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さて、今日は昨年の暮に掲載した「Meteorus属の1種(コマユバチ科ハラボソコマユバチ亜科:繭)」の続きとして、その繭から羽化したコマユバチを紹介することにする。羽化したギンケハラボソコマユバチ(写真クリックで拡大表示)(2011/12/15) そのコマユバチを、Entomological Society of Canada<カナダ昆虫学会>のサイトにある「Hymenoptera of the World<世界の膜翅目>」と、Maeto Kaoru(前藤 薫)氏の「Systematic Studies on the Tribe Meteorini (Hymenoptera, Braconidae ) I~VII<Meteorini族の分類学的研究(膜翅目、コマユバチ科)>」を使って科から検索した結果、コマユバチ科(Braconidae)ハラボソコマユバチ亜科(Euphorinae)に属すギンケハラボソコマユバチ(Meteorus pulchricornis)であることが判明した。 しかし、科から種までの検索は、かなりややこしく、また、証拠写真も多数を必要とする。其処で、今日は蜂の生体写真のみを載せ、種の検索については別の機会に譲ることにした。冷蔵庫から出した直後のギンケハラボソコマユバチ一見死んでいる様に見えるが、直ぐに起き上がる(写真クリックで拡大表示)(2011/12/16) 羽化したのは、前回の繭の写真を撮ってから9日後の12月14日、体長約4.5mm(産卵管鞘を含まない)の繊細なコマユバチであった。 こうゆう小さな虫は、以前紹介した「アブラバチの1種(その2)」の様に、カーテンに留まらせて撮ることも出来るが、虫が小さいので、カーテン地の網目が何とも目障りになる。其処で、管瓶に入れて冷蔵庫に放り込み、よ~く冷やして動けなくし、室温に戻して常態に回復する時を狙って撮影した。横から見たギンケハラボソコマユバチ繊細な姿と長い触角が魅力的(写真クリックで拡大表示)(2011/12/16) 2番目の腹側から撮った写真は、冷蔵庫から出した直後で、殆ど死んでいる様に見える。しかし、20秒ほど(測定はしていない、単なる印象)で起き上がってしまう。ヒラタアブ類は、もう少し時間がかかり(分単位)、飛び出す前に身繕いなどするので撮り易いが、こう云う小さい虫は、回復が非常に速い。体重は体長の3乗、表面積は2乗に比例するので、小さい虫ほど速く冷えるし、速く暖まるのである。正面から見たギンケハラボソコマユバチ複眼に毛が生えているのが見える(写真クリックで拡大表示)(2011/12/15) 起き上がっても、脚がシッカリして居る訳ではない。それでも、動かない脚を引きずる様にして(下の写真の右前肢付節)移動し始め、やがて翅を開いて飛んで行ってしまう。しかし、完全に回復してはいないので、近くに留まったりして再捕獲。 見失ったこともあるが、暫くすれば明るいカーテンの方に行くので、心配は要らない。また管瓶に入れられ、冷蔵庫行き。その後、半日以上は入れておかないと、立ち所に回復してしまい撮影する機会が殆ど無い。今日のコマユバチ成虫の撮影には、何と4日もかかったのである。脚がチャンと働かなくても動き出し、直に飛んで行ってしまう(写真クリックで拡大表示)(2011/12/18) こうゆう小さなコマユバチには見ていて綺麗だなと思う種類が多い。幼虫は内部捕食寄生性だから、まァ、生態はオドロオドロしいとも言えるが、最後は綺麗な成虫に成長する。別に色彩に富んでいる訳ではない。しかし、体全体と言うか、姿が美しい。横からの写真をもう1枚(写真クリックで拡大表示)(2011/12/16) 前掲の前籐氏の論文に拠れば、このギンケハラボソコマユバチは日本で最普通種の一つとのこと。東京都本土部昆虫目録にもチャンと載っている。しかし、"ギンケハラボソコマユバチ"をGoogleで画像検索しても殆どヒットしない。一方、学名で検索するとそれよりもずっと多い写真が出て来る。本種は、日本全国、欧州、土耳古の他、世界の様々な地域に分布するらしい。 和名での検索がヒットしないのは、写真を撮っても種類が分からないのでお蔵入り、或いは、「コマユバチの1種」としてしか掲載されていないからだと思われる。現に、昨年もう一つのWeblogで紹介した「お知らせ+コマユバチ科の1種(Braconidae gen. sp.)」は、写真の解像度が低いので検索は出来ないが、本種に非常に良く似ている(但し、縁紋や後腿節先端の色は多少異なる)。蜂が脱出した繭(脱殻)。カパッと蓋が開いた感じ(写真クリックで拡大表示)(2011/12/14) また、前掲論文に拠れば、本種はコブガ科、ヒトリガ科、ドクガ科、シャクガ科、ヤガ科、カレハガ科、アゲハチョウ科、シジミチョウ科、タテハチョウ科等の幼虫に寄生することが報告されており、広く鱗翅目の幼虫一般に寄生することが出来ると考えられている。 その為、世界的に鱗翅目害虫の駆除に天敵としての利用が研究されており、また、本種が産しない国では、外国からの導入も検討されている様である(既に米国に導入されている)。我国でも、本種が最近被害の多いオオタバコガの有力な土着天敵の一つであることから、飼育の容易なハスモンヨトウを使って増殖させ、オオタバコガの駆除に利用しようと云う研究がある(農業・食品産業技術総合研究機構-平成10年度四国農業研究成果情報)。
2012.01.15
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正月の掲載も一応済ませたので、これから一昨年~昨年に掛けて撮影した虫を紹介しようと思う。 先ず、最初はクロヒラタアブ(Betasyrphus serarius)の飼育幼虫。クロヒラタアブはこれまでに、幼虫~成虫を2回(此方と此方)も掲載しているが、幼虫の詳細な形態についてはまだ触れていない。其処で、今回はその幼虫の形態についての詳細を紹介する。 実を言えば、本当はクロヒラタの幼虫を飼育するつもりなど無かったのだが、一昨年の12月に掲載した「ヒメナガカメムシの幼虫」を飼育して居た時、餌として与えていたコスモスの花(幼虫はその種子から吸汁していたものと思われる)に付いていたのである。 クロヒラタの幼虫は、コスモスの花に付いていた極く僅かのワタアブラムシ(多分)を食べていたらしい。しかし、直ぐに餌が無くなり、1頭が11月の中ごろ、餌を探しに飼育箱(100円ショップのパン・ケース)の内壁に現れた。其処で早速、シャーレの中に入れ、コナラの葉裏に付いているアブラムシを与えて飼育した。 そのカメムシの幼虫は、始めは正体不明なので飼育して居たのだが、「カメムシBBS」に問い合わせたところ、超普通種のヒメナガカメムシであることが分かった。ヒメナガの幼虫では飼育しても面白くないので逃がしてやろうと思い、コスモスの花殻を分解しながら探している時、更に2頭のクロヒラタの幼虫を見つけた。全部で3頭もの幼虫がコスモスの花に潜んでいたのである。クロヒラタアブの幼虫(3齢=終齢)腹部にやや不明瞭な白黒の模様がある右が頭、左の黒い突起は後気門(写真クリックで拡大表示)(2010/12/10) 写真の幼虫は、その後から見つかった幼虫の内の1頭である。その時は、色々な虫を飼育していてシャーレの不足を来していたので、2頭を一緒に飼育した。餌のアブラムシは充分与えてあったのだが、或る時、幼虫を探してみると1頭しか見当たらない。よ~く調べて見ると、皺クチャになったクロヒラタの幼虫が見つかった。何と、共食で1頭になってしまったのである。残った1頭が写真の幼虫だが、共食いの後、急に大きくなった。 この時、他にもヒラタアブ類の幼虫を飼っていたのだが、彼らは一緒にしても共食いなどしなかった。クロヒラタの幼虫は、かなり凶暴と言える。尚、ヒラタアブ類の幼虫が共食いをするのは珍しいことではないらしく、フタスジヒラタアブ(フタスジハナアブ)は共食いばかりでなく、鱗翅目の幼虫や蜘蛛まで補食するとのこと(昆虫写真家新開孝氏の「昆虫ある記」に拠る)。横から見たクロヒラタアブの幼虫腹脚に似た構造が認められる上の写真とは反対に左が頭部(写真クリックで拡大表示)(2010/12/10) 此の連中の幼虫期は3齢しかないので、これは終齢=3齢幼虫である。体長は約8.0mm、体が柔らかいので縮んだ時と伸びた時ではかなりの差が出る。 見つけた時は、体長5~6mmで、体の白黒の縞がもっとハッキリしていた。しかし、大きくなるにつれ、次第に白い部分が黄褐色を帯びて来て、写真を撮った時点(2010/12/10)では縞模様がかなり不明瞭となってしまった。斜め上から見たクロヒラタアブの幼虫(写真クリックで拡大表示)(2010/12/10) 横から見ると(2番目の写真)、白黒模様が体節ごとにあるらしいことが刺毛の分布から分かる。G. E. Rotheray著「Colour Guide to Hoverfly Larvae」(Dipterists Digest No.9、1993)に拠れば、ハナアブ科(ヒラタアブはハナアブ科Syrphidaeヒラタアブ亜科Syrphinaeに属す)の幼虫は、胸部は3節、腹部は8節なのだが、皺が多くて何処が体節の境目なのか良く分からない。 腹側には、芋虫毛虫の腹脚に似た構造が見える。同書に拠れば、一般にハナアブ科の幼虫は腹部の第1から第6節に歩行器官(locomotory organ)を持つとのこと。今まで撮影したヒラタアブの幼虫には写っていないが、隠れて見えなかっただけなのであろう。今度飼育する時は、一度ひっくり返して歩行器官を見てみよう。真っ正面から見た先頭部分.黄褐色の突起は前気門で前胸にある頭部は中央下の黒っぽく見える部分で小さい(写真クリックで拡大表示)(2010/12/10)少し斜めから見たクロヒラタアブの先頭部分(写真クリックで拡大表示)(2010/12/10) 先頭部を見てみると、黄褐色の眼、或いは、角の様なものが1対ある。これは前気門で、第1胸節(前胸)にある。マガイヒラタアブの幼虫では明確であった Antenno-maxillary organ(和名不詳.antennaは「触角」、maxillaは「小顎」乃至「上顎」の意だが、機能的には触角に相当するものであろう)は、中央部下側のやや黒っぽく見える部分にあると思われるが、上の2枚の写真からは何処にあるのか良く分からない。この辺りは頭部である。 口器は何処かというと、主要部は体の中に入っており、この黒っぽい部分の下側から出てくるものと思われる。この幼虫の捕食中の様子は、別の機会に詳しく紹介する予定である。クロヒラタアブの後気門.全体に黒くて詳細が良く分からない上から順に、ほぼ真上、斜め横、真後ろから撮影(写真クリックで拡大表示)(2010/12/10) 最後は、後気門の写真。後気門の形態は分類の指標になるので、3方向から撮ったが、全体に黒くて詳細はよく分からない。一番上はほぼ真上から、中央は斜め横、下は水平に近い真後ろから撮影している。尚、後気門の右に見える丸く黒いものは単なるゴミで、幼虫の付属器官ではない。
2012.01.11
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正月三箇日中に新春初の掲載をしようと毎日カメラを持って庭をうろついていたのだが、適当な被写体が見つからない。植木鉢の下を探せば何か居るだろうが、新春の記事にコウガイビル(例えば此方)やヤケヤスデ(例えば此方)の様な虫を載せるのは幾ら何でも気が引ける。 3日目の昼過ぎに、諦めて部屋に入ろうとした時、入口の壁の上を這っているヒゲブトハムシダマシを見つけた。この虫は以前紹介したことがある。だから、単純な重複掲載にならない様、今度は顔の辺りでも超接写してみようと思い、早速管瓶に入れて冷蔵庫に放り込んだ(動きを止める為)。 しかし、台紙の上で撮影するのは味気ない。其処で、台紙の代わりに蕗の葉を取って来た。その葉裏に何かが付いている。一応調べて見ると、ゴミや脱皮殻ばかりだったが、葉裏ではなく葉柄にクモガタテントウ(Psyllobora vigintimaculata)が1頭、チョコンと留まっているのに気がついた。こんな風通しの良い所で越冬しているとは一寸以外であった。蕗の葉の葉柄横に隠れたつもり?のクモガタテントウ体長は2.25mmと非常に小さい(写真クリックで拡大表示)(2012/01/03) クモガタテントウは、2009年の正月にも掲載している。それ以前にも、「成虫」、「前蛹~成虫」を掲載しているから、このWeblogでは原則的に禁止している重複掲載も甚だしい。しかし、これまでのコメント欄に「重複掲載大歓迎」と書き込まれた読者も少なからず居られるし、ヒゲブトハムシダマシの顔(かなり恐い顔)よりはクモガタテントウの方がずっと可愛く、多少は正月向きと思い、敢えて重複掲載することにした。警戒してジッとして居るクモガタテントウ胸背は透明なので顔が見える(写真クリックで拡大表示)(2012/01/03) 実は、クモガタテントウはもう一つのWeblogの方にも掲載している。超重複掲載とも言えるが、此方のWeblogでは余り虫自体については書いていないので、少しこの虫の所属や来歴等に付いて書くことにする。 クモガタテントウは、テントウムシ科(Coccinellidae)テントウムシ亜科(Coccinellinae)カビクイテントウ族(Halyziini=Psylloborini)に属し、キイロテントウ、シロホシテントウ、シロジュウロクホシテントウ、稀種のアラキシロホシテントウ等と同族である(文教出版の「テントウムシの調べ方」によれば、日本産カビクイテントウ族は今のところこの5種のみ)。族名にある様に、アブラムシなどを食べる捕食性ではなく、食菌性のテントウムシで、ウドンコ病菌を餌とする。歩き始める直前のクモガタテントウ前翅(鞘翅)が少し開いている暖かければ飛ぶのかも知れない(写真クリックで拡大表示)(2012/01/03) クモガタテントウは在来種ではなく、帰化昆虫である。「テントウムシの調べ方」に拠ると、最初に発見されたのは1984年で原産地は北米、国内での分布は「日本各地」となっている。 最初に文献として報告されたのは、佐々治寛之(1992)「日本から最近新しく追加されたテントウムシ類」(甲虫ニュース、100、10-13)とのこと。だから、それ以前に書かれた図鑑には載っていない。 日本には、カイガラムシ類の駆除の為に導入されたベダリアテントウやツマアカオオヒメテントウの様な種もあるが、クモガタテントウが日本に侵入した経緯については情報が見つからなかった。斜め上から見た警戒中のクモガタテントウ(写真クリックで拡大表示)(2012/01/03) 写真のクモガタテントウの体長は約2.25mm(3桁の測定精度はないが、2桁以上はある)、これまで掲載した個体は2.5mm、2.3mmなので、今日の個体が一番小さい。 葉柄に留まっていたとは言っても、葉裏に近い日陰の部分なので、葉をひっくり返して写真を撮ろうとすると、葉柄と葉の付け根に逃げ込んだ(最初の写真)。 ストロボを焚き始めると、今度は葉裏の上を逃げ出した。葉を動かすと警戒して止まる。其処で撮影、暫くしてまた逃げ出す、葉を動かして止める、撮影・・・これを数回繰り返して何とか撮影を完了。 その後は、「お疲れ様でした」と言って、切った蕗の葉の隣の葉に戻してやった。蕗の葉裏を歩き回るクモガタテントウ.眼の下から横に拡がっているのは触角で、カビクイテントウ族の形をしているその下の斧の形をしたものは小腮鬚(写真クリックで拡大表示)(2012/01/03) 最近は、標本にして細部を検討しないと種が分からない双翅目(蚊、虻、蠅)や膜翅目(蜂、蟻)を撮ることが多い。かつて散々虫を殺して標本にしたので、今は出来るだけ殺したくない(虫屋も「殺す」とは言わず「絞める」と言う表現を使うことが多い)。このクモガタテントウの様に、見て直ぐ種の分かる虫に出合うとホッとする。 尚、撮影は3日の午前なのだが、3日の午後は色々と用があって、掲載は今日(4日)の夕方になってしまった。三箇日中には掲載出来なかったことになるが、調べて見ると、これまで三箇日中に掲載出来たのは2008年(元旦「ニホンズイセン」)ただ1度だけであった。
2012.01.04
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