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ALL TOMORROW'S PARTIES
夢
僕がいつも遊びにいく近所の広い公園の原っぱの隅に生えている、
ただ一本の大きな木の陰に座り込んで、いつも彼女はいた。
長い髪と白いワンピース。
僕は彼女が好きだったのだろうか。
よくわからない。話をしたことさえない。
けれど、その姿は奇妙な幻影となって僕の心にいつまでも巣くっているのだった。
一度だけそこで友達とサッカーをしていたとき、ボールのコントロールが外れて
その木の方向に飛んでいってしまったことがある。
僕は一瞬彼女のびっくりしたような顔を目の端で認めたような気がして、嬉しくなって
勇んでボールを追いかけていった。
「ごめんなさい。そのボール・・・」
声を上げようとして飲み込んだ。
誰もいなかった。
ボールだけが転がっていた。
そしてあれからもう彼女は二度姿を現さなかった。
僕は自分が悪いことをしたような気になり後悔していた。
あれから二十五年。僕はまたその公園に立っているのだった。
懐かしくあたりを見回す。
風景はあの頃とまったく変わりなく、ここだけ時が止まっていたかのようだ。
そして無意識的に目はあの木の方向に向けられる。
ありえないことであった。
彼女は、そこに、いた。あの頃のそのままの姿で。
僕は衝動的に駆け出していた。
僕の身体は少年のあの日のように軽かった。
彼女が僕にきずいて顔をあげ、そしてゆっくりと微笑む。
「やっと、来てくれたのね。待ってたのよ」
僕は彼女の前に座り込んで、なんといっていいかわからずに、
彼女の姿を細部まで観察するように見た。
黒く長い髪、大きな瞳、小さく通った鼻に、同じく小さめの口。
白いワンピースはあの頃と同じで、下からのぞく足まで白く、細い。
ああ、僕は君のこの美しい姿を知っていた。
君をこうして見るのは初めてだけど、どうしてかな。
「君、今僕の事を待ってたって言ったよね。どういうこと。」
「わかってるでしょう。あなたはどうしてここに来たの?」
懐かしい、心地よい彼女の声に僕は金縛りにあったように動けなくなって、
控えめに動く彼女の唇をじっと見つめていた。
「わかるでしょう。」
「うん。そうだ・・そうだよ。僕は死んだんだな。ついさっき・・。」
「そうよ。」
「なんでだっけ?変だな、忘れちゃった。さっきのことなのに。」
「いいのよ。」
「それで僕は思うんだ。きっとこれは僕の夢だね。僕はずっとここで君と
話がしたいと思っていたんだ。だからこんな夢を見るんだ。」
返事はなく、今度は彼女の方が僕をじっと不思議そうに見つめる。
「そうなんだろ。」
彼女はそのまま静かに首を振った。
「違うわ。これはあなたの夢じゃない。これは・・・私の夢なの。」
「え?」
「この世界ってひとつだけのように感じるけど、そうじゃないのよ。
ねえ、これは誰かの夢じゃないかって感じたことはない?」
「さあ、生きてる時はそんなこと考えたこともなかったな。
けど今はわかるようなきがする。」
「きっとそうなの。あなたが私の夢にはいりこんだから私はここを動けなくなってしまった。
だから、ずっと待ってたのよ。ここで。」
「わからないけど、なんか好きだな。君の話ってまるで詩みたいで・・。」
「そんなんじゃない!」
突然彼女が大きな声を上げて立ち上がった。
「やめてよ!」
僕はびっくりしてあっけにとられる。
「ごめん・・怒ったの。」
彼女はそのまま数回大きく息をして、それからあきらめたようにまた座り込んだ。
「もう、行ってよ。」
「何で。せっかく会えたのに。いやだよ。」
「駄目よ。あなたが来たのでもう私の夢は終わり。私の夢の目的はそれだけなの。」
小さく嗚咽が漏れたような気がした。
泣いてるのだろうか?顔がよく見えない。
「お願い、行って。」
彼女の言葉があまりにも必死だったので、僕はいたたまれなくなって腰をあげた。
立ち上がって背を向ける。
「さよなら・・。」
彼女の声は聞こえないほど小さかった。
僕はそのまま歩き出し、途中何度か振り返ったがそのたびに彼女の姿が小さく、薄くなるような気がした。
僕はもう振り向くのはやめた。
そして考えていた。
僕の夢の目的はなんだろうか・・・・。
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