インディー(135)




河原町での電車待ちの間に、LOVE FMの藤沢常務の携帯に電話してみる。
運が良ければ、会えるかも知れない。

「もしもしー」
「やぁ、君が電話して来るなんて珍しいね」

「ええまあ・。今晩は何か予定入ってますか?」

「いや、自宅でくつろいでいるだけだけど・」

「お休みのところ、申しわけありませんが、ちょっと三宮あたりでお会いできませんか?」

「どんな用事?」

「ちょっとインディーズ新人の紹介をさせていただきたいと思いまして。本人も連れて行きますけど・」

「あ、そう。何時ごろ?」

「9時ごろは、いかがでしょうか?」

「いいよ。インディーズ新人ってことなら、放送作家の伊原君にも声かけてみるかな?」

「ありがとうございます。場所はいつものBONOでよろしいですか?」

「いいよ。それじゃ、伊原に連絡しておくね」

と言って、プツリと切られた。

「アポ取れたの?」

「聞いての通り」

「ウワ、なんかうれしい」

さっきまでの愚痴はどこへ飛んだのやら・・

「まずは、802に行かないと。」

梅田に向かう特急の中で、藤沢常務のことについてユキが、根掘り葉掘り、質問を始めた。


「藤沢常務ってどんな人?」

「はったりオヤジ」

「どんな風に?」

「自分は天皇家より由緒のある千家の血を引いているとか、江戸時代は千町の田畑の領主やったとか、かましまくり」

「あんたとは正反対やね。千が好きみたいやから、千ちゃんて呼ぼうかなあ」

「ハハハッ!ドラゴンズの監督とだぶってしまうから、イマサン」

「ええやん。藤沢常務なんて呼ぶのめんどくさいし。千ちゃんとどうやって知り合ったの?」

「今晩行くBONOっていうバーでね。だから、弱いコネだよ」

「ふうん」

「もう、3年くらい前になるかなあ。オレがBONOに自作の花ズッキーニを持ち込んでいたんだよね。そのころ、BONOにはアキチャンていうかわいい女の子がいてね。彼女に食わせてやろうと思って朝取りの花ズッキーニを持って行ったわけよ」

「それで?」

「そしたら、BONOのマスター、やっさんて言うんだけどさ、客として来てた藤沢常務と伊原さんに出しやがってさ」

「ふうん」

「藤沢常務、わずか1分ほどで平らげて、一言、うん、うまかった、それだけ」

「ハハハッ!じゃあ、アキチャンは花ズッキーニは食べずじまい?」

(つづく)




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