教育革命戦士 うるり

PR

×

プロフィール

無知の鞭

無知の鞭

カレンダー

バックナンバー

2026.05
2026.04
2026.03
2026.02
2026.01

カテゴリ

コメント新着

コメントに書き込みはありません。

キーワードサーチ

▼キーワード検索

2021.07.28
XML
テーマ: 哲学・思想(214)
カテゴリ: 哲学について
夏目漱石の夢十夜 第七夜の考察をしてみたい。

 私は、『夢十夜 第七夜』を考えるにあたってこの二人の意見から手を借りたいと思う。第七夜は人生に対する不安を含んだ夢であるだろう。行き先の分からない船に乗ってしまった不安が伝わってくる作品である。その船から飛び降りて落ちていく恐怖は、拠り所の無い人生を暗示しているようである。確かに「自分はますますつまらなくなった。とうとう死ぬ事に決心した」や「無限の後悔と恐怖とを抱いて黒い波の方へ落ちて行った」という表現からも自分の死への不安が描かれていることがよくわかる。ただ私がここで注目したいのは死の自覚ということである。二人の論からもわかるように第七夜においては「自分」がいま生きていることの不安やとまどい、さらには孤独な自分が描き出されているようである。これは漱石の死の自覚というものが根底にあるのではないかと私は考える。

 哲学者ハイデガーは人間存在の根本規定を<死への存在>となし、自己の存在の自覚を自らが死へと歩むものであることの自覚から捉えている。この思想における問題点としては自己の死は経験することのできないものであり、語ることのできないということである。しかし、第七夜における漱石の死への存在としての自覚は夢の中での体験として描かれている。すなわち確かに自己が死んでしまっては語ることができないが、こと夢の中においての自己の死を大いに語りうることができる。夢の中での現実とつながりを持っている自己の死通じて、現実において自己の死を自覚するという点に漱石の死の自覚があると思う。また「落ちて行く日を追いかけるよう」という「自分」の発言には漱石の死へと歩む自分が投影されているような気がしてならない。太陽はまさしく人間の一生としてとらえられており、東から上る時を人の誕生、西へ沈むことを人の死と考えることができるのではないだろうか。死の象徴となる太陽の沈む西へ「人生という船」が向かっている。これはすなわち死への存在が描かれているといえると思う。

 つまり、漱石は自己の死を現実のものとしてではなく、夢の中での死という比喩的表現によって自覚しているといえるのではないだろうか。
 まず内田百閒の物語に頻出する語がある。それは「土手」である。この土手はいわゆる境界であるだろう。現実とあの世を隔てるものという方がこれからの論の展開からするとよいと思う。土手があるということはそこには川がある。この『冥途』において、私は死んだ父を土手で見ている。ここからも土手があの世とこの世をつなぐ場として描かれていることがよくわかる。しかし、私たち生者にはあちらの世界をはっきりとみることができない、ただ夢の中の土手においてのみあの世とつながりを持っているのだろう。この『冥途』からは百閒が父の死を自覚していると受け取ることができるだろう。そして注目すべきはまさにここで生者と死者との間に交流が行われているということである。
 漱石には自己の死というものが描かれており、百閒では他者の死がとらえられていた。また、内田道雄が『漱石の持つ暗い混沌たる陰湿な内部世界が、恐らく百閒によっては嗅ぎとられ、彼の心中に同調波を起こしてゆき、やがてそれが「冥途」に結実する』というように百閒は漱石の死と文学を享受している。つまり百閒の作品には自己の死の自覚と他者の死の自覚が表れている。そのために死者が生者のうちに復活するような世界が作られているのではないだろうか。この世を超えた次元を、自己を死者の世界に介入させることで展開しているのだろう。だから、百閒の作品は単なる漱石の模倣とは言えず、自己の死を自覚した漱石の弟子であり、父という二人称的な死を経験した百閒だからこそなしうる世界観であるといえるだろう。








お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2021.07.28 16:30:06
コメントを書く
[哲学について] カテゴリの最新記事


■コメント

お名前
タイトル
メッセージ

利用規約 に同意してコメントを
※コメントに関するよくある質問は、 こちら をご確認ください。


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.

Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: