部屋を出た。突拍子もないことを言い出す人だ。もし何か心理的な変化が起きたとすれば、それが記憶を呼び戻す引き金になってくれれば……。リビングに通りかかったとき、ちょうど電話が目についた。液晶画面が不在着信があったことを知らせている。家の電話が使われることなど滅多にない。大抵は携帯電話で事足りるからだ。再生すると、聞き慣れた声が流れ始めた。14 名前: ◆A4U6gCcMs2 [sage] 投稿日:2007/02/25(日) 18:23:49.32 ID:tepVhUWG0――――――……ああ、俺だよ。そういえば今は営業中だったな。申し訳ない。いや、この方がよかったかもしれないな。おまえの声を聞きながらだとまともに喋れそうにない。勝手だが、伝えたいことだけ伝えさせてもらう。おまえはまだ、あの女のことを否定しているのか?だとしたら即刻、やめてくれ。逆に怪しまれてしまうことぐらい、わかるだろ?いや、本当に利己的だと思うさ。俺がおまえに、何か頼み事をする資格なんてないよな。でも、あの時俺に希望を与えたのは紛れもなく、おまえなんだよ。おまえがあの時……って、責任転嫁はみっともないな。とにかく、これ以上疑いをかけられたり、詮索されることはお互いのためにならないだろう?だから、お願いだ。15 名前: ◆A4U6gCcMs2 [sage] 投稿日:2007/02/25(日) 18:25:27.82 ID:tepVhUWG0あの刑事がまた現れたら言ってやってくれ。「確かに彼女は知っている。でも、あの事件については何も知らない」って。……近いうち、またお邪魔するよ。もうすぐ月末だからな。ああ、もう俺は動かない。何もしないさ。連続殺人も、ここで幕を下ろす……ここまでは俺の計画通りだ。だか、尚更おまえには慎んでいてほしい。今でも、どうしてあんな行動をとったのかがわからない。……なんて、殺人犯の台詞じゃないよな。それから俺は、目くらましのために二人……。……よく、悪夢に魘されるんだ。いつも同じ光景だよ。あの夜の闇と、街灯に浮かぶ彼女の姿だ。血の臭いとか、鈍い感触すらも思い出してしまうんだ。最期、彼女は………………――――――16 名前: ◆A4U6gCcMs2 [sage] 投稿日:2007/02/25(日) 18:26:06.08 ID:tepVhUWG0その後も、嗚咽の混じった記録は続いているようだった。でも、僕は咄嗟に停止ボタンを押していた。言いようのない焦燥に駆られている。心が奥底から爆ぜているようだった。僕は何も知らない。それなのにこいつは何を言っているのだろう。彼女? そんなものいるはずないじゃないか。大体、僕は仕事で忙しいんだ。彼女が僕といつ接触したって言うんだ。それに……そうだ、ここには彼女がいるなんて痕跡が一つもない。普通、写真の一枚ぐらいあったっておかしくないだろう。でも、空きが多いアルバムなんかには彼女とやらの写真は一枚も保存されていない。……剥がされた跡がある。そんなもの、僕は知らない。17 名前: ◆A4U6gCcMs2 [sage] 投稿日:2007/02/25(日) 18:26:52.69 ID:tepVhUWG0それから、僕は無心で夕飯作りにとりかかった。店の都合もあるので、いつも晩ご飯は若干早い時間にとることにしているのだ。ありあわせの料理を食卓に並べてからモララーさんを呼ぶ。彼は、何か考えているかのように虚ろだったが、一応呼びかけには応じてくれた。いつもは僕がモララーさんに何かを話しかける。すると、彼は言葉少なではあるが必ず返事をしてくれるのだ。しかし今日は食器を打ち鳴らすもののみが音として存在する。ただ無言の食事が続いていた。なぜか、気分が乗らない。彼に話しかける話題にすら困っていた。まるで、思考回路が焼き切れてしまったかのようだ。気まずい雰囲気が流れたので、テレビをつけた。ちょうど、ニュースが映し出される。18 名前: ◆A4U6gCcMs2 [sage] 投稿日:2007/02/25(日) 18:27:23.13 ID:tepVhUWG0アナウンサーの、抑揚のないニュースの朗読をBGMにする。特別興味のあるネタもないので、音は右から左へ通り抜け、消えていく。モララーさんも興味を示さず、ただテーブルの一点を見つめて食事を続けていた。そのうち、特集とタイトルづけられたニュースが始まる。「十一月に始まった連続殺人事件は、未だ解決の糸口を……」僕とモララーさんは、同時に流れる映像を見ていた。流れる事件現場の映像。その前に立ち、沈痛な面持ちで事件の経過を報じるアナウンサー。咄嗟に僕はリモコンを取り上げ、チャンネルを変えた。しかし、ニュースなんてものは大体同じ時間帯に放送されているものだ。変えるチャンネル全てがニュースを報じている。単純な偶然だろうと頭の隅では冷静に解析している。しかし、手が順応していない。遂に、僕はテレビを消してしまった。19 名前: ◆A4U6gCcMs2 [sage] 投稿日:2007/02/25(日) 18:28:16.73 ID:tepVhUWG0こういうことはこれまでにもよくあった。たまたま僕がテレビをつける(モララーさんは、遠慮しているからか、自らテレビを見ようとはしない)。そして事件について流れ始めると僕はおもむろにリモコンを手に取る。それを、これまではできるだけ自然な素振りで行ってきた。しかし今日は……疲れていたのだろう、興奮し、まるで狂ったように一連の動作をこなしてしまったのだ。モララーさんは、真っ黒になったテレビと僕とを交互に眺めた。何か、物乞いするような表情に一瞬なったが、すぐに食事を再開した。( ・∀・)「ごちそうさまでした。今日もありがとうございます」何事もなかったように、彼は席を立った。言葉をかけたいが、思いつかない。( ・∀・)「ああ、そうだ」(´・ω・`)「は、はい?」20 名前: ◆A4U6gCcMs2 [sage] 投稿日:2007/02/25(日) 18:29:00.47 ID:tepVhUWG0( ・∀・)「何か手伝うことがあれば言ってください。 今日ぐらい、洗い物しましょうか?」(´・ω・`)「い、いえ。大丈夫ですよ。 それぐらい、苦にもなりませんから」思わず過剰反応してしまっていたようだ。いつものやりとりじゃないか。何を焦っているんだ。食器をキッチンに運び、立ち去るモララーさんの背中を、僕はただ見送っていた。(´・ω・`)「ごちそうさま」誰もいなくなったダイニングで呟き、僕も席を立った。何も気にすることはない。僕には何も気にする事なんてない。あの留守番電話も、きっと悪戯に違いない。そう、思いこみでもしないと……。□□□□□□□□□
Mar 13, 2007
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3 名前: ◆A4U6gCcMs2 [sage] 投稿日:2007/02/25(日) 18:12:47.76 ID:tepVhUWG0第四話ペニサスが出て行って数分後、再度鈴が鳴った。振り向くと、そこにコートを身につけた壮年の男……年齢はドクオと同い年ぐらいか……が片手をあげて立っていた。( ,,゚Д゚)「よう、久しぶりだな」極めて友好的な笑みを、男はしょぼんさんに向ける。しかし、しょぼんさんは明らかな嫌悪を醸した。それを気にせず、カウンターに座る男。会釈されたので、私も同じことをする。( ,,゚Д゚)「アルバイト、雇ったのか」しょぼんさんは口を利かない。それは普段通りであるように思えた。しかし、すぐにそれとは違うことに気づく。手が、軽く震えていた。それでも、男がコーヒーを注文すると、無言のまま作りにかかる。手持ち無沙汰となった私は階上へ行こうかと悩んだ。しかし、男としょぼんさんの会話をしばらく聞きたいと思い、店内にとどまることにする。4 名前: ◆A4U6gCcMs2 [sage] 投稿日:2007/02/25(日) 18:13:25.26 ID:tepVhUWG0やがて運ばれてきたコーヒーを、男は手に取ろうとしない。ただ笑顔で、肘をカウンターにつけた。( ,,゚Д゚)「ここに通うようになってもう一ヶ月以上になるなあ。 なあアンタ、そろそろ喋ってくれてもいいんじゃねえのか」男が言っていることを、私はただ推測することしかできない。ただ、一つ思い当たる節がある。一昔前のドラマに出てくる刑事の服装と、男の着込んでいる服がほとんど同じようなものなのだ。( ,,゚Д゚)「何度も言うけど、俺はアンタが犯人だなんて思っちゃいねえんだ。 犯行があった全ての時刻において、お前がここで働いていたことなんて容易に裏がとれるだろうよ」(´・ω・`)「なんのことを、言ってるんですか」たまらなくなったように、しょぼんさんは口を開いた。やはりこの男、刑事だったらしい。男はより一層深いくぼみを顔につくって、コーヒーを手に取った。( ,,゚Д゚)「お前の反応はいつも通りだな。 また、最初から説明しようか?」5 名前: ◆A4U6gCcMs2 [sage] 投稿日:2007/02/25(日) 18:15:14.88 ID:tepVhUWG0(´・ω・`)「いえ、あなたが何のことについて話しているかぐらい、僕にもわかります」( ,,゚Д゚)「そりゃよかった。進歩したな」(´・ω・`)「でも、何度も言いますが、僕は連続殺人事件と少しも関わっていません」言い張るねえ、と男は苦笑した。このやりとりにも飽きた、といった表情だ。連続殺人は夜中に発生していたと聞く。とすれば、しょぼんさんが関与していないことは明白だろう。しかし、私はしょぼんさんから事件の話を聞かされたときに覚えた、奇妙な違和感を思い出していた。それは些細なことだ。だがなぜか、見逃せなかった。しょぼんさんは、最初に発生した事件だけをやけに詳しく覚えていたのだ。事件が起きた日時も、被害者が即死であるということも。他の事件よりも過去に発生したというのに。偶然かもしれない、ただ一番最初だからという理由で強く記憶に焼き付いただけかもしれない。6 名前: ◆A4U6gCcMs2 [sage] 投稿日:2007/02/25(日) 18:16:06.66 ID:tepVhUWG0( ,,゚Д゚)「関係ないとは言わせない。 最初の被害者、あんたと交際していただろ」私は少し驚いた表情でしょぼんさんを見た。彼は微動だにしない。ただ視線を男に向けて佇んでいた。グラスを磨く手は止まっている。( ,,゚Д゚)「これについては、アンタの知り合いからの情報で明らかなんだよ」(´・ω・`)「だから、知らないと言ってるじゃないですか。何度も」がしがしと、男は自分の白髪交じりの髪をかき回した。そんな男に、しょぼんさんは帰ってください、と告げる。( ,,゚Д゚)「何があったかしらねえけどな。自分の彼女ぐらい覚えておいてやれよ」私にはどちらが正しいのかわからない。だが、なんとなく男の方が正常であるように思えた。理由は特にない。ただ男が堂々としていて、しょぼんさんが普段より萎縮しているように見える。それだけだ。7 名前: ◆A4U6gCcMs2 [sage] 投稿日:2007/02/25(日) 18:17:09.40 ID:tepVhUWG0自分以外の刑事がここに来ないのは誰もアンタが関与していないと思っているからだ。もちろん俺も同じ意見だ。でも、それならなぜ自分の恋人の存在を否定するのか。それが気がかりで仕方ない。だから俺は何度も足を運ぶんだ。そのようなことを、男はしょぼんさんに淡々と語った。それでも彼は口を割らない。いや、本当に知らないのかもしれないが。(´・ω・`)「とにかく、迷惑なんです。 いくら刑事相手だからとはいえ、僕はこの店であまり口を開きたくないんですよ」( ,,゚Д゚)「そりゃ、お前が街で声をかけても無視するからだろう。 それに、人がいない時間帯を見計らっているじゃないか」その時だ。ベルが鳴り、一人の客が店に入ってきた。いらっしゃい、としょぼんさんは解放感に満ちた顔で声をかけ、男はただ溜息をついた。( ,,゚Д゚)「こりゃもう、今日は話してくれそうにないな」8 名前: ◆A4U6gCcMs2 [sage] 投稿日:2007/02/25(日) 18:18:00.00 ID:tepVhUWG0( ,,゚Д゚)「全く、そんな態度じゃ天国の彼女が泣くぞ」そういわれてもしょぼんさんは知らないふりを決め込む。男は湯気の消えたコーヒーを飲み干して立ち上がり、銭をカウンターに置く。それから、立ちすくんだままの私を見つけて近寄ってきた。警察手帳を出して、名前を名乗る。ギコ、と言うらしい。( ,,゚Д゚)「アンタは何か知らないか? しょぼんくんのことについて」私は黙って首を振る。そもそも連続殺人のことすらあまり知らないというのだ。ましてやしょぼんさんの恋人が被害者だったなど、今まで聞いたことがない。( ,,゚Д゚)「そうか……じゃあ、彼女の方は?」彼女?私は聞き返した。そこで初めて、ギコは私にしょぼんさんの恋人の名を告げた。9 名前: ◆A4U6gCcMs2 [sage] 投稿日:2007/02/25(日) 18:18:35.96 ID:tepVhUWG0店内に大きな音が響いた。よろめいてしまった私が、近くにあった椅子を倒してしまったのだ。お客としょぼんさんに詫びて、慌てて椅子を元に戻す。どうかしたか? とギコに尋ねられるが何も答えられなかった。ただ、狂ったように首を振る。今日、いったい何度首の筋肉を使ったことか。( ,,゚Д゚)「まぁ、いいや。何かあったら連絡してくれよ」そういって名刺を手渡された。刑事の名前と連絡先が記載されている。じゃあな。来たときと同じく、ぶらりと片手をあげながらギコは店外に消えていこうとした。( ・∀・)「ああ、すいません」声を振り絞り、私はギコを呼び止めた。10 名前: ◆A4U6gCcMs2 [sage] 投稿日:2007/02/25(日) 18:20:01.50 ID:tepVhUWG0( ,,゚Д゚)「どうかしたか?」( ・∀・)「いえ、もしよろしければ、その被害者の年齢を教えていただきたいのですが」ギコは一瞬私を訝しげに眺めたが、やがて二十歳ぐらいだったかな、と教えてくれた。私が礼を言うと、ギコは今度こそ扉を開き、消えていく。しばらく佇んでいたが、やがて私は階上に向かうことにした。しょぼんさんに合図を送り、カウンターから厨房にある階段を上る。ギコが告げた名前。私の記憶に間違いがなければ、それはしぃの娘の名だ。年齢も、住んでいる場所も合致している。そんなはずはないという疑念が心の隅にある。しかし、悪い意味での確信が私の中で強く渦巻いていた。□□□□□□□□□
Mar 13, 2007
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□新しく追加した作品ヌードル韓国出る:http://thecrow.husuma.com/f_han-1_hitomi.htmlLocoPoco:http://pya.cc/pyaimg/pimg.php?imgid=35208たぶん同じ人が作った作品。絵ウマー空耳FLASHをもっと見たいと言う人はこちらへhttp://plaza.rakuten.co.jp/uzakopr/14000現在、トップページは試験的にああいう構造にしています。もう少ししたら直ると思うのでご了承を。
Mar 12, 2007
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101 名前: ◆A4U6gCcMs2 [sage] 投稿日:2007/02/17(土) 13:12:11.62 ID:KaUUj71H0彼は、典型的で、最低な転落をしてしまったようだ。何もかもを失い、遂には芋虫のように食い尽くされて死ぬ。他人にしてみれば自業自得でしかないだろう。私もそう思う。しかし、それでも妙な悲しさ、侘びしさのようなものは心から抜けきらない。私も、もしタイムマシンを開発していなければあのような末路を辿っていたかもしれない。その点、私は彼より優位であると豪語できるのだろうか。いや、これから彼と同じ道を進むことになるかもしれない。そうなれば、舌でも噛みきって死んだ方が楽だろうか。後を追う気にはなれなかった。しかし、すぐに立ち去る気にもなれなかった。結局、我に返って帰路についた時にはちょうどいい時間帯になっていた。地面の芋虫は、もはや残骸だけの存在になっていた。これからも、ドクオのような古い知り合いと出会うことがあるのだろうか。もしあるとして、そいつらはいったいどのような暮らしを送っているのだろうか。不意に、彼女の顔が明滅した。そうだ、彼女たちに会う可能性も、零ではない。102 名前: ◆A4U6gCcMs2 [sage] 投稿日:2007/02/17(土) 13:13:57.03 ID:KaUUj71H0バーボンハウスはすでに喫茶店として開店していた。だが基本的に客が多いのは夕方から夜にかけてのようだ。私はためらいもなく正面の扉から店内に入る。が、先客がいた。セーラー服を身につけている彼女は明らかに女子高生だ。背中まで伸びた黒髪がやけに目に映る。彼女はカウンターで、穏やかな表情を伴いながらオレンジジュースを飲んでいた。('、`*川「この人が、アルバイト?」その問いにしょぼんさんは小さく頷いた。へぇ、と私を観察する少女。両の瞳は、奥底まで見通せそうなほど澄んでいる。('、`*川「ああ、自己紹介します。 私はペニサス、ここの常連さんですよ。えっと、あなたは?」( ・∀・)「……モララー」('、`*川「よろしくおねがいしますね」108 名前:さるさんばっかり ◆A4U6gCcMs2 [sage] 投稿日:2007/02/17(土) 14:03:38.26 ID:KaUUj71H0その後、いくつかの話を聞かされた。彼女が17歳でもうすぐ受験生になるということ。一週間に一度ぐらい、勉強したりしにバーボンハウスにやってくること。兄がいて、その兄もまたバーボンハウスの常連であること。('、`*川「ここ、静かだから落ち着きますよね」彼女の前には数学の問題集と大学ノートが広げられている。隣に置かれているミルクティーからは湯気が立ち上っていた。難しい数式……ある種、懐かしいものを感じる。('、`*川「ただ欠点は、マスターさんが何も答えてくれないことです。 たまにわからない問題とか聞きたいんですけど」その間、しょぼんさんは口を開こうとしない。彼の三猿精神は揺らぐことを知らない。('、`*川「今も一つ、わからない問題が……そうだ、えっと、モララーさん。 教えてくれませんか?」突如、矛先が私に向けられた。彼女の指先は、微分の応用問題を示している。109 名前:さるさんばっかり ◆A4U6gCcMs2 [sage] 投稿日:2007/02/17(土) 14:07:35.97 ID:KaUUj71H0私はつっかえながらも、なんとかそれを解くことができた。他にお客がいなくてよかったと思う。('、`*川「なるほど、なるほど。教え方上手いですね」何度も頷きながら彼女は言う。お世辞と見抜きやすい台詞だった。('、`*川「よければ、これからも時々教えてくれませんか?」( ・∀・)「え、私が?」('、`*川「はい」苦慮するにも値しない。七面倒なことをわざわざ引き受ける気にはなれない。柔らかく断ろうとしたところで、しょぼんさんから追い打ちがかけられた。(´・ω・`)「いいんじゃないですか? 僕なんかよりずっと賢そうです」そしてまたグラスを磨く作業に戻る。こちらの反論には耳を傾けない、そういうシステムだ。渋々、私は頼まれることにした。まぁ一ヶ月に一度ぐらいなら大した不安にならないだろう。それに……私はもうすぐ、この家を出て行くつもりだ。二度と顔を合わせない可能性の方が高い。110 名前: ◆A4U6gCcMs2 [sage] 投稿日:2007/02/17(土) 14:08:33.30 ID:KaUUj71H0('、`*川「あ、もうこんな時間だ。兄さんが心配する」それほど遅い時間でもない。しかし彼女は急いで荷物をまとめはじめ、すっかり冷めてしまったミルクティーを一気に飲み干した。('、`*川「それじゃ、ありがとうございました」金を置くことを忘れずに、彼女は足早に店から出て行った。鈴の音が響く。(´・ω・`)「彼女、お兄さん子らしいです」二人残された店内でしょぼんさんはボソリと呟いた。そういえば、と聞きたいことがあったのを思い出す。( ・∀・)「ドクオ……という人物をご存じですか?」ああ、知っていますよ、と彼は磨き終えたグラスを棚に戻しながら答えた。話によると、ドクオは硬派なサラリーマンに見えたそうだ。時折口を開くと、出てくるのは会社の愚痴が多く、娯楽的な話をすることはほとんどなかったという。私は、ドクオが最後にやってきたのはいつかを尋ねる。彼は、一ヶ月ほど前だと答えた。111 名前: ◆A4U6gCcMs2 [sage] 投稿日:2007/02/17(土) 14:10:41.35 ID:KaUUj71H0ドクオは見栄を張っていた。解雇されたのは半年前だと言っていた。つまり、五ヶ月間嘘をつき通していたということになる。その間、奴はどのような心境だったのだろう。心苦しかったに違いない。しかし全くの他人で、三猿精神の持ち主であるしょぼんさんに事実を隠してどうなるというのだろう。(´・ω・`)「ドクオさんが……どうかしたんですが?」しょぼんさんの問いに、私は黙って首を振った。他人行儀というシステムはすばらしいと思う。つまり、相手を一定以上親しくしなければいつでも表面的な親切を受けることができるのだ。今の、しょぼんさんと私の関係のように。しかし、ドクオと付き合っていたときはそんなことを考えてすらいなかった。だから、彼との友人という深い関係が、私に悲しさを与えているのだろう。あれ以降、誰に対しても友情の類を見せずによかったと思う。112 名前: ◆A4U6gCcMs2 [sage] 投稿日:2007/02/17(土) 14:11:05.66 ID:KaUUj71H0しぃに対してもそうだった。彼女が愛しいとか、好きであるとは思わなかった。そうすることで、以後面倒になると気づいていたからだ。そもそも、彼女と会った時点ですでに私はタイムマシン制作を始めており、そしてそれが必ず成功すると確信していた。結婚してからも、彼女に「好きだ」というような言葉を発したことはない。ある時、彼女は子供を欲しがった。理由を聞くと、「これで離れられないだろ」と狡猾な笑みを向けられた。どうでもよかった。彼女の考えは甘すぎるとも思っていた。私は彼女の望みを叶えてやることにした。それはきわめて、事務的な作業だった。十ヶ月後、彼女は娘を出産した。嬉々として名前を考えている彼女の顔が、今でもなぜか脳裏に焼き付いている。
Mar 12, 2007
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82 名前:愛のVIP戦士[sage] 投稿日:2007/02/17(土) 12:31:37.86 ID:KaUUj71H0第三話僕とモララーさんがぎこちない同居生活を始めて十日ほどが経過した。彼は僕の頼み事を忠実にこなしてくれる。まるでロボットのように、黙々と掃除機を走らせるのだ。その後ろ姿が少し、怖い。思えば、彼と僕とでは一つしか歳が違わない。でも、僕らの間にはあまりにも高い壁が聳えているような気がした。凹凸すらない、こえることなど到底叶わない壁だ。そして僕は、今以上彼に近づくことができないでいる。午前中、モララーさんに留守を任せて買い物に行くことにした。店で使うものは配達されるので必要ない。自分たちで食べるものが必要なのだ。そういえばモララーさんがラジカセの類のものを欲しがっていた。……資金的、そして重量的に余裕があれば購入しておこう。まだ彼の記憶は戻らないようだ。だとすれば、あのテープが唯一の手がかりということになる。警察に行きましょうか。一度そう提案したことがある。しかし彼は拒否した。瞬間、連続殺人犯を彷彿としてしまっていた。すぐに打ち消したが。ともかく彼に行く当てはないのだ。僕としても、彼がいても何ら不都合な点はない。83 名前:愛のVIP戦士[sage] 投稿日:2007/02/17(土) 12:32:26.59 ID:KaUUj71H0駅前のスーパーに向かう。今日は消費税を払わなくて済む日だ。僕が子供の頃、駅前周辺は比較的閑散としていた。通行する人もまばらで、まだまだ発展途上といった風景だった。でも最近ではすっかり騒がしい、若者のたまり場になっている。ゲームセンターやカラオケ店などが建ち並び、治安もそれなりに悪くなってしまっているらしい。思い描いていたような近未来の景色ではない。ただ、都会の過密地域をそのままこの街に持ってきたような形だ。僕は騒がしいのはあまり好きじゃない。それはカフェバーという環境で育ったからだろうか。とにかく、足早にスーパーに向かうことにする。パチンコ屋からでてくる彼に気づいたのはその時だった。自動ドアが開いたことによって店内の喧噪が一層大きく耳を刺した。顔をしかめて振り向くと、そこに見慣れた人が立っていたのだ。('A`)「また負けちまった……クソ」ドクオさん。週に一度、必ず足を運んでくれる四十代半ばの常連さんだ。ほとんど口を開くことはないけれど、時々会社での出来事などを僕に話してくれる。彼は僕に気づくことなく、路上に唾を吐き捨てると雑踏の中に紛れていった。91 名前: ◆A4U6gCcMs2 [sage] 投稿日:2007/02/17(土) 13:03:19.53 ID:KaUUj71H0彼自身が話すドクオさんとは、上司になじられノイローゼ気味の生真面目な会社員だった。そんな台詞から僕は勝手に彼を大衆娯楽になど興味を持たないエリートだと思いこんでいた。だから、パチンコ店から出てきた、少しくたびれた様子のドクオさんが少々信じられないのである。スーパーでできるだけ食料を買い込み、帰宅する。( ・∀・)「……お帰りなさい」掃除機をかけていたモララーさんが顔を上げた。それを見て、ラジカセのことを思い出した。(´・ω・`)「ああ、すみません。 ラジカセを買ってこようと思っていたのですが」( ・∀・)「いいんですよ。 なんとなく、あのテープは手がかりでないような気がします」彼は年上なのに敬語を使う。以前もっとくだけた話し方をしてください、と頼んだのだが遠回しに拒否された。この方が話しやすいから、らしい。93 名前: ◆A4U6gCcMs2 [sage] 投稿日:2007/02/17(土) 13:07:07.34 ID:KaUUj71H0過去、およそ二十年前に僕は彼に出会ったことがあるような気がする。脳裏に朧気ながら映るその姿は、現在の彼と全く同じなのだ。顔も形も身につけているコートまでも。しかしそれはありえない。あれから長い年月が経っているのだ。記憶の中の彼が年老いていないはずがない。事実、彼は二十五歳だと言っている。だが、それでもなお現実と記憶の両方に存在している人物を重ね合わさずにはいられない。彼がいなければ、現在の僕はないのだから。いつかそれについて彼に問いただしてみたいと思う。もしかしたら記憶の彼の親類なのかもしれない。だから……そのためには、彼に記憶を取り戻してもらわなければならないのだ。勝手な理由であるとは自覚している。しかし、寝食の代償としてそれぐらいは貰ってもいいだろうと、心の隅で考えているのも事実だ。94 名前: ◆A4U6gCcMs2 [sage] 投稿日:2007/02/17(土) 13:07:36.42 ID:KaUUj71H0カウンター内に飾られた父の写真が目にとまる。そこに置いてあるのは僕のためというよりもむしろ、名残惜しむお客さんのためだ。でも、僕もそれを眺めるたびに元気づけられる。佇む父は、僕に無言で何かを訴えているような気がした。四ヶ月前、父は交通事故で亡くなった。今日の僕のように、買い物に出かけているところを後ろから来た車にはねられたらしい。病院に駆けつけたとき、父はもう息を引き取っていた。不思議と、哀しみはすぐに消えてなくなった。そのかわり、これからは自分が「バーボンハウス」を経営していかなければならないのだという使命感が重くのしかかっていた。これからは独りでやっていく……葬儀の席で集まった親類にそう宣言した。父がいなくなったのは物寂しいが、それに浸ってもいられない。幸い店は順風満帆。もう何も、憂いはない。□□□□□□□□□95 名前: ◆A4U6gCcMs2 [sage] 投稿日:2007/02/17(土) 13:08:08.98 ID:KaUUj71H0嘘の数は、日を重ねるごとに増えていく。今もまた、現在進行形で嘘をついている。病院で治療を受けている。医者には、三日に一回の割合で来いと言われている。そんなものは全て虚言だ。その場を乗りきりための妄言だ。ご丁寧に治療費を出してくれるのだが、後でこっそりとカウンターにあるレジに入れておく。今は、適当に時間を浪費しなければならない。このような生活にも限界があるだろう。いつまでも記憶が戻らない、といって彼に寄生しているわけにもいかない。かといって生き延びる目処も未だにたっていない。……まぁ、元々生きていこうという意思があってタイムスリップしたわけではないのだ。単純に逃げるためにやってきた未来。そこで普通の生活ができるなど、自分は最初から考えていなかったはずだ。そろそろあの家を離れよう。戻ったらまず、荷物をまとめよう。そう、決意する。96 名前: ◆A4U6gCcMs2 [sage] 投稿日:2007/02/17(土) 13:08:48.71 ID:KaUUj71H0掃除をしているときや食事をとる時などに、彼のどこかあざとい視線が感じられる。様子を窺い、見透かそうとするような目だ。それが何を意味するのか結局わからないままだが、いつしかアクションを起こすことは確実だろう。いろいろ聞かれる前に離れるのが得策だ。しかし……出会った覚えはない。彼に観察される理由も全く見当たらないのだ。二十年前、彼は四歳ほどだろうが……。徒歩十分ほどのところにある、少し大きな公園のベンチに腰を下ろす。医者に行くと言って出たときは、きまってこの場所が暇つぶしの定位置になっている。ここは二十年前も変わらぬ様相を呈していた。それなりの広さが災いして、ホームレスが住居を構えている。なので子供はあまり寄りつかず、遊具も錆が浮いたまま放置されている。('A`)「モララーじゃねえのか!?」その声に反射的に見上げると、私以上にみずぼらしい格好をした男が立っていた。そして、私はその顔に、微かな旧友の面影を感じた。ドクオ。中学時代の、唯一で最後といってもいい友人である。('A`)「……い、いや。そんなはずがねえな。 すまねえ。中学時代の友達に似ていたもんで、つい声をかけちまった」97 名前: ◆A4U6gCcMs2 [sage] 投稿日:2007/02/17(土) 13:09:43.96 ID:KaUUj71H0ここ、座っていいか? とドクオは私の隣を指さす。頷くと、彼はよいしょ、と座り込んだ。くたびれた背広姿はすっかり老け込んでいた。顔には皺が刻み込まれ、髪にはところどころ白が混じっている。霜焼けで真っ赤になった手は小刻みに震えていた。私も、本来このような姿になっていたはずなのか。いいようのない悲壮感が私を包んだ。('A`)「……ああ、あんた今、暇かい?」ええ、まぁ。と返事するとドクオは小さく溜息をついた。('A`)「これも何かの縁……って言っちゃなんだが、ちょっと話を聞いてくれねえか? クソつまらねえ、俺の堕落劇なんだが」彼は一度大きく息を吸い込み、咳と共に吐きだした。吹きすさぶ風が、彼の髪の毛をかき乱す。99 名前: ◆A4U6gCcMs2 [sage] 投稿日:2007/02/17(土) 13:11:19.56 ID:KaUUj71H0('A`)「半年前……会社、辞めさせられたんだ」話しづらそうに彼は口を動かす。しばらく、声をだすという動作をしていなかったようにも感じられる。('A`)「まぁ入社当時から窓際みたいなもんだったからな。いつか切られるのはわかっていた。 デスクに座っててもやってることといったらインターネットぐらいだからな」彼は地面の一転を見つめていた。つられて見下ろすと、そこで一群の蟻が何かの幼虫に集っていた。('A`)「でもな、酒飲みとギャンブルだけはやめられねえんだ。 ……はは、金も入ってこねえのにそんなことやってんの、俺。 そしたらまぁ見る間に借金が膨れあがってよ。 今三百万ぐらいになったかな。毎日のようにヤーさんみたいなのがどやしに来やがんの。 ……ま、今朝家も捨てちまったからな。これで追われる心配もちょっとは減るだろ」一匹の蟻が芋虫の胴の一部を食いちぎり、巣に向かって歩いていく。ドクオの話に私は並でない衝撃を受けていた。ではそれを見せては不自然だろうと、無表情になるよう努める。100 名前: ◆A4U6gCcMs2 [sage] 投稿日:2007/02/17(土) 13:11:38.46 ID:KaUUj71H0過去、時折話し合っていた相手が借金取りに追われる生活をしているのだ。年老いているという事実だけでもショックだったというのに。('A`)「ほれ、あそこにテントが見えるだろ?」ドクオが指さす方向に、青いテントとダンボールの家が見えた。この公園の中心部には二十年前からホームレスの集団が居座っている。その状況は、今も変わっていないらしい。('A`)「俺ももうすぐあそこに仲間入りさ……。 近頃、殺人事件があったからあんまり近づきたくないんだがな」乾いた笑い声が響く。ドクオは蟻を踏まないよう、慎重に立ち上がった。('A`)「いや、しけた話をしちまって申し訳ない。 しかし最近、話し相手も見つからなくてなあ。パチンコ台はしゃべっちゃくれねえし」( ・∀・)「いえ……」それじゃあ、とドクオは背中を向け、肩をすくめて歩き去った。見送ったあと、私も席を立つ。
Mar 12, 2007
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59 名前:愛のVIP戦士[] 投稿日:2007/02/17(土) 12:13:43.60 ID:KaUUj71H0□□□□□□□□□私はおそらくバカだ。彼の申し出を受けるなど、あってはならなかった。(´・ω・`)「今夜、うちに泊まっていきませんか?」その言葉を聞いたとき、私はまず耳を疑った。だがどうやら幻聴でないと悟り、しばし沈黙。ともかく眠かった、そして疲れていた。だから私は数度のやりとりの末、彼の親切に甘んじることとなった。二階の一室に案内された。どうやらこの建物は、一階が店舗、二階と三階が生活用スペースとなっているらしい。途中で彼からいろいろ聞かれたので、矛盾がないよう注意しながら過去を捏造した。それに納得すると、彼は巷で発生している連続殺人について話してくれた。若干の違和感を覚えたものの、それは私にとってどうでもいいことだった。それ以降の記憶はあまりない。どうやら、布団を借りた後すぐに眠ってしまったようだ。60 名前:愛のVIP戦士[] 投稿日:2007/02/17(土) 12:14:02.32 ID:KaUUj71H0起きたとき、時間を把握することは容易でなかった。その部屋は使われていないらしく、一切の家具がおかれていない畳の部屋だ。もちろん、時計もない。窓はあるが、そのすぐ向こうに雑居ビルの壁が立ちはだかっているため、陽光もほとんど注いでこない。半分寝たまま布団を部屋の隅にたたんでおく。ついでに着替えを済ませる。溜まる一方であろう洗濯物はどう処理すればいいのだろう。いや、そもそもこれからどうやって生活していけばいいのか。自慢にもならないが現在無一文である。と、カバンに突っ込んだ手の先に、何か硬いものが触れた。直方体の小さな物体を取り上げる。それは一本の黒いテープだった。いかにも昭和的な、二十年前でも廃れかけていた産物である。しかし……一つ疑問がある。私はこんなものを入れた覚えがない。そもそも、テープなど持っていない。ではいったい誰が。皆目見当が付かない。廊下を適当に歩いていると、質素なダイニングルームに出ることができた。左手にキッチンが見える。そして食卓に……「よければ」と簡潔なメモが添えられた、すでに冷えきったトーストが皿の上に鎮座していた。辺りを見回し時計を探す。壁時計が、11時30分を示していた。いくらなんでも寝過ぎた。安堵していられる状況でもないというのに。硬くなってしまったトーストを囓りつつ、これからについて考える。まず、タイムマシンの状態を検証しにいきたい。あの時は、希望が頭を占めていたため、その場の状況確認すら怠っていたから。61 名前:愛のVIP戦士[] 投稿日:2007/02/17(土) 12:14:34.93 ID:KaUUj71H0それから……どうするべきか。損傷具合を確認して修理する。それから……。別の時間に飛んでも今と同じような状態になるかもしれない。或いは、悪化するかもしれない。だが私には後ろに道がない。結局修理し、別の時代に飛ぶことは運命的な必然だ。立ち止まるときは、死ぬときだろう。その時、階段を上る音が聞こえた。振り返ると、ちょうど彼がダイニングルームに入ってくるところだった。(´・ω・`)「今、お目覚めですか。ああ、冷蔵庫にバターが入っていますよ」( ・∀・)「親切にどうも。しかし、いつまでも好意に甘えるわけにもいきません」存外普通の文句を並べる。それは心にもない言葉だった。ただ、頭に出てきた最善と思われるフレーズを口にしたのみである。(´・ω・`)「何を言ってるんですか。あなたは記憶喪失なんでしょう?」そういえば、そんな嘘をついた。69 名前:愛のVIP戦士[] 投稿日:2007/02/17(土) 12:20:56.16 ID:KaUUj71H0(´・ω・`)「行く当てがあるとしてもそれがどこかわからない。 記憶を取り戻せるまで、ここでゆっくりしてもらって構わないんですよ? 部屋も空いていますし」( ・∀・)「……あなたは、なぜそこまで私に手をかけてくれるんですか? 昨日出会ったばかりの、見ず知らずの他人同士じゃないですか」私がそう言うと、彼は押し黙り、キッチンに向かった。冷凍ピザを取り出し、袋を破り始める。どうやらこれから昼食の時間らしい。(´・ω・`)「……特に、理由はないですよ。 単純に、見捨てられないだけなのです」嘘だ、と思った。二十年ごときで、人間の心がそれほど温かくなるとは思えない。何か理由があるのだろうが、追及するのはやめておいた。それは特に、私に利益をもたらしそうにないからだ。昼食の誘いを断って、私は彼に出かけると申し出た。70 名前:愛のVIP戦士[] 投稿日:2007/02/17(土) 12:21:19.31 ID:KaUUj71H0わかりました。気をつけてください。必要ない荷物は置いておいて結構です。夜までに帰ってきていただけると助かります。それらの親切味溢れる言葉に作り笑いを浮かべる。そして一つだけ質問した。( ・∀・)「テープを再生する機械はありますか?」(´・ω・`)「昔、父が持っていたのですが処分しました。 父はもう、亡くなってしまったので」なぜか悲痛に思えるつぶやき方だった。私はそうですか、と言って何も持たずに外に出た。71 名前:愛のVIP戦士[] 投稿日:2007/02/17(土) 12:21:38.21 ID:KaUUj71H0陽光が燦々と降ってくる。このあたりの路地は昼間でも閑散としているようだ。人通りもまばらで、車の騒音もあまり聞こえない。私は無事、小屋までたどり着けるだろうか……。そんな、一抹の不安を抱きながら私は小山の方に足を向けた。途中、昨日と同じコンビニに立ち寄った。新聞を読むためだ。買うお金がないので、立ち読みで勘弁してもらおう。数分読んでわかったことは少なかった。しかし、この世界の現状が少しばかり理解できた。目立った革命はすでに終焉を迎えたらしい。これ以上の発展は見込めないということだろうか。……新聞に記述されていたことに基づく私の推測だが。まぁ、予測されていた未来の一つのパターンだ。不思議なことに、それ以上深く知ろうという気も起きない。所詮外見に左右されているということだろうか。新聞にはしょぼんさんが言っていた連続殺人犯のことも載っているようだった。だが特に興味もないので、その部分は読まなかった。72 名前:愛のVIP戦士[] 投稿日:2007/02/17(土) 12:22:13.12 ID:KaUUj71H0小屋周辺は木々が日光を遮っているため、普段は薄暗い。だが冬で、その葉がほとんど地に伏しているため、いくらかの明るさは保たれていた。肩で息をしながら、私は小屋の扉を開けた。よく誰にも見つからなかったものだ。やはり、この場所を研究所にして正解だった。開いたままの卵形タイムマシンが残されている。近寄って外見からチェックを始める。いくつか傷ついているが深刻なものではない。では、内部の故障なのだろう。制御のためのノートパソコンは叩いても動作しない。問題はこちらにあるのだろうか。そう考えて、自分が今、何も計画を持っていないことに気づく。漠然と感じていたがまず絶望的に資金が足りない。というか無い。次に時間的な問題。この装置をつくりあげるまでに五年以上がかかった。修理とはいえ、独力でするとなると一年ぐらいは優にかかってしまうのではないか。それまで自分はどう生活すればいいのだろう。しょぼんさんの世話になるのは避けたかった。好意でしてくれているのならばそれを受け入れるのも一手だとは思う。しかし彼からは、見逃せない影が感じられるのだ。それがなんなのか。詳細は不明である。74 名前:愛のVIP戦士[] 投稿日:2007/02/17(土) 12:22:39.09 ID:KaUUj71H0(´・ω・`)「父はもう、亡くなってしまったので」そういった彼の顔は沈痛に浸されていた。まるで言葉にしてはき出すことで、父という存在を消したいと思っているかのように。そうでもなければ、わざわざ「父が死んだ」などというネガティブな発言をするだろうか。私は彼の家族関係を聞いたのではない。そんなものに興味はない。ただラジカセがあるかどうかを聞いただけだ。一通りの確認を終えて私は立ち上がった。部品がいくつか破損している。まずはそれを修理しなければならない。そう考えて、何かもの悲しい気分になった。唐突に妻……しぃのことを思い出した。彼女が家を出て行ったのは、私が時間跳躍する二日前のことだった。79 名前:愛のVIP戦士[sage] 投稿日:2007/02/17(土) 12:30:10.45 ID:KaUUj71H0とにかく不思議な女性だった。大学時代に知り合って、私のような人間に懐いていた。ある日、交際を迫られた。(*゚ー゚)「危なげだから、私がそばにいたげよう」そんなことを言っていた。その時の答えをいまいち覚えていないが、その後のことから考えれば、私はおそらく承諾したのだろう。その後しばらくして、私は初めて彼女の名前が「しぃ」だということ、三歳年下であることを知った。誕生日も教えられた。プレゼントを要求されたので花を贈った。爆笑された。私は彼女に小屋の場所を教えていなかった。普段は彼女に対し、特に主張をしなかったが、彼女が小屋までついてこようとするのは断固として拒否した。タイムマシンを完成させる一年ほど前、「とりあえず一緒にいようか」とプロポーズされたので頷いた。その時私は二十四で、彼女は二十一だった。相思相愛だったといえば嘘になる。私は彼女のことを微塵も想っていなかった。それでも彼女は私と共にいた。いつしか、その空間は私にとって安らぎとなっていた。愛していた対象があるとすれば、それは空間であって彼女ではない。80 名前:愛のVIP戦士[sage] 投稿日:2007/02/17(土) 12:30:52.77 ID:KaUUj71H0(´・ω・`)「お帰りなさい」「バーボンハウス」に戻ると、しょぼんさんが一人で掃除をしていた。時計を見上げる。まだ、夕方にもなりきっていない。私に気づくと、彼は掃除機を止めて振り向いた。(´・ω・`)「成果はありましたか?」一瞬心が震えた。タイムマシンについて気取られたのではないとはわかっている。ただ私が外へ自分自身の手がかりを探しに行っていたと思ったのだろう。私は無念を顔にはりつけて首を横に振った。(´・ω・`)「そうですか……いや、でもいつか何かが見つかるはずです。 それまでうちでゆっくりしていただいて結構ですよ」ほほえむ彼が、何か狡猾な天使のように見えてならない。私の猜疑心は罪だろうか。ともかく、私は言いたいことを言うためにあのう、と声をかける。81 名前:愛のVIP戦士[] 投稿日:2007/02/17(土) 12:31:08.77 ID:KaUUj71H0( ・∀・)「私に何か手伝うことはありませんか?」(´・ω・`)「と、いいますと?」( ・∀・)「どうやら私はこの家にしばらくお世話になってしまうようです。 ですが何もせずただのうのうと居座るつもりは毛頭無いのです。 掃除でも他の雑用でもいいですから」初め、彼は断っていた。それには及びません、この店は小さいですから、私一人で十分やっていけます、と。しかし私が無理矢理のように懇願すると、わかりました。それでは、明日から開店前の掃除をお願いします、と妥協してくれた。単なる良心ではない。後々、問題を残しておきたくないが故の発言である。生き延びる……或いは彼の保護を受けなくて住む算段がつくまで、せめて奉仕活動でも行っておかなければ。このような考えを持っている限り、私と彼の間にある隔たりは解消されそうにない。そして、同様のことをおそらく彼も思っているはずだ。再び耳に入り始めた掃除機の音の中、ふと、そんなことを感じた。だがそれでいいとも思った。他人行儀とは、すばらしい言葉だ。□□□□□□□□
Mar 12, 2007
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27 名前:愛のVIP戦士[] 投稿日:2007/02/17(土) 11:46:53.15 ID:KaUUj71H0第二話多分僕は相当のバカだ。たとえ父が亡くなって部屋が空いているといっても、何の面識もない男を泊めるなんてどうかしている。ただでさえ今、周囲で連続殺人事件が勃発しているのだ。その点で見れば、彼は十分に怪しい。……とはいえ、あの状況で放っておくというのもできなかった。なぜだろう。やはり、似ているから、だろうか。昨夜。扉に引っかかっている木札を「OPEN」から「CLOSE」に変えた。これで僕はマスターではなくなり、一介の二十四歳男性となったわけだ。ジョルジュさんに置き去りにされて、自失の中に微かな困惑を垣間見せている男の人は、椅子に座ったまま動かない。僕は彼の目の前に、さっきつくったばかりの水割りを差し出した。とりあえず、事情を聞こうと思ったのだ。僕が名乗ると、彼も小さな声で返事してくれた。モララーというらしい。どこかで聞いたことがあるような気がするけど、はっきりとは思い出せない。(´・ω・`)「それで……いったいどんな事情があったんですか」( ・∀・)「……まぁ、いろいろあったんです」水割りを手に取るが飲もうとはしない。氷がグラスを打つ音だけが響く。28 名前:愛のVIP戦士[] 投稿日:2007/02/17(土) 11:47:11.93 ID:KaUUj71H0(´・ω・`)「これから、行く当てとかは」( ・∀・)「……別に、どこにも」ふて腐れたような口調。僕は押し黙ってみる。( ・∀・)「あの、すいません。私、酒は飲めないんです」しばらくして、モララーさんはきまり悪そうに呟き、水割りをテーブルの上に置いた。瞬間、ふっと空気が少し和んだような気がした。(´・ω・`)「そうですか。じゃあ、コーヒーは」モララーさんが礼を述べるのを確認し、僕は背後の棚からコーヒー豆を取り出す。その頃、僕はやっと彼に対する心の中の違和感に気づいた。その正体はおそらく既視感……それも、ずっと昔の記憶が掘り起こされたようだ。コーヒーをつくりながら、その既視感についてしばらく考慮してみる。でも、頭のビジョンには霞がかった記憶が映るだけで、はっきりとは知ることができない。(´・ω・`)「どうするつもりですか?」( ・∀・)「何も考えてないですが」30 名前:愛のVIP戦士[] 投稿日:2007/02/17(土) 11:47:45.58 ID:KaUUj71H0この人は何を目的としているのだろう。着ているコートも、時代遅れではあるが汚くはない。見れば見るほどこの人がホームレスでなく、それまでごく普通の暮らしをしていたように思える。しかしいくら推測しても仕方ない。尋ねてもおそらく、答えてくれないだろう。次の言葉は、ほとんど自然に口から飛び出した。(´・ω・`)「今夜、うちに泊まっていきませんか?」モララーさんは驚いたようにこちらを見た。それはそうだろう。僕自身も驚いているのだから。気まずい沈黙が流れ、僕はとりあえずできあがったブラックコーヒーを彼の前に置いた。だがモララーさんは微動だにしない。僕の台詞を気にしてしまっているのだろう、釈明の文言を考えなければならない。(´・ω・`)「あ、その。僕はここに一人暮らししてて……それに部屋も空いてるんです」実際、四ヶ月前に死んだ父の部屋は綺麗に片付けた後、全くの手つかずになっていた。でもその事実は彼に告げない。「気味が悪い」とでも言われるとおそらく僕はショックを受けてしまうからだ。32 名前:愛のVIP戦士[] 投稿日:2007/02/17(土) 11:48:11.61 ID:KaUUj71H0いいんですか、と彼は確認する。それに僕は、若干戸惑いながら頷く。直後、僕は彼の口から二度目の感謝の言葉を聞いた。コーヒーの焦げたような香りが鼻をくすぐる。( ・∀・)「このコーヒー、おいしいですね」(´・ω・`)「……めっそうもないです」二階の元父の部屋に案内するまでの道程で、僕は彼からいろいろなことを聞き、いろいろなことを知ることができた。年齢は僕より一つ年上。記憶喪失になってしまったらしく、ここ最近の出来事が全く思い出せない。身体的な情報についても、名前と年齢以外は曖昧だ。気がつけば路上に旅行カバンとともに座り込んでいて、ジョルジュさんに拾われた。( ・∀・)「何か、事件に巻き込まれたんですかね」自嘲するように、彼は笑って言った。僕は、件の連続殺人を思い出さずにいられない。最初に発生したのは昨年十一月二十八日、深夜のことだった。若い女性が路地を歩いていると、突然背後からナイフで刺されたという。すぐに発見されたが女性は出血多量で死亡、それはしかし、ただの発端でしかなかった。57 名前:愛のVIP戦士[] 投稿日:2007/02/17(土) 12:13:05.78 ID:KaUUj71H0二件目は十二月の初旬、橋の下に住むホームレスが犠牲になった。犯行時刻や使われた凶器が同じらしく、警察は同一犯の犯行と見て捜査しているようだ。三件目はクリスマスのやはり深夜、公園に住む同じくホームレスが被害者となってしまった。以降、犯人は息を潜めている。しかしながら安心はできない。何せ犯行の頻度はそれほど高くない。期間的に考えれば、そろそろ四度目の犯行があってもおかしくはないのだ。連日報道されるそれらのニュースは、僕ら周辺住民の不安をいたずらに煽る。……というようなことをモララーさんに事細かに話した。すると彼は、少し意外そうに私を見つめたが、やがてそうですか、と頷いた。モララーさん自身が犯人とは思えない。もし犯人ならば、ジョルジュさんに声をかけられた時点で何らかのアクションを起こしているはずだ。僕は半ば安心していた。押し入れから布団を取り出すと、モララーさんは自分ですると言って分厚い布団を受け取った。(´・ω・`)「暖房とかなくて申し訳ないですが」( ・∀・)「いえ、お気遣い無く」彼の声からは眠気が見て取れた。だから僕はそれ以上何かお節介せず、ただ「早めに休んでください」と声をかけてその部屋から離れることにした。58 名前:愛のVIP戦士[sage] 投稿日:2007/02/17(土) 12:13:25.94 ID:KaUUj71H0そして、朝。今日は一応定休日ということになっている。昨日から再開したばかりなのにいきなり休みというのも考え物だったが、モララーさんのこともあるし、何より定期的に訪ねてくる常連さん主体の店だから無意味に開けても仕方ない。いくら遅く寝ても、六時半頃には目が覚めてしまう。おそらく高校時代、部活の早朝練習に間に合うためにつけた習慣だ。寝ぼけ眼で起き上がり、着替える。今日はどうしたものかと自失のカレンダーを見つつ物思いにふける。とりあえず、お店の掃除をすることに決める。ついでに棚の整理もしておこう。適当に朝食をとって、七時半、僕は階下に向かった。もっとくつろげばいいのに、と自分でも思う。でも今の僕には、バーのマスター以外に為すべき仕事がない。そして仕事とは、僕自身を体現している。ような、気がする。
Mar 12, 2007
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ネットサーフィンしてたら見つけたこんな問題。http://r27.jp/quiz/across-family/川渡りの問題は色々なものがありますが、その中でも難易度が高いものだと思います。最も少ない手は17手で、僕は3回目で成功しました。===================================以下、ヒントなので注意(白い字にしてます)1、メイドと犬、父母はペアでの行動が多い2、最初に行くのはメイドと犬3、その次はメイドと息子(娘)で、帰りはメイドと犬こんな感じで頑張ってみてください^^
Mar 10, 2007
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18 名前:愛のVIP戦士[] 投稿日:2007/02/17(土) 11:44:06.01 ID:KaUUj71H0( ゚∀゚)「……おおう?」奇異な声が至近距離から聞こえてきたので顔を上げてみる。そこに、だらしなくスーツを着こなしている中年親父の典型みたいな男が立って、こちらをのぞきこんでいた。息がやたらと酒臭い。( ゚∀゚)「なんだお前……ホームレスか何かか? いや、それにしちゃあ知的な顔してるよな」驚くほど馴れ馴れしい口調で話しかけてくる男。一つ訂正したい。私の顔は知的でなく、病的の方が正しい。どうやら五十過ぎらしい中年男は私に興味を持ったらしく、更に言葉を続けた。( ゚∀゚)「俺はジュルジュってんだが、お前は?」( ・∀・)「……モララー」何も考えずに答えてから、しまったと心の内で呟いた。ここは二十年後の世界である。もしかしたらこの男は私のことを知ってしまっているかもしれない。あまつさえ、知り合いである可能性すら存在するのだ。20 名前:愛のVIP戦士[] 投稿日:2007/02/17(土) 11:44:50.20 ID:KaUUj71H0だが、男は私の身分に気づいた様子もなく、ただ知らねえな、と呟いただけだった。私にも彼に見覚えはない。安堵している私に、しつこい男の質問は続いた。( ゚∀゚)「行く場所、ねえのか?」( ・∀・)「……特に、どこにも」( ゚∀゚)「ホームレスなのか?」( ・∀・)「住むべき家はおそらくありません」あまりのしつこさに立ち去ってやろうかと思う。しかし体が地面に粘着し、なかなか離れない。のしかかる疲労の中、だんだん男の言葉が曖昧に聞こえてきた。だから私も曖昧に返事をし続けた。どうせ、大したことのない問答だと思いこんでいたのだ。しかし、次の瞬間男は私の腕を引き強引に立ち上がらせた。( ゚∀゚)「じゃ、行くか」( ・∀・)「……どこに?」( ゚∀゚)「言っただろう? バーボンハウスだ、すぐそこにある」22 名前:愛のVIP戦士[] 投稿日:2007/02/17(土) 11:45:06.62 ID:KaUUj71H0いつの間にか、どこかへ行く案配になっていたらしい。この歳になって誰かに手を引かれるというのもなかなか味わえないものである。かといって、決して味わいたくないが。歩くこと五分。三階建ての小さなビルのような建造物が目に入った。一階部分に「バーボンハウス」と英語で記された看板が輝いている。その前で男は立ち止まった。どうやら、ここが目的地らしい。鈴の音が扉の上部から響き渡った。カウンターに立つ若い男が軽くお辞儀をした。(´・ω・`)「……いらっしゃい」( ゚∀゚)「おう、しょぼん。五日ぶりぐらいだな」23 名前:愛のVIP戦士[] 投稿日:2007/02/17(土) 11:45:37.75 ID:KaUUj71H0それほど広くない店内にはカウンターに椅子が六つ。そしてテーブルが二つとそれぞれに椅子が四つ。内装は喫茶店のようで、だが若い従業員の背にある棚はバーのようで。カフェバーというやつだろうか。クラシック音楽が流れ、非常に落ち着いた雰囲気が漂っている。従業員は彼一人なのだろうか。だとすれば、彼が店主か。私と同程度の若さだということに、少々驚きを覚える。促されるままカウンター席に座り頬杖をつく。隣で行われる会話はほとんど耳に入らなかった。しかし、男が従業員に一方的に話していることはなんとなく感じ取れた。だが一部分、そこだけ妙に大音量で耳を刺したような気がした。( ゚∀゚)「ついにこの前の日曜日、家内に逃げられちまったよ。しかも子供たちまで連れてな ……いや、そりゃ俺も悪いとは思うぜ? 毎日毎日飲んだくれてよ、でもそいつは性分だから仕方ねえよな。それに金はちゃんと家に入れてるってんだ。 ……ったく、家事なんて俺、生まれてこの方やったことねえんだ。これからどう生きろって言うのかね」24 名前:愛のVIP戦士[] 投稿日:2007/02/17(土) 11:45:55.98 ID:KaUUj71H0直後、従業員が私の顔を観察していることに気づいた。気取られただろうか。以後も会話は続き、私は暇を持てあましていた。ここにきて眠気が襲ってくる。そして睡眠の中に落ち込みそうになったとき、男が席を立つ音が聞こえた。( ゚∀゚)「帰るわ」閉まる木製の扉。鈴が鳴る。静かな店内に二人取り残された。店主は私を見やりながら片付けを始めた。……なんなのだろう、この状況は。□□□□□□□□
Mar 9, 2007
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11 名前:愛のVIP戦士[] 投稿日:2007/02/17(土) 11:41:47.00 ID:KaUUj71H0タイムスリップ及び未来というものに憧れたのはいつ頃からだったろうか。おそらく、小学校時代だったと思われる。特に急ぐ必要もなかっただろうに。あの頃、未来は絶対にやってくるものだったはずだ。その頃の私はとかく漫画を読むことが好きで、特に「ドラえもん」が大好きだった。未来からやってきた青狸は、私のような落ち零れ少年を手助けし、成長させる。とはいえ、当時の私にとってドラえもんはただの便利屋としか映っていなかったのかもしれない。夢を実現させようと本気で思いはじめたのは大学に入学したての頃、両親が交通事故で死んだ直後のはずだ。裕福な家庭だったため、遺産は十分すぎるほど相続できた。親族と呼べる人間がいなかったことも幸いした。近くの静かな小山の中に無断で小屋を建て、そこを研究所と称して引きこもった。タイムマシンなどできるわけがない……そんな当然すぎる意見が周囲を席巻していた。だが私には関係なかった。ひたすら夢……いや、むしろ確実に到来するとわかっている先の時代に突き進んだ。そして、完成させた。まるでカプセルホテルの個室のような空間は独自の理論上時空を超えることができる。過程にはいろいろあったような気がする。まず、結婚したのは確定的な事実だ。それを完成させたとき、私はほとんどのものを失っていた。妻も、娘も、財産も。最早後ろに道はなかった。ひたすら前に進むほか、生きることは難しくなっていた。13 名前:愛のVIP戦士[] 投稿日:2007/02/17(土) 11:42:15.74 ID:KaUUj71H0三メートル四方の小屋は夏の熱気で充満している。中には卵のような形状の物体が一つと、様々な工具類、それにコードで繋がれたパソコンが数種。卵には人一人が入れるよう設計されている。殻の中は殊更暑いことだろう。この場に空調を設けなかったのはミスだったか、などと今更考えてみる。汗を拭い、最後のキーを押した。途端。卵の殻は真ん中で割れ、空間が露わになる。そこにはあらかじめ、札束を一つと必要な衣類を詰めたカバンを入れておいた。さながら、旅行気分である。蝉のけたたましい叫び声が、木製の壁の向こう側から耳を刺した。年代を2100年と設定する。それから、遠隔操作用のリモコンを掴んで卵の中に足を踏み入れた。毛布一枚だけ敷かれた卵の底に横たわる。リモコンを操作し、卵の殻を閉じた。全ての音が遮断された。無音の空間で目を閉じ、これでいいのかとしばらく黙考する。だが、すぐさま考えることなど何もないことに気づいた。もう後悔するべき事項は残っていないのだ。妻は物心つかぬ娘を抱き、二日前に家を出た。それで、私と繋がりのある親族はいなくなった。定職に就いていたわけでもない。誰かが、私がいなくなったと気づいても行方不明と処理され、それまでだろう。リモコンの、一際大きな赤いボタンを押し、再び目を閉じた。今度目覚めたときには約百年後に時間跳躍……もとい、タイムスリップしていることだろう。静かな電子音が、私の体を包んだ。14 名前:愛のVIP戦士[] 投稿日:2007/02/17(土) 11:42:37.59 ID:KaUUj71H0気がつくと、電子音は途切れていた。果たして成功したのだろうか……殻の中からでは判断できない。頭の上にあるスイッチを押そうとしてしばし思い悩む。目の前に、どのような世界が広がっているだろうかと。核兵器で破壊された街の風景だろうか。或いは、漫画で見るような近未来都市だろうか。地球温暖化の影響で水浸しになった街かもしれない。そのような期待を胸に抱きつつ、私は卵から外界に踏み出した。途端、寒風が私の肌を突き刺した。そういえば、季節について全く考慮していなかった……いや、考慮していない事項は他にも山ほどあるが。とりあえず旅行カバンから手頃なコートを取り出して身に纏う。小屋を出ると、葉を落とした森林が闇の中に鬱蒼と生い茂っていた。今が何時頃なのか……知る術は無い。ただ、夜であることは明らかだ。そのまま草地を歩いて近くの道に出ようとする。妙な不安が私を襲っていた。視界を流れる光景が、一つも変わっていないからだ。15 名前:愛のVIP戦士[] 投稿日:2007/02/17(土) 11:42:53.96 ID:KaUUj71H0一時間ほどかけて街まで下りて、私は更に驚愕した。同時に絶望した。夜景を見下ろしているときから嫌な予感はしていたのだが、それは的中してしまっていた。街はほとんど変わっていない。ところどころ、道路が舗装されている。古い一軒家の代わりに、新しい三階建ての家が建っている。それだけだ。目新しい変化は何も無い。住宅街を歩けば時折犬の遠吠えが聞こえる。国道に出れば、ヘッドライトを輝かせながら車がいくつも目の前を通過していく。車種に詳しくないのでよくわからないが、それらが目立った進化を遂げたようにも思えない。そういえば、行き交う人々の服装もあまり変わっていない。むしろ、私の知る時代より少し遡っているような気もする。失敗の二文字が頭をよぎって、私は早足になってコンビニを探した。とりあえず、今が西暦何年なのか、確認したい。行きつけのコンビニは潰れてしまって新地と化していた。駅前まで歩いてやっとコンビニを発見した。旅行カバンを持ち歩いていることもあり、私はすでに満身創痍だ。店内に入ってすぐ隣にあった新聞コーナーから売れ残った新聞を一つ抜き取った。暖風が降ってくるなか、私はスポーツ新聞の上端に目を走らせた。そこに書いてあったのは、私がタイムマシンを作動させて、ちょうど二十年後の四桁だった。16 名前:愛のVIP戦士[] 投稿日:2007/02/17(土) 11:43:15.98 ID:KaUUj71H0夜風が顔に突き刺さる。私はおぼつかない足取りでどこかに向かっていた。とりあえず暗いところへ……と思っていた。私の行動は二割ばかり成功していた。未来に行くには行けたが、2100年からはあまりにもかけ離れている。これから普通に人生を送ったとしても22世紀を迎えることはできないようだ。ドラえもんにも会えない。おそらくタイムマシンの故障が原因だろう。約百年跳躍しなければならないところを、途中の二十年で停止してしまった。だとしたら、未来に行けただけでも幸運なことなのかもしれない。しかしこれでは意味がない。私はもっと、遠い時代が見たかったのだ。そこにあるのがたとえ絶望でも……である。ふと立ち止まる。そもそも、未来に来て自分はどうするつもりだったのだろう。旅行カバンに目を落とす。そこに入っているのは何日分かの衣類と、少しの小物だけ。とても未知の世界で生き抜ける装備ではない。17 名前:愛のVIP戦士[] 投稿日:2007/02/17(土) 11:43:36.53 ID:KaUUj71H0いや、そんなことはどうでもよかったのだろう。私はともかく前へ進みたかったのだ、長年の夢を、叶えたかったのだ。そして逃げたかったのだ。ただそれだけのために未来にやってきた。その後のことなど知ったことか、のたれ死にするならそれも運命でしかない。古びたビルの入り口に座り込む。そこは街灯もほとんどない、延々と暗闇が広がる場所だった。二十年前、何度か通ったことがあるような気がする。あまり変貌したわけでもない、捨て去られたような裏路地だ。しばらく思考に沈む。これからどうするべきかを真剣に考えてみる。最善はおそらく、タイムマシンを修繕して更に先の時代へ飛ぶか、元の世界に帰ることだろう。しかしそれにはリスクがまとわりつく。またも失敗したらどうなるだろう。今度こそ、助からないやもしれない。それを恐れているというわけでもないのだが、ともかく今は疲れている。何をする気にもなれないのだ。旅行カバンに顔を埋め、眠るつもりもないが目を閉じた。
Mar 9, 2007
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1 名前:愛のVIP戦士[] 投稿日:2007/02/17(土) 11:38:06.54 ID:KaUUj71H0プロローグ闇夜の下で男は人生の終焉を悟った。最早望むことも、願うことも何もないような気がしていた。それでいて生きながらえる、そういう自分の醜さに、ついに耐えられなくなったのだ。歩んできたのは悲劇だろうか。男は考える。いや、悲劇ではなく、むしろ喜劇だ。一人の男が転落していく、ブラックコメディだ。聴衆の涙など誘わない、ただ嘲笑をいただければそれでいい。少し大きな木の太い枝にロープを輪状にして取り付ける。それに首を通して……後は、台の上から足を外せば全てが終了する。「ごめんなさい」かつて愛した対象に向けて呟き、男は目を閉じた。最期に台の倒れる音を聞いた男の命の灯火は、やがて混濁の海の中で消え果てた。公園に広がる暗澹は、深く呻いているようでもあった。( ・∀・)二十年後、モララーはしょぼんに出会うようです(´・ω・`)2 名前:愛のVIP戦士[] 投稿日:2007/02/17(土) 11:38:58.11 ID:KaUUj71H0第一話父はどうやら十年以上前から僕に個人経営のカフェバーを引き継がせることに決めていたらしい。だから僕は中学生になった頃からマスターとしての技術を教え込まれていたのだろう。そもそも酒を扱う仕事なのによかったのだろうか、と今では思う。でもその時の僕は父が作る種々のカクテルに興味津々だったのだ。すでに死語だが、父が子供の時、カフェバーは全国的な流行を見せていたらしい。今でもそのような、喫茶店と居酒屋を組み合わせた形態のお店はあると思うが、臆面もなくカフェバーと称している店はそうそう無いんじゃないだろうか。父はいつも口を酸っぱくして僕に言い聞かせていた。「マスターは、常に黙していなければならない」と。実際、父はカウンターの中ではほとんど喋らず、ただ無言で注文された料理を出すだけだった。それが好かれていた理由なのかもしれない。父には常連がたくさんついていた。当時はその理由がよくわからなかったが、今はなんとなく理解できる。なぜなら、今は僕がマスターとしてカウンターに立っているからだ。カレンダーで日付を確認する。一月六日 火曜日。父が亡くなって、四ヶ月が経過した。4 名前:愛のVIP戦士[] 投稿日:2007/02/17(土) 11:39:26.63 ID:KaUUj71H0今日が「バーボンハウス」、新年初の開店日だ。午後三時から十一時まで。定休日は基本的に水曜日のみ。個人でかつ怠惰な経営をしているのになんとかやっていけるのは父の時代からの常連様がたくさんいるからだろう。新規のお客さんがあまりいないのは少々問題かもしれない。時折友人が訪ねてくる。彼らはほとんど必ず「お前、何か違うな」と言って帰る。それはそうだ、僕は普段と違い、無口を貫き通すのだから。そんな僕がつまらないのだろう、二度来る友人は滅多にいない。まぁプライベートではよく会ったり話したりするから僕も特に気にしていない。朝早くからまったりと準備する。ひいきにしているお店から材料やお酒を仕入れたり……父がやっているのを横で見ていたはずなのに、未だに慣れない。そうやっているうちに開店時間が来る。昼間、午後六時までは普通の喫茶店、それから二時間準備期間をおいた後、閉店時刻まではバーとして機能する。今日は平日だから、昼間はあまり人がこない。三人グループのOLと、高校生カップルが二組来店しただけだった。正直、カップルを目にすると鬱屈とした気分になってしまう。夕刻からがかき入れ時だった。会社帰りのサラリーマンが数人、ふらふらと訪れてくれた。それに火曜日は五人ばかり、常連さんが来ることになっていて、今日も予定通りみんな顔を出してくれた。彼らはいつも同僚らしい人を連れてきてくれるからこちらとしては助かる。6 名前:愛のVIP戦士[] 投稿日:2007/02/17(土) 11:39:50.80 ID:KaUUj71H0時々、自分はちゃんとマスターとしての仕事がしっかりこなせているのかと不安になる。それは考えても仕方のないことだ。僕が半人前にも満たないのは自覚しているし、お客さんを満足させることができているとも思わない。でも時々父を知っている人から投げかけられる「しょぼんくんの酒も美味いよ」「お父さんに追いつける日も近いだろうね」などといった言葉は全て元気に変換されていた。最近僕に悩みを打ち明けてくれる人も増えたし(前述通り、僕が返事することはないのだけれど)、一時落ち込んでいた客数も徐々に回復し始めている。それを、僕が経営する「バーボンハウス」が波に乗り始めたのだと解釈している。とても嬉しく、また自信の根源にもなっていた。最後のお客さんが「ごちそうさまでした」と店を出て行く。ふと壁にかかっている時計を見ると、閉店時間まであと十分ほどだった。開放感から、一つ溜息が床に落ちた。これから来るお客さんもいないだろう、後片付けでも始めないと。そう思い立った矢先だった。クラシックのBGMの中、入り口のドアが開いたことを示す鈴の音が僕の耳に流れ込んだ。振り返ると、そこに見慣れた顔ともう一つ、見慣れない顔が立っていた。(´・ω・`)「……いらっしゃい」( ゚∀゚)「おう、しょぼん。五日ぶりぐらいだな」ショルジュさんはそういって、陽気に手をあげた。顔が紅潮しているところをみると、すでにずいぶん飲んでいるらしい。彼もまた、父の時代からの常連さんだ。確か最近五十代になったばかりのサラリーマン(自称窓際族)。そして何より、無類のお酒好き。7 名前:愛のVIP戦士[] 投稿日:2007/02/17(土) 11:40:37.78 ID:KaUUj71H0そんなジョルジュさんの後ろで、旅行カバンみたいなものを持ってボーッと突っ立っているのは僕の知らない人だった。年齢は……僕と同じぐらい……二十五歳周辺だと思う。地味なコートを着込んでいて、一見浮浪者に見えなくもない。そして何か、近寄りがたいオーラを全方向に放っている。ジョルジュさんは大抵一人でやってくる。だから誰かを連れて、というのは珍しいことだった。腕時計を確認しながら、ジョルジュさんはカウンターの一席に座った。隣に立ったままのコートの人も、ジョルジュさんに促されて座る。視線が宙を彷徨っている……放心しているんじゃないだろうか。( ゚∀゚)「ちょっと聞いてくれよ、しょぼん……ああ、閉店間際だってことはわかっている。 すぐに帰るさ」そういって、彼が三十分以内に出て行ったことがない。( ゚∀゚)「ついにこの前の日曜日、家内に逃げられちまったよ。しかも子供たちまで連れてな ……いや、そりゃ俺も悪いとは思うぜ? 毎日毎日飲んだくれてよ、でもそいつは性分だから仕方ねえよな。それに金はちゃんと家に入れてるってんだ。 ……ったく、家事なんて俺、生まれてこの方やったことねえんだ。これからどう生きろって言うのかね。 あ、適当に酒をくれ」8 名前:愛のVIP戦士[] 投稿日:2007/02/17(土) 11:40:54.77 ID:KaUUj71H0愚痴だけで終わるかと思っていたけどそう甘くはないようだ。後片付けの手を止めて、僕は背後の棚からグラスを一つ取り出す。その途中、横目でコートの人を観察してみた。気のせいか、さっきより表情が強張ったようだ。( ゚∀゚)「いやあ、しかしここまで落ちぶれても酒飲みだけはやめられねえな。 今日も今まで駅前で飲んでたんだよ。アル中ってのは大変だぜ、なあ?」ガハハ、と笑うジョルジュさんに黙って水割りを差し出す。それを一息であおったところで、ジョルジュさんは隣の人の存在に気づいたらしい。( ゚∀゚)「ああ、そうだ。今日は酒を飲みに来たんじゃねえんだよ。 こいつなんだが……近くの路上で拾ったんだ」(´・ω・`)「拾った?」僕は思わず聞き返していた。ジョルジュさんは頷いて、僕に水割りのおかわりを要求する。10 名前:愛のVIP戦士[] 投稿日:2007/02/17(土) 11:41:24.97 ID:KaUUj71H0( ゚∀゚)「近くのビルの近くに座り込んでやがったんだ。 最初はホームレスの類だと思ったんだが……見ろよ、知的な顔をしてるだろ?」とりあえず判断基準がおかしいと思う。でも言われてみればその通りで、コートの人からは年齢に不相応な何かが感じられた。ただ押し黙ったままの男の人をしばらく見つめていると、ジョルジュさんは突如身を乗り出した。( ゚∀゚)「まぁそういうわけだから、しばらく預かってくれ」(´・ω・`)「はい?」本日二度目の聞き返し。コートの人もびっくりした表情でジョルジュさんを見た。この人はいきなり何を言い出すのだろう。まぁ、基本的に自分勝手であるとはうすうす感づいてはいたけれど。( ゚∀゚)「いいじゃねえか、歳も同じぐらいだし話も合うだろ。 ……大丈夫、俺を信じろ。」無理だ。ともかく断ろうとして口を開きかける。しかしその頃には、ジョルジュさんは「帰るわ」と宣言し、財布からお札を一枚、カウンターにおいていた。再び鈴の音色が響く。僕は新しくつくったばかりのカクテルを手に、呆然と立ちつくしてしまった。□□□□□□□□□
Mar 9, 2007
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1 名前:愛のVIP戦士[] 投稿日:2007/02/16(金) 21:22:32.09 ID:MtQ1U3lU0( ^ω^)「さぁ今日も始まりました、VIPショッピング! ナビゲーターは私、内藤ホライゾンと」('A`)「アシスタントのドクオだ。早速最初の商品を紹介するか」6 名前:愛のVIP戦士[] 投稿日:2007/02/16(金) 21:26:22.87 ID:MtQ1U3lU0( ^ω^)「今日最初にご紹介するのは、こちら」 最新型魔法瓶「湯沸かす君Z」('A`)「名前がアレだけどな」( ^ω^)「この湯沸かす君Zは、従来の魔法瓶と違います」('A`)「まぁそりゃそうだろうな。じゃなきゃこんな番組組まない」( ^ω^)「なんと、わずか0.5秒でお湯が沸く!」('A`)「早っ!」「お~」('A`)「いかにも音声さんが用意したような『おー』をありがとうございました」( ^ω^)「では、その沸騰プロセスをもう一度見てみよう」('A`)「ギャバンじゃないんだから」10 名前:愛のVIP戦士[] 投稿日:2007/02/16(金) 21:28:57.32 ID:MtQ1U3lU0( ^ω^)「まぁ案ずるより井上靖、実演してみましょう」('A`)「古典的すぎるギャグはさておき、まず瓶に水をいれます」( ^ω^)「そしてドクオにぶっかけます」('A`)「冷たい冷たい冷たい」( ^ω^)「かわいそうなのでこのへんにして、魔法瓶を専用の台にセットします」('A`)「どうでもいいけど入れた水全部俺にかけたから瓶の中空っぽなんですけど」( ^ω^)「つべこべ言うな」('A`)「いや、番組が進行しn」( ^ω^)「ちょっとカメラ止めろ」 しばらくお待ちください15 名前:愛のVIP戦士[] 投稿日:2007/02/16(金) 21:32:44.18 ID:MtQ1U3lU0( ^ω^)「というわけで、魔法瓶に水を入れて、専用の台にセットし、スイッチを入れます」(#)A`)「てか寒いんですけど」( ^ω^)「そしてこの赤いボタンを押すだけ、あとは0.5秒後にはもう沸騰!」('A`)「すげぇけど本当にお湯が沸いたのか疑問だな」( ^ω^)「それでは実際に沸いたかどうかドクオにかけてみましょう、ほらこの通り」('A`)「熱い熱い熱い、ちょマジ死ぬって」( ^ω^)「というわけで、この湯沸かす君Z、お得でしょう」(#)A`)「そのせいで俺の寿命はだいぶ減ったがな」( ^ω^)「お値段の方、なんと1万2千円!」音声「安~い!」('A`)「この音声の方が安いと思うけど」22 名前:愛のVIP戦士[] 投稿日:2007/02/16(金) 21:36:03.18 ID:MtQ1U3lU0( ^ω^)「今ならサービスとして同じものを2,3個お付けして」('A`)「サービスだったら個数ぐらいハッキリさせとけよ」( ^ω^)「78000Gでご提供いたします」('A`)「あぶない水着だろ…しかも日本円に換算したら780万円だぜ」※円=ゴールドの換算レートは俺の脳内ソースなのであんま気にしないでください( ^ω^)「さて、湯沸かし君Zの方、お値段1万2千円!」('A`)「セット価格どこ行ったんだよ」客「1万5千円!」('A`)「オークションかよ!」客「1万円!」('A`)「下がっちゃった!」客「ただ!」( ^ω^)「はい、落札」('A`)「もうわけわからんわ」28 名前:愛のVIP戦士[] 投稿日:2007/02/16(金) 21:40:52.08 ID:MtQ1U3lU0( ^ω^)「さて続いての商品は、この新型ガレオタランザです」('A`)「…ああ、ガレオタランザね」( ^ω^)「このガレオタランザは、従来のガレオタランザの問題点を解消してくれます。 たとえば今までは、ローテッド時にブラトンをウールしなければなりませんでした。 しかしこの新型ガレオタランザは、ルブッヘ機能を導入したことで万事解決!」('A`)「とりあえずググってくるわ」( ^ω^)「今なら湯沸かす君Zをお付けして、2500円!」('A`)「さっきのがもうすでにボッタクリ価格じゃねーかよ」客「500円!」('A`)「オークションにまでデフレ問題を持ち込むなよ…」客「ただ!」客「3000円貸して」( ^ω^)「その前にこないだの5000円返せよ」('A`)「何かあったのかよ」34 名前:愛のVIP戦士[] 投稿日:2007/02/16(金) 21:43:24.17 ID:MtQ1U3lU0( ^ω^)「さぁ、続いての商品は、ダイエットに最適の健康食品!」('A`)「女性の方なんか特に、おなか周りが気になりだすのは悩みですよね」( ^ω^)「そこであなたに最適、この不二家の…」('A`)「うん、読めた。この展開読めた。」( ^ω^)「さて、続いての商品まいりましょうか」('A`)「うわ、捨てゲーしやがったこいつ」( ^ω^)「最後の商品は、このガレオタランザ」('A`)「それさっきやった!」39 名前:愛のVIP戦士[] 投稿日:2007/02/16(金) 21:48:18.76 ID:MtQ1U3lU0( ^ω^)「さて、続いての商品はこちら」('A`)「最後じゃねーのかよ」( ^ω^)「最新型液晶テレビです」('A`)「せめて商品名ぐらい付けろよ」( ^ω^)「このテレビ、いろいろすごいんです」('A`)「ほう、例えば?」( ^ω^)「この赤いボタンを押すと、カラオケが歌えます。 曲数はなんと10000000!」('A`)「すごいなこれ。でもそうするとJで始まる某団体が…」( ^ω^)「僕の実家は金持ちだけじゃなくてコネも自慢なんだお」('A`)「あー、納得」( ^ω^)「それから、この黒いボタンを押すと…」('A`)「うわ、なんか画面からお湯が出てきた」( ^ω^)「シャワーが浴びられます」('A`)「風呂場以外に置く場所ねーよ」41 名前:愛のVIP戦士[] 投稿日:2007/02/16(金) 21:52:57.28 ID:MtQ1U3lU0( ^ω^)「ほかに黄色いボタンを押すと…」('A`)「うわ、ケツに相当する部分からウンコみたいなのが出てきt」( ^ω^)「ちょっとカメラ止めろ」 【ドカッ!バキッ!ボコッ】(#)A`)「というわけで、カレーが出てくるらしいです」( ^ω^)「急にキレンジャーが訪ねて来ても安心」('A`)「中の人は数十年前にとっくに自殺しちゃったけどな」( ^ω^)「さて、お値段の方なんですが、なんとお値打ち価格 (ガタンゴトンガタンゴトン…かんかんかんかんかん)円です!」('A`)「ああ、なんて運の悪い。ちょうど値段言ってる間に電車が近くを通ってったよ」( ^ω^)「お申し込みは東京03、(たーけやーさおーだけー)品まで!」('A`)「空気嫁さおだけ屋!辛うじて最後の2ケタが47ってのはわかった」客「タダ!」( ^ω^)「はい、全部落札ってことで、皆さん残念でした」('A`)「視聴者無視じゃねーか。いい加減にしろ」
Feb 22, 2007
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250 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/31(水) 00:45:52.74 ID:sGLbyoZr0(*゚∀゚)『おっ!! お疲れちゃん!! 宣伝部長様!!』【従業員専用出入り口】のプレートが貼られた扉をくぐり、スタッフルームに足を踏み入れた僕を待っていたのは店長『様』だ。すでに厨房に入る機会は少なくなったはずなのに、上半身はコックコート・下半身はミニスカートと言う非常にアンバランスな格好。椅子に腰掛け、机の上に両足を放りだして書類を読んでいる。はっきり言って見えるから止めて欲しい。また、ツンやドクオに説教されるから。( ^ω^)『ただいまだお』言いながら僕は冷蔵庫を開き、最近のお気に入り『イチゴ豆乳』の紙パックを取り出す。(*゚∀゚)『あれあれあれ~? ブーちゃん、そんな事してていいのかなっ!?』( ^ω^)『ん? なんでだお?』答えながら至福の味を一口。(*゚∀゚)『じ・か・ん』そう言って指差した壁時計は18:05を少し過ぎており、僕は盛大に噴き出した。( ;^ω^)『や、やばいお!! 遅刻だお!! ツンに殺されるお!!』僕は咽返りながら、濡れた口元をティッシュで拭う。寄り道した本屋で思ったより時間を使っていたらしい。服を脱ぎ捨て、代わりに純白のコックコートを羽織ってスタッフルームを飛び出した。254 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/31(水) 00:48:30.18 ID:sGLbyoZr0 全力で足を動かし。コックコートのボタンを留め。呼吸を整える。この3つの作業を同時進行させながら僕はバースペースに足を踏み入れた。( ;^ω^)『遅れて申し訳ないお』ξ#゚△゚)ξ『遅い!!』クーさんの後を継ぎ、バースペースの新しい主となったのはツン。僕の大切な人だ。( ;^ω^)『だから謝ってるじゃないかお』ξ゚△゚)ξ『謝るんなら…』テーブル席の1つに視線を向ける。ξ゚△゚)ξ『彼に謝りなさい!!』そこでは緊張した面持ちの青年が僕を待っていた。ツンから受け取った彼の履歴書に簡単に目を通す。高校中退後、3年間無職。アルバイト経験なし…か。( ^ω^)『…なるほどだお』僕はガチガチに固まっている彼の前に腰を下ろした。( ^ω^)『…ヒッキー君。で良かったかな?』259 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/31(水) 00:53:10.43 ID:sGLbyoZr0 (-_-) 『…ひゃ、ひゃいっ!!』盛大に噛んで赤面する彼に僕は微笑みかける。( ^ω^)『緊張しなくていいお』通勤時間。時給。正社員登用制度。そんな話を一方的に僕が話す形で面接は進む。彼はただ壊れた人形のように首を上下に振るだけだ。( ^ω^)『最後に質問なんだけど…ヒッキー君がここで働きたい。 そう思った動機を話してほしいお』(-_-) 『え…あの…その…』あうあうと意味不明な言葉を口走っていた彼は、一度大きく息を吐き出すと真剣な目つきで語りだした。(-_-) 『ぼ…僕!! ヒキコモリなんです!!』( ^ω^)『……』(-_-) 『小学校からずっと虐められてて…高校もそれで中退しました。 それからは部屋にずっと…両親や自分に甘えて生活して、 それでも自分を変えたくて、だけど勇気がなくて… そんな時に出会ったのがあなたの本だったんです!! 僕はあなたのように変わりたいんです!!』そこまで一息に話した彼は僕の視線に気付くと、また最初のように縮こまってしまった。( ^ω^)『君の話はよく分かったお。でも…料理人になろうなんて考えは止めた方が良いお』262 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/31(水) 00:57:23.42 ID:sGLbyoZr0 (-_-) 『…え?』彼は僕の言葉を聞いて呆然としていたが、その意味が分かるにつれ青ざめていった。(-_-) 『…そんな…どうして…』( ^ω^)『厨房は…地獄だお』僕は続ける。真夏は40℃を超え、真冬でも凍てつく水に両手を突っ込む。何重にも重ねられた火傷と切り傷。週に一日あるかないかの休みでは体の疲れが抜ける事もなく、毎朝目を覚ますたびに体のどこかが悲鳴を上げる。泥と汗と油にまみれたコックコート。常に高温を保つフライヤーや、切れ味抜群の中華包丁。人生に絶望した誰かが新興宗教の経文を唱えながら暴れだしたら、間違いなく死人が出るだろう。( ^ω^)『…それが料理人の現実だお。 悪い事は言わないから止めた方がいいと思うお』(-_-) 『それでも…それでも僕はあなたの様に…』彼は俯き、両肩を震わせている。( ^ω^)『それでも、君が本当に料理人として生きて行きたいのなら…』僕はそこで言葉を区切り目を閉じた。267 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/31(水) 01:03:02.30 ID:sGLbyoZr0 真っ暗な瞼の奥。僕は『それ』が現れるのを待つ。最初、ぼんやりとした『それ』は僕に近づくにつれ輝きを増し幾つもの人の形となって僕を取り囲む。『それ』は僕を今まで導いてくれた光だ。不安気な笑顔。どことなく悪人っぽい笑顔。自信に溢れた笑顔。キモイ笑顔。天真爛漫な笑顔。一途な笑顔。不機嫌そうな笑顔。そして…最後に紫水晶色の瞳をした女性の…静かな笑顔。その全てが僕を見守り、後押ししてくれている。さぁ、伝えよう。僕を導いてくれた光の全てを。その輝きを永遠に絶やさぬ為に。ヒッキー君。それでも君が本当に料理人として生きて行きたいのなら…268 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/31(水) 01:03:33.22 ID:sGLbyoZr0 ( ^ω^)『僕は…僕は君の道標【みちしるべ】になりたい』 ( ^ω^)が料理人になるようです。 完 この作品の最後の部分は、書き直しがあるかもしれないようです。そうなればこちらとしては、喜んでまとめたいと思っております。
Feb 20, 2007
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209 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/31(水) 00:27:11.45 ID:sGLbyoZr0 ドブネズミみたいに 美しくなりたい 写真には写らない 美しさがあるから215 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/31(水) 00:28:33.87 ID:sGLbyoZr0 ドブネズミみたいに 誰よりもやさしい ドブネズミみたいに 何よりもあたたかく216 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/31(水) 00:29:25.27 ID:sGLbyoZr0 もしも僕がいつか君と 出会い話し合うなら そんな時はどうか愛の 意味を知って下さい219 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/31(水) 00:30:28.88 ID:sGLbyoZr0 愛じゃなくても 恋じゃなくても 君を離しはしない 決して負けない 強い力を 僕は一つだけ持つ 最終章 リンダリンダ224 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/31(水) 00:32:44.90 ID:sGLbyoZr0( ^ω^)ノシ『お疲れ様でしたお』( ・∀・) 『お疲れ様です。次回も期待してますよ』そう言って揉み手をする担当と分かれ僕は駅への道を急ぐ。今日はスタッフが人数的に充実しており、本来ならば僕は厨房に立つ必要はない。だが、迫る年末年始のスタッフ調整・18時からは新しく募集したバイトの面接、限定メニューの試作などやらなければならない仕事は山積みになっている。( ^ω^)『…荒巻さんもタクシー代くらい支給してくれてもよさそうなもんだお』僕は一人呟いてから電車に乗った。やがて電車はVIP駅に到着する。車内の大多数の人がそうするように僕も電車を降りた。辺りはすっかり夕闇に支配され、駅前広場には賑やかに飾り付けられたクリスマスのイルミネーションが輝いている。( ^ω^)(…あれからもう2年も経つのかお)僕は大時計を見上げ呟いた。230 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/31(水) 00:35:04.76 ID:sGLbyoZr0そう。あの悲しいクリスマスから2年が経ち、僕の周りも大きく変化した。ショボンさんはバーボンハウス3号店の店長として移動していった。後釜にはギコさんが指名されていたのだが、ギコさんは突然独立を宣言。店を辞め小さな和食ダイニングを始めた。今ではお店も軌道に乗り、来年の春には父親になるらしい。ジョルジュさんは相変わらずだ。( ゚∀゚)o彡°『しぃちゃんは妊娠してまたおっぱい大きくなったぞ。 ツンのおっぱいも大きくなりますように♪』ξ#゚△゚)ξ『マジうぜぇ!!!』233 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/31(水) 00:36:53.42 ID:sGLbyoZr0そんな訳で、現在僕が勤めるバーボンハウス本店の店長と料理長はこの2人だ。(*゚∀゚)『いいかいっ!! どんなに忙しくても手抜きだけはしちゃだめだよっ!! 1つの小さな手抜きの積み重ねが、 大きな手抜きをする土壌を作りあげるんだっ!! 忙しい時こそ声を掛け合ってミスをしない事を頭に置く事っ!!』('A`)『…まぁ、そんな感じだ。俺からは以上』まだまだ経験が浅い2人を本店のトップにする事は当初周囲から大きな反対があった。その反対意見を封じ込めたのはショボンさんとギコさんの存在があったからに他ならない。今では2人とも規制の枠にとらわれない感性を発揮して着実に営業成績を伸ばしている。だけど、あの時のメンバーで一番環境が変化したのは間違いなく僕だろう。僕は今では【名前だけなら全国区】の料理人として業界内に名を知らしめている。( ^ω^)『…ちょっと寄り道するかお』僕はそう考えて駅前の本屋に足を踏み入れた。『話題のロングセラー』コーナーで見慣れた表紙が山積みになっているのを見つけ、思わず手にする。その表紙にはこうタイトルが書いてあった。 僕は料理人になるようです。240 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/31(水) 00:39:14.80 ID:sGLbyoZr0これが僕が【名前だけなら全国区】の料理人になった理由だ。ブログ本ブームで、人気があるブログには大手出版社が飛びついてくる昨今。幸運な事に僕の所にも御指名がかかり、軽い気持ちで返事をしたのが始まり。同業者を中心に予想外の反響を呼び、そこに目をつけた荒巻さんが【あのブログの筆者の勤める店はここだ!!】と、大々的にアピール。面白料理人としてテレビや雑誌で取材を受けるまでになっていた。今では【バーボンハウスグループ宣伝部長兼本店副料理長】と言う名前だけはご大層な肩書きをもらっている。( ^ω^)(…肩書きだけじゃなくて給料上げて欲しいお)そんな事を考えながら、僕は僕の本のページをめくる。一番気に入っているのは、何度も読み返した【リンダリンダ】と題うった話だ。242 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/31(水) 00:40:48.79 ID:sGLbyoZr0 リンダリンダ これを読んでくれている同業さんなら分かると思うけど、 料理人の手って言うのは決して綺麗なもんじゃない。 それは衛生的なものじゃなくて、 火傷・切り傷・皸などがいたる所にあるからだ。 治り掛けの傷の上に新たな傷がつき、瘡蓋に瘡蓋が重なる。 最初はそれを疎ましく感じていた。 でも最近では朝起きてから傷だらけの右手を眺めるのが楽しみになって来た。 これが僕が歩いてきた料理人としての人生の証。 僕の右手には写真には写らない美しいものがたくさん詰まっている。 知識。 経験。 そして掛替えのない仲間たちと過ごした時間…。( *^ω^)『…照れくさいお』僕はそう呟いて本を元の位置に戻し、書店を後にした。
Feb 20, 2007
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177 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/30(火) 23:56:47.96 ID:T9v5rC2I0---------------------------------------------------------------------------------------------------( ^ω^)『ここは…どこだお?』内藤ホライゾンは真っ白い空間に一人立っていた。壁もなく天井もなく床もない。ただ本当に虚無の空間。( ;^ω^)『誰か…誰かいませんかお?』内藤は小さく声にしながら、とりあえず足を前に進める。歩いてもどこにも辿り着けそうになかったが、それでも何となく歩き出す。( ;^ω^)『……』歩いても歩いても何も見えてこない。内藤の緊張は頂点に達した。( ;^ω^)『誰かー!! 聞こえたら返事してくれお!!』ついに大声を張り上げる。その時だった。 ーーー内藤。わたしは今ものすごく怒っている。彼が最も聞きたかった女性の声が空間に響きわたった。180 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/31(水) 00:02:00.26 ID:sGLbyoZr0( ゚ω゚)『…!! どこだお!! どこにいるんだお!!』内藤は辺りを見回す。だがそこにあるのは一面の白。彼女の姿はどこにも見えない。 ーーーわたしが何度も呼びかけていると言うのに全く気付かないとはな。( ゚ω゚)『一目でいい!! 一目でいいから姿を見せてくれお!!』 ーーー…それは出来ない。( ゚ω゚)『そんな…どうして…』内藤はがっくりと両膝をつく。( ;ω;)『あなたを失ったから…僕は道標【みちしるべ】を失ってしまったから… …どうやって歩いていけばいいのか分からなくなってしまったんだお。お願いだお…顔を見せてくれだお…僕を助けて…。 僕を導いてくださいだお…』項垂れた内藤の瞳から大量の涙が零れ落ちた。181 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/31(水) 00:05:42.83 ID:sGLbyoZr0 ーーーお前はなにを言っているんだ?どことなく呆れ返った声が空間に響く。 ーーーわたしが何度声をかけても耳を閉ざし、目を背けていたのはお前の方ではないか。( ゚ω゚)『目を背けていたのは…僕?』 ーーーそうだ。なおも声は続ける。 ーーーわたしはお前の道標【みちしるべ】だ。 昔も。今も。これからもずっと。 お前が最後にわたしに言ってくれた言葉だ。忘れたとは言わせんぞ。( ゚ω゚)『…これからも…ずっと…』 ーーー休暇は終わりだ、内藤ホライゾン。立ち上がれ。その言葉と共に内藤の体は白い光に包まれる。冷たいけど…暖かい光に。 ーーーもし、お前が道に迷った時。また来るといい。 わたしはいつでもここにいる。 ーーーわたしはいつでもここで君を照らしている。185 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/31(水) 00:10:53.42 ID:sGLbyoZr0---------------------------------------------------------------------------------------------------( ゚ω゚)『ま、待って!!』そう叫んで彼は跳ね起きた。目に入る風景は白い空間ではなく、散乱した彼の部屋。すぐ横では彼の恋人が寝息を立てている。一体どれだけの時間抱き合い、寝ていたのだろう。時計を見ると5時間かもしれないし、29時間かもしれない。とにかく彼は羽化を待つ蛹の様に眠り続けた。部屋の片隅でうっすらと月明かりに輝く何かを見つけて( ^ω^)『…なんだろう』彼は布団を抜け出した。そこにあった物。唯一被害を免れた彼の包丁。冷たく暖かい輝きをした彼の愛刀。一刀斎虎鉄。内藤はそれを拾い上げ、初めて出合った時の様にただ見つめた。188 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/31(水) 00:14:42.07 ID:sGLbyoZr0ξ゚△゚)ξ『内藤…どうしたの?』そんな彼の背後に歩み寄って来たのはツンだ。まるでローブのように毛布を体に巻きつけている。( ^ω^)『…ツン、すまなかったお。大丈夫かお?』内藤はいつもと同じ笑顔をツンに向ける。ξ////)ξ『だ、大丈夫よ!! でもあんた準備も出来てないのに何度も入れるから… ヒリヒリして歩きづらいッたらないわ』( ^ω^)『ツン…僕は道標【みちしるべ】を見つけたお』疲れて足を止める事もあるだろう。悩んで下を向く時もあるだろう。でも道標【みちしるべ】は消えていない。この光がある限り。僕はどこまでも歩いて行ける。僕はいつまでも走り続けられる。僕は…僕は料理人として生きていく。( ^ω^)『行こう、ツン。僕にはやらなくちゃいけない事があるはずだお』恋人をやさしく抱きしめ、内藤は言った。190 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/31(水) 00:17:00.44 ID:sGLbyoZr0臨時休業明け初日。バーボンハウスの空気は最悪と言えた。バースペースに籠城する料理長を筆頭に、事ある毎に物を蹴り飛ばす者。無口なランナー。まるで集中力のない鍋場責任者と、今にも泣き出しそうなウェイトレス。…葬儀会場かと思うような重い空気。理由を聞いた常連客は美しいバーテンダーの早すぎる死に肩を落とす。活気のない中華料理店で誰が食事を楽しみたいと思うだろうか?( ,,゚Д゚)『…少し早いが…今日は店を閉めるぞ』ギコの言葉に一同帰り支度を始める。その時だった。内藤の形をした風がツンをつれて飛び込んで来たのは。( ^ω^)『…みんな…なにをやっているんだお?』( ,,゚Д゚)『…見りゃ分かるだろ。帰り支度だ』194 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/31(水) 00:18:42.01 ID:sGLbyoZr0違う!!内藤は激しく首を横に振る。( ^ω^)『これじゃ…こんなんじゃ…クーさんが愛したバーボンハウスじゃないお!!』( ,,゚Д゚)『…!! 貴様に何が分かる!!』ギコが内藤に詰め寄る。( ,,゚Д゚)『クーは…あいつは死んじまったんだ!! 俺は…俺達は…誰か一人抜けてもやっていけない!! そんな関係だったんだ!! あいつがいない店で…昔のように出来るものか!!』いつの間にか、2人の周りにはスタッフが輪を作り取り囲んでいた。( ^ω^)『それが…それが違うって言ってるんだお!!』( ,,゚Д゚)『…なんだと貴様』( ^ω^)『ここにいないのはみんな…みんなの心がここにいないんだお!! クーさんはここにいるのに…!!』内藤は自らの胸に手の平を押し当て叫ぶ。 『光は…僕達の中で消えていない…!! クーさんは…クーさんは僕達の中にいるんだお…!!』
Feb 19, 2007
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161 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/30(火) 23:33:07.25 ID:T9v5rC2I0 第19章 終わらない歌( ゚ω゚)『うぉわぁぁぁあああああぁぁぁぁぁぁっぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!』咆哮し、血まみれの拳で壁を殴りつけ、買いあさったレシピ本を破り捨て、すでに紙屑となったそれを蹴り上げる。それでも内藤は止まらない。( ゚ω゚)『僕が殺した!! 僕が壊した!! 僕が!! 僕がっ!!』そんな意味の言葉を叫びながら、内藤の形をした小型台風は彼の部屋を所構わず破壊する。彼は半ば狂っていた。自らの手で自分を導く光を消してしまった。そんな思いが彼の心を追い詰める。料理人としての。料理人を目指した自分の痕跡の全てを消し去りたかった。いや、そうしなければいけない。それが自分がクーに出来る罪滅ぼしであり、完全に狂わない為の手段だと思えた。電池が切れたおもちゃのように彼の動きが止まった時。あたりはすでに真っ暗になっていた。162 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/30(火) 23:36:55.51 ID:T9v5rC2I0( ´ω`)『…何か食べるかお』呟き彼は台所の冷蔵庫を開けた。そのまま食べられそうなものは何日か前に購入した食パンのみ。トースターで軽く温める。そんな簡単な調理さえ彼の心は拒絶し、仕方なく冷えて硬くなっているそれを口に詰めこむ。( ゚ω゚)『うっ!!』彼は突然口を押さえてトイレに駆け込んだ。そのまま便器に顔を突っ込む。( ゚ω゚)『げぼっ』…内藤の体は食事を取る事すら拒否していた。165 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/30(火) 23:38:58.40 ID:T9v5rC2I0---------------------------------------------------------------------------------------------------今。この場にツンの姿はない。あの日、逃げるように駆けだした内藤にツンは追いついていた。ξ;△;)ξ『待って…待ってよ内藤キャッ!!』その彼女の顔を内藤は力任せに殴りつけた。雪解けの水溜りに倒れこんだ彼女の髪を鷲掴みにし無理矢理立たせる。ブロックの壁に叩きつけて両手で首を締め上げた。ξ;△;)ξ『な…内藤苦しい…』殴り、蹴り、その手を引き剥がそうと必死に抵抗するが内藤の力は緩まない。彼女の顔面下半分を染める血があごをつたい、内藤の手に赤い斑点模様を描く。やがてツンの体から力が抜け両手がだらりと垂れ下がる。そこでようやく内藤は彼女を解放した。またもや水溜りに倒れこむツン。( ゚ω゚)『…これ以上追ってきたら…お前も殺してやる…次は本当に…』吐き捨てて走り出す内藤。それがこの時の内藤が見たツンの最後の姿だった。---------------------------------------------------------------------------------------------------170 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/30(火) 23:44:47.61 ID:T9v5rC2I0散乱した部屋の中。万年床に横たわり内藤は天井を見上げていた。中華鍋を叩きつけられたエアコンは温風を送り出す事はなく、部屋の中は凍てついた空気が満ちている。それでも一人死んでいったクーの事を思うと辛さは感じない。( ゚ω゚)『僕が殺した僕が殺した僕が殺した僕が殺した僕が殺した僕が殺した僕が殺した僕が殺した 僕が殺した僕が殺した僕が殺した僕が殺した僕が殺した僕が殺した僕が殺した僕が殺した 僕が殺した僕が殺した僕が殺した僕が殺した僕が殺した僕が殺した僕が殺した僕が殺した 僕が殺した僕が殺した僕が殺した僕が殺した僕が殺した僕が殺した僕が殺した僕が殺した 僕が殺した僕が殺した僕が殺した僕が殺した僕が殺した僕が殺した僕が殺した僕が殺した 僕が殺した僕が殺した僕が殺した僕が殺した僕が殺した僕が殺した僕が殺した僕が…』いや。彼の精神状態はすでに寒さを感じられるものですらなくなっていた。眠る事もなく。食事は喉を潤す程度の水だけ。ひたすら噛み続けた親指の爪からはすでに肉が見えている。それでも爪を噛むのをやめようとしない。そうして昼になり夜が訪れた。太陽が昇りやがて沈んだ。どこまでも深い夜空が青空に変わり、また闇に包まれようとした頃。ふいに内藤の部屋の扉が静かに開けられた。ξ;△;)ξ『内藤…あたし怖くて…遅くなってごめんね…』172 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/30(火) 23:49:17.65 ID:T9v5rC2I0 ツンの美しい顔は左頬に紫色の痣が出来ていた。返事も返さずただ宙に視線を泳がせる内藤の横に腰を下ろす。( ゚ω゚)『…来たら殺すって行った筈だお』ツンを見向きもせず内藤は言う。彼女はその言葉にビクッと肩を震わせたが意を決したように口を開いた。ξ △ )ξ『…殺したければ殺せばいいじゃない。 あたしはあんたに殺されるために来たのよ。 それであんたの心が死ななければ…安い物だわ ただ…あたしはそう簡単に殺されたりしないわよ』( ω )『…そうかお』内藤は呟き身を起こす。( ゚ω゚)『それならお望みどおり殺してやるお!!』叫び内藤はツンの体を押し倒した。175 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/30(火) 23:53:09.44 ID:T9v5rC2I0ツンの細い首に手がかかる。その手を今度こそ払いのけ、ツンは内藤にしがみつき叫ぶ。体を引き剥がし殴りつける。負けじと殴りつける。髪を掴みあい、二匹の獣のように取っ組み合う。どちらともなく唇を押し付ける。衣服を体から引き剥がす。噛み付く。強引に犯す。背に爪を立てる。愛する人を傷つける事で、自らを傷つける。それを知り受け入れる。何度も何度も繰り返される行為は、やがて互いを癒す為の儀式へと変わる。…そして何時しか2人は時が経つのも忘れ…きつく抱き合った。
Feb 19, 2007
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おづら言わずとしれた面白動画。きれいに落ちてます。コーラメントスコーラメントスを使った芸術作品。ダイエットコーラを251本使ったようです。あと、取り敢えず最近笑ったコピペ110回クイズ 高校の頃に「ピザって10回言って」っての、流行ったなぁ ヒジを指差して「ここは?」って聞くと「ヒザ」って答えちゃうんだよね 英語の先生に「先生、ピザって10回言って」って言ったら 「ピッツァ、ピッツァ、ピッツァ、ピッツァ・・・」って英語訛りで返された 不安を覚えつつも一応ヒジを指差して「じゃ、ここは?」って聞いたら 「エルボゥ!」って答えやがった 野坂先生、元気でいらっしゃるんだろうか 2アリクイってよ、1日に三万匹アリ食うんだってwww3日で九万匹wwwアリいなくなっちゃうよ! フラミンゴって、なんで片足か知ってる?冷えるんだってよwwww でも、水ん中入ってるんだぜ? だったら出りゃいいじゃんww モグラのトンネル掘るスピードはカタツムリの進む速度の1/3だってwwww 遅いよwww 得技だろよwwそのスピードなら地上でろ地上でろ! カタツムリってすげぇんだぜ。カタツムリってよ、 -120℃でも死なないんだぜ。-120℃だぜ。 普通-120度だったら動物全滅するだろ。ただカタツムリだけは氷河期になっても生き残るんだよ。 すげぇ生命力だよな。 ただよ、-120℃になるとカタツムリのエサが無いんだってwwwwwwwwwwww 「草木が生えないから結果死にますね」だってwwwwwwww 人間ってよ血液型何種類か知ってる?4種類だろ。 じゃ馬。馬は何種類か知ってる?3兆wwwwwwwwwwwwwwwwww ちなみにゴリラはみんなB型だってwww少なくねwwwww 全部自己中だよゴリラwwwwww ゴリラってよ、あれ通称ってこと知ってんだろ。 あれの本名、つまり学名ってなんだか知ってる?知ってる? ゴリラ・ゴリラだってwwwww まんまじゃねえか。まんまじゃねえかおい。 それがローランドゴリラだとなんだか知ってる? ゴリラ・ゴリラ・ゴリラだってwwwwwwwwwちょwwおまwwwww ヒネリナサイ!ヒネッテヒネッテヒネリナサイwwwってやかましいわww 3 ___, - 、 /_____) 実は、父さんHIPHOPで食っていこうと思ってるんだ . | | / ヽ || ____ |_| ┃ ┃ || / \ (/ ⊂⊃ ヽ) |/ ̄⌒ ̄\ \ ! \_/ ! / ⌒ ⌒ | \ ,\ _____ /、 | (・) (・) \ | ゝ/  ̄ ̄ ̄ \ /. \/ ̄\/ .\ | ⊂ 9) ⌒\ / _____ヽ | | _┌l⊂⊃l | | | ___ \ | ) | | / ─ 、-、! | | / ∋ |__| | | \ \_/ /- |__|─ | /|ヽ | | /`, ──── 、 | | \____/ ( ` ─ o-i ヽ / \ .ノ_ .j ̄ ̄ | ヽ、 ┬─┬ノ / ̄ ./ ヽ- 、\ /  ̄ ヽ\ // /ヽ─| | ♯| / i | ..) ) \ i ./ |\\ | | / `i'lノ))┘/ , ─│ !-l⊂⊃l┐__ヽ__/\ / | | | | | | ̄| / /| / ( (... .ヽ / |____|∈ __./ .| | | |_|/ヽ、_/ ./ ` ─ /\ /ヽ  ̄ \-──| \|_| | | |───/____i l=======l |_____ __\ |\ | | |/ ヽ── |______\ l二|^|二二|^|二l 丿______ |_丿 \| l ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | | | |. | | | | | | | |  ̄ ̄ ̄ l | ̄| ̄ ̄ ̄ ̄.| |────| |. | | | | | |.──────| | ̄ ̄ ̄| ̄|
Feb 16, 2007
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99 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/30(火) 05:14:05.13 ID:T9v5rC2I0( #゚∀゚)『あぁ!! くそっ!! 面白くねぇ!!』ジョルジュは家に帰るとすぐさま居間に陣取り、テレビにリモコンを向けた。しかし、この時期のテレビはクリスマス・年末の特番を垂れ流しているだけでドラマの再放送も本来興味のない彼にとっては退屈を紛らわせる事はなかった。腹立ち紛れにリモコンを放り投げる。そんな父の姿に子供達は何かを感じたのか、近寄ろうともしなかった。彼は元々自分自身の実力を発揮させてくれる店、と言うだけでバーボンハウスに入社した男である。そういう意味では彼はクーとの付き合いが店中の誰よりも浅く、ショックも少ないと言えた。从 ゚∀从『よぅ、どうしたジョルジュ。荒れてるじゃねーか』床に直に胡坐をかく彼の背後のソファに腰を下ろしたのは妻のハインリッヒだ。少し大きくなってきている下腹部をいたわる様に手を添えている。( ゚∀゚)『あぁ、それがよ…』ジョルジュは今日伝えられた出来事を語り始めた。100 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/30(火) 05:15:45.18 ID:T9v5rC2I0从 ゚∀从『そうか。クーさんが…。惜しい人を亡くしたな』目を閉じて夫の話に耳を傾けていたハインリッヒはこう続けた。从 ゚∀从『…ところでジョルジュ。晩飯は7時だ』( #゚∀゚)『あぁ!? てめぇ何時俺が晩飯の話なんかしたってんだ!?』場違いな妻の言葉に流石のジョルジュも激昂する。しかしハインリッヒはそれを無視。夫婦の寝室を指差して続けた。从 ゚∀从『行け。思いっきり発散して、晩飯の時には子供達に笑顔を見せてやってくれ』そこでようやくジョルジュは理解した。泣いてこい。妻はそう言ってくれているのだ。彼の一見して唯我独尊な性格の影に潜む、人一倍繊細な面をハインリッヒは知っていた。( ゚∀゚)『…悪いな』そういい残してジョルジュは寝室に消える。しばらくして漏らすような嗚咽が聞こえてきた。---------------------------------------------------------------------------------------------------101 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/30(火) 05:17:33.25 ID:T9v5rC2I0昼間にもかかわらずカーテンを閉め切ったドクオの部屋でツーは膝を抱えて座っていた。愛しい人は…そこにいない。その姿からは普段彼女が見せるうっとおしい程のハイテンションは想像できなかった。('A`)『う~っす。帰ったぞ』玄関の扉を開けて入って来たのはドクオだ。両手に抱えたスーパーのビニール袋を台所に下ろし、脱いだコートをベッドの上に放り投げる。('A`)『いやぁ、買いすぎちまった。重かったぜ。 ツー、飯作るけど何かリクエストあるか?』(* ∀ )『…いらない』ツーの一言に肩すかしを喰らいながらもドクオは台所の作業台に食材を並べていく。('A`)『なんだよ。食わなきゃ体が参っちまうぜ。 休みが空けたらすぐに年末年始のラッシュが始まるんだからよ』その彼の言葉にツーの中で何かが切れた。ドクオに詰め寄るとその襟首を絞り上げる。(#*゚∀゚)『ドクオ!! あんたよくこんな時にそんな事言え…!!』102 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/30(火) 05:20:21.13 ID:T9v5rC2I0ドクオは…泣いていた。ツーの手を払いのけると、流す涙を拭き取ろうともせず作業を続ける。(;A;)『俺だって…泣きてぇよ』(* ∀ )『……!!』(;A;)『俺がバーボンに入社して…右も左も分からなかった時…助けてくれたのは…クーさんなんだ… 内藤にとってクーさんが道標【みちしるべ】であったように… 俺にとってもクーさんは道標【みちしるべ】だったんだ…!!』そこまで口にして堪らずドクオは膝から崩れ落ちる。(;A;)『俺だって悲しい…泣きたい… でも…俺が落ち込んでいたら誰がお前を守るんだ…』彼は…彼女を守る為に必死に己を殺そうとしていたのだ。まるで…まるで出会った頃の感情を持たないロボットの様な彼に今だけ戻ろうとしていたのだ。そう。彼女の為だけに。ツーは床に膝をつき、愛しい人の頭を抱きかかえた。(*;∀;)『ゴメンね、ドッ君…。でもわたしは大丈夫だよ。 二人でいっぱい泣こう。二人で悲しみを乗り越えよう』ドクオもまたツーの腰に手を回す。永遠とも思える長い時間、2人は抱き合い涙を流した。---------------------------------------------------------------------------------------------------105 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/30(火) 05:21:55.27 ID:T9v5rC2I0(´・ω・`)『やれやれ…脆い物だね』主を失ったバースペースでショボンは一人グラスを傾けていた。周囲には空き瓶がすでに何本も転がっている。琥珀色の液体をグラスに注ぎ、ストレートで胃に流し込む。しかし、それでも彼は一向に酔えなかった。クーと知り合った頃のショボンは重度のアルコール中毒患者だった。【実力はある。酒さえ飲んでいれば】それが当時の彼の評価。ただひたすら。酔う為だけに酒を飲んだ。そんな彼を変えたのはクー。つまり、彼がバーボンハウスの料理長にまで登りつめたのもクーの努力の結果と言える。今ではショボンはクーの監視の目を浴びながらも酒の味を楽しめるまでに更生していた。彼には料理長としての責任がある。店の頂点として従業員を引っ張っていかなければならない。それでもショボンは再度酒に逃避した。それほどまでに、右腕と頼む人物を。男女の垣根を越えた親友を。密かに恋焦がれた女性を一度に失ったショックは大きかった。---------------------------------------------------------------------------------------------------106 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/30(火) 05:25:06.56 ID:T9v5rC2I0 約束を交わした親友の為に。 どんなに愛しても愛し足りない恋人の為に。 己を表現する為に。 自分を変えてくれた店と仲間たちの為に。 不器用な恋人の為に。 恋焦がれた女性の為に。 そして、己の夢を実現する為に。目的こそ違えど、揃い集まり笑いあった彼ら。しかし、一人の女性を失った事により彼らは進むべき道を失おうとしていた。 ーーーそして光は?
Feb 14, 2007
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86 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/30(火) 04:55:46.72 ID:T9v5rC2I0 第18章 夢( ,,゚Д゚)『全くあのバカには困ったもんだぞゴルァ』【本日臨時休業】の張り紙が張られたバーボンハウス内。誰一人口を開こうとしない内藤達の中心で大声を上げて笑っているのはギコだ。( ,,゚Д゚)『あいつは昔から人を騙すのが好きなんだよ。 店が倒産したとか、荒巻さんに多額の借金があるとか。 練った小麦粉と食紅で本物そっくりのちんこを作った時もあってな。 それを女子トイレの便器においておくんだ。 何も知らないウェイトレスが便器の蓋を開けると、そこには切り落とされたちんこが…』普段であればスタッフ一同喰いついてくる絶好のネタだった。しかし、今日は誰一人としてギコの話に乗ってくる者は居ない。皆、ショボンの性格はよく知っていた。つまらない冗談が好きであるという事も。そして、人の死をネタにする男ではないという事も。呆然とする者。嗚咽を漏らす者。恋人の肩を抱く者。それでも大声で笑う者。それぞれがそれぞれのやり方で、やがて扉をくぐって来るであろう男を待っていた。89 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/30(火) 04:59:08.98 ID:T9v5rC2I0(´・ω・`)『…みんな待たせてゴメン。警察やら色々あってね』そう言いながらショボンがやって来たのは結局それから一時間ほどしてからだった。皆の視線に気付かぬように冷蔵庫に向かい、そこから缶コーヒーを取り出して蓋を開ける。その顔は青白く、一切の生気を感じ取れない。(´・ω・`)『…原因は出血多量によるショック死。 クリスマスに浮かれた若者の飲酒運転だったらしいよ』誰に話しかけるでもなく、ただ義務感から口を開く。( ,,゚Д゚)『おい、ショボン。悪い冗談はやめろ』ギコがショボンに詰め寄る。(´・ω・`)『…僕は本気だよ』とたんにショボンの体が吹き飛び、床に衝突する。ギコが彼を殴り飛ばしたのだ。( ,,゚Д゚)『本気だと!! もっと悪い冗談だ!!』そう言いながらショボンのネクタイを掴み無理矢理体を引き起こす。( ,,゚Д゚)『あいつが…クーが死ぬものか!! 俺達は約束した筈だ!! 3人でこの店を盛り上げ』91 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/30(火) 05:01:53.82 ID:T9v5rC2I0次に吹き飛んだのはギコだった。食料棚に衝突し、彼の頭上に大量の瓶や缶が降り注ぐ。( ,,゚Д゚)『てめぇ…!!』(´・ω・`)『そう言えば』ショボンがネクタイを緩めつつギコに歩み寄る。(´・ω・`)『君とは昔よく殴りあったけど、決着はまだついていなかったね。 ちょうどいい。今ここでケリをつけようか』( ,,゚Д゚)『…上等じゃねぇかゴルァ』ギコが身を起こしショボンに掴みかかろうとした瞬間ーーーーー。( ゚ω゚)『うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!』内藤が吼えた。94 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/30(火) 05:05:58.12 ID:T9v5rC2I0( ゚ω゚)『僕が!! 僕が悪いんだ!! 僕があの時…クーさんと一緒に!! 僕が!! 僕がクーさんを殺した!! 僕が!! 僕が!!』叫びながら内藤は何度もスチール製の机に自身の頭を叩きつける。ξ;△;)ξ『内藤!! 止めて!!』そう言って止めに入るツンの体を力任せに弾き飛ばし、尚も自身を傷つけようとする。( ゚∀゚)『…!! いいかげんにしろ!! このバカ!!』半狂乱になって暴れる内藤を床に押さえつけたのは、全スタッフで最も力と体重のあるジョルジュだった。( ゚∀゚)『…少し落ち着きやがれ!!…ってうおっ!!』それでも内藤はそのジョルジュすら跳ね飛ばし立ち上がる。( ω )『僕は…僕は道標【みちしるべ】を失ってしまった…。これからどこへ…どうやって…』( ゚ω゚)『あああああああああああああああああああああああああっ!!』ξ;△;)ξ『内藤!!』叫びスタッフルームから逃げ出した内藤をツンが追う。後に残ったものはただ静寂。(´・ω・`)『…とにかく店は3日間休ませてもらうよ。今日はこれで解散しよう』そのショボンの言葉に彼らは一人・二人と店を後にしていった。95 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/30(火) 05:08:22.26 ID:T9v5rC2I0---------------------------------------------------------------------------------------------------( ,,゚Д゚)『くそっ!! ショボンの野郎思いっきり殴りやがって…!!』昨夜あんなに降っていた雪はすでに止み、空にはギコの曇った心とは正反対に輝く青空が顔を見せている。あれ程クーが愛した雪の絨毯は道路の端に寄せ集められ、灰色の小山を形作っている。そのギコの後ろを俯き歩いているのはしぃだ。(*;ー;)『なんだか…嘘みたいだね』( ,,゚Д゚)『嘘に決まってるだろうが!!』振り返り怒鳴ったギコだったが、すぐに思い直したように『すまねぇ』と恋人に頭を下げた。コートのポケットに両手を突っ込み歩き出す。しぃもまた先ほどと同じ距離を保ってギコの後を追った。( ,,゚Д゚)『なぁ、しぃ』…返答はない。それでも構わずギコは続ける。( ,,゚Д゚)『俺の…昔の話。覚えてるか?』98 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/30(火) 05:12:28.54 ID:T9v5rC2I0ギコの言葉にしぃはきょとんとしつつも答えた。(*゚ー゚)『えっと…お父さんのお店を横取りされちゃって、それからずっと日本中放浪してたって話?』( ,,゚Д゚)『そうだ』しばらくして彼は重々しく口を開く。( ,,゚Д゚)『…あの頃の俺は行く先々の店で問題を起こしては留置所の中と外を行き来するような毎日だった。 元々和食一本でやって来た俺がバーボンで働けているのも、 今お前とこうしていられるのも全部クーのおかげなんだ』(*゚ー゚)『そうだったね…』しぃは目を細める。(*;ー;)『クーさんに呼ばれてバースペースに行ったら…固まってるギコ君がいて… 覚えてるよ…なんで…なんでクーさん…』( ,,゚Д゚)『俺は…俺達は約束したじゃねぇか!! 勝手に死ぬなんて許さねぇぞ!!』聞こえるか?聞こえるなら答えろ、クー!!!!!ギコはこの空のどこかにいるであろうクーに向けて雄叫びをあげる。その声はどこまでも青すぎる空に吸い込まれ消えていった。---------------------------------------------------------------------------------------------------
Feb 14, 2007
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80 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/26(金) 01:40:49.37 ID:CWRlad7X0冬の冷たい風に流していた涙が凍りつく。でも僕は足を止めない。乾燥した空気に喉が悲鳴を上げている。でも僕は走り続ける。そう言えば、前もこんな風に誰かに気持ちを伝えるために走った事があったっけな。あの時は…雨が降っていたっけ。もしもあの時。ツンが僕を殴りに来てくれなかったら、今の僕はなかっただろう。 ξ゚‐゚)ξ『しぃにはギコさんがいる。ドクオにはお姉ちゃんが。お姉ちゃんにはドクオがいる。 でも、あたしは一人。お姉ちゃん。友達。妹。 当たり前の様にそばにあったものがいつの間にか無くなって最後はあたし一人になる。 そんな感じがして寂しいの。怖いの』そう言って肩を震わせていたツン。 ξ*゚△゚)ξ『何言ってるのよ!! あたしの趣味は白馬に乗った将軍様って言うか…』そう言って赤面していたツン。僕の頭の中にツンとの思い出が幾つも幾つも何度も何度もフラッシュバックする。だから僕は走る。階段を駆け上がる。ずっと気づかなかった。もう一つの光を失わない為に。81 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/26(金) 01:43:53.39 ID:CWRlad7X0VIP駅時計台下。そこにツンを見つけた。チェックのコートとピンク色のマフラー。ぼんやりと星を見つめている。早くツンのそばに行きたい。一秒でもいい。気持ちを伝えなくてはいけない。でも、足はガクガクと振るえ前に動かすことすら困難な状態。これ以上一歩も前に出てくれそうにない。だから僕は叫んだ。( ;ω;)『ツンっ!!』潰れた喉から出たのはかすれた叫び声。それでもツンは僕に気づいて走りよってきた。ξ;△;)ξ 『内藤!! 来てくれたんだ!! よかった…あたし…』僕はツンの声をさえぎりなおも叫ぶ。( ;ω;)『僕は馬鹿だおっ!!!!!!』ξ;△;)ξ『…え?』83 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/26(金) 01:45:30.78 ID:CWRlad7X0( ;ω;)『馬鹿だから…ずっと自分の気持ちに気づかなかったお!! 馬鹿だから…こんなにツンを待たせてしまったお!! 馬鹿だから…自分の気持ちを言葉に出来ないお!!』ツンを目の前にしているにも関わらず僕は叫ぶ。( ;ω;)『馬鹿だけど…本気でツンを好きなんだお!! 君の…ツンの為だけに世界一の料理人になりたいお!!』叫び終えた僕は全身の力が抜けきってしまい、街灯に身を預けた。ξ;△;)ξ『…か』( ;ω;)『…お?』ξ;△;)ξ『馬鹿でいいじゃない!! あたしが馬鹿なあんたを好きなのよ!! 誰にも文句は言わせないわ!!』そう言ってツンは僕の首に抱きついてくる。僕もツンの細い腰に手を回し強く抱きしめ…涙の味がするキスをした。大時計が深夜0時の鐘の音を響かせ、空からは静かに雪がちらつき始めていた。86 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/26(金) 01:49:41.85 ID:CWRlad7X0みんなに質問があるんだ。大人になるってどんな事だと思う?87 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/26(金) 01:52:11.01 ID:CWRlad7X0童貞を捨てる?嫌なヤツ、悲しい出来事。それに対するスルー能力を身に着ける?88 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/26(金) 01:54:27.08 ID:CWRlad7X0もし、そんなスルー能力を身に着けることが大人になる条件なら、僕は一生大人になれないと思う。89 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/26(金) 01:56:16.21 ID:CWRlad7X0あれから僕とツンは手を繋いでイルミネーションが溢れる街を歩いた。途中で雪が強くなってきたのでファミレスに入って朝まで語り明かした。本当はホテルに行きたかったけど、どこも満室だったから。初めてキスをした人とのお喋りは楽しかったけど、少し照れくさかった。ξ^ー^)ξ 『ホワイトクリスマスかぁ…素敵ね』( ^ω^)『この冬最大の大雪になるってテレビで言ってたおwww明日は歩きづらくて大変だおwww』ξ゚△゚)ξ 『ロマンがないやつ…』でも、そんな幸せな時間は朝方の一本の電話によって打ち切られた。(´・ω・`)『もしもし…内藤君かい? 寝ていたらすまなかった』( ^ω^)『起きていましたお。どうしたんですか、こんな朝早くに』(´・ω・`)『うん、落ち着いて聞いてほしい』(´・ω・`)『…クーが…死んだ』
Feb 13, 2007
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61 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/26(金) 01:12:13.55 ID:CWRlad7X0 第17章 キスしてほしい ~クリスマス後編~( ´ω`)『…はぁ』僕はバースペースのカウンターで今日何十回目かになるため息を吐き出した。川 ゚ -゚) 『どうした。随分悩んでいる様子ではないか』そりゃそうだ。 ξ゚-゚)ξ『内藤。あたしはあなたが好き』あんな可愛い子からそんな事を言われて悩まないのはこの世に一握りのイケメソだけだ。ツンの声が。ツンの表情が。頭から離れない。( ´ω`)『…僕はどうすればいいんだお』ツンはVIP駅の大時計の下で待っていると言っていた。気持ちを言葉にして伝えたいと言っていた。僕の答えを知りたいと言っていた。僕の答え…?62 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/26(金) 01:15:51.36 ID:CWRlad7X0( ´ω`)『…はぁ』間違いなく、今日の僕は今まで生きてきた中で最もため息をついているはずだ。そしてまたその記録を一つ更新する。ツンは可愛い。自然に波打つ栗色の髪。ただ可愛いだけでなく自己の強い意思を秘めた瞳。それは誰が見ても認めるところだ。出勤途中。合羽橋に包丁を買いに行った時。たまの休日にツンの服を買いに行った時。周りの男の羨望と嫉妬が入り混じった視線を浴びながら僕は誇らしげな気持ちだった。例えツンとはただの友達だとしても、だ。そしてツンは怖い。全身人間凶器。闘神の遺伝子を継ぐ者。それも誰が見ても認めるところだ。ドクオが怒鳴られる度に。ジョルジュさんが全身打撲寸前の怪我をした時。ショボンさんが血の海に沈んだ時。僕の恐怖と絶望が入り混じった視線を浴びながらツンは誇らしげに仁王立ちしていた。64 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/26(金) 01:21:38.47 ID:CWRlad7X0でも、ちょっと待ってほしい。【人一倍可愛い】と言うだけの理由で人は死の恐怖を乗り越えられるものだろうか?とてもそうは思えない。例えばツーさん。ツーさんだって (*゚∀゚)『最近ナンパやらAVのスカウトがウザイんだよね!!』ってほどの美人だ。横にいる男が人一倍キモイせいもある。が、ツーさんがそこらの女性と比べてかなり上のランクに入る美人である事に変わりはない。だけど、あの性格に着いていく自信は僕にはない。つまりドクオはあの性格を苦に思わないだけの何かをツーさんに見出していると言うことなのだろう。そして僕は…自分でも気づかぬうちにツンに何かを見出していたのだろうか?65 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/26(金) 01:22:26.87 ID:CWRlad7X0川 ゚ -゚) 『おい。 聞いているのか、内藤』( ;^ω^)『は、はいですお!!』クーさんの声で僕は精神世界から現実世界に引き戻された。川 ゚ -゚) 『何度呼びかけても返事をしない。 泣き出すところだったぞ』( ;^ω^)『それはすまんかったですお。ちょっと考え事をしていたもので』そう答えて目の前に置かれた泡の消えたビールを口に含む。温まり、炭酸が消えたビールは正直美味しくなかった。川 ゚ -゚) 『内藤。バーテンダーが最も悲しい瞬間が分かるか?』( ;^ω^)『何ですかお、突然』川 ゚ -゚) 『答えろ』やれやれ。何で最近僕の周りには意味不明な事を言う人ばっかりなんだろう。『分かりません』そう答える前に川 ゚ -゚) 『それは目の前で不味そうに酒を飲まれることだ』クーさんが言った。66 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/26(金) 01:23:15.12 ID:CWRlad7X0( ^ω^)『……』クーさんが言っている事も十分に分かる。僕だって自分が作った料理を不味そうに食べられたら良い気分はしない。川 ゚ -゚) 『話してみろ。わたしに出来ることなら力になってやる』あぁ、やっぱりこの人は僕の事を何でもお見通しなんだな。この人に相談したら…僕は正解に近づけるのかもしれない。僕は一瞬話してもいいものなのか迷ったけど、意を決して口を開いた。( ´ω`)『実は今…ツンに告白されたんだお』川 ゚ -゚) 『…!! それで内藤はどう答えたんだ』( ´ω`)『…その答えが分からないんだお』僕はまた肺の空気をすべて搾り出すような深いため息を吐き出す。( ´ω`)『…ツンは…友達だお。僕はそう思っていたし、ツンもそう言ってましたお。 だから、突然言われてもパニックって言うか…。ツンのことは嫌いじゃありませんお。 ただ、ツンの真剣な気持ちにどう答えればいいのか…分からないんですお』ふむ。クーさんは唇に指を当てる。何かを考え込む時の癖なのかもしれない。川 ゚ -゚) 『すまないが、その相談にはのってやれそうもない。その答えを見つけるのはお前でなければいけない』それに…。一呼吸置いて言葉を続けた。川 ゚ -゚) 『内藤。お前を好きである気持ちはツンに負けているつもりもないからだ』72 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/26(金) 01:32:58.65 ID:CWRlad7X0( ω )『……』この人まで何を言い出すんだろう。川 ゚ -゚) 『内藤。わたしは何時だったかお前の道標【みちしるべ】になりたいと言った事がある。 覚えてくれているか?』( ω )『……』 川 ゚ -゚) 『君はあの台詞を…料理人としてしか受け止めてくれなかったが、わたしの本心はもっと奥にあったんだ』( ω )『……』川 ゚ -゚) 『最初からこのような気持ちだったわけではない。 いや、わたしの気持ちの経緯など意味のない話だな。 だがしかし、わたしは何時からか君の事だけを思うようになっていた。 狂おしいほどに。胸をかきむしりたくなるほどにな』( ω )『……』川 ゚ -゚) 『内藤。もう一度言おう。 わたしは君の道標【みちしるべ】になりたい。 君が楽しい時も辛い時も嬉しい時も悲しい時も。 常に君のそばにあって道を照らし続ける。 そんな光になりたい』73 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/26(金) 01:36:05.40 ID:CWRlad7X0( ω )『…クーさん、ありがとうだお』言葉を繋ぎ終えたクーさんがグラスの水を一口飲んで大きく息を吐き出してから僕は口を開いた。( ω )『…あの時の言葉にはそんな意味があったのかお。勘違いしてすまなかったお』 僕はようやく自分の気持ちに気づいた。( ω )『…僕はずっといい加減に生きてきて…誰かの気持ちを真剣に考えたり 真剣に受け止めようとした事なんかありませんでしたお』 僕はクーさんが好きだ。( ω )『…当然、自分の気持ちを真剣に言葉にしようなんて考えた事もありませんでしたお』 僕の最大の理解者。( ω )『…そんな僕でもこんなに真剣な言葉をかけられたら真剣な言葉を返したいと思いますお』 きっとクーさんなら僕の人生をずっと支えてくれる。 僕もクーさんを支えたいと思う。( ω )『…でも』 でも…なんでだろう。( ;ω;)『こんなに真剣にクーさんの事を考えようとしてるのに…頭の中ではツンの事しか考えられないんだお!!』75 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/26(金) 01:37:31.42 ID:CWRlad7X0ごめんなさい。ごめんなさい。何度もそう言いながら僕は泣いた。目の前ではクーさんが何も言わずに僕を見つめている。川 ゚ -゚) 『内藤。それがお前の答えだ』( ;ω;)『…お?』川 ゚ -゚) 『悩む事はあるまい。お前が今言った言葉。それがお前の答えだ』( ;ω;)『……!!』川 ゚ -゚) 『行け、内藤ホライゾン。ツンが待っているのだろう。 言葉に出来ない想い。言葉では結論が出せない想い。 それを伝えてこい』僕はヨロヨロと椅子から立ち上がる。( ;ω;)『クーさん…ごめんなさいだお』川 ; -;) 『…!! 謝るな!! よけいに惨めになるだけだ!! 安心しろ。わたしはこれからもお前…いや、お前たち2人の道標【みちしるべ】として道を照らしてやる』僕はその言葉を背に受け、店を飛び出る。そして走り出した。
Feb 13, 2007
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45 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/26(金) 00:48:48.03 ID:CWRlad7X012月24日。いわゆるクリスマス・イブ。しかも金曜日。忘年会の予約客と押し寄せるカップル客の波状攻撃に厨房は混乱の渦の真っ只中にあった。( ;^ω^)『ド、ドクオッ!! すまないがローストビーフのスライスを頼みたいお!!』(;'A`)『無茶言うんじゃねぇ!! こっちだってケツ叩かれっぱなしなんだ!!熱っ!! クソッ!! 誰だ!! 海老の尻尾切ってないじゃねーか!!』(*゚∀゚)『ブーちゃん!! こっちに貸しな!! イヨゥ君頼んだよっ!!』(;=゚ω゚)ノ『何言ってるよぅ!! 僕だってドクオさんのフォローで手一杯だよぅ!!』(*゚∀゚)『さっきドサクサ紛れにわたしのお尻触った人がいます』(#'A`)『あんだと…?』(;=゚ω゚)ノ『ローストビーフでも何でもやってやるよぅ!!』( ;^ω^)『それと!! 裏の冷蔵庫から細麺2ケースと太麺1ケース!! 大至急だお!!』(;'A`)『俺にはXO醤を缶ごとだ!! こんなに混むと補充がおいつかねぇ!!』(,,゚Д゚)『牡蠣は解凍されてるか!? 無いだと!! ポリバケツにぶち込んで水かけとけ!!』その状況にホールからの催促が拍車をかける。46 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/26(金) 00:50:38.61 ID:CWRlad7X0ξ゚△゚)ξ 『ギコさん!! 座敷卓の宴会料理前菜まだですか!?』(,,゚Д゚)『…!! 17名分の料理なんかそんなすぐ出せるか!! ドリンクで繋いでくれ!! おい、ツー!! そこの水菜切ってくれ!!』(*゚∀゚)『3分後ならOKだよっ!!』(,,゚Д゚)『チッ!! それなら自分でやる!!』(*゚∀゚)『すまないねっ!! それより4番も前菜出ないと次がつっかえてるよ!!』(*゚ー゚)『ジョルジュさん!! 9番デザートまだですか!!』( ゚∀゚)『あとは仕上げだ!! ちょっと待て!!』そう言ってジョルジュさんはプレートにホイップクリームを搾り出す。幸せそうなカップルを祝福する言葉をつぶやきながら。( #゚∀゚)『馬鹿ップルども死ね馬鹿ップルども死ね馬鹿ップルども死ね馬鹿ップルども死ね馬鹿ップルども死ね 馬鹿ップルども死ね馬鹿ップルども死ね馬鹿ップルども死ね馬鹿ップルども死ね馬鹿ップルども死ね 馬鹿ップルども死ね馬鹿ップルども死ね馬鹿ップルども死ね馬鹿ップルども死ね馬鹿ップルども死ね 馬鹿ップルども死ね馬鹿ップルども死ね馬鹿ップルども死ね馬鹿ップルども死ね馬鹿ップルども死ね』(,,゚Д゚)'A`)*゚ー゚)*゚∀゚)『いや、お前がちょっと待てwww』( #゚∀゚)『あぁ!! うるせぇぞ!! テメェラはいいよな!! 仕事終わったらサンタプレイだもんな!! こっちはハインが妊娠してっからクリスマスなのにヤレねぇんだよ!!』(,,゚Д゚)'A`)*゚ー゚)*゚∀゚)(…また孕ませたのかよ)48 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/26(金) 00:54:48.16 ID:CWRlad7X0終電がなくなる時間。それは近辺のラブホが満室になる時間でもある。この頃になるとようやく客足は収まり、早番のスタッフは仕事を終えた者から帰路に着く。嵐のようなクリスマスも終焉を迎えようとしていた。( ^ω^)『ドクオ、ツーさんお疲れだおwwwちょっとクーさんのトコで飲んでから帰らないかお?』('A`)『いや、止めとくわ。今日はクリスマスだしな』そう言ってドクオは手にした小箱を掲げ見せる。中にはジョルジュさんが作ったケーキが入っているはずだ。(*゚∀゚)『ゴメンネ~!! 今日はエッチなトナカイさんの角に襲われる予定なのさっ!!』( ;^ω^)『そ、そうかお…つか、そんな予定教えなくてもいいおwww』なんか今日はクーさんが話があるから来てくれって言うから2人も一緒にって思ったのに。僕がそう言うと2人は顔を見合わせ言った。(;'A`);*゚∀゚)『いや、それはダメだろ…常識で考えて』( ^ω^)『え? なんでだお?』本気で首をかしげる僕。ため息をつく2人。そして、僕に近づく栗色の髪をした女性。ξ゚△゚)ξ 『内藤、ちょっと話があるんだけどいいかしら?』49 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/26(金) 00:56:17.91 ID:CWRlad7X0(*゚∀゚)'A`)『お疲れさん、また明日』そう言ってツーさんとドクオは店を後にした。(*゚∀゚)『ブーちゃん、ちゃんと結論出さなきゃ許さないよ。 2人ともわたし達にとって大事な2人なんだからね!!』ツーさんの言葉は全く意味が分からない。( ^ω^)『おっwwwちょーど良かったおwwwツンも一緒に悲しい一人身同士飲むおwww 飲みながら話せばいいおwww』そう言って歩き出した僕のコートの袖をツンが掴んだ。普段の荒々しさはどこにもなく、今にも離れてしまいそうな力で。ξ゚-゚)ξ 『…ここでいい』それっきりツンは俯き黙っていたがやがて意を決したように顔を上げξ゚-゚)ξ『内藤。あたしはあなたが好き』はっきりとそう言った。51 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/26(金) 00:57:45.72 ID:CWRlad7X0( ;^ω^)『え? は? お?』何だ?なんて言ったんだ?ツンが僕を好き?ありえない。こんな可愛い子が僕を好きなんて…。そうか、これはなんかの罰ゲームだ。隠れてみんなで見てるに違いない…。ξ゚△゚)ξ 『罰ゲームでもなんでもないわよ』僕の心が読めるのかっ!?ξ゚-゚)ξ 『いや、あなた声に出してるし。 これが今のあたしの気持ち。ううん。あたしの気持ちの一部分。 もっともっと言葉にしたい気持ちがあって、それを伝えたい。 …VIP駅の大時計の下で待ってるから…来てね』それだけ言うとツンは僕に背を向け歩き出す。( ;^ω^)『ちょ…待つお!! 実は今日クーさんから大事な話があるって言われてて…』知ってる。歩みを止めずツンが答えた。ξ゚-゚)ξ 『その話が終わってからでいいの。あなたの答えを知りたい。 もし来なくても…それがあなたの出した答えなら何も言わないわ』( ;^ω^)『……』そしてツンはスタッフ専用出入り口の扉の奥に消えた。一生忘れる事が出来ない。本当の意味での嵐のクリスマスが始まろうとしていた。
Feb 6, 2007
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34 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/26(金) 00:30:38.80 ID:CWRlad7X0 第16章 ラブレター ~クリスマス前編~専用の鶏がらスープをベースに数種類の岩塩をブレンドした塩で味をつける。隠し味は白湯とフレッシュ生クリーム、ホワイトソースを少し。茹で上がった麺を軽くほぐしてトッピングは玉葱の千切り、白ワインで煮込んでバターで味をつけた人参とコーン、アスパラガス。温泉卵。海苔を一枚。鉄板で焼いて作った薄焼きチーズせんべいも一枚。パルメザンチーズを振りかけて、自家製のローストビーフを3枚乗せれば。( ^ω^)『うん、旨そうだお!!』内藤ホライゾン特製クリスマス限定ラーメンが完成する。むさぼるように食べたいのが本音だけど、これからスタッフに試食を頼まなくてはいけない。( ^ω^)『みんな~!! クリスマスラーメンの試食を頼むお』言いながら両手に一つずつ丼を持って声を上げる。僕の声を聞いたスタッフが我先にとこっちにやって来た。36 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/26(金) 00:34:13.19 ID:CWRlad7X0(*゚∀゚)『へぇ、これが前っからブーちゃんが考えてたってラーメンかい!! 美味しそうじゃないか!!』デザートの試食ではしぃちゃんが真っ先に飛びついてくるのだけれど、こう言った料理の試食になるとこの人が一番早い。包丁くらい置いてきてほしかった。怖いから。( ^ω^)『つか、なんでツーさんは厨房なのにサンタコスなんだお?』(*゚∀゚)『季節のお祭りには参加しないとねっ!! 言うなれば趣味ってヤツさ!!』( ^ω^)『ミニスカートで厨房走り回られると腰が引けて仕事にならないから勘弁してほしいおwww』(*゚∀゚)『下はブルマだから安心しな!!』(=゚ω゚)ノ『それは逆に破壊力上がるから脱いだほうが良いよぅ』(*゚∀゚)『黙りなさい、犯罪者!!』ξ゚△゚)ξ 『お姉ちゃんの分まで衣装買った記憶はないんだけどね』次に登場したのはツンだ。真っ赤なサンタ衣装から惜しみなく足をさらけ出している。僕的には網タイツのポイントが非常に高い。(*゚∀゚)『これ? 安心しなって!! わたしの私物だよっ!! 女なら一枚は持ってるのがデフォじゃないかっ!!』その言葉にはどことなく聞き覚えがある。( ;^ω^)(一家に一枚サンタコス…マジだったのかお)38 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/26(金) 00:39:14.92 ID:CWRlad7X0昔の偉い人は言いました。伸びたラーメンほど不味い物はない、と。それを知ってか知らないでか、いつの間にか僕の周りにはスタッフの壁が出来上がっていた。(,,゚Д゚)『黒い丼に白いスープがいいじゃねぇかゴルァ』('A`)『うん。野菜も色とりどりで綺麗だしな』話しながら各自手にした小鉢に麺や具を移していく。(*゚ー゚)『うん、あっさりしてるけど味は深いねっ☆』(´・ω・`)『嫌な後味が残らないし、野菜も下ごしらえがちゃんとしてていいと思うよ』( ^ω^)『その野菜は一度白ワインで煮てるんだお』( ゚∀゚)『ちなみに使った白ワインは俺のお勧めでリープミルヒ・フラウ。【聖母の乳】って名のドイツワインでな』ξ゚△゚)ξ 『黙れ』川 ゚ -゚) 『わたしはこのローストビーフが気に入ったぞ。 見ろ、この美しい桜色。絶妙の火の通し具合だ。 スープを含ませた玉葱を巻いて食べると最高だぞ』さすがクーさん。僕は今までに何度この台詞を言っただろう。( ^ω^)『そこは一番苦労したんだおwwwでもある方法を使えば誰にでも簡単に作れるんだおwww』39 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/26(金) 00:41:53.86 ID:CWRlad7X0話は2週間ほどさかのぼる。( ^ω^)『ジョルジュさん、クリスマスにローストビーフを作りたいからオーブン貸してくれだお』( ゚∀゚)『だが断る』肩に小麦粉の詰まった袋を担いで厨房にやってきたジョルジュさんにオーブンのレンタルを頼んだ僕は秒殺的に拒否されていた。( ;^ω^)『そんな!! オーブンが無いとローストビーフ出来ないお!!』( ゚∀゚)『知るか!! オーブンに肉に匂いが染み付いたらケーキが焼けなくなっちまうじゃねーか!! ダメったらダメだ!!』( ^ω^)『今度ツンのおっぱい触らせてあげるから!! お願いだお!!』ξ( #゚∀゚)『あんなえぐれた乳触ってどーするんだよ!!』 ~残酷描写につき自主規制~とにかくそんな会話があって僕はオーブンの使用を断られてしまった。これ以上交渉しようにも今頃ジョルジュさんはスタッフルームで生と死の狭間を彷徨っている事だろう。( ^ω^)『…今のうちに勝手に使っちゃおうかお』そんな僕の独り言を聞いていたのはギコさん。(,,゚Д゚)『やめとけ。そんなもんオーブンが無くても作れるぞゴルァ。教えてやるから見とけ』40 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/26(金) 00:44:25.18 ID:CWRlad7X0 (,,゚Д゚)がオーブンなしでローストビーフを作るようです(,,゚Д゚)『まず肉だ。これは牛肉ならランプだろうがサーロインだろうが何でもいい。 一番旨いのはフィレだけどな』( ^ω^)『はいですお』(,,゚Д゚)『最初に肉に塩・胡椒等のスパイスをすりこんでやる。 サラダ油と混ぜてやると簡単だぞゴルァ』( ^ω^)『はいですお』(,,゚Д゚)『次に表面を軽く焼く。フライパンでいいぞ』( ^ω^)『はいですお』(,,゚Д゚)『軽く冷ましてラップで何重にも包み、ビニール袋に入れて真空状態にしてくれ』( ^ω^)『はいですお』(,,゚Д゚)『そしたらそれを熱湯を張った鍋にぶち込む。 温泉卵を作る時と同じようにお湯の温度が下がらない場所で保管してくれ』( ^ω^)『はいですお』41 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/26(金) 00:45:16.38 ID:CWRlad7X0(,,゚Д゚)『火の入り具合を確かめるには、鉄串を肉の中心部まで刺して2~3秒待つ。 それを唇の下に当てるんだ。ほんのり温かければ完成。あとは余熱でいい感じになるぞゴルァ』( ^ω^)『はいですお』(,,゚Д゚)『…お前ちゃんと聞いてたか?』( ^ω^)『勿論ですお。ところでギコさん、これじゃローストしてないですお』(,,゚Д゚)『ま、正確に言えばローストビーフじゃねーぞ。 だが、ステーキなどの平面加熱ではなく空間全体を使ってゆっくり加熱する原理は同じだゴルァ。 これを知っていればキャンプで薪の下に肉を埋めておくだけでもローストビーフが楽しめるぞゴルァ』( ^ω^)『つまり、2次元でなくて3次元な加熱をするって事でFA?』(* (,,゚Д゚)『そうだ。お前もこれを機会に3次元の素晴らしさに目覚めろ。 昨日は暖房消して【雪山登山遭難プレイ】に挑戦したんだが、これが燃えてな…』 ~残酷描写につき自主規制~---------------------------------------------------------------------------------------------------とにかく、そんな試練を乗り越えて完成したローストビーフなのだ。
Feb 6, 2007
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17 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/26(金) 00:10:59.62 ID:CWRlad7X0…と、そこに。赤面するクーさんの背後に鬼の姿。ξ゚△゚)ξ 『もう話は終わったかしら?』その声に『ひゃうん』とか反応するクーさんと、その横に腰を下ろし足を組むツン。川#゚ -゚) 『何をしにきた? わたしたちは大事な12月の販促会議中だ。 邪魔はしないでもらいたいな』そう言いながら眼鏡をはずす。あぁ、もったいない。ξ゚△゚)ξ 『あら? あたしもショボンさんに言われてホール代表として 12月の販促計画に参加しなきゃいけないんだけど。 なにか問題あるかしら?』そのツンの言葉にクーさんはギロリとノートパソコンの陰に隠れるショボンさんをにらみつける。川 ゚ -゚) 『…どういう事だ?』(´・ω・`)『し、仕方ないじゃないか!! 僕だって命は惜しい…』あっさりと白状するショボンさん。川 ゚ -゚) 『貴様あとで肉片にしてくれるわ』ξ゚△゚)ξ 『話の流れは分かってくれた? じゃ、ホールからの販促案を発表するわよ』ツンが満足げに笑いながら言った。19 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/26(金) 00:13:54.94 ID:CWRlad7X0 ξ゚△゚)ξ 『12月の販促案として…ホールではサンタコスに挑戦しようと思います』( *^ω^)『ミニスカサンタ萌えだおwww』川 ゚ -゚) 『内藤、鼻の下を伸ばすな。そんなに見たければ私がいくらでも着てやる』ξ゚△゚)ξ 『年増のサンタコスなんて誰も興味ないと思うけど? とまぁ、それは置いといて。 ターゲットはそこでだらしない顔してるような男どもね。 お店の前でチラシ配れば宣伝効果が期待できると思うわ』コホンとわざとらしい咳をしてツンが続ける。ξ゚△゚)ξ 『ってわけで、ホール人数分の衣装代が必要なんだけど』川 ゚ -゚) 『だが断る』( ^ω^)『ちょwww即答www』川 ゚ -゚) 『そんなものに経費を使っていては幾らあっても足りないではないか。 そもそもサンタコスなど一人一枚は持っていて当然。故に新たに買う必要はないだろう』一家に一枚サンタコス。( ^ω^)゚△゚)ξ ´・ω・`)『あるあr…ねーよwww』22 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/26(金) 00:17:20.30 ID:CWRlad7X0(´・ω・`)『お茶が入ったよ』結局、衣装代はクーさんの眼光の効果があったおかげかショボンさんのポケットマネーから算出される事になった。(´・ω・`)『この業界ボーナスは1月だし、今の時期の出費は痛いなぁ』とか言っていたけど総員スルー。休憩がてら雑談を開始した。ξ゚△゚)ξ 『…でね、しぃったらギコ君が独立したら自分もついていくんだって言うもんだからお父さん大慌てでさ』どこから出したのか謎の固焼きせんべいを食べながらツンが言う。(´・ω・`)『まぁ、料理人なら自分の店を持ちたいって思うのは当然かもしれないけどね』( ^ω^)『ショボンさん、そのコメントちょっとずれてますおwww』言いながら僕もせんべいに手を伸ばす。ξ゚△゚)ξ 『やっぱり内藤も将来は自分のお店を持ちたいの?』川 ゚ -゚) 『それも悪くないかもな。 そして内藤の横にはわたしが…』ξ#゚△゚)ξ 『死ね。氏ねじゃなくて死ね』僕の夢か…。今はギコさんやショボンさんのような一流の料理人になることしか考えられない。そしてその先は…。25 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/26(金) 00:19:04.26 ID:CWRlad7X0 ( ^ω^)『まだよく分からないお。独立するかもしれないし、ずっとバーボンで働くかもしれないお。 …料理人をやめるって選択肢はないと思うけど、 いつかはギコさんやショボンさんを越えて…世界一の料理人になれたら最高だと思うお』僕はわざとニヤニヤ笑いながら言う。そうでもしないと恥ずかしいからだ。でも、これは僕の本心。将来どうなるか分からないけど、ずっとこの世界を歩き続けていつかは世界一になれたらと思う。ξ゚△゚)ξ 『世界一か…ずいぶん大きく出たわね』( ^ω^)『茶化さないでくれだおwww』(´・ω・`)『僕なんかまだまだ若造の域を出ていないつもりだけどね。 そこまで言ってくれるのは嬉しいよ』お茶をすする。(´・ω・`)『でも、これだけは分かってほしいんだけど…この業界に【世界一】なんてゴールは存在しないと思うんだ』その顔は珍しく真剣なものに見えた。26 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/26(金) 00:20:07.72 ID:CWRlad7X0(´・ω・`)『考えてみてほしい。【世界一の料理人】ってなんだい?』( ;^ω^)『そ…それは…』(´・ω・`)『世界一の売り上げを誇るレストランのシェフなら世界一なのかい? 世界一上手に炒飯を作れたら世界一なのかい? 僕はそうは思わない。 何故なら、そんな料理人でも更なる高みを目指しているから。 逆に言えばそこで慢心してしまう料理人はすでに料理人ではないとすら言えるだろうね』ξ;゚△゚)ξ 『それじゃ、永遠にゴールなんて見えないじゃない』(´・ω・`)『うん、そうだよ。 例え一つの目標にたどり着いてもそこは次の目標へのスタート地点に過ぎない。 僕らはそんな世界の住人なんだ それに気付いた時、初めて道が開けるといっても過言ではない』そう言ってショボンさんは再度お茶を口に含む。( ;^ω^)『終わりがない事を知るのが始まりの終わり…って感じかお』(´・ω・`)『そんな感じかな』ショボンさんの言葉は僕にとって少なからずショックだった。【世界一の料理人】それは僕にとって漠然としていたけど最終目標だったから。27 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/26(金) 00:21:24.66 ID:CWRlad7X0川 ゚ -゚) 『内藤、そんなに落ち込むことはないぞ』肩を落とす僕に話しかけてきたのはクーさんだ。川 ゚ -゚) 『確かに【世界一の料理人】の定義は曖昧かもしれない。 しかし、それは世界中の料理人が持つ目標の数だけゴールがあると言う事でもある』( ´ω`)『…?』川 ゚ -゚) 『ゴールがないなら走り続ければいいではないか。 好きな世界で好きなだけ走り続けられる幸せを感じればいいではないか』(´・ω・`)『そうだね。それも一つのゴールかt』川 ゚ -゚) 『ショボンすまない、少し黙れ。 いいか、内藤。少なくともこの店に来てくれるお客様は他の店よりもこの店を選んでくれているんだ。 お前はそれに答える義務がある。 食事を楽しんでいただくお客様が【この店は世界一美味しい】。 そう思っていただければ、それはそのお客様にとってお前が【世界一の料理人】であるという事だ』光を閉じ込めた水晶の様な瞳で僕を見つめクーさんは話す。そうだ。正体不明のナンバー1より、誰か一人の為のオンリー1でいいじゃないか。その誰かが誰になるのか。僕にはまだ分からない。それでも、僕のこの右手を捧げるに相応しい誰かのために。( ^ω^)『もっともっと腕を磨かないといけないお』僕はそう思った。
Feb 3, 2007
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5 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/25(木) 23:47:05.52 ID:8GeQtqWk0 第15章 僕の右手僕がバーボンハウスに入社してから1年半が過ぎた。失敗と反省ばかりの毎日だけど、ようやく少しずつ自分を客観的に見れるようになってきたと言うか…。自分の事だけじゃなくて、周囲の仲間の事やお店の事を考えられるようになった。自分でも何を言っているのか分からないけどそんな感じだ。( ;^ω^)『それにしても…これは痛いおwww』つい先日。ちょっと暇だったんで過去のブログを読み返してみたんだ。そしたら、そこに書いてあったのが【天才料理人の華々しいデビュー】【この僕に皿洗いなんかさせるほうが間違ってる】【バーテンダーのお姉さんはエロカワイイ】そんな暴言の羅列。( ;^ω^)『これじゃ、レスつかない筈だお』本気で料理人を目指している人から見たら腹立たしい事この上ない駄文。荒らされなかっただけ幸せかもしれない。7 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/25(木) 23:49:28.03 ID:8GeQtqWk0最近はすっかりツンやクーさんに振り回されて2・3日に一度更新するかしないかのペースになってしまっているけど、僕はそれでもブログ更新だけは続けてきた。仕事の事だけを書き連ねた日記みたいになってるけど、読み返せば自分の勉強にもなるし、着実に進歩の跡が見て取れるのは気分がいい。同業さんからのアドバイスや『あるあるwww』の声も嬉しくて、更新はサボってもコメントだけは目を通すのが僕の日課になっていた。 僕の右手 これを読んでくれている同業さんなら分かると思うけど、 料理人の手って言うのは決して綺麗なもんじゃない。 それは衛生的なものじゃなくて、 火傷・切り傷・皸などがいたる所にあるからだ。 治り掛けの傷の上に新たな傷がつき、瘡蓋に瘡蓋が重なる。 最初はそれを疎ましく感じていた。 でも最近では朝起きてから傷だらけの右手を眺めるのが8 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/25(木) 23:52:14.72 ID:8GeQtqWk0( ;^ω^)『…ってあれ?』と、そこで僕はタイピングのの手を休め自分の両手をまじまじを見つめる。僕の利き腕、つまり包丁を持つ手は右手だ。左手に切り傷がつくのは理解る。なぜ、右手にまで切り傷が大量についているんだろう?( ;^ω^)『こいつはミステリー不思議発見だお』そう言えば、ギコさんやドクオの右手も傷だらけだった気がする。ツーさんも昨日『包丁で切った』とかって騒ぎながら右手にバンドエイド貼ってたっけ。なんで?どうして?Why?この謎は究明しなくてはならない。いや、 む し ろ こ の ネ タ は も っ と 引 っ 張 れ る は ず だ 。そう考えた僕は更新を取りやめ、テキストに書き途中の文章を保存した。( ^ω^)(今日も更新できなかったお。読者さんごめんなさい)PCの電源を落とし布団に潜りこむまでは律儀にそんな事を考えていたけど、枕元に放り投げられていた『魔女っ子ツンデレ☆くそみそトイレット』のページをめくりだした頃には、すっかりそんな事は忘れてしまっていた。9 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/25(木) 23:54:36.30 ID:8GeQtqWk0諸君 私は女性が好きだ諸君 私は女性が好きだ諸君 私は女性が大好きだ二次元が好きだ 三次元が好きだ 年下が好きだ 年上が好きだバニーが好きだ チャイナ服が好きだ ゴスロリが好きだ メイド服が好きだ スク水が好きだPC内で 街道で エロ本で 学校で 洞窟で 電車で 海岸で 山小屋で 地下室で 脳内でこの地上に存在する ありとあらゆる萌える女性が大好きだ…とまぁ、僕は【萌え】に関しては達人。あらゆる局面に対応できるオールラウンダーな自信があった。しかし、今日僕は自分がまだまだ浅墓だった事を思い知らされる。川 ゚ -゚) 『…? 何をブツブツ言ってるんだ内藤』( *^ω^)『なんでもありませんおw』今僕はクーさんと年末限定メニューの発注について話し合っている。クーさんは出勤したばかりでまだ私服。さらに書類を見る時限定で銀縁の眼鏡まで着用している。つまり。 ゴ ス ロ リ メ イ ド 服 メ ガ ネ っ 子 な 年 上 の お 姉 さ ま 萌 え 。10 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/25(木) 23:56:42.26 ID:8GeQtqWk0川 ゚ -゚) 『…なにやら悪寒がするのだが…暖房が弱いのかな』( ^ω^)『気のせいですお』そんな会話を挟みながら計画を進める。少し離れた料理長専用デスクでノートパソコンをいじっているショボンさんは会話に混じれず寂しそうだが全く気にしない。川 ゚ -゚) 『でな、内藤の考えた忘年会向けのコース料理は悪くないと思う』( ^ω^)『ありがとうございますだお』川 ゚ -゚) 『だが、コストパフォーマンスを考えると若干厳しいな。 食材仕入れ値が販売価格の40%と言うのは少し高すぎるだろう』( ^ω^)『でも、これ以上食材を抑えると価格に見合った料理は作れませんお。 だったら販売価格を上げてほしいですお』川 ゚ -゚) 『それは出来ない。 2時間飲み放題コースで5000円を越えてしまうと周辺の他店と比べても ずいぶん割高になってしまう。 客が他店に流れてしまっては意味がないだろう』( ;^ω^)『確かに…』クーさんは細い指先でずり下がったメガネをクイッと持ち上げる。まさか料理人になってまで販売コストやらで数学の技術を使うとは全く想像していなかった。難しいもんだ。12 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/25(木) 23:58:44.76 ID:8GeQtqWk0川 ゚ -゚) 『そこでだ。これらの食材を使ってコストパフォーマンスに優れた料理を勧めてみてほしい』( ^ω^)『それは僕も考えましたお』12月は飲食店にとって大切な時期だ。サラリーマンはボーナスが入って懐が潤っているし、忘年会やクリスマスなどのイベントも控えている。( ^ω^)『でもクリスマス限定ラーメンはもう考えてあるし、忘年会の客層には今回のコース料理。 カップルにはジョルジュさんがケーキを焼くって言ってたから…』川 ゚ -゚) 『ターゲットになる客層がいないと言う事か…』その通りだ。ただいたずらにフェアを開催するのは簡単だけど、それでは集客につながらない。ターゲットにする客層を絞込みアピールして初めて結果につながるのだ。クーさんはしばらく指を唇に当てて考え込んでいたけど、川 ゚ -゚) 『それでは、中華まんというのはどうだ?』やがて口を開いた。15 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/26(金) 00:07:50.81 ID:CWRlad7X0( ^ω^)『…中華まんですかお?』中華まん自体は作るのは大して難しくない。だけど、例えばラーメンと中華まんのセットで…って薦めても好評とは思えない。客足が止まるアイドルタイムにお茶とセットで販売する手段もあるけど、もともと客数が少ない時間にフェアを開催しても効果が出ないのは明らかだった。川 ゚ -゚) 『うむ。アイドルタイムのフェアは何度も痛い目を見ているからな。 わたしがターゲットにしたい客層は所謂【食事を終えた客】。 つまり、テイクアウト商品としてアピールしてはどうかと思う』( ^ω^)『テイクアウト客狙い…』僕の頭の中でパズルが組み立てあげられるようにアイディアが固まっていく。確かにテイクアウト狙いなら、忘年会を終えたサラリーマンのお土産にぴったりだろう。それどころか、軽く食事を終えたカップルや部活帰りの高校生、一般主婦までターゲットに出来る。( ^ω^)『流石はクーさん!! エプロンドレスは伊達じゃないおwww』川 ゚ ー゚) 『これは私服だから伊達なのだが…内藤の役に立てて嬉しいよ。 これも愛の力だな』( ^ω^)『凄いおwww超愛してるおwww』川 ////) 『なっ…超愛…っておま…本気にするぞ…』
Feb 3, 2007
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84 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/25(木) 01:30:13.96 ID:8GeQtqWk0 ξ゚‐゚)ξ『お姉ちゃんが何を言いたいか、分かると思う』そう言ってツンは一呼吸おいた。言葉を選ぶように口を再度開く。ξ゚‐゚)ξ『お姉ちゃんは…あたしが好きなタイプ知ってるよね? 侍…って言うか、古風な人が好き。 言葉少なめで、意志が固くて、鋭い目をした人。 …あいつは…そんなタイプじゃない でも…でも…』『あいつ』が誰なのか? それを尋ねるほどわたしもヤボじゃない。ツンの気持ちはずっと気付いてたさ。気付かないのは、当の両人だけ。確かに『あいつ』はいつもヘラヘラしてるし、侍ってタイプじゃないねぇ。ξ;△;)ξ『でも…なんでだろう…? あいつの事を考えると苦しいのよ!! あいつがそばにいないと寂しいのよ!! あいつじゃないと…ダメなのよ!!』ツンはそこまで言うと堰を切ったように泣き出した。きっと自分の感情を整理しきれていないんだろう。この子はこういう子だ。太陽の如く暴君でありながら、夕暮れのようなセンチメンタルさを兼ね揃えている。わたしはいつかのお返しとばかりに妹を抱きしめた。(*゚∀゚)『いいかい? ツン、よく聞くんだよ?』85 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/25(木) 01:32:25.06 ID:8GeQtqWk0(*゚∀゚)『恋ってのはね。think. don`t feel さ!!』ξ;△;)ξ『え…? 何それ?』(*゚∀゚)『知らないのかい!? ブルース・リーさ!! 感じろ。考えるな…本当の恋ってそんなもんだよ!!』ツンはそれを聞いて暫く呆然としていたが、やがて破顔したかのように笑い出した。ξ゚△゚)ξ『ば、バカね!! これだからゆとりは嫌なのよ!! それを言うならfeel. don`t think でしょ!! お姉ちゃんが言ってるのは【考えろ。感じるな】じゃないの!!』(*゚∀゚)『…細かい事気にするんじゃないよ』ひとしきり笑い終えたツンは思いっきり大きな深呼吸をして口を開いた。ξ゚△゚)ξ『…そうね、ウジウジ悩んでるなんてあたしらしくなかったわ。 感じるままに行動する。それでいいのよね、お姉ちゃん』そう。それでこそわたしの妹。つか、わたしにマジメな話振らないで。マジメな回答が出ると思う方がおかしい。ξ゚△゚)ξ『…ところで、朝の件も含めて色々話を聞きたいんだけど』(*゚∀゚)(あちゃ~、覚えてたか…)せっかく綺麗にまとまったと思ったんだけどなぁ。わたしは必死に脳みそをフル回転させ釈明の言葉を作りあげる。2人きりの家族会議は結局朝の太陽が顔を出すまで続いた。89 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/25(木) 01:34:19.45 ID:8GeQtqWk0翌日。仕事終わりのバースペースでは、今日もブーちゃんとクーさんが見る人によっては恋人とも思われかねない世界を作り上げていた。( ^ω^)『で、スクール水着のクーさんが納豆に飛び込んだ所で目が覚めたんだおwww』川 ゚ -゚)『そうか。わたしの夢を見てくれるなんて…愛だな』それをわたしとドッ君は冷ややかに見つめる。人生には何度かモテ期があるって言うけど…。ブーちゃん、君このままだと数少ないモテ期を無駄にしちゃうかもよ。('A`)『ま、異性に免疫がない童貞なんかこんなもんだろ』ドッ君が空っぽのグラスをいじりながら言う。それには同意せざるを得ないけど…。と、そこに本日の主役が登場した。見つめあう2人など視界に入っていないかのようにゆっくりとストールに腰を下ろす。ξ゚△゚)ξ『随分と楽しそうね。クーさん、あたしにも一杯くれないかしら?』93 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/25(木) 01:37:26.65 ID:8GeQtqWk0川 ゚ -゚)『む…せっかく盛り上がっていると言うのに。 では、また【ストロベリー・ボール】でも飲むか?』【貧乳】を意味するカクテルを勧めるクーさん。うわぁ。いきなりケンカ売る気満々だわ…。ξ゚△゚)ξ『うん。お願いするわ。たまにはクーさんとも乾杯したいし。 クーさんには【 オ ー ル ド キャッスル】とか、 【オ ー ル ド ファッションド】なんか似合いそうよね』川#゚ -゚)『…やけにオールドを強調して聞こえたのは気のせいか?』ξ゚△゚)ξ『…もう後がないって意味の【x.y.z】なんかもいいんじゃないかしら?』川#゚ -゚) ビキビキ睨みあう2人と、それを呆然と眺めるブーちゃん。見てる分には十分に楽しめる光景だ。川#゚ -゚)『…それはわたしにケンカを売っているのかな?』ツンは『やれやれ』といった感じに肩をすくめ答える。ξ゚△゚)ξ『あら? そう聞こえちゃったかしら? でも誤解だわ』一拍はさんで続ける。ξ゚△゚)ξ『…こないだの宣戦布告の返答ってトコかしら』94 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/25(木) 01:38:27.91 ID:8GeQtqWk0その言葉を聞いたクーさんはしばらく絶対零度の瞳でツンを睨みつけていたけど、川 ゚ -゚)『…ふぅ』とため息を1つして表情を和らげた。川 ゚ -゚)『いつかこうなるとは思っていたが…少し遅かったんじゃないか?』それに合わせてツンもにっこりと笑いかける。ξ゚△゚)ξ『悪かったわね。これでも急いだつもりなのよ』( ;^ω^)『おっ、おっ、おっ、2人とも落ち着くお』軽くスルーされるブーちゃん。かわいそうだけど、ちょっと黙ってて。川 ゚ -゚)『そうか…勝負はフェアにいきたいからな。 宣言しよう。わたしはクリスマスに再度別の言葉で気持ちを伝えるつもりだ』ξ゚△゚)ξ『クリスマスね。分かったわ。あたしもその日までに今の気持ちを言葉にしてみせるわ』決戦はクリスマス。『内藤、帰るわよ』そう言って腰を上げ、いつもの様に一人歩き出すツン。ブーちゃんもやっぱりいつものように不思議そうな顔をしながら我が妹のあとを追った。
Feb 1, 2007
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47 名前:川 ◆uPhA0ssuTA [] 投稿日:2007/01/25(木) 01:02:24.92 ID:8GeQtqWk0(;*゚∀゚)『ヤバイ…こりゃ本格的に殺されそうだよ!!』現在時刻深夜2時。所謂草木も眠る丑三つ時ちょっと前。あたしは約16時間ぶりの全力疾走を強いられていた。理由は今日の仕事終了直後にさかのぼる…。---------------------------------------------------------------------------------------------------ξ゚△゚)ξ『お姉ちゃん、今日あたしの部屋に来て。 大 事 な 話があるの』不機嫌な表情を隠そうともせず、それだけわたしに告げるとツンはさっさと帰っていった。(;*゚∀゚)(…ついに来たか)愛しのダーリンとブーちゃんを命ある肉片に変えた妹。当然わたしにも何らかの制裁がくだる覚悟はしていた。瞬時にツンの部屋を思い浮かべる。合羽橋で購入した鉄鍋。修学旅行のお土産で買ってきた木刀。天狗舞大吟醸の一升瓶。それらは十分にわたしの命を奪い去る凶器となりえる。いや。彼女の手にかかれば例え一枚のビスケットですら凶器となるのだ。(;*゚∀゚)(…こりゃ、一分一秒でも早く行かないとね…ツンが大好きなイチゴ大福でも買っていくか…)わたしはそう考えた。にも関わらず、今走っているのにはワケがある。66 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/25(木) 01:17:16.06 ID:8GeQtqWk0 誰がなんと言おうと。わたしのダーリンは世界一の美男子だ。そりゃ猫背だし、ひょろひょろだし、無口だし、どことなく草食昆虫を思わせる顔つきだけど、わたしにとっては最高の人だ。その彼が('A`)『いてて…全く今日は散々な目に会ったぜ』とか言ってれば心配で家まで一緒に行きたくなるってのが女心。で、家まで一緒に行けば(*゚∀゚)『ちょっとだけ休んでいこうかな』ってのが普通の流れだし、1つの部屋に好きあってる年頃の男女が閉じこもれば当然の如く('A`)『ぎしぎし』(*゚∀゚)『あんあん(はぁと』って事になる。疲れた体で『Oh Yeah come on』すれば行為終了後、寝入ってしまうのが人間の本能であって…。まぁ、兎に角そんな事があってわたしは今本気ダッシュをしなければ自分の命が危うい。そんな状況に追い込まれてしまったわけだ。---------------------------------------------------------------------------------------------------74 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/25(木) 01:21:57.65 ID:8GeQtqWk0(;*゚∀゚)『ただいま帰りましたよ…と』わたしは出来るだけ音を立てないようにドアを開き、爪先立ちで廊下を進む。今最も好ましい状況はツンが待ち疲れて寝てしまっている事だ。ツンの性格的に怒りを翌日まで持ち越すことはあまり考えられない。(*゚∀゚)(唯一神又吉イエス様…どうか哀れな子羊に御加護を…)口の中で神に祈りつつ階段を登る。…がいとも簡単にわたしの願いは却下されてしまった。私の目に入ったのは、開け放たれたツンの部屋の扉。明かりを消した部屋で、ツンは床に直接座り込みこちらに背を向けてテレビを見ている。水玉模様のパジャマを着たツンの背中越しに、お馴染みのテーマソングをBGMに白馬にまたがり砂浜を駆ける将軍様の姿がブラウン管に映っていた。ξ )ξ『…お姉ちゃんお帰り。待ってたよ』テレビ画面から顔を背けずツンが言う。(*゚∀゚)『…寝てても良かったんだけどね』言いながらツンのベッドに腰を下ろす。こうなれば後は流れに身を任せるしかなさそう。ツンの右手に握られた一升瓶がテレビの明かりで怪しく光っていた。78 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/25(木) 01:26:08.89 ID:8GeQtqWk0時代劇ってのは普段見る機会が少ないけど、いざ見始めると悪くないもんだ。シンプルな勤善懲悪ストーリーは展開が丸分かりで心踊る事はないけど、だからこそ『待ってました!!』的爽快感がある。結局1つのストーリーがお約束のハッピーエンドを迎えるまでツンは終始無言で、わたしもテレビに見入ってしまう。エンディングテーマが流れ出す頃にはわたしも次の話が楽しみにまでなっていたのだが…。ξ゚‐゚)ξ『で、お姉ちゃん。大事な話があるんだけどさ…』その言葉で現実に引き戻された。(;*゚∀゚)『あ、いや、朝の件はちょっとしたジョークって言うか…』ξ゚‐゚)ξ『ううん。その事じゃないの』(;*゚∀゚)『違うの?』じゃあなんだろう。ツンが大事に飲んでる大吟醸を勝手に飲んで料理酒を代わりに入れておいた事?出会い系サイトにツンの名前を冗談で登録したらいたずらメールが殺到した事?VIPの顔晒しスレにツンの顔を晒した事?それとも、それとも…。ξ#゚△゚)ξ『…犯人は全部お姉ちゃんだったのね』(*゚∀゚)『…あはは』ξ゚△゚)ξ『その話は今度ゆっくり聞くわ。あたしが聞きたいのはね…』 どうしてお姉ちゃんはドクオが好きなの?80 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/25(木) 01:27:24.16 ID:8GeQtqWk0(*゚∀゚)『は…?』わたしは最初、ツンが何を言ってるのか。全く理解できなかった。『好き』に理由なんかあるもんか。例え理由があったとしても所詮それは後付け設定。それを全て否定されようとも変わらないからこそ『好き』と言う感情は大切なんだと思う。ξ゚△゚)ξ『だってさ、お姉ちゃんって昔っから超ミーハーじゃない?』確かにそれは否定できない。わたしの部屋の壁には、韓流スター・ポ=ヨンジュウやブタコム(人気アイドル豚村コムヤ)のポスターが所狭しと貼り付けてあるのだ。ξ゚△゚)ξ『それに比べてドクオってば正反対のタイプでしょ? どちらかと言えば人間より昆虫とか宇宙人に好かれそうなフェロモン全開じゃない』その言葉にわたしはカチンとくる。(#*゚∀゚)『ちょっとお待ち!! そりゃちょっと言い過ぎってもんだ!! 確かにドッ君は普通にしててもムンクの叫びな顔つきだし、 服装だってわたしと付き合うまではシュールレアリズム一直線の秋葉系だったし、 むっつりスケベで、早漏で短小でついでに皮も被ってて、 幼女をジッと視姦しててもおかしくないタイプさ!! でも、厨房に立ってる時のドッ君は…ドッ君は…』わたしはそこまで一気に口を回転させてゼェゼェと肩で息をする。ツンが差し出したコーラを一息に飲み干した。
Feb 1, 2007
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6 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/25(木) 00:07:53.54 ID:8GeQtqWk0 第14章 夕暮れ(;*゚∀゚)『ヤバイ…こりゃ本格的に遅刻しそうだよ!!』蝉の鳴き声が少なくなり、そろそろ新米が出回る季節だね…的会話を代わりに耳にする機会が増えた頃。…わたしは大寝坊していた。今は朝の商店街を全力疾走中。何度もスカートの裾が気になってミニスカートで家を出た事を多大に後悔した。いつもなら愛しのドッ君の自転車後部荷台がわたしの特等席なのだが、今日は久々に自分の部屋に戻ったのが失敗。。(;*゚∀゚)『…なんで…こんな日に限って…目覚まし止まってるかね!!ドッ君も…おはようコールとか…してくれてもいいじゃない!!』世の中の大多数の人間が経験した事があると思うけど、呪いの言葉を吐きながら全力疾走するのは意外と体力を消費するものなのだ。だったら黙ってろと言われるかもしれないが『あんたは口から産まれた子供みたいだよ』と散々言われ続けてきたわたしが黙ったらそれこそ命に関わる。それに、これはわたしのポリシーの問題。表面じゃニコニコしてるクセに影に回ると平気で陰口を叩くタイプってどこにも存在する。わたしの場合は『ウザイ』とか『黙れ』とかそんな感じ。そんな低レベルな連中に気を使ったり、仲良くするなんてまっぴらゴメン。だったらわたしは自分が好きな生き方を選ぶ。9 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/25(木) 00:11:36.04 ID:8GeQtqWk0 (;*゚∀゚)『それにしても…口から産まれたって…わたしゃどっかの大魔王かいっ!!』突っ込みを自分に入れつつスタッフルームの裏口を開く。誰かに聞かれたらワケ分からないんだろうなぁ。(;*゚∀゚)『セフセフ…ってナニコレ?』そこにいたのはブーちゃんとツンの二人。パイプ椅子に腰を下ろしたブーちゃんはスカーフで目隠しされ、その背後でツンがゆうゆうと着替えている。(;*゚∀゚)『えと…今北産業』ξ゚△゚)ξ『着 替 中』(;*゚∀゚)『把握した』なるほど。どうやら、着替えを見られたくない乙女心による行動らしい。(*゚∀゚)『だったら…トイレとかカーテンの陰とかあるじゃないかっ!!』わたしは誰も掃除しないせいで埃まみれのロッカーにバッグを詰めこみながら言った。ξ゚△゚)ξ『前から思うんだけどさ。トイレって着替える場所じゃないわよね。 あのカーテンの奥ってゴキブリとか出そうだしさ』12 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/25(木) 00:18:46.51 ID:8GeQtqWk0なんて自分勝手な…こりゃお仕置きが必要ね。 (*゚∀゚)『ブーちゃん、もうツンは着替え終わってるよ!!』わたしはブーちゃんに歩み寄るとこっそり耳元に囁いた。( ^ω^)『…なんだおwwwそれならそうと早く言って欲し』ξ;゚△゚)ξ『え…ちょ…待』ξ;゚△゚)ξ (^ω^ )『……』ξ;////)ξ (^ω^* )『……』 説明しよう。今ブーちゃんの目の前にいるツンは上下下着のみの姿なのだ!!(ナレーション風)これでこの子もちょっとは意識を改善…『ツン…黒い大人下着が全然似合わないおwww』あ、殴られた。ξ#゚△゚)ξ『君が! 謝るまで! 殴るのを止めないっ!!』響きわたる人体から発せられているとは想像もつかない破壊音。(;*゚∀゚)(…ブーちゃんゴメンね。でも君も乙女心を少し理解しないとねっ!!)下着姿でブーちゃんにマウントを取り連打を浴びせる妹をよそに、わたしは着替えを持ってトイレに向かった。15 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/25(木) 00:25:40.68 ID:8GeQtqWk0ξ#゚△゚)ξ『アリアリアリアリアリアリアリアリアリ…!!』(#)ω゚)『フギャッ!! オゥッ!! モケケッ!!』着替えを終えてスタッフルームに戻ったわたしの目に入ったのはブーちゃんに馬乗りになり正確にガードをくぐって急所に打撃を加える妹の姿だった。(*゚∀゚)『…触らぬ神に祟りなしってね』確かに事の発端はわたしかもしれない。でも、問題を大きくしたのはブーちゃんだ。うん、そうだ。そうに違いない。暗黒の破壊神を刺激しないようこっそりと荷物を置き、厨房に向かう。(*゚∀゚)『ドッ君、おはよー!!』('A`)『おう。遅かったじゃねーか…って内藤はどうした?』(;*゚∀゚)『…ツンといちゃついてる』18 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/25(木) 00:34:46.60 ID:8GeQtqWk0…んじゃないかな…とまで言いたかったんだけど、そこまで言い終える前にドッ君は行動に移っていた。ボリボリと後頭部を掻きながらスタッフルームに足を向ける。('A`)『…ったく。しょーがねーな。もうすぐ業者が納品に来るんだぜ。注意してくるわ』(;*゚∀゚)『あ…ちょ…』…静寂。扉を開く音。静寂。静寂。 キャーーーーーーーーーーーー!!!!!! 変態!!!!!悲鳴とも怒号とも判断できる叫び声。そしてまた静寂。(*゚∀゚)『さてと…仕事始めようかなぁ』わたしは厨房に1つしかない窓から空を見上げる。外は良い天気だ。今日も一日頑張ろう。…結局3人はオープン時間になるまでやってこなかった。20 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/25(木) 00:38:46.28 ID:8GeQtqWk0(メ)A`)『…何食っても血の味しか感じねぇ』(#)ω゚)『…視界が極端に狭い気がするお』そんな事を言いあっている二人をよそにわたしは青果業者のモナーさんの対応をする。ん?原因はお前だろうって?細かい事気にするんじゃないよっ!!男だろっ!!そんなんじゃ大物になれないよっ!!第一わたしは美容と健康の為に自分に都合が悪い事は忘れる事に決めてるんだっ!!( ´∀`) 『しし唐…3pk。空芯菜…2束。剥き栗…1kg。 …って何をブツブツ言ってるモナ?』(*゚∀゚)『なんでもないよっ!! それより、このインゲン色悪くないかい!?』( ´∀`) 『バカ言っちゃいけないモナ。 天候の影響で見かけはちょっと良くないけど、味は抜群モナ!!』(*゚∀゚)『…まぁ、そこまで言うなら使ってみるけど』この1年でわたしは自分なりにモナーさんとの信頼関係を掴んだつもり。以前は『女だからって舐められてたまるかっ!!』的考えがあったせいで逆に舐められてしまっていた。今では一人の料理人と青果業者としての付き合い方が出来ていると思う。わたしはチラと厨房に目を向けた。そこにいるのは半死半生のドッ君とブーちゃん…。(;*゚∀゚)(…あの2人だけじゃランチタイム乗り切れるか不安でしょーがないよ…)23 名前:・・・ ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/25(木) 00:43:30.90 ID:8GeQtqWk0 (=゚ω゚)ノ『なんなんですかー?』昨夜携帯を忘れたと言ってひょっこり顔を出したのが運の尽き。わたしはベテランバイトのイヨゥ君の捕獲に成功した。厨房に挨拶に来た彼をそのまま問答無用でスタッフルームに引きずりこむ。(=゚ω゚)ノ『ここどこですか、何でボク連れてこられたんですか、何で、かか鍵を閉めるんですか? いったい何を、』(*゚∀゚)『黙りなさい』【困った時のイヨゥ君】それが彼の一番の高評価ポイントだ。急な病気や怪我でシフトに穴が空いてしまった時。彼に連絡すれば、例え講義中であろうとバックれて働きに来てくれる。(*゚∀゚)『厨房見たよね!? お姉さんが何を言いたいか分かるんじゃないかなぁ!?』(=゚ω゚)ノ『きょ、今日だけは勘弁だよぅ!!』珍しく首を縦に振らないイヨゥ君。(=゚ω゚)ノ『今日はハルヒの新刊読まなくちゃいけないんだよぅ!! 絶対無理だよぅ!!』(*゚∀゚)『…どしても?』(=゚ω゚)ノ『どしても勘弁だよぅ!!』(*゚∀゚)『…あっ、そう…』26 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/25(木) 00:47:49.68 ID:8GeQtqWk0わたしは必死に抵抗するイヨゥ君に歩み寄るとその腕に胸を押し付けた。まだまだ成長を続けているしぃの胸程大きくないし、マニア好みって点ではツンにも負けるけど総合的なバランスには自信がある。そのまま小声でイヨゥ君の耳に囁きかける。(*゚∀゚)『…わかる? わたし仕事中は下着つけてないんだ…』その一言でイヨゥ君は赤面する。よし、これは落ちた…と思いきや(=゚ω゚)ノ『駄目だよぅ!! 長門がボクを待ってるんだよぅ!!』ちっ。なんて無駄な精神力してるのかしらね、この子は!!色仕掛けが通用しないとなれば…(*゚∀゚)『それだけじゃないよ。通勤時は一応下着つけてるんだ。ココに来て外す様にしてるの』(=゚ω゚)ノ『そそそそそそれが何か?』(*゚∀゚)『先月ね、仕事終わったら無くなってたんだぁ…お気に入りのピンクのレースのヤツ』(= ω )ノ『………!!!!!』(*゚∀゚)『…犯人見つけて通報しようと思ってるんだけd』(= ω )ノ『ツーさん』(*゚∀゚)『なんだい!?』(= ω )ノ『…ボクなんだか無性に仕事したい気分だよぅ。だから犯人探しなんかしないほうが良いと思うよぅ』35 名前: ◆RDnvhIU7bw [] 投稿日:2007/01/25(木) 00:56:44.63 ID:8GeQtqWk0最終兵器・脅迫。これでイヨゥ君は完全に陥落した。コックコートに着替えトボトボと厨房に向かう後姿はリストラされたサラリーマンのようにもの寂しい。ちなみに下着を着けてないってのはウソ。ジョルジュさんがすれ違いざまにホックを外したり、ワイヤーがこすれて痛くなったりするのでスポーツタイプの物に変えているだけ。(=゚ω゚)ノ『ところで、せめて働いた分の給料だけは払って欲しいよぅ』(*゚∀゚)『あのブラ、セットで20,000円したんだ』(= ω )ノ『…給料なんかいらないよぅ』それにしても女物の下着なんか持っててどうするんだろうね!?別に見るだけなら許してあげるけど。一応、見られる事を意識して買った下着だしさ。着用する?頭に被る?それとももっと別の楽しみ方が…そんな事を考えてたらなんかムカムカしてきたので、思考を別の事に切り替えることにする。…3歩歩いたわたしは今までのそんな考えを全部忘れていた。
Feb 1, 2007
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35 名前: ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/15(月) 01:28:56.04 ID:ajC0DBd70ξ;゚△゚)ξ『ちょ…なんでクーさんがここにいるのよ』最初に口を開いたのはツンだった。クーさんは平然と答える。川 ゚ -゚)『なんだ、内藤withその他大勢その1。 バースペースのグラスを買うのにわたしが来て問題があるのか?』そう言ってクーさんは軽やかにくるりと体を一回転させた。フリルのついたスカートがふわりと翻り、白黒模様のタイツに包まれた太ももを露出させる。川 ゚ ー゚)『みんな、わたしの私服を見るのは初めてだろう? どうだ。なかなか似合っていると思わないか?』透き通るような白い肌。宝石のような瞳。丁寧に切りそろえられた緑がかった黒髪。バーテンダースタイルのクーさんも素敵だけど、今のクーさんも上品な人形のような美しさがあった。でも。だけど…。('A`)『クーさん確か四捨五入したら三十路ですよね? それでそのファッションはちょっと…』川#゚ -゚)『ドクオ。貴様は来月から無期限の減給が決定した。覚悟しておけ』(;'A`) ガーーーーーーン!!40 名前: ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/15(月) 01:34:41.73 ID:ajC0DBd70 (;'A`)『…減給…減給…』ボソボソ呟きながら肩を落としているドクオを最後尾に、僕らは料理長&マネージャーと別れビルを出た。( ^ω^)『当たり前だお』(*゚∀゚)『ドッ君はちょっと乙女心を勉強した方がいいかもね』( ^ω^)『そう言えばツーさんも来年には【四捨五入したら三十路】にリーチがかかるはず…』(#゚∀゚)『…!!』…睨まれた。ξ゚△゚)ξ『別にいいんじゃない? 三十路手前であの服はないと思うわよ』( ;^ω^)(なんか最近ツンとクーさん仲悪い気がするお)そんな事を話しながら探索を続ける。途中ドクオとツーさんは50センチ大の竹製の蒸篭を、僕はチタン製の軽い中華鍋を購入した。ツンは…何に使うのか分からない竹篭やら鉄鍋やらを買い込み、僕の両手はどんどん塞がっていく。( ;^ω^)『重いお』ξ゚△゚)ξ『男でしょ!! 頑張んなさい!!』なんでせっかくの休みに体力消化しなきゃいけないんだ?ヒーヒー言いながら歩くうち、僕らは西洋風の甲冑が店頭に飾られている包丁専門店に到着した。(*゚∀゚)『ここは合羽橋道具街で最も歴史がある包丁屋の1つだよ!!ここならブーちゃんが気に入る包丁がきっと見つかるはずさ!!』42 名前: ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/15(月) 01:39:09.04 ID:ajC0DBd70なぜか嬉しそうなツーさんを先頭に僕らは店に入る。( ;^ω^)『うはwwwスゲェwww』その空間は4面の壁全てに包丁が展示されていた。家庭用は勿論、その道のプロが使うような専用の包丁が到る所に陳列されている。例えば出刃包丁・柳葉包丁。寿司切り包丁や麺切り包丁。鋸の様な刃をしたパン切り包丁。生まれて初めて見た鉈の様な包丁はウナギを裂く専用の包丁との事だ。更には『鯵』『鰯』『鮪』など魚の名前が寿司屋の湯飲み茶碗風に刃に彫刻された包丁や、竜が掘り込まれた青竜刀までなぜか展示されていた。ξ;゚△゚)ξ『…確かに凄いわね』(*゚∀゚)『でしょ!? ここまで充実した品揃えの店はなかなか無いさ!!』忙しなく店内をキョロキョロと見渡すツンと、何故か自慢げなツーさん。僕は包丁を1本1本手に取るようにチェックしていく。……それにしても、包丁ってこんなにメーカーや種類がたくさんあったのか。……もし、今地震がおきたら間違いなく死ぬな。そんな事を考えながら店内の殆どの包丁を手に取り、残るは高価な和包丁のみになりかけた時。僕は店内の最奥片隅に『それ』を見つけた。44 名前: ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/15(月) 01:44:40.40 ID:ajC0DBd70見つけた…と言っても、あの感覚はなんて言ったらいいんだろう。 『それ』は鋼の僕だけが探していたんじゃない。『それ』も僕を待っていたような気がする。 黒鉄色【くろがね】の中華包丁。陳腐な表現だけど、まるで磁石のN極とS極の様にお互いに惹かれあう感じ。 冷たく光る刃に無骨に掘り込まれた僕はゆっくりと『それ』に近づき。 一刀斎虎徹の銘。おそるおそる手に取った。45 名前: ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/15(月) 01:45:39.96 ID:ajC0DBd70ずしりとした重量を右手から感じる。それでも何故かドクオの包丁を持った時のような過重感はない。程良く伝わる重さは自己主張しすぎない位の存在感を伝えてくる。柄の部分は太すぎず細すぎず僕の手にフィットし、そのせいかまるで自分の手がそのまま刃物になったような錯覚すら覚える。ξ゚△゚)ξ『…ょっと!! 内藤!!』 ( ^ω^)遠くの方でツンが僕を呼んでいる。振り返るとξ゚△゚)ξ(^ω^ )何故か目の前10センチの距離にツンがいた。( ;^ω^)『うおっ!! ツン、いつの間にこんな近くにwww』ξ////)ξ『いつの間にって…ずっといたわよ!! 何回声かけても返事しないし…蹴っ飛ばそうかと思ったわ!!』( ^ω^)(赤面する意味が分からないお)(*゚∀゚)『ずっと見入ってたみたいじゃないか!! そんなに気に入ったのかい!?』ドクオとツーさんまで僕の右手の『それ』を覗き込んでいる。全く気がつかなかった。46 名前: ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/15(月) 01:47:18.29 ID:ajC0DBd70('A`)『一刀斎虎徹か…西の方の刀鍛冶だったな。 もともと和包丁専門だと思ってたが中華包丁も作ってたのか。 それにしてもマニアックなの見つけたな』ドクオが人差し指をあごにあて、思い出しながら話す。同じしぐさをクーさんがすると綺麗だが、ドクオがするとやたらキモイ。(*゚∀゚)『虎徹!? 凄い銘だねぇ!! ギコさんの【菊一文字】にも負けてないんじゃないかな!! ブーちゃんが見とれてたのも分かる気がするよっ!!』( ^ω^)『僕そんなに見とれてましたかお?』ξ;゚△゚)ξ『気付いてないの? 魂が抜けたみたいになってたわよ』(*゚∀゚)『う~ん、まさに魔刀だねっ!! で、ブーちゃんそれに決めたのかい!?』僕は首を縦に振る。( ^ω^)『僕の包丁は…これしか考えられないお!!』48 名前: ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/15(月) 01:48:45.38 ID:ajC0DBd70随分長くこの店にいたらしい。店を出た時には夏の日は落ちかけていた。当然両手にはツンの荷物を持たされていたけど、足取りは軽い。(*゚∀゚)『ブーちゃん嬉しそうだね!!』('A`)『俺も初めて自分の包丁買った時の事思い出すぜ』改めて僕は入社当時ドクオの包丁を破損してしまった時の事を思い出していた。今ならドクオがなんであれ程怒ったのか理解できたし、逆になんでもっと怒らなかったのか理解できなかった。( ^ω^)(これは僕の宝物だお。 誰にもさわらせたくないお)みんなと別れてから僕はスーパーで大根を1本購入した。家に着くなり、さっそく箱から出した一刀斎虎徹を手にして台所に立つ。慣れない中華包丁だったけど、意外なほどにスムーズに大根は刻まれていった。切りすぎた大根を味噌汁の具にし、ノンオイルのゴマドレッシングをかけてサラダにした。それでもあまったので、袋詰めにして冷蔵庫にぶち込んだ。( ^ω^)『こんなに明日が楽しみなのは久々だおwww』僕は丁寧に洗った包丁を箱に仕舞いこみ、枕元において寝た。なぜかクーさんの夢を見て、( ^ω^)(冷たいけど暖かい…僕の包丁はクーさんに似てるお)そう思った。
Jan 30, 2007
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22 名前: ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/15(月) 01:06:13.60 ID:ajC0DBd705階建てビルの頂上にそびえたつひげコック。こんなシュールな光景ははじめて見た。ξ゚△゚)ξ『…だれよコレ』ツンがそんなどうでもいい感想を述べる。(*゚∀゚)『なんでもこのビルのご主人だってさ!! さ、まずはココから見ていこう!!』( ;^ω^)(なんて無駄な豆知識だおwww)ツーさんに先導されてビルに入った僕は度肝を抜かれてしまった。そこにあるのはありとあらゆる食器・鍋・調理器具。見た事がある物から見た事がない物までずらりと並んでいる。(*゚∀゚)『さしづめ調理道具のドンキ・ホーテってトコかな!! ここだけでも欲しい物全部見つかるって言っても過言じゃないね!!』( ^ω^)『ハ、ハァ…』これだけ揃ってると色々欲しくなって衝動買いしてしまいそうだ。すでに中華鍋やスープを作る寸胴鍋が欲しくなっている。ツンも何やら皿を一枚手にとってまじまじと眺めている。(*゚∀゚)『あっはっは!! 今からそんなんじゃ欲しい物買う前に資金尽きちまうよ!! この街は料理人の強い味方だけど、魅力的過ぎてお財布には大敵だからね!! まずはこの店で免疫つけないと、あっと言う間にお財布空っぽさ!!』ツーさんはそう言って豪快に笑った。23 名前: ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/15(月) 01:10:17.43 ID:ajC0DBd701階奥で包丁を見させてもらう。左利き用の包丁も揃っていて、この街がどれほど料理人にとって重要なのかよく分かる。残念なのは僕のイメージにピンと来る包丁がなかった事だ。ツンはさっそく皿を何枚か買い込んだようで、何故だか僕はそれを持たされている。('A`)『この街には幾つも包丁専門店がある。そこを全部見てから決めても遅くないだろ』ドクオの言葉に自分を納得させ2階に上がる事に。階段にも陳列棚が並び、所狭しと調理道具が並んでいる。なるほど、確かに調理道具のドンキ・ホーテって感じだ。それを買うわけでもないのに眺めながら階段を登っていると…(´・ω・`)『おや?』見慣れたしょぼくれ顔とバッタリ遭遇した。26 名前: ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/15(月) 01:16:01.31 ID:ajC0DBd70(´・ω・`)『君達、今から買い物かい?』ショボンさんが普段と全く変わらないどこか困ったような笑顔で言った。(*゚∀゚)『あれま、ショボンさん!! まさか本当に会えるとは思ってなかったよ!!』('A`)『もっと早い時間に来るって聞いてましたからね』ショボンさんはチラと2階フロアを見て(´・ω・`)『確かに家を出たのは午前中だけどね。 ちょっとツレが原宿で洋服を買いたいって言い出してさ。 付き合ってたら遅くなってしまったんだ』( ^ω^)『ツレ?』僕ら4人もショボンさんの目線を追ってみる。確かにその先では一人、店員と何やら話しこんでいる。問題はその服装が黒いヒラヒラのついたメイド服…いわゆるゴスロリファッションだと言う事だ。ξ゚△゚)ξ『…ジミー、ちょっといいかしら?』それを見るなり階段を降りたツンが手招きする。僕の答えは決まっている。( ^ω^)『呼んだかい、ナンシー』29 名前: ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/15(月) 01:20:24.86 ID:ajC0DBd70ナンシー将軍閣下の命令により僕らは階段下に集合した。ショボンさんはそんな僕らを見て頭の上に大きなクエスチョンマークを付けていたが、上階の女性との約束もあるらしく退屈そうに陳列棚を眺めている。ξ^ー^)ξ『ジミー。 まずは標的の詳細を説明して』( ^ω^)『OK、ナンシー。 我らが敬愛する料理長のツレは女性と確認しましたおwww』(*゚∀゚)『それだけじゃ報告が足りないよ、ジミー。 将軍、【ゴスロリファッション】【原宿】以上のキーワードから ターゲットは10代の女性と思われます』('∀`)『ショボンさんから浮いた噂聞かないしな…娘さんかもしれないぜ』ξ^ー^)ξ『流石ねキャサリン、ボブ。 娘さんにしても彼女にしても ξ´・ω・`)ξ こんな顔してるのは間違いないわね』( ^ω^)『ちょwwwバロスwww』そんな会話で盛り上がっていると、ショボンさんが用事を終えたらしいゴスロリファッションを連れて階下に来た。川*゚ -゚)『む。内藤ではないか。これも運命の赤い糸…』( ^ω^)'A`)゚△゚)ξ*゚∀゚)(ちょwww待てwww)
Jan 30, 2007
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4 名前: ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/15(月) 00:31:58.81 ID:ajC0DBd70 第13章 休日川 ゚ -゚)『内藤。君が本当に料理人として生きて行きたいのなら… わたしは君の道標(みちしるべ)になりたい』クーさんが紫水晶色の瞳で僕を見つめている。もちろん僕の答えは1つだ。( ^ω^)『ありがとうだお。本当は僕から言わなきゃって思ってたんだけど… なかなかきっかけが掴めなくて困ってたんだお』うまく出来てるか分からないけど…多分今の僕に出来る最高の笑顔をしている筈だ。クーさん。ちょっとミステリアスなところもある人だけど、ずっと僕の事を見守っていてくれていたのを僕は気付いていた。ξ;゚△゚)ξ『ちょ…ちょっと待ってよ、内藤…本気なの?』( ^ω^)『ツン…僕は真剣だお。本当はツンにも相談したかったんだけど…』ξ △ )ξ『……』ツンは血の気が引いた顔で呆然としている。( ^ω^)『いや~、ホントに今日は最高にハッピーだお。 クーさんがついていてくれれば僕には怖いもの無しだお』川 ゚ ー゚)『嬉しい事言ってくれるじゃないか。 わたしも勇気を出して言ってみてよかったよ』6 名前: ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/15(月) 00:37:27.92 ID:ajC0DBd70 ξ △ )ξ『……』( ^ω^)『チキンな自分がバカみたいだおwww じゃ、さっそく御教授願おうかおwww』川 ;゚ -゚)『ご、御教授? 何を教えると言うのだ?』( ^ω^)『またまたとぼけちゃってwww分かってるくせにwww』その僕の言葉にクーさんはハッとする。川 ////)『い、いや…確かにわたしは未経験と言うわけではないが… やはりいきなりわたしがリードすると言うのは流石にちょっと…』( ^ω^)『ご謙遜をwww。ドクオもショボンさんも発注の事ならクーさんに聞けって言ってましたお』ξ゚‐゚)ξ川 ゚ -゚)『……』_, ,_ _, ,_ξ゚△゚)ξ川 ゚△゚)『 は い ? 』8 名前:顔文字ずれたwww ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/15(月) 00:43:19.12 ID:ajC0DBd70おかしい。なんか話が噛みあわない。( ;^ω^)『え? クーさんは僕が来月から発注も覚える事になったのを聞いて サポートを申し出てくれたんじゃないのかお?』ξ゚△゚)ξ『……』おろおろと説明をする僕の隣にツンが腰を下ろした。川 ゚ -゚)『ツン…わたしは今とても虚しい気分だ』ξ゚△゚)ξ『…心中お察しします』川 -△-)=3 ξ-△-)ξ=32人揃って大きなため息。全くワケがわからない。10 名前: ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/15(月) 00:46:03.61 ID:ajC0DBd70ξ゚△゚)ξ『…なんかすごい茶番を見た感じで疲れたわ。 クーさん、軽いカクテル1杯頼んでいいかしら?』川 ゚ -゚)『うむ、そうだな。わたしも今無性に酒がほしい気分だ。 ツンに相応しいカクテルを作ってやる。ちょっと待ってろ』そう言ってクーさんはウォッカ・オレンジジュース・ストロベリーリキュールを取り出した。丁寧に計量して氷を入れたシェイカーに注ぎシェイクする。そうして出来たカクテルをツンの前にそっと差し出した。ξ゚△゚)ξ『これは?』川 ゚ -゚)『ストロベリー・ボール。苺サイズの胸…という名のカクテルだ。 ちなみにわたしの手元にあるのはグレープフルーツ・ボールと言う』ξ#゚△゚)ξ(ビキビキ)それは明らかな嫌がらせ。それは宣戦布告。( ;^ω^)(ちょwwwクーさんいきなり何をwww)にこやかに笑いつつ火花を散らす2人はグラスを軽く合わせ一息でそれを飲み干した。ξ゚△゚)ξ『ごちそうさま。内藤帰りましょ』( ;^ω^)(何がなんだかワケわかめだお)僕は首をひねりながら一人スタスタと歩き出すツンの後を追った。13 名前: ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/15(月) 00:49:13.25 ID:ajC0DBd70(*゚∀゚)『上野ー!!』(*゚ー゚)『と言ったら!?☆』(*゚∀゚)*゚ー゚)『どーぶつえーん☆』(*>∀ー
Jan 30, 2007
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235 名前: ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/10(水) 01:34:30.14 ID:PXIweYU+0( ,,゚Д゚)『いいか、内藤。悪い事は言わん。包丁は和包丁に限るんだ』自慢の包丁を取り出したのはギコさん。まるで日本刀のような形状をしている。( ,,゚Д゚)『これは柳葉包丁といってな。見ろ。柳の葉のようだろ?』そう言いながらメモにペンを走らせる。 _______∠_______ 和包丁 _______<_______ 洋包丁・中華包丁( ,,゚Д゚)『和包丁の最大の特徴はこの研ぎ方にある。 洋包丁や中華包丁は両刃だが、和包丁だけは図の通り片刃。つまり日本刀と同じなんだ 重さや力に任せて叩き切る事を念頭においた西洋や中華の文化と違い、 日本ではただ切る事だけを考えて刃物を作りあげてきた。 常に鋭角を保つ和包丁こそ【切る】事に関しては最高の1本。 この柳葉包丁と野菜を切る専用の菜切り包丁、硬い物を切る出刃包丁。 これを揃えるのが料理人の嗜みってもんだ』(*゚ー゚)『…凄いねギコ君☆』ξ゚△゚)ξ『自慢の【菊一文字】でしょ…もう何百回も自慢されたから聞き慣れちゃったわ ミニにタコ…じゃなくて耳にタコよ』あたしはつまらなそうに…実際つまらなかったけど…ストローを啜った。236 名前: ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/10(水) 01:37:04.35 ID:PXIweYU+0 ('A`)『ちょっと待った』止まりそうにない勢いのギコさんに口を挟んだのはドクオだ。('A`)『内藤は中華の料理人になるんだろ? だったら中華包丁が最適じゃね?』取り出したのは柄の部分まで銀色に輝くドクオの愛刀。('A`)『こいつは【藤次郎】ってんだ』( ;^ω^)『覚えてるお。それにはちょっと微妙な思い出がwww』それはあの内藤が落として刃こぼれさせてしまった包丁。ドクオの執念が実って今でも無事現役で頑張っている。( ;^ω^)『中華包丁って重くて使いづらいイメージがどうしても抜けないお』(*゚∀゚)『ブーちゃん、それは君の使い方が悪いのさっ!!』そう言ってお姉ちゃんはドクオと同じく全体がステンレス製の中華包丁を取り出す。(*゚∀゚)『中華包丁はね。それ自体の重さを使って切るんだよ!! あたしはドッ君と比べて一回り小さいサイズのだけど、 余計な力を使わないから慣れちゃえばこんなに使いやすい包丁はないよ!! おまけに全身ステンレスだから錆びないし、落としたりしない限り刃こぼれもしない!! しかもこれ1本で切る・潰す・すり身にする…全部出来ちゃうんだ!! 中国四千年が産んだ最高の一品だよ!!飲む・打つ・買うの三拍子揃った男みたいで最高だろ!?』お姉ちゃん…それ日本語の使い方間違ってるわ。ゆとり精神全開みたいで恥ずかしいから止めて。237 名前: ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/10(水) 01:39:14.44 ID:PXIweYU+0(´・ω・`)『ツーの意見は8割がた賛成だけど、2つばかり訂正したいね』次に口を挟んできたのはショボンさん。手には黒光りする中華包丁を持っている。それにしてもこの人が黒光りする物を手にしてるとなんとなく卑猥なのは何でかしら。(´・ω・`)『こいつが僕の包丁【杉本】だ。 中華包丁は【杉本】に限る。 何故かと言うと日本国内の中華包丁のシェアの大半を占めているメーカーだからだ。 それほど中華に料理人に信頼されているブランドなんだよ』どこで調べてきたのよ、そんなの。目の前ではしぃが目を輝かせてみんなの会話に聞き入っている。若いって羨ましいわ。(´・ω・`)『それともう1つ。 やっぱり料理人なら包丁は鋼にするべきだ。 確かにすぐ刃こぼれはするし、錆びやすいし、毎日の手入れが欠かせない面倒な代物だ。 その代わり研ぎやすいし、なによりも切れ味が素晴らしい。こればっかりはステンレスでは到底真似出来ない。 包丁=切る道具である限り、切れ味にこだわるべきだよ』それを聞いたギコさんが満足げに頷いている。( ,,゚Д゚)『分かったか? 男は黙って鋼にするべきだ。 一度鋼に慣れちまうとステンレスなんて使ってられねぇぞゴルァ』240 名前: ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/10(水) 01:43:47.06 ID:PXIweYU+0その言葉に大笑いで返したのは変態…もといジョルジュさんだ。( ゚∀゚)『バカだな、お前ら。 いいか、内藤。人間手に馴染んだ物が一番なんだ。 和包丁や中華包丁なんて普段つかわねぇだろ!? だったら洋包丁にしろって。 牛刀だったら肉・魚・野菜なんでも切れるぜ。 あと、時代はステンレスなんだよ!! 切れ味で劣る!? バカ言っちゃいけねぇぜwww 総合的にステンレスのほうが使い勝手がいいからこれだけ広まってるんだからよ』そう言いながら小型のアタッシュケースを開ける。中身は何種類ものナイフが壁面に縛り付けられたいた。( ゚∀゚)『牛刀は当然として…小刀も揃えておくと便利だぜ。 俺のお薦めは【ドライザック】だ。 ぺティナイフは勿論、ペアリングナイフとフルーティングナイフは細かい作業に重宝するぜ。 あとは彫刻刀があれば完璧よ』244 名前:さるでした ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/10(水) 01:56:03.40 ID:PXIweYU+0自分の意見を全く無視して騒ぐ外野に内藤は本気で困っているようだった。あちらを立てればこちらが立たず…って感じかしらね。自分の事なんだから好きにすればいいのに…ってそれが出来ないから内藤なのかも知れない。あたしは席を立って内藤の隣に移動する。ξ゚△゚)ξ『で、少しは参考になったのかしら?』( ^ω^)『全然だおwww頭が爆発してアフロになりそうだおwww ツンの意見も聞きたいお』そうねぇ…。あたしはあごに指をかけ2~3秒考える。ξ゚△゚)ξ『まぁ、どんな包丁を買うかはあんたの好みなんだろうけどさ。 材質はステンレスね。物臭なあんたにはお似合いじゃないの?』あたしがそう答えると、川 ゚ -゚)『ふむ。ツンはその意見か。私なら内藤には鋼が向いていると思うがな』今まで沈黙を守ってきたクーさんが口を開いた。246 名前: ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/10(水) 01:59:37.15 ID:PXIweYU+0内藤そっちのけで議論を続けるみんなをよそにクーさんは言葉を続ける。なんでジョルジュさんは上半身裸なんだろう。ワケがわからない。川 ゚ -゚)『私は職業柄フルーツナイフしか使わん。 だが、鋼の包丁が扱いづらい代物だと言うのは皆の話を聞いてよく分かった』( ^ω^)『だったら尚更…』川 ゚ -゚)『まぁ、聞きたまえ。 鋼の包丁と言うのは毎日手入れして、それでやっと最高の切れ味を見せるのだろう? それは言い換えれば、最高の仕事をする瞬間の為に日々自身を磨き上げると言う事。 その姿が今の君にそっくりだと思うのだ。 それを意識して内藤が自身の包丁を手にすれば、今以上に仕事に張り合いを持てるのではないか?』( *^ω^)『クーさん…なんか今の言葉ジーンと来ましたお』またもや2人の世界に入り込む内藤とクーさん。あたしはすっかり蚊帳の外。なによ!! あんたからあたしに意見求めてきたくせに、面白くないわね!!ξ#゚△゚)ξ『話は終わったみたいね。じゃ、あたし帰るわ』あたしはカウンターを離れようとする。それを見た内藤も慌てて席を立つ。それがいつもの風景。川 ゚ -゚)『待て内藤。わたしの話はまだ終わっていないぞ』でも今日はいつもと同じにはならなかった。247 名前: ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/10(水) 02:01:51.19 ID:PXIweYU+0川 ゚ -゚)『内藤。いつも思うのだが、何故君が一方的に殴られたり追いかけたりしなくてはならんのだ? わたしにはそれが理解できない』( ^ω^)『え…だってツンは友達だし』川 ゚ -゚)『友達…か』クーさんがあたしとチラと見る。川 ゚ -゚)『君たちが特別な関係でないのであればわたしとの会話を中断する事もあるまい。 第一、今君は自分の包丁を選ぶと言う君にとって非常に大切な話をしていた筈だ。 君が今の関係に甘んじる事でどのような結果に繋がるのか。私は疑問に思う』ξ゚△゚)ξ『……』川 ゚ -゚)『わたしなら君を自分の考えだけで引きづり回したりしない。 むしろ君の人生をサポートできると思う。 この業界の上司として。人生の先輩として。そしてむろん女として』それは大切な告白。それは宣戦布告。クーさんは今度はしっかりとあたしを見据え、内藤に視線を移した。川 ゚ -゚)『内藤。君が本当に料理人として生きて行きたいのなら…』あたしを取り巻く周囲の喧騒が遠く離れていく。そしてクーさんの言葉だけが何度も頭の中に鳴り響いた。川 ゚ -゚)『わたしは君の道標(みちしるべ)になりたい』
Jan 29, 2007
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211 名前: ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/10(水) 01:11:00.69 ID:PXIweYU+0 第12章 情熱の薔薇また内藤とクーさんが見つめあってる。それを見るたびに私はイライラする。私の後ろにはお姉ちゃんとドクオが座っている。振り返ればきっと私たちを見てニヤニヤ笑っているんだろう。それを想像したらまたあたしはイライラしてきた。( °ω°)『ローリングストーンズッ!!』あたしは無意識のうちに内藤の足に渾身の拳骨を叩きつける。川 ゚ -゚) 『いきなり殴ったら痛いだろう 常識で考えて』( ;^ω^) 『そ、そうだお。僕は何にも悪い事…』ξ゚△゚)ξ『うるさいわねっ!!』あたしは内藤の目の前に空になったグラスを突きつけた。ξ゚△゚)ξ『レディのグラスが空になってるのよ!! それに気づかずデレデレしてるなんて武士として…いえ、男として最悪だわ!!』言いがかりだ。自分でも分かってる。でも内藤は笑顔を崩そうとしない。215 名前: ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/10(水) 01:14:14.43 ID:PXIweYU+0( ;^ω^)『困ったお嬢さんだお…クーさん、ツンに同じ物をもう一杯…』ξ#゚△゚)ξ『いまさら遅いわよ!! あたし帰る!!』あたしはそう言って席を立ち歩き始める。( ;^ω^)『あ、ツン待つお…みなさんお先に失礼しますお』内藤が自分のグラスを一息に飲み干し追いかけてきた。あたしの視界に『やれやれ』とでも言いたげに肩をすくめるクーさんの姿が飛び込んできて、あたしはまたまたイライラを増幅させる。ξ#゚△゚)ξ『なんであんたを待たなきゃいけないのよ!!この豚!!』あたしはそう叫んで店を出た。千鳥足の酔っ払いをかわしながらあたしは夜の商店街を早足で歩く。こんな時間でもこの道はネオンで明るい。それにしても…フラフラ歩くな!!ちゃんと胸を張ってまっすぐ歩け!!男でしょ!!あたしは心の中で毒づいた。( ^ω^)『ちょwwwツンwwwやっと追いついたおwww』自転車にまたがった内藤があたしに並びかけてきた。ほんの短距離しか走っていない筈なのに肩を上下させて…だらしないわね!!ξ#゚△゚)ξ『なによ!! あんたはクーさんと楽しく飲んでればいいじゃない!!』221 名前: ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/10(水) 01:17:07.94 ID:PXIweYU+0( ^ω^)『そ、そんなwww今日は一緒に帰るって約束してたじゃないかお』こんな時でも内藤は笑顔を絶やさない。よく無邪気に笑った男の表情が好きとか言ってる女の子がいるけど、あたしはそうは思わない。男は真剣な表情が一番だと思ってる。そんなあたしでも内藤の笑顔は嫌いじゃない。見ていて心が暖かくなるって言うか…そんな感じにさせてくれる。でも、内藤がその笑顔をあたしじゃない誰かに向けている時は好きじゃない。ξ゚△゚)ξ『内藤。あたしたちは友達よね?』( ^ω^)『は? 急にどうしたんだお? もちろんツンは僕にとって大事な友達だお』ξ゚△゚)ξ『じゃあ正直に答えなさい。クーさんはあんたにとって何なの?』どうしたんだろう。あたしの口から出た言葉にあたし自身が驚いていた。こんな事聞いてあたしは何がしたいんだろう。内藤もいきなりの質問に戸惑っているようで、( ^ω^)『な、なにをいきなり…クーさんはよき相談相手というかお姉さまと言うか…』死にかけた金魚みたいに口をパクパクさせている。ξ-△-)ξ=3 ハァ。ため息。どうせこんな事しか言えない奴だとは思ってたけど。ξ゚△゚)ξ『0点』あたしはそれだけ言うと、それからは内藤が何を話しかけても返事をしなかった。225 名前: ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/10(水) 01:19:11.35 ID:PXIweYU+0翌日。いつものコンビニの前に内藤がいた。( ^ω^)『ツン、おはようだおwww』ξ゚△゚)ξ『おはよう。今日は随分早いじゃない。でも、そんなトコでキョロキョロしてると不審者みたいよ』( ^ω^)『おっwwwおっwww不審者は言いすぎwwwツンを待ってたんだお』ξ゚△゚)ξ『ハイハイ。で、用件は何かしら?』( ^ω^)『仕事前にツンにちゃんと謝りたかったんだお』ξ゚△゚)ξ『謝る? 何を?』( ^ω^)『昨日の事だお。僕なりになんでツンがあんなに不機嫌だったのか…考えてみたんだお』内藤が真剣な表情であたしの目を覗き込んでくる。普段ヘラヘラしている男が急に見せる真剣な眼差し。あたしはコレに本当に弱い。内藤…何を言うつもりなんだろう…鼓動が早くなる。足が震える。( ^ω^)『また…あの日だったんだお?』ξ゚△゚)ξ『……』ξ#゚△゚)ξ『 死 ね 』あたしは内藤の顔面にハンドバッグを叩きつけた。228 名前: ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/10(水) 01:21:11.55 ID:PXIweYU+0ランチタイム。ホールも厨房もフルボリュームの有線放送が聞こえなくなるほどの喧騒に包まれる。暇な時間は寒いくらいに感じる冷房もこの時間だけは別。鼻の頭に汗をかくほど暑く感じるのは、あたし達が走り回っているからか?それとも満席の店内特有の熱気のせいか?また蝉の鳴き声とムワッとする外気を伴ってお客様が自動ドアをくぐってきた。あたしは作り笑顔を浮かべてそれに対応する。ξ^ー^)ξ『申し訳ございません。只今満席でして…』『席があくまで待つよ』と言うお客様の名前と人数をメモ用紙に殴り書いていると厨房からコールがかかる。(*゚∀゚)『3番テーブル!! 料理運んどくれっ!! 冷めちまうよっ!!』ディッシュアップカウンター(完成した料理を並べるカウンターの事)に駆けつけ提供を待つ料理を両手に持ちながら厨房を覗き込む。そこにあるのは何時もどおりの騒然とした光景。(*゚∀゚)『ブーちゃん!! 5番遅れてるよ!!』( ;^ω^)『あと10秒!! ドクオ!!6番いけるかお!!』('A`)『おう!! いつでも来い!!』229 名前: ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/10(水) 01:25:47.49 ID:PXIweYU+0お客様を席にご案内し。注文を取り。テーブルに料理を運んで。レジで会計を済ませ、テーブルを片付ける。ランチタイムはひたすらにコレの繰り返し。あたしは手が空くたびに厨房を覗き込む。料理が出そうなタイミングを計るのも迅速に行動する条件だからだ。( ^ω^)『7番30秒!! 続いて1番1分でいくお!!』内藤が両手で麺の湯切りをしながら叫ぶ。('A`)『1分!? 45秒で来い!! ツー!! 1番スペシャルのセットライス3丁!!それと2番のキムチ炒飯のご飯2丁だ!!』ドクオが鍋を振りながら叫ぶ。(*゚∀゚)『今やってるよっ!! ブーちゃん!! 4番のつけ麺は準備できてるかい!?』お姉ちゃんが狭い通路を走りながら叫ぶ。互いが互いに声をかけ、お姉ちゃんがそれを組み立てる。どんなに走り回っても作業に集中してもぶつかったりする事はない。この人たち、背中に目でもついてるのかしら。内藤は左手に持ったレンゲでスープの味を見ながら、右手で麺にトッピングをしている。その目は常に厨房中を見渡し観察し、足元はすでに次の行動に移っている。この時ばかりは内藤も侍の目になってて悪くない。(´・ω・`)『内藤君はこの一年で随分頼もしくなってくれたよ』ショボンさんも嬉しそうに言ってたっけ。230 名前: ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/10(水) 01:27:42.03 ID:PXIweYU+0 ランチタイムが終わり、テーブルを拭くダスターを漂白するのに厨房に入ると、内藤達は輪になって雑談の真っ最中だった。( ゚∀゚)『昨日超巨乳の女の子が働いてるファミレス見つけてよ』(*( ,,゚Д゚)『夕べ通販で買った手錠見つかって捨てられちまってな…』(*゚∀゚)『手錠!? たまにはそんなのも興奮するかもね!!』('A`)『いや、それより明日のランチなんだが…』( ^ω^)『僕なんか昨日3人とやりまくりだおwwwエロゲでwww』…なんかこの会話つい最近も聞いたわね。微妙にかみ合ってないトコも同じだわ。もしかしてお互いに人の話聞いてないんじゃないかしら。つか、お姉ちゃんまで何やってんのよ…。(*゚∀゚)『固い事言わないの!! みんな戦友だからね!! こんなので恥ずかしがってたら厨房じゃ働けないよ!!』あぁ、そうですか。( ゚∀゚)『あ、ツン』ξ゚△゚)ξ『何?』( ゚∀゚)o彡°『大きくなりますように♪』ξ#゚△゚)ξ『死ねばいいのに』233 名前: ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/10(水) 01:30:26.01 ID:PXIweYU+0何でか知らないけど、料理人達って下ネタが好きだ。特にそれが派手な武勇伝であるほど歓迎される傾向にあるように見える。ジョルジュさんなんかは料理が出来なかったらエッチなビデオの男優さん以外就職先がないんじゃないだろうか?ξ////)ξ『言っておくけど見た事ないんだからねっ!!』( ;^ω^)『急にどうしたんだお?』もう1つ。料理人達が好きな会話のカテゴリーがある。それは包丁の話。みんな自分の包丁こそ最高の1本と思ってるから、その主張を決して譲ろうとはしないの。子供みたいね。今日も内藤が( ^ω^)『そろそろ自分の包丁を買おうと思ってるお』と言ったのをきっかけに仕事そっちのけの議論が始まり、それは今この場所。仕事後のバースペースまで持ち込まれた。疲れているハズなのにバーカウンターに内藤を囲んで喧々囂々。自分の包丁を取り出しては内藤にその素晴らしさを説明…というよりあれは自慢話ね。あたしとしぃはテーブルスペースでそれを見ているだけ。だって、包丁1本にそんなにこだわる神経が分からないもん!!
Jan 29, 2007
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80 名前: ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/08(月) 01:08:22.31 ID:KW8Sy17O015:00ようやくプリンターの動きが遅くなる。ツーを休憩に送り、俺と内藤はソースやらで汚れた作業台を拭き取りほぼ空っぽになった食材を補充、満杯にしておく。遅番で冷菜担当のギコさんと製菓のジョルジュさんが出勤してくる。俺は蓋をした寸胴に腰を下ろし、ショボンさんと今日のスペシャルの売れ行きについて意見を交換する。内藤のトマトラーメンは注文したお客様の反応はよかったが、注文するまでに躊躇してしまう傾向があったらしい。(´・ω・`) 『味は悪くない。こっちでもっとお勧めできればよかったね』向こうではジョルジュさんとギコさん、内藤が何やら楽しそうに話しこんでいる。( ゚∀゚) 『超美乳の女の子が働いてるコンビニ見つけてよ…神様っているんだな』(*( ,,゚Д゚)『夕べ縛って立ったままセクロスしたいって言ったら殴られてな…』( ^ω^)『そんなの二次元では当たり前の事だおwwwこれだから3次元厨は困るおwww』…なんか、2・3日前も同じ会話聴いた気がする。こいつら毎日同じ事しか話してないんじゃないか?そう言えば昔一緒に働いてた流石兄弟も同じような事話してたな。その時はショボンさんも『歌舞伎町に遊びに行ったらウホッにナンパされた』とか話してたっけ。普段なら18:00まではアイドルタイム(客足が止まる時間帯)だが、今日はコンサートがあるっていってたから17:00頃に最初の波が来るかな…。('A`) 『今のうちに休んどくか』コンサート前に軽い食事を取りたいという客心理を考えればその時間は一時的に混雑するはずだ。俺は内藤を誘ってスタッフルームに引っ込んだ。88 名前: ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/08(月) 01:12:34.40 ID:KW8Sy17O0 17:00休憩を終えて厨房に戻ると、最初の攻撃は既に開始されていた。どうやらコンサート前に『軽く』食事をしたいだけのようでハーフサイズのラーメンや、デザートばかりに注文が集中している。( ;^ω^)『おかしいおwwwなんで僕ばっかりwwwいじめかおwww』( ;゚∀゚) 『…やべ…仕込み足りなかったかな』そんな事を言いながら走り回る内藤をツーがフォローし、ジョルジュさんをギコさんがフォローする。鍋場の注文が極端に入らないので俺は悠々と食材の在庫を確認し足りない食材を発注表にチェックしていく。剥きニンニク3キロ。生姜3キロ。玉葱6キロ…。今日は金曜日。冷凍食材と精肉の発注もしなくてはならない。俺は冷凍庫を開けると中身が少なくなったダンボールから食材を取り出し、整理しつつ在庫を確認する。朝はあんなに大量にあって冷凍庫の片隅を占拠していた牡蠣の在庫量が若干心許なくなっていた。('A`) 『大至急発注しないとな』自分の料理が好評だったのは嬉しいが、発注を任される身としては致命的とは言えないまでも計算違いをした事にいい気はしない。( ;^ω^);゚∀゚) 『俺たち…この客足が引けたら結婚するんだ』('A`) 『黙って働け』98 名前: ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/08(月) 01:17:24.11 ID:KW8Sy17O019:00ようやく並び始めた鍋場の注文を片す間を縫って缶詰類等のドライ食材の在庫確認をする為に倉庫へ行く。('A`) 『ホールトマトが余ってるな』明日あたり海老のチリソースでもスペシャルでやってみるか。そうなると車海老の発注もしなくてはならない。豆板醤、オイスターソース等が並ぶ棚を睨んでいるとショボンさんが話しかけてきた。(´・ω・`)『ドクオ、ちょっといいかい』('A`)『? なんすか?』(´・ω・`)『クーさんから野菜の購入代金が随分高くなってるって言われてね』やっぱりその事か。大雨の影響とやらで全国的に野菜の物価が上がっている。同時に品質も低下の傾向があり、廃棄量が増えている感も否めない。どこの店も品質がよい野菜を欲しがっているからどうしても購入代金は高くなってしまうのだ。(´・ω・`)『うん、僕も気になってた。キャベツに白菜を混ぜるとか… なんか安い野菜見つけて工夫してみてよ』('A`)『わかりました』(´・ω・`)『それとオーバーポーションには気をつけて。 ツーは忙しくなると野菜を多く使う癖があるから』そんな会話をしながら俺は仕事を続ける。(´・ω・`)『それと、適当なトコで切り上げてあがっていいよ。あとは遅番組とバイトに任せよう』時計を見るとすでに20:00近くなっていた。103 名前: ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/08(月) 01:20:50.69 ID:KW8Sy17O0 厨房に戻るとちょうど内藤が仕事を終えたところだった。ベテランバイトのイヨウが『わかんないんです、わかんないんです』を繰り返す新人に何度も仕事を教えようとしている。( ^ω^)『おっwwwドクオお先に失礼だおwwwこれからバースペースに行くおwww ドクオも来いおwww』仕事を終えた内藤はいつも本当に嬉しそうだ。('A`)『いや、今日は帰』( ^ω^)『ツンとツーさんも先に行って飲んでるはずだお』('A`)『…それを先に言えよ』それを聞いたら行かざるを得ないだろ。そう考えながらクレンザーで包丁についた脂を洗い流し、砥石で軽く研いでからタオルに包む。('A`)『お先に失礼します』ギコさん達に声をかけてから俺は厨房を出た。スタッフルームでコックコートを脱ぎ捨てながら、タバコに火をつける。('A`)『さて、今日は何を飲むかな』俺は考えていた。108 名前: ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/08(月) 01:23:04.21 ID:KW8Sy17O0俺の毎日は大体この繰り返しだ。春も夏も秋も冬も。いつでも基本を反復する毎日。その結果として突然急激に実力が上がることはある。だがそれは日々の訓練の賜物。苦労し悩んだ結果がそれに繋がるだけなんだ。だから、突然天啓のように全く新しい料理ができるわけじゃない。それは試行錯誤と幾つも覚えてきたレシピの中からヒントを得て作り上げる物だ。当然、高名な料理評論家が腕利きの料理人を連れてきて料理勝負…なんて事もない。料理とは経験の積み重ねだ。何千回・何万回と鍋を振り己を鍛え上げた経験だけがその時の自分にとって最高の一皿を作り上げ、それを超えるべくまた鍋を振る。そうして日々は過ぎ去ってゆく。内藤がバーボンハウスに入社して2度目の夏が過ぎ去ろうとしていた。
Jan 27, 2007
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52 名前: ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/08(月) 00:51:20.93 ID:KW8Sy17O0 第11章 月の爆撃機8:30俺は自然と目を覚ます。一応携帯の目覚ましはセットしてあるのだが、それが鳴り出す前に目が覚めるのはもう5年も続いている習慣のせいだろう。かすかに鼻に香ってくるシャンプーと入れたてのコーヒーの香り。ツーが朝のシャワーを浴びている音が聞こえる。あと10分もすればツーが入れたてのコーヒーを両手に持って姿を現すはずだ。俺は上半身を起こしサイドボードからタバコを探り当てると、それに火をつけた。('A`)『そう言えば今日はスペシャルラーメンで内藤がトマトラーメンを作りたいって言ってたな』トマトラーメンと聞いて最初俺は苦々しげな顔をしたらしいのだが、内藤はホールトマト缶、ひき肉、豆板醤などを使って見事なミートソースを作り上げてきた。この中華風ミートソースとサラダ用のほうれん草、フライドオニオンを使ってトッピングするつもりらしい。('A`)『俺も負けてられないな』麺場に移ってからの内藤、ランナーとしてのツーは日々活躍の場を増やしている。まるで水を得た魚だ。それならばこっちも先輩としてダラけてはいられまい。俺はタバコをもみ消し、ベッドの下に落ちているだろう下着を探し始めた。53 名前: ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/08(月) 00:52:51.48 ID:KW8Sy17O09:40ツーを自転車の荷台に乗せて店に到着する。内藤とツンはすでに着替えを終えており、パイプ椅子に腰を下ろして朝食をとっていた。( ^ω^)『おっwww2人ともおはようだおwww』ξ゚△゚)ξ 『また同伴出勤? 朝から熱いわね』(*゚∀゚) 『いやいや!! ブーちゃんとツンほどじゃないよっ!!』ξ*゚△゚)ξ『何言ってるのよ!! あたしの趣味は白馬に乗った将軍様って言うか…』( ^ω^)『おっwwwおっwwwまさに僕のことだおwww』ξ゚△゚)ξ 『 一 回 死 ぬ か イ タ リ ア 名 物 ? 』そんな会話を聞きながらロッカーからクリーニングしたてのコックコートと前掛けを引っ張り出す。('A`)『ツー。早く着替えちまえ』全く。何でこいつ等朝からこんな元気なんだろうな。54 名前: ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/08(月) 00:54:24.46 ID:KW8Sy17O010:15冷凍庫を覗き込み本日のスペシャルランチを決める。('A`) 『牡蠣が随分あるな…』内藤が肉を使うならこっちは魚介類で勝負だ。('A`) 『葉にんにくや筍を使ったオイスター炒めにするか』倉庫に筍の缶詰をとりに行くとツーがなにやら業者と揉めていた。( ´∀`)『そんな事言われたって…これだってトマトには違いないモナ』(*゚∀゚) 『確かにそうだけどね!! わたしはちゃんと熟れたトマトが欲しいのさ!! こんな青いトマトもらったってお客に出せないよ!! 熟れるまで待てとでも言うのかい!! とにかくこんなのじゃお金は払えないね!!』うん、これなら大丈夫だ。バーボンハウスが契約している青果業者【モナーフレッシュサービス】はこっちが目を離すととたんに食材の質を落としやがる。モナーが悪質ってわけじゃない。どこもこんなもんだろう。安く仕入れて高く売りたいって考えるのは当然だ。中にはもっとセコイ手を使う業者だってたくさんいる。だが、相手がツーではそれも通用しない。('A`) 『あぁ、モナーさん。悪いが時間の無駄だ。 取引中止されたくなかったらとっとと戻ってちゃんとしたトマト持って来い』俺がそう言うとモナーはすごすごと退散していった。61 名前: ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/08(月) 00:59:50.90 ID:KW8Sy17O010:45朝礼。今日のスペシャルについて説明する。( ^ω^) 『今日のスペシャルはトマトラーメンだおwちょっと辛いからお子様には注意して欲しいお』試食用に取り分けられた小皿を口元に運びながらウェイトレスは真剣に耳を傾ける。ξ゚△゚)ξ『意外と美味しいけどちょっと辛すぎない?』( ^ω^) 『夏だから辛めに仕上げてあるおww』続いて今日のイベント情報。(´・ω・`)『今日は18時からVIPアリーナでペニサス伊藤のコンサートがあるよ』それを念頭に置いた仕事が必要になるわけだ。11:00開店。いつも通りちらほらと入客があるのみ。だが、ここで手を抜くと一日中尻をひっぱたくような目にあうのは経験上分かっている。俺も内藤も自分のポジションの食材は何度も確認し、少しでも少ない物があるとすぐに交換できるように準備する。山のように積み上げられていたキャベツ、人参、ニラ、青梗菜、浅葱、ナス、アスパラガス…それらは既に切り刻まれ俺たちに料理されるのを今か今かと待っている。戦闘準備完了。67 名前: ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/08(月) 01:03:19.95 ID:KW8Sy17O012:00堰を切ったような入客ラッシュが始まる。どこにこんなに隠れていたんだと思うほどだ。ξ゚△゚)ξ『3番テーブル5名様ご案内です!!』ツンの声は叫び声に近い。ただでさえお客様の会話や厨房の物音で店内は騒然としている。それに加えて各自が自分の作業に夢中になっているので、叫ぶくらいの声で無いとスタッフが聞き取れないのだ。(*゚∀゚)『新規オーダー!! 醤油ラーメン3丁いただいたよっ!!』ツーはプリンターから吐き出される伝票を一目見ただけで暗記し、 読み上げつつ俺と内藤のフォローをする。(*゚∀゚)『2人とも7番テーブル行くよ!! ドクオ君!! これはスペシャルの筍とパプリカ、麻婆豆腐の豆腐も切ったからね!! ブーちゃん!! 遅れないでよ!!』( ;^ω^)『7番!? くっ!! まだ6番のバーボンセットが出てないお!!』(*゚∀゚)『はぁ!? 何分それに時間かかってんだいっ!? 作業台が散らかってるから時間かかるのさ!! ちゃんと片付けながら作業しないと遅れるよ!!』('A`) 『ツー!! 俺は大丈夫だ!! とっとと内藤のフォローしてやれ!!』料理を盛り付けた皿の縁に跳ねたソースをを拭き取りながら叫ぶ。72 名前: ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/08(月) 01:05:51.24 ID:KW8Sy17O0ツーはあんな事を言ったが、決して嫌味で言うわけではない。だから内藤もそれで凹むような事はない。必死で俺のスピードに喰らいつこうとしている。内藤の最大の欠点は慌てると周囲を散らかすことだ。散らかるから作業スペースが小さくなる。作業スペースが小さくなるから作業がしづらくなり、思うように動けなくなり作業が遅れる。作業が遅れるからまた慌てる。('A`) 『悪循環だな』こればかりは内藤が自分で意識して解決するしかない。俺がどんなに言っても解決の糸口にしかならないが、自信で悩んで掴んだきっかけは内藤の実力を飛躍的に向上させるだろう。( ;^ω^)『すまんお!! 7番いつでもいけるお!!』(*゚∀゚)『7番は今出たよっ!! ちゃんと伝票確認して!! しぃ!!そこのスペシャルラーメン7番に運んで!! 一番左が麺固めさっ!! さぁ、8番9番一気に行くよ!! 超ダッシュさっ!!』
Jan 27, 2007
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25 名前: ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/08(月) 00:17:38.19 ID:KW8Sy17O0( ;^ω^)『…とまぁ、こんな事があったんだお』川 ゚ -゚) 『ふむ。まぁ、いつもの事だな』場所と時間は変わってここは仕事後のバースペース。僕の横ではドクオがバーカウンターに顔をうずめて眠っている。僕の後ろのテーブル席ではギコさんとショボンさんが何やら真剣に話をしていて、その横では仁王立ちするツンの前で正座しているジョルジュさんとそれを見ながら『これだから男は…』とか話しているツーさんとしぃちゃん。ちなみにギコさんとドクオ、ジョルジュさんの顔にはまだ真新しい生傷がついていて痛々しい。( ;^ω^)『いつもの事だけど…』なんだか釈然としない僕。川 ゚ -゚) 『で、私のおっぱいは美味しかったか?』( ^ω^)『はい、最高でしたお』そう言ってビールを一口。背後から殺気を感じたが気にしないことにした。その時。???『お~い!! まだいるんだろ!! ちょっとここ開けてくれ!!』すでに鍵のかけられた入り口の扉が激しく叩かれた。26 名前: ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/08(月) 00:18:46.54 ID:KW8Sy17O0(´・ω・`)『…? こんな時間に誰だろう?』そんなことを言いながらショボンさんが扉を開ける。入ってきたのはDQN感バリバリの金髪の女性。今日のいざこざで自然に胸に目が行ってしまう。うん、ツンサイズだ。彼女は入ってくるなりキョロキョロと僕らを見渡していたが、床に正座している【彼】を見つけると大声で笑い出した。从 ゚∀从『ぎゃっはっはっはっは!! ジョルジュおまwww何やってんだよww』( ゚∀゚) 『うるせぇなwwwちょっとした余興だよwww』そう言いながら立ち上がる。(*゚∀゚) 『…で、誰?』みんなの疑問をツーさんが声にする。( ゚∀゚) 『あ? 俺様の妻だ』( ^ω^)゚△゚)ξ,,゚Д゚)*゚ー゚)*゚∀゚)『な、なんだってーーーーーーー!!』寝ているドクオと、何でそんなに驚いているんだ?って感じのショボンさん・クーさんを除いて僕らは驚きの声を上げた。从 ゚∀从 『今夜は寝かさないとか言いながらいつまでも帰ってこないからよw迎えに来てやったぜ』( ゚∀゚) 『おう。今夜は10回戦までいくぜ!!』从 ゚∀从 『キャ~!! いやんリッヒ!!』あごが外れそうなほど驚いている僕らを尻目にジョルジュさんは去っていったのであった。27 名前: ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/08(月) 00:19:55.88 ID:KW8Sy17O0ジョルジュ長岡。28歳。日本人の父とフランス人の母の下に生まれる。妻・ハインリッヒ長岡(旧姓・高岡)優秀なパティシエであり、おっぱい博士でもある彼も家に帰ればよき夫であり、6人の子供達のよき父である。35 名前: ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/08(月) 00:26:41.39 ID:KW8Sy17O010章までの登場人物紹介( ^ω^) 内藤ホライゾン。通称ブーン。 20歳。料理歴3ヶ月。 自らに言い訳をし日々を送るだけの毎日を送る彼だったが、 バーボンハウス入社後ある事件をきっかけに過去の自分との決別を決意。 料理人になるべく奮闘する。 現在麺場担当。('A`) ドクオ。 20歳。料理歴3年。 極端に無口で人との関わりを避けていた。 周囲のいじめが元で高校中退後バーボンハウス入社。 苦しみながらも自分の場所を作り上げた努力家。 現在は以前ほど人との関わりを避ける様にはなっていないようだ。 内藤の師匠であり、ツーの恋人。現在鍋場責任者。ξ゚△゚)ξ ツン。 20歳。料理歴なし。 高校時代からバーボンハウスでウェイトレスをしている。 波がかった栗色の髪と猫科の生き物のような目の持ち主。 美しい外見とは裏腹に粗暴な性格をしており、内藤曰く『羊の皮をかぶった核弾頭』 控えめな胸が悩みの種。 バーボン三姉妹次女。 時代劇マニア。36 名前: ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/08(月) 00:29:06.08 ID:KW8Sy17O0(´・ω・`) ショボン。 35歳。料理歴15年。 バーボンハウス料理長。 癖の強いスタッフをまとめ上げる苦労人。 最近現場を離れたことで太りだしたのが悩み。 ウホッではないらしい。川 ゚ -゚) クー。 25歳。料理歴なし。 バーボンハウスマネージャーにして事務・経理担当。 紫がかった瞳と美しい長髪・長身をしている。 常に冷静。 バースペースの主としてスタッフの悩みや相談に乗ってくれる良きお姉さま。( ,,゚Д゚) ギコ。 33歳。料理歴18年。 金髪とピアスだらけの耳をしており、一見してDQN。 性格は荒く前科歴もあり本格的なDQNである。 だが現在は若干丸くなり良き兄貴分としてスタッフを引っ張っているようだ。 冷菜担当で出身は和食。 しぃと付き合っているが、風俗に行くわ無茶なセクロスをしようとするわ …こんな設定じゃなかったハズ。37 名前: ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/08(月) 00:30:16.63 ID:KW8Sy17O0(*゚ー゚) しぃ。 18歳。料理歴なし。 どうやらフリーターらしい。 150センチ以下の身長にショートカット、大きな瞳はどう見ても小学生。 …が脅威のFカップを誇るロリ巨乳。 ギコの彼女であり、2人で店を経営するのが夢。 バーボン三姉妹の末っ子。切れると怖いのは姉譲り。(*゚∀゚) ツー。 22歳。料理歴5年。 バイトのファミレスを経てバーボンハウス入社。 明るい髪をした爆発ハイテンション娘。 話し出したら止まらない。 包丁落下事件をきっかけにドクオの彼女となる。バーボン三姉妹長女。 現在厨房をまとめあがるランナーとして活躍中。( ゚∀゚) ジョルジュ長岡。 28歳。料理歴6年。 マッチョな日仏ハーフ。若くして数々の賞に輝いた優秀なパティシエだが、 女性の胸に異常な執着を見せる変態。 飾り包丁の天才でもある。 ギコと仲がよいが、彼は妻を愛しており風俗など論外と考えており、意外なほど身持ちが固い。 6人の子持ち。38 名前: ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/08(月) 00:31:28.61 ID:KW8Sy17O0/ ,' 3 荒巻スカルチノフ 42歳。 バーボンハウスオーナー。 出番は無いので忘れてもらってかまわない。( ´_ゝ`)(´
Jan 23, 2007
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5 名前: ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/07(日) 23:40:30.17 ID:c9SnQmJu0第10章 ボインキラー(´・ω・`)『偉大なるアンソニー・ボーディンはコックを3種類に分類した。 金の為に働く【傭兵タイプ】 ネクタイを嫌い文明社会に溶け込めない【亡命者タイプ】 料理ではなく自分の芸術を表現したいだけの【芸術家タイプ】 僕はこの他にもう一つ店に忠誠を誓う【騎士タイプ】ってのも存在すると考えるんだけど… とにかく【芸術家タイプ】ってのはやっかいなもんさ』僕はショボンさんの言葉を思い出しながらキーボードを叩く。そう言えば、ギコさんはこんな事を言っていたっけ。( ,,゚Д゚)『コックの分類? んなもんは簡単だ。実力があるかないか、それだけだろ? 見分け方だぁ? そうだな…腕のある料理人は女にもてるもんだ。 冗談で言ってるんじゃねぇぞ。料理ができる男ってだけでも女から見れば評価は高いし、 応用力・忍耐力・ユーモアセンスは実力派のコックに無くてはならないもんだし、 チャレンジ精神溢れる料理人はセックスも冒険心たっぷりだからな …そのはずなのに、お前と長岡と来たら…なんでだろうな?』 こんな感じか。楽しそうに話すギコさんの後ろでしぃさんが怖い顔をしてたっけ。なんとなく気分が乗らないので『僕はどんな料理人になるのだろう?』と〆てブログの更新をした。あれからもずっと、僕はブログだけは続けている。最近は同業と思しき住人のコメントも増えていい感じだ。僕は一通り昨日までにもらったコメントを見直すと、満足してPCの電源を落とした。6 名前: ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/07(日) 23:43:47.04 ID:c9SnQmJu0足を肩幅に開き、胸を張る。左手は腰骨に当てる感じだ。右こぶしを軽く握って天に振り上げ、魔を払う雷の如く振り下ろす。掛け声はこうだ。( ゚∀゚)o彡°『おっぱい!おっぱい!』ξ#゚△゚)ξ 『あぁ、マジうぜぇ!!』日仏ハーフのジョルジュさんは、190を越す身長とボディビルダーを思わせる筋肉隆々の肉体をしている。常にやはりボディビルダーばりにスマイルを浮かべる彼を見て僕は( ^ω^) 『この人が鍋振ったら凄そうだお』と思ったものだが、未だその光景を見たことは無い。何故なら彼は料理人ではなく、製菓スタッフ。つまり、パティシエなのだ。普段はキッチントングを使ってツーさんのブラのホックを起用に外したり、ツンの胸を見て『大きくなるお祈り』をしたり、しぃちゃんの胸を見て満足げにうなずいたりを日課にしているジョルジュさんだけど、ただの変態ではなくその実力は本物だ。巨体を丸めてスクィーズ・ボトル(ホットドッグの屋台でマスタードやケチャップが入っているアレ)からチョコレート・ソースやカスタードソースを搾り出して皿に円を描き、爪楊枝で軽く擦って見事な抽象画を書きあげる。そこに手作りのアイスやビスケット・砂糖菓子、季節のフルーツを盛り付けホイップクリーム・ココアパウダーやミントを飾り付ければ美しい立体画が完成する。12 名前: ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/07(日) 23:53:05.12 ID:c9SnQmJu0ジョルジュさんは飾り・細工包丁も上手い。人参や胡瓜を使って紅葉や松を作るのはギコさんも上手いが、ジョルジュさんは器用にナイフや彫刻刀を使い分け頭部・胴体・羽根などのパーツを作ってからフィギアでも組むように生き生きとした鳳凰を完成させるのだ。僕やドクオも何度か教えてもらったけど、出来上がったのは死に掛けた鶏のようなものだった。( ^ω^)『フィギアにはちょっと自信があったのに悔しいお』( ゚∀゚)『まぁ、そんな簡単に作られたらこっちが廃業しちまうからな』そう言って豪快に笑う。僕の言葉は半分嘘で、ここまで実力差があると同じ人間じゃないみたいであまり悔しさを感じない。そんなジョルジュさんだけど、包丁細工などは別にして料理には全くタッチしない。僕らがどんなに忙しそうにしていても、自分は黙々と自分のポジションの仕込みや掃除をするだけだ。( ^ω^)『ジョルジュさんは料理はしないんですかお?』一度質問したことがある。( ゚∀゚)『当たり前だろ。俺様は天下の製菓職人だぜ。 昔は手伝えって言われたけど、ずっと拒否してたら言われなくなったよ』そう言って笑うだけだった。自分の職業に対する圧倒的なまでのプライド。自分の意思を押し通す傲慢さ。奇妙な性癖。なんとなくショボンさんがジョルジュさんを【芸術家】と呼ぶ理由がわかった気がした。14 名前: ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/07(日) 23:56:05.16 ID:c9SnQmJu0 ( ゚∀゚) 『あ、ちょっと皆集まってくれ。新しいデザートを考えたんで試食してほしいんだ。その言葉に引かれて手が空いたスタッフからジョルジュさんの周りに集まる。特にしぃちゃんは手にした皿を放り投げ真っ先に駆けつけてきた。(*゚ー゚) 『うわぁ☆ 美味しそう☆』テーブルに置かれているのは深皿にドーム型に盛られた杏仁豆腐。上に乗っているのはクコの実だろう。周りにはマンゴーやキーウィフルーツ等のフルーツが飾られ、上から半透明のゼリーがかかっている。その皿が4つ。杏仁豆腐のサイズを大小変えた物が並んでいた。( ,,゚Д゚) 『確かに旨そうだが、お前の皿にしてはありがちすぎやしないか?』( ゚∀゚) 『あぁ、今回は杏仁豆腐のレシピをいじってる。 アマレット(杏の種のお酒)を使っているのは変わらないんだが、杏露酒を少し入れてみたんだ。 生クリームも増やしてるから少し重い味になってると思う』ξ゚△゚)ξ『あんた黙ってデザートだけ作ってれば天才よね』( ;゚∀゚) 『…失礼な。ちなみに周りのゼリーは見かけは全く同じだが、 ライチゼリーと桂花陳酒のゼリー(キンモクセイのお酒)を半分づつ盛ってある。食べてビックリって仕掛けだな』我が子を自慢するように説明するジョルジュさんをよそに、女性スタッフは身を乗り出さんとして食べたそうにしている。(*゚∀゚)『説明はいいからさ!! 早く食べさせてよっ!! 4皿も用意してあるのは考えがあってのことなんだろっ!!』良くぞ聞いてくれた!!そう言ってジョルジュさんは椅子に飛び乗った。16 名前: ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/08(月) 00:00:50.00 ID:KW8Sy17O0 ( ゚∀゚) 『甘いデザートを食べる時、人は母親の胸に抱かれるような安らぎを得るという。 俺様は今回ここに目をつけた。 つまり、この一番大きくて柔らかいのがしぃちゃんのおっぱい!! 二番目に大きくてしぃちゃん以上に柔らかいのがクーさんのおっぱい!! 大きさはクーさんレベルだがちょっと硬めに仕上げたのがツーちゃんで、 残念賞を上げたくなるのがツンのおっぱいな。 その日の気分によって抱かれる女性を変えられる気分にさせてくれる、これぞ究極のデザート!! 名づけて【OPPAI~白き温もりの囁き~】だ!!』( ^ω^)'A`),,゚Д゚) 『……』ξ#゚△゚)ξ #*゚ー゚) #*゚∀゚) 『……』呆然とする僕らの視線を無視してジョルジュさんは演説を続ける。その椅子の足をツンのローキックが払い、ジョルジュさんは見事に床に転落した。( #゚∀゚) 『…っ痛ぇ!! 何しやがる二次元乳女!!』ξ#゚△゚)ξ『 黙 り な さ い 。ちょっと裏まで来てもらえるかしら?』( ;゚∀゚) 『え? え? 俺様何か悪い事したか…っていやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…』本気モードのツンに胸倉を掴まれ、自慢のデザートの感想を聞く事無くジョルジュさんはスタッフルームと書かれたドアの向こうに姿を消した。('A`) 『…あの人、もしかして今日一日これ作ってたのか?』( ,,゚Д゚) 『阿呆だ…本物の阿呆だ…』19 名前: ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/08(月) 00:06:40.92 ID:KW8Sy17O0気まずい雰囲気の中、僕らは試食を始めた。うん、美味しい。味は最高だけどあんな説明を聞かされたせいで( ^ω^) (確かにしぃちゃんのおっぱいはツーさんに比べて柔らかくてちょっと甘い気がするお)などと考えてしまう。それはドクオやギコさんも同じようで、ドクオは【しぃちゃん】には口をつけないようだしギコさんは【ツーさん】は食べようとしなかった。無言でスプーンを口に運ぶ女性2人が異様な雰囲気をかもし出している。そんな重い空気の中ギコさんが口を開いた。( ,,゚Д゚) 『なぁ、ドクオ。やっぱり俺思うんだが…』('A`) 『あの件ですか? 今なら俺も全面的に同意です』2人は女性2人には聞こえないように小声で会話を始めた。( ^ω^) 『あの件ってなんだお?』僕も会話に交ざる。('A`) 『あぁ…ジョルジュさんってもしかして童貞じゃないかって話だよ』( ^ω^)『ま、まじかお!? でもあの人確か今年で…』( ,,゚Д゚) 『28歳だ。 でもおかしいだろ? あの年齢であの乳へのこだわり… 女を知らねぇとしか思えねぇぞゴルァ』( ^ω^)(…確かに)21 名前: ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/08(月) 00:08:53.95 ID:KW8Sy17O0( ,,゚Д゚) 『証拠はまだある』ギコさんはつまらなそうに杏仁豆腐をスプーンで崩しながら続けた。(* ( ,,゚Д゚) 『あいつがあまりにもおっぱいおっぱい騒ぐから、裸のお姉ちゃんがいる飲み屋に誘ってやったんだがな。 何度誘っても来ねぇんだゴルァ。仕方なくドクオと2人で…』( ;^ω^)(志村ー!! 後ろ後ろ!!)(* ー )『ギコ君…ちょっといいかしら?☆』その言葉にギコさんはハッと振り返る。( ;,゚Д゚)『し、しぃ!? どこから聞いて…た?』(* ー )『裸のお姉ちゃん…のあたりかしら。少し2人だけでお話したいな☆』( ;,゚Д゚)『…はい、わかりました』そうして、しぃちゃんとギコさんはツンとジョルジュさんが消えた扉の奥に入っていった。肩を落としたギコさんの表情はまるで死刑宣告を受けた受刑者のようだった。( ;^ω^)『ご冥福をお祈りしますお』23 名前: ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/08(月) 00:13:56.00 ID:KW8Sy17O0( ^ω^)『それよりもドクオもギコさんも酷いお!! なんで僕を誘ってくれなかったんだお!!』しぃちゃん達の事は二人の問題だし。僕は精神的健康に悪い問題を頭の中から除外した。('A`) 『お前には刺激が強すぎる』( ;^ω^)(まぁ、そうだけど…)(*゚∀゚) 『あれ? ブーちゃんに刺激が強いって…もしかしてブーちゃんも穢れなき乙女かい!? いやぁ、残念!! あと半年早かったらこのツーおじさんが相手してあげたんだけどさ!!』ツーさんが男として超屈辱的なことをあっけらかんと口にする。どうやらツーさんはツンやしぃちゃん程怒ってないようだ。(*゚∀゚) 『まぁね!! ジョルジュさんがあの性格ってのは分かってるし、ドッ君だって男なんだからさ!! たまにはそんな事もあるさ!! あたしはちゃんと満足させてもらってるから大丈夫!! しぃはまだまだ子供なんだよ!!』('A`) 『そ、そうだって!! 俺だって何度か連れてってもらったけど楽しいわけじゃ…』(* ∀ ) 『・・・…何度か?』ドクオの言葉にツーさんの表情が一変した。(* ∀ ) 『…何度も行ったんだ? …ふ~ん』無言でスタッフルームを指差す。そして2人もこの場を去っていった。( ;^ω^)(あれ? いつの間にか僕一人!?)
Jan 23, 2007
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23 名前: ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/07(日) 00:04:47.32 ID:c9SnQmJu0その何気ない会話にツンの殺気が緩んだ。長年の経験でそれを察知したのであろうツーさんが畳み掛ける。(;*゚∀゚)『そうだ!! ブーちゃん、ドッ君に大事な用事があって来たんだろ!? どうしたんだい!?』一瞬のアイコンタクト。恋人同士でしか気付かないであろうそれはすでにテレパシーに近かった。(;'A`)『そ、そうだ。何でも言って来いよ親友』空気嫁。2人の視線が僕にそう言っている。ξ゚△゚)ξ『ちょっと!! まだ私の話は終わ』( ;^ω^)『そ、そうだお!! 大事な用事があるんだお!!』このチャンスを逃したら次は無い。僕はツンの言葉をさえぎるように今日の経緯をドクオとツーさんに説明する。身振り手振りを交えながら話す僕の声を3人は三者三様の姿勢で聞いていた。ドクオはタオルで股間を隠しながら床にあぐらをかいている。チラリと見えるへそ毛がキモイ。ツーさんは所謂女の子座りって奴だ。体に巻きつけたバスタオルの裾が上も下も非常に際どい。そしてツンはベッドに足を組んで座っている。不機嫌そうな顔つきは相変わらずだ。( ^ω^)『…と言う訳で僕はドクオの力を借りたくてココに来たんだお』(*゚∀゚)『なるほど。んじゃ、お姉さんもブーちゃんとツンの疑問に答えなきゃだねっ!!』ツーさんは胸元のバスタオルを少し持ち上げ、話しはじめた。(*゚∀゚)『正直、あたしも今回の辞令は納得できなかった。だからショボンさんに直接文句言いに行ったさ』25 名前: ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/07(日) 00:06:29.61 ID:c9SnQmJu0-----------------------------------------------------------(#*゚∀゚)『納得できません!!』あたしは仕事を終えるや否やショボンさんの姿を求めてスタッフルームに押しかけた。今日一日無口でいたのは落ち込んでいたからじゃない。口を開いたら誰かに八つ当たりしてしまいそうだったから。そして、この怒りを今この瞬間まで保っておきたかったから。(´・ω・`)『やっぱり言ってくると思ってたよ。僕も君としっかり話しておきたかったからね』外食産業において料理長の権威は絶対。逆らったり口答えなんかしようものなら『黙って手を動かせ』の一言であしらわれるのが普通。ベッドの中ではドッ君も同じ台詞を吐く事もあるけど…今は関係ないね、ゴメン。とにかくあたしは自分の考えに自信を持っていたし、納得しないで大人しくしている性格でもないからさ。(#*゚∀゚)『当たり前です!! あたしは麺場担当になる事を…ドクオ君に追いつくことを目標にやってきました!! 技術でも経験でもブーちゃんに劣っているとは思っていません!! それなのにどうして、あたしよりブーちゃんが…!!』(´・ω・`)『うん。君が言う通りだと思う。僕も麺場の仕事で君が内藤君に劣るとは思えない』(#*゚∀゚)『…だったら!!』(´・ω・`)『それじゃ、逆に聞くけど君が麺場を担当するとして、内藤君のフォローのみでランチタイムをこなせると思うかい?』28 名前: ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/07(日) 00:09:55.29 ID:c9SnQmJu0それを聴いてあたしは言葉に詰まっちゃったよ。答えは否。ドッ君ならばそれも可能かもしれないけど、今のあたしにはそこまでの実力は無いからね。(´・ω・`)『さらに言わせてもらうと、君が麺場のメインになったら…ドクオのフォローは誰がやるんだい? 君の追い回しをしながらドクオのフォローもする。 内藤君には残念だけどまだそれほどの腕はないよ』ショボンさんは缶コーヒーに口をつけ、言葉を続けた。(´・ω・`)『麺場の動きが止まれば、ドクオは自分の手を止めてでも麺場の助けに入るだろう。 結果、鍋場の料理も出せなくなる。 どうだい? グチャグチャに混乱した厨房の景色が目に浮かばないかい?』ショボンさんが言うことはもっともなのだろう。(´・ω・`)『だけど、君なら出来る。内藤君とドクオ、2人のサポートを同時に出来る』それでも…それでも…。(´・ω・`)『それだけじゃない。 君なら内藤君のテンションを下げる事無く指示を出し、彼の実力以上の結果を引き出すことも可能だろう』…(´・ω・`)『内藤君・ドクオ2人の追い回し。 そう考えると君の不満はもっともだ。 でも僕は君を【ランナー】として。ランチタイムの厨房を掌握するポジションを君に期待しているんだよ』-----------------------------------------------------------31 名前: ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/07(日) 00:13:50.66 ID:c9SnQmJu0(*゚∀゚)『でしょ!? 大出世さ!! もう嬉しくってさ!! さっそくドッ君とお祝いしようって話になって…。 2人に報告するのも忘れちゃったよ!! それはゴメンよ!!』( ^ω^)『おっwwwおっwwwツーさん凄いおwww』ξ^ー^)ξ『そうね。おめでとう』(*゚∀゚)『いやいや、照れちゃうねコリャ。ありがとさん!!』( ^ω^)『で、ランナーってなんだお?』ξ゚△゚)ξ*゚∀゚)'A`)空気が凍った。3人に聞いた話だと、ランナーとは料理長直属のスタッフらしい。本来であればウェイターやウェイトレスからランナーに転身する例が多く、その仕事内容は料理の提供やホールの状況を厨房に報告する事。又、料理長の代役としててんてこまいの厨房内で作業指示を出す進行役を勤める事もある。ちなみにバーボンハウスでのランナーは的な意味合いが強く、厨房内スタッフを手足の如く使いこなして料理を作りあげ、それを今度はホールスタッフに指示を出して各テーブルに提供させる。エネルギッシュで嫌味がない性格でないと勤まらないであろう仕事であり、その意味ではツーさんは正に適役。先先代のランナーはショボンさんが新巻オーナーが料理長を兼任している時に勤めあげ、先代のランナーは現在バーボンハウス2号店で料理長をしていると言うから、ツーさんにとって『ドクオに追いつく』と言う目標への道が全く別の形で開けたと言っても過言ではないわけだ。33 名前: ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/07(日) 00:15:50.86 ID:c9SnQmJu0ξ゚△゚)ξ『はぁ…なんか心配して損したって言うか、安心したらどーでもよくなったって言うか』内藤、帰りましょ。ツンは僕の腕を引き、立ち上がらせながら言った。(;'A`)『や、やっと帰ってくれる気になったか!?』(;*゚∀゚)『忘れ物ないね!! 言っておくけど、私達これから一緒にシャワー浴びなおすから絶対ドア開けないからね!!』ξ゚△゚)ξ『…んな事しないわよ。明日じっくり話は聞くけどね』(;'A`)*゚∀゚)『…』ツーさんの言葉を証明するかのように、僕とツンが外に出た瞬間内側から鍵がかけられた。ドクオはともかくツーさんには悪い事をしたかもしれない。ξ#゚△゚)ξ『何よ、感じ悪いわね!!』( ^ω^)(そりゃそうだお・・・)34 名前: ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/07(日) 00:18:42.40 ID:c9SnQmJu0ドクオが住む社宅から僕とツンの家の方向は途中まで一緒になる。なぜか無言で歩くツンの横を僕は自転車を押しながら歩いた。僕らの正面には大きな満月が浮かんでいる。ξ゚△゚)ξ『…ねぇ内藤』ツンが意を決したように口を開いた。ξ゚△゚)ξ『あの2人見て・・・どう思った?』( ^ω^)『どうって・・・ツーさんのシャンプーの匂いがたまらんかったおwww』ξ#゚△゚)ξ『ドクオのシャンプーの匂いかもよ』( ^ω^)『それはちょっと勘弁だお』ξ゚△゚)ξ『・・・あたしはね、ちょっと羨ましかった。 同じシャンプー。同じベッド。同じ時間。あの2人はあたしには無い物を自然に持ってるから』( ^ω^)『おっwwwおっwwwおっwwwツンが乙女になってるおwww』ξ゚‐゚)ξ『・・・あたしだって女の子よ。あんな素敵な二人を見たら羨ましくなるわ』( ;^ω^)『(ヤバイ、地雷踏んだかお!?)え・・・と、ツンはどんな男がタイプなんだお?』ξ゚‐゚)ξ『タイプってのは無いんだけど・・・。ナヨナヨした男は生理的に受け付けないの。 侍みたいな人って言うか・・・。野武士のような王子様が理想ね』( ;^ω^)(侍? 野武士?)35 名前: ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/07(日) 00:23:54.58 ID:c9SnQmJu0それからまたツンは黙りこくってしまった。時折遠くの方で車が走っている音が聞こえる。ξ゚‐゚)ξ『・・・羨ましいのと同時に寂しくなったわ』別れ際、ツンが急に立ち止まり重々しく口を開いた。ξ゚‐゚)ξ『しぃにはギコさんがいる。ドクオにはお姉ちゃんが。お姉ちゃんにはドクオがいる。 でも、あたしは一人。お姉ちゃん。友達。妹。 当たり前の様にそばにあったものがいつの間にか無くなって最後はあたし一人になる。 そんな感じがして寂しいの。怖いの』ツンは伏し目がちに搾り出すように声を出す。相手が僕じゃなくても良かったのだろう。ただ、声にしたいだけ。声に出す事で自分自身の存在を確認しているだけ。それでも僕は。そんなツンがとても儚げに見えて。弱弱しく思えて。( ^ω^)『ツンには僕がいるお!!』叫んでいた。36 名前: ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/07(日) 00:29:40.64 ID:c9SnQmJu0突然大声を上げた僕をツンは目を見開いて見つめてくる。そんなツンの表情を見るのは貴重な体験だったけど、そんな事は微塵も気にならなかった。両手を離した自転車が大きな音を立てて倒れた。( ^ω^)『ツンには僕がいるお!! 例え僕が地球の反対に行っても!! 宇宙に行っても!! 恋人が出来ても!! 結婚しても!! 僕は・・・僕だけはずっとツンのそばにいるお!!』自分でも何を言っているか分からなかった。でも、ツンを見ていたら叫びたくなった。ツンは僕から目を離さず、2歩3歩と近づき・・・( °ω°)『ペレストロイカッ!!』みぞおちに強烈な正拳を撃ちこんだ。ξ゚△゚)ξ『ピザがカッコつけてんじゃないわよ』じゃ、あたしの家こっちだから。そう言って走り出す。少し距離が開いたところで振り返り叫んだ。ξ゚△゚)ξ『内藤!! でも今の言葉は悪くなかったわ!! 100点はあげられないけど合格点はあげる!!』( ;^ω^)『・・・そりゃどうもだお』ξ^ー^)ξ『また明日!! いつものコンビニで待ってるからね!!』何故だか跳ねる様に駆けていくツンの後姿を眺めながら( ;^ω^)『何がなんだか分からんお』僕はそう呟いた。
Jan 21, 2007
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244 名前:料理 ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/03(水) 01:05:36.75 ID:IQMDVcTq0 第9章 なかないで恋人よ( ´ω`)『僕はツーさんにとても悪い事をしたよね』ξ;゚△゚)ξ 『な…なによ、急に気持ち悪いわねっ!!』川 ゚ -゚) 『ツン、気持ち悪いはないだろう。常識で考えて』あの辞令が張り出された日。仕事を終えた僕はツンをバースペースに呼び出していた。( ´ω`)『あの辞令のことだお』ξ;゚△゚)ξ 『あぁ、それね』川 ゚ -゚)『話は聞いている。しかし、それはショボンにも考えがあっての事だろうしな』( ´ω`)『その考えが分からないお』僕はカウンターテーブルにうつ伏せる。( ´ω`)『僕なんかよりツーさんの方がずっと腕は上だお。 それにツーさんはずっと麺場に昇格してドクオに追いつくのを目標にしていたんだお。 それなのにツーさんを抜かして僕が麺場担当なんて…いい気分なわけないお』246 名前:料理 ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/03(水) 01:06:28.04 ID:IQMDVcTq0ξ゚△゚)ξ『あぁ、もう!! それでも金玉ついてるの!? そんなの気にしてるなら本人にそう言えばいいじゃない!!』( ;^ω^)『金玉とか言うなwww そうも考えたけど…ツーさんは僕の顔なんか見たくないはずだお』それを証明するかのようにツーさんは仕事を終えるとサッと帰ってしまった。ξ゚△゚)ξ『確かにねぇ…ったく。ツーも男らしくないわね!!』ツン。ツーさんは女性だお。ツンはちょっと困ったように髪をいじっている。川 ゚ -゚)『それならばドクオに相談してみたらどうだ?』( ^ω^)『ドクオに?』川 ゚ -゚)『うむ。ドクオはツーにとって憧れの存在なのだろう? ならばドクオに説得してもらうのだ。 この悔しさをバネにして頑張れ。とな』まさに天恵。( ^ω^)『それだお!! さっそくドクオに電話して…』携帯を尻ポケットから取り出しドクオの番号に発信する。…おかけになった電話番号は相手の方が電波の届かない場所におられるか…( #^ω^)『圏外だお!! この大事な時に何やってんだお!! これだから童貞はいやなんだお!!』僕は自分も童貞なのは棚に上げて歯軋りした。248 名前:料理 ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/03(水) 01:07:13.46 ID:IQMDVcTq0ξ゚△゚)ξ『圏外? それならきっと自宅よ。 電波が悪くて困るって言ってた事があるわ』( #^ω^)『あの野郎!! 人がこんなに急いでるのに自分は自宅でエロゲかお!! 許せん!! 今すぐ乗り込んで天誅を…』僕は席を立ち走り出…ξ゚△゚)ξ『落ち着きなさいピザ』…そうとして足をかけられ派手に転んだ。予想外の攻撃に受身も取れず顔面を床に強打する。川 ;゚ -゚)『今のは痛いだろう。常識で考えて…』( #^ω^)『な、なにするんだお、この暴力女!!』ξ#゚△゚)ξ『 黙 れ 豚 野 郎 』そもそもあんたドクオの家知ってるの?そう言われて僕は自分がドクオの家を知らない事に気づいた。鼻をさすりつつ床にあぐらをかく。( ;^ω^)『そう言われればそうだお。 クーさん、ドクオの家の場所知ってるかお?』川 ゚ -゚)『あぁ、あいつは社宅だからな。今地図を描いて…』ξ゚△゚)ξ『その必要はないわ。 あたしが一緒に行ってあげる』250 名前:料理 ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/03(水) 01:08:14.31 ID:IQMDVcTq0( ;^ω^)『マジで?』ξ゚△゚)ξ『マジで』( ^ω^)『そんなに僕と一緒にいたいのかお?』ξ#゚△゚)ξ『 思 い 上 が る な ピ ッ ツ ァ 』威嚇するように足を振り上げる。あ、そんなに短いミニスカートでそんなポーズしたら…( *^ω^)『…ピンクのチェック』蹴られた。ξ#゚△゚)ξ『バカな事言ってないで!! ついでにドクオに貸してるDVD水戸黄門全集返してもらいたいだけよ!!』そう言って軽い脳震盪を起こしている僕の腕をつかみ無理矢理立たせる。ξ#^ー^)ξ『それじゃ、クーさん。お先に失礼します』川 ;゚ -゚)『あ…ああ。お疲れ』ξ#゚△゚)ξ『ほら!! ちゃんと歩く!! また蹴っ飛ばすわよ!!』そう叫ぶツンに僕は引きずられるように店を出た。だから、僕たちを見送ったクーさんのこんな呟きを聞き取る事は出来なかった。川 ;゚ ー゚)『やれやれ』252 名前:料理 ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/03(水) 01:09:30.45 ID:IQMDVcTq0 ゴール直前の競走馬を煽る騎手のように後頭部を何度もツンに叩かれながら僕はバーボンハウス社宅アパートに到着した。白壁の3階建てマンションは新しいとは言いがたいものの管理が行き届いているのか、清潔そうな外見を保っている。( #^ω^)(バシバシ叩きやがって!! これ以上バカになったら犯してやるお!!)僕はそう考えたが、どう考えてもツンには勝てそうになかったので( #^ω^)(…これも全部ドクオが電話でないのが悪いんだお!!)そう思い直す事にした。ξ゚△゚)ξ『あそこ…2階の一番隅がドクオの部屋よ。自転車もあるみたいね』( #^ω^)『よし、乗り込むお!!』( #^ω^)(怨みはらさでおくべきか…こうなったら必殺【呼び鈴鳴らさずドア開けて乱入攻撃】だお!! 幼馴染の前でエロゲしながらオナヌーな自分の姿を曝け出すといいお!!)そう考えながら僕は階段を上り、ドクオの部屋の前に到着した。( ^ω^)『ドクオ、お邪魔するお!!』予定通りチャイムを鳴らさずドアを開ける。('A`)『…は?』そこで見たのは腰にバスタオルを巻いただけの姿で缶ビールを手にしたドクオ。そして玄関に丁寧に揃えられたどう見ても女性用のサンダルだった。255 名前:料理 ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/03(水) 01:10:35.81 ID:IQMDVcTq0 ('A`)『……』( ^ω^)゚△゚)ξ『……』予想していなかった展開に凍りつく僕ら3人。( ;^ω^)(なんかちょっと前もこれと同じような事があった気がするお?)均衡状態を解くかのようにドクオの腰のバスタオルがゆっくりと床に落ちる。瞬間ツンが動いた。ξ#゚△゚)ξ『 変 な も の 見 せ る な 』渾身の右ストレート。相変わらず腰のしっかり入った良いパンチだ。その一撃で我に返ったドクオがタオルを拾い上げ奥に逃げ込む。僕らは当然そのまま室内に上がりこんだ。 ('A`)『お、お前らなんでここに!!』( ^ω^)『さぁ?』ξ^ー^)ξ『大切な用件があったんだけど』( ^ω^)^ー^)ξ『 忘 れ ち ゃ っ た 』ツンの顔を見る。良い笑顔だ。今、僕とツンの心は1つ。共通の目的に向けて一直線だ。 ('A`)『な、なんだそりゃぁ!?』必死に前を隠すドクオ。普段より口数が多いのは気のせいではないだろう。260 名前:料理 ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/03(水) 01:16:34.47 ID:IQMDVcTq0 ( ^ω^)『ヘイ、ナンシー。玄関にあった靴を見たかい?』ξ^ー^)ξ『勿論よ、ジミー。ドクオに彼女がいたなんて初耳よ。友達のあたしに内緒なんて…おしおきが必要ね』( ^ω^)『おいおいナンシーwwwそれはちょっと早とちりしすぎなんじゃないか?僕はデリヘルでも呼んだんじゃないかと思ってるんだけどね』('A`)『お、お前ら何をワケの分からんことを…』自らのお宝を両手を使ってバスタオルで押さえているドクオの言葉を無視してツンは続けた。ちらと横の円形テーブルを横目で見た。そこには小さなケーキとワイングラスが2つ並んでいる。ξ#^ー^)ξ『ふふふ。どっちだって構わないわ。 私はドクオが一緒にささやかな昇格祝いをしようとしている方に ご 挨 拶 したいだけだから』ドクオもそのツンの言葉で僕達の目的に気付いたようだ。その場で床にへたり込む。('A`)『ちょ…待て、頼む!! 頼むから今日は帰ってくれ!!』当然の事ながらその希望は却下だ。( ^ω^)『オゥ、ナンシー。シャワーの音が止んだよ』ξ^ー^)ξ『あら、耳がいいのねジミー。楽しみに待たせてもらいましょうか』やがて、浴室の扉が開く音。ドクオは座り込み頭を抱えている。現れたのは。(;*゚∀゚)『ただいみ~♪ さっぱりしたぁ!! ドッ君なに一人で大騒ぎして……って、え!?』髪を薄いピンクのタオルで。体にはやはり薄いピンクのバスタオルを巻きつけただけの姿の…ツーさんだった。17 名前: ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/07(日) 00:01:04.96 ID:c9SnQmJu0(;*゚∀゚);'A`):^ω^)『……』鬼がいる。栗色の髪をしたツンという名の鬼。壁に伸びるその影が人外の者の姿をしているように見えるのは僕だけではない筈だ。僕ら3人は、その鬼の前で正座をしている状態だ。本来であれば僕が正座をする必要は無いのだが、空気を読まずツーさんに( ^ω^)『事前かお? 事後かお?』と質問したせいでめでたく正座組に名を連ねる事になった。ξ#゚△゚)ξ『ったく!! 心配して損したわ!!』ツンは一人悠々とベッドに足を組んで座り、僕らを見下ろしている。こんなに不機嫌そうなツンを見るのも久しぶりだ。 イライラを解消するかのように手にした携帯を玩んでいる。(;*゚∀゚)『心配? 誰の?』ξ#゚△゚)ξ『 あ ん た の よ っ ! ! 』(;*゚∀゚)『…? とりあえずサーセンwww』ξ#゚△゚)ξ『で、ドクオ。いつから付き合ってんのよ』('A`)『え…と…正式に付き合いだしたのは2ヶ月くらい前…』ξ#^ー^)ξ『 へ ぇ 。 2 人 と も 2 ヶ 月 も あ た し に 内 緒 に し て た ん だ 』ぎこちなく微笑むツンの右眉がピクピクと痙攣している。握りしめられた携帯は、圧力に負けメリメリと音を立てている様にまで見えた。19 名前: ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/07(日) 00:02:25.97 ID:c9SnQmJu0 ('A`)『い、いや、でも、それはツンには関係ないじゃ』ξ#^ー^)ξ『 関 係 な い ? 』組んだ足を戻し、ゆっくり立ち上がるツン。ヤバイ。ツンは本気だ。ツンの手にかかれば右手に持った携帯は十分立派な凶器になりえる。よく見ればアレは僕の携帯だ。(;*゚∀゚)『ちょwww待って!! 今のは言葉のアヤって言うか…』ξ#゚△゚)ξ『 お 姉 ち ゃ ん は ち ょ っ と 黙 っ て て 』( ^ω^)( ゚ω゚)( ゚ω゚ )ξ#゚△゚)ξ『こっち見るな』( ;^ω^)『だ、だって…姉妹? 確かしぃちゃんも…』ξ゚△゚)ξ『しぃは末っ子よ。バーボン3姉妹って言えばちょっと有名よ。知らなかった?』( ^ω^)『…全く知らなかったお…そう言えばしぃちゃんとツーさんは顔つきが似てる気がするお』
Jan 21, 2007
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207 名前:料理 ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/02(火) 23:24:22.15 ID:qvCnUHWG0(´・ω・`)『じゃ、そろそろ内藤君に炒めの基本を教えようかな』ランチタイムの喧騒も引いてきた頃、ショボンさんが言った。(´・ω・`)『洋食がオムレツに始まりオムレツに終わる…と言われる様に、 中華は炒飯に始まり炒飯に終わると言っても過言ではない。 まずは君の技量を見る為に1つ作ってみてくれないか? まずはドクオ。お手本を見せてあげて』ドクオは普段作っている様に手早く炒飯を作り上げた。ドクオが鍋を振るたびに米粒が宙に舞い上がる。それをお玉で掬い上げ盛り付けるまではあっと言う間だった。(´・ω・`)『うん。また腕を上げたんじゃないか? 次は内藤君。正直期待は全くしてないから緊張しないでほしい。』心臓が大きく鳴っているのが自分でも分かった。208 名前:料理 ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/02(火) 23:26:00.66 ID:qvCnUHWG0僕は初めてコークスの前に立っている。コークスとは、中華料理の命である超高熱を生み出すためのC字型のかまどだ。緊張するなと言われても手が汗ばむのが分かる。ガスの火をつけ、オイルポットから油を一すくい。割って溶いてある卵をお玉で鍋に流し入れ、長ねぎの微塵切りとご飯を投下。それから鍋を振ろうとして…( ;^ω^)(な…なんだお、この重さ!! こんなのをツーさんもドクオも使ってるのかお!?)鉄製の中華なべの重さは尋常ではなく、100均で買ったフライパンを愛用している僕には衝撃的だった。これ、銃弾でも跳ね返せるんじゃないか!?僕が全力で鍋を振るたび、ガス台の周りにご飯が飛び散っていく。( ;^ω^)(あ…あれ? 鍋底に卵が焦げついて…これはお玉で削ぎとるしか…)(´・ω・`)『うん。もうそれでいいよ』ショボンさんからストップがかかり、僕の鍋デビューはksmsな結果に終わったのだった。( ;^ω^)『簡単そうなのに…全然ドクオみたいに作れなかったお』(´・ω・`)『気を落とす必要はないよ。全く予想通りだったからね』ショボンさんがケロッと言う。少し…いや、かなり悔しい。(´・ω・`)『一般家庭の調理器具は概して洋食形式だからね。最初は僕だってこんなもんさ。 じゃ、サービスとして僕も作るから見ていてほしい』209 名前:料理 ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/02(火) 23:27:05.00 ID:qvCnUHWG0 (´・ω・`)が炒飯を作るようです1、白い煙が出るまで火力全開で鍋を焼きます。(´・ω・`)『こうする事で鍋についた目に見えない汚れを焼き取るんだ。油が馴染みやすくなるってのもある』2、オイルポットから油をお玉2~3杯鍋に注ぎ込みます。(´・ω・`)『たっぷりの油を使う事で鍋に油をしっかり染みこませるんだ』3、余計な油をオイルポットに戻し、卵と葱を入れます。(´・ω・`)『1人前につき卵1~1.5個位。葱は歯ごたえを楽しむ為最後に…って人もいるけど、好みでかまわない』4、ご飯を投下し、お玉の底で叩いてほぐします。(´・ω・`)『炒飯はご飯を卵がコーティングすると共に、ふわふわ卵でないと美味しくないんだ。 だから、卵が生すぎても駄目。固すぎても駄目。タイミングとしては超半熟のスクランブルエッグ。 5分程度火が通ったらご飯投下って感じかな ご飯を叩いてほぐすときは、力を入れすぎるとご飯が潰れちゃうからね。 あくまで【ほぐすために叩く】事を忘れないでほしい』5、中華用固形スープ(上湯)で味をつけます。(´・ω・`)『後で味を整えるから薄味でね。 塊になっている上湯を叩いてほぐしてあげてくれ』212 名前:料理 ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/02(火) 23:31:42.61 ID:qvCnUHWG06、ご飯を炒めます(初級編)(´・ω・`)『ここでの基本は鍋全体にご飯を広げながら炒める事。 これだけでも家庭で食べるくらいの炒飯は作れる。ただ最初は1人前づつ作る事。ご飯が多いと難しいからね』6、ご飯を炒めます(プロ編)(´・ω・`)『ご飯を鍋全体に広げるまでは同じさ。 鍋の振り方だけど、力は必要ない。 まず、鍋を軽く引いて手前を高く持ち上げるんだ。 自然と奥が下がって鍋のふちに火があたっているのが見えるだろう? そこにお玉の底を使ってご飯を押すようにすくい上げる。 勢いでご飯が宙に浮くけど、それは鍋を元の位置に戻すように動かせば散らばる事はない。 これを何度かやって直火でご飯を煽っては叩いてほぐしてやるんだ。これの繰り返しさ』( ^ω^)『勉強になりますお』(´・ω・`)『あとは塩胡椒で味を整える。香ばしい香りを出す為に鍋肌に醤油を少し垂らして2~3回鍋を振る。 これで完成。 ところで内藤君はJOJO好き?』( ;^ω^)『は?』最後の質問の意味が分からない。横を見ると、ドクオとツーさんが苦々しげに(;'A`);*゚∀゚)『また始まったよ…』とでも言いたそうな顔をしている。そんな2人を無視してショボンはポーズを決めた。勿論JOJO立ちで。216 名前:料理 ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/02(火) 23:35:00.51 ID:qvCnUHWG0(´・ω・`)『炒飯のリズムはぁぁぁぁぁぁぁぁぁ 幽波紋のリズムぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!! 今からそれを見せてやるぅぅぅぅぅぅ!!』料理長の顔つきが変わった。(`・ω・´) 『オラオラオラオラオラオラ!!』鍋を振る。(`・ω・´) 『ドララァァァァァァァァァァァ!!』ご飯を叩く。(`・ω・´) 『無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァ!!』鍋を振りご飯を叩く。(`・ω・´) 『URYYYYYYYY!! KHAAAAAAAAAA!!』( ;^ω^)『……』そうやって完成した炒飯は美しい金色をしていた。(´・ω・`)『ゼェゼェ…炒飯が…基本って言われるのは…ゼェ…こうやって… 短時間に…16ビートで…自在に鍋を動かすのが大切…だからさ。 炒めすぎると…ウップ…ぱさぱさで美味し…くないし、 炒めが足りないとベチャベチャ…ゼェ…する。 この金色の炒飯が…ウォェップ…出来るまで…毎日作るんだ…いいね ところで…だれか水くれないかな…』219 名前:料理 ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/02(火) 23:40:05.96 ID:qvCnUHWG0それから何日か僕はドクオの追い回しをしたり炒飯の練習をしたりの日々を送った。ドクオは相変わらず淡々と作っているように見えるが、僕はそのスピードに喰らいつくのが精一杯だ。( ;^ω^)『どうやったら…こんなに早く出来るんだお?』そう思って麺の茹で時間を計るタイマーを見ると本来90秒茹でる麺を45秒であげている。( ^ω^)『ドクオ。インチキは駄目だお。45秒しか茹でてないから麺が固いってクレームつくお』('A`)『大丈夫だ』( ;^ω^)『大丈夫って…おまwww』('A`)『麺を湯切りする際の麺自身の余熱。丼に移してからのスープの熱。提供するまでの時間。 これを考えると1分30秒は茹ですぎなんだよ』( ;^ω^)『こいつ…僕が必死でやっても全然追いつかないのに…そこまで計算してたのかお?』前にツンから僕とドクオとツンは同い年だと聞いた事がある。こいつは僕が遊び呆けてる間にいったいどれだけの料理を作ってきたのだろう。そんな事をギコさんに話すと、( ,,゚Д゚) 『今の心を忘れるな。体だけじゃなく頭もフルに動かせ。 そうすればいずれ背中くらいは見えてくるだろうよ』そう言われた。221 名前:料理 ◆RDnvhIU7bw [sage] 投稿日:2007/01/02(火) 23:44:33.21 ID:qvCnUHWG0ついに厨房内配置転換を発表する辞令がスタッフルームに張り出された。 辞令 ・伊集院ドクオ。 左の者をバーボンハウス本店鍋場責任者に任命する。 ・内藤ホライゾン。 左の者をバーボンハウス本店麺場担当に任命する。 両名及びスタッフは1週間後までに準備・体制を整え万全の姿勢で業務に励む事。 バーボンハウス本店料理長 ショボンツーさんは壁に貼られたその辞令を何度も何度も読み返していた。無言で立ちつくすその顔は心なしか青ざめて見えた。
Jan 19, 2007
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