インディー(40)



これが、効を奏して
ほんとうに旨いリンゴのタルトができあがった。


話を天使の泡に戻そう。


ミディ・アプリ・ミディのそんな話をひとしきり、マスターとバレエオジサンとした。


そろそろ、ナオミをバレエオジサンと引き会わせないと!


奥のテーブルでグラスの底から立ち上る泡を見つめながら、しんみり話込んでいた二人をカウンターの方に呼び寄せた。


堰を切ったようにナオミとバレエオジサンのバレエ談義が始まった。


私たちの全く知らない振付師たちの名前の羅列。


お互いの好みを探り合っているようだった。


ちょっと噛み合ってないかな?

そんな感じだった。

私とヒロトは、静かにテーブル席に戻って、ボトルに残っていた少し気の抜けかけたテタンジェをまるで日本人のように
「マ、マ、一杯ドウゾ」
と注ぎ合って飲み干してしまった。


店を出て、三宮駅に向かう道でナオミ
「あの人は完全にクラシックバレエ派やったわー」

少し足元がふらついている。
(ヒロトが一緒の方が酔いの回りが早いのは当然のこと)


「ナオミは現代派?」
と私。

「そんな単純なものじゃないですけど・・」とナオミ。


「それじゃ、今日の引き合わせは、ファウルチップってとこかな?」


「でも、テタンジェ、うまかったッス!」
とヒロト。


しばし、3人沈黙。

「そろそろ、フリペ創刊号の編集会議をやらなきゃ!バレエ関係の文章書けた?」
と私。


「まだやけど、頭の中で構想はできあがってます!」


「ヨシ!それじゃあ、来週の週末、コート・ドールで編集会議だ!」

帰りのJR新快速の座席に座って、仲よく頭を寄せ合って眠りこけた二人をぼんやり眺めながら・・・

ただ一人、
口蓋に残ったテタンジェ、ブラン・ド・ブラン、1993の余韻を楽しんでいた・・


(つづく)


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