いつものように稜真をあやしながら、
「パパだよ~。パパって言ってみな」
と語りかけていた。
「なんだよ、パパ」
稜真は眉間にしわをよせながら、めんどくさそうにしゃべった。
いきなりの言葉に
腰を抜かした。
「稜真、いつからしゃべれるようになったの?」
かみさんは目を丸くしながら聞く。
「ずっと前からだよ、ママ!」
生後1ヶ月半でしゃべれる稜真をみて、僕ら夫婦は大喜び。
「キャ~!稜真パパとママどっちが好き?」
「パパだよな」
「いやっ、ママだよね~、稜真!」
「パパもママもうるさいよ~、静かにしてよ!」
稜真の怒った目でにらみつけられた時、はっと目が覚めた。稜真は気持ちよさそうにすやすやと眠っていた。 夢だった。
なんとも奇妙な夢だった。赤ちゃんは欲望も意思もない純粋な目が美しい。しかし、その純粋な赤ちゃんがいきなり自分の意思というものを持つと、いかにも人間らしい稜真の目が怖かった。そんな怖い目を見てしまったあと、まだまだかわいい赤ちゃんでいて欲しい。
それにしても、稜真の成長はとても早い。大きすぎたベビー服も、最近はぴったりになってきた。体重は重くなり、抱っこしていると腕に疲れをかんじるようになった。なんといっても、 僕の夫乳を吸わなくなった ( 11.09日記 を参照)。父親と母親の乳首の違いが分かるようになってしまった。悲しい現実だが、父親として稜真の成長を認めなければならない。

