2004/09/28
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●【屋久島1】嵐の出立、屋久島上陸。~ツアラーがトラベラーになるとき~

■天が決める旅

2004年は、どうやら天災が起こる年みたいだね。
日本列島のあちこちでこんな訳知り顔の会話がささやかれる中、
ホトケ(夫)とわたしは、念願の屋久島旅行へと出発しました。
いい気フェチ、大木フェチの私たちにとって、屋久島はかねてから憧れていたパワースポット。
宮崎アニメ「もののけ姫」にインスピレーションを与えたとされる、太古の森が息づく島です。
それってオキナワ?と思っている方のために一応お伝えしておくと、
屋久島は鹿児島県に所属するまあるい島で、人口は1万人強。


ジェットやヘリコプターを使わない人のためのアクセス方法としては、
鹿児島から航空機、または高速船かフェリーでわたるのが一般的。
私たちが申し込んだB旅行会社のフリープランツアーでは、
東京から鹿児島までを空路、
鹿児島から屋久島間を高速船で移動するという手段が選ばれていました。
台風が来た場合はどうなるのか、ということにはほとんど触れないままに。

屋久島を含む鹿児島という場所は、
よく知られているように台風の通り道となりやすい地域です。
私が10年前に2年ほど鹿児島市内に住んでいたときも、
家屋の屋根がまるごと飛ばされ、
電信柱が倒れて長時間に渡って停電した街の光景を見たことがあります。

代金を支払う際に、旅行カウンターのお姉さんに聞いてみました。
「台風が接近している場合、このツアーはどうなるんでしょうか?」
ちなみに私は、フリープランを使っての旅行は今回が初めてでした。
「当日の朝、羽田からの出発便が飛べば旅行は催行、飛ばなければ中止になります」
「(けっこうアバウトやなー)ははぁ、事前には分からないのですね」

お客様が勝手に飛ばないと判断されても、実際に飛んだ場合は払い戻しできません」
「(笑。きっとトラブルが多いんだなー)分かりました。天が決める旅、か~」
運まかせ。天まかせ。
そんな旅があってもいいか。
私たちはそれ以降、まともに天気予報を見ることもなく、9月28日の出発日を迎えました。

着いてからの旅程だってすべて天候次第だからとほとんど決めず、
旅行の前日になって、やっと専門のガイドブックを買ったくらいです。
ただでさえ雨が多いと言われる屋久島なので、万全の雨対策はどの道必要。
あれこれと気を回さなくてもいい旅になる予感がしていたし、
どんなことになっても満足に違いないという確信がありました。
ただし怪我だけはしないように。注意していたのはそれくらいでしょうか。

今回の旅の目的は、もちろんパワースポット詣でだったのですが、
ふたりにはそれぞれ固有のテーマがありました。
まさずぅ「子どもに還ろう」
ホトケ「山写真家として発芽」
でも望んでいることはまったく同じで、
ともに屋久島の自然に抱かれて、呼吸ができたら、それでいい。
必要な内的変化は自分の中で必ず起こる。
だから、屋久島はそのきっかけを与えてくれるだけでよかったのです。
初訪の旅行者にこんな期待を抱かせることができるのは、
屋久島という場所ならではの魅力なのかも知れません。

■ホトケの気付き

いつものことですが、旅立ちの前夜はいつも深夜まで準備に追われる我々。
寝不足のまま羽田行きの電車に飛び乗ると、通勤ラッシュの真っ只中でした。
4泊5日の行程で、山登り装備に撮影機材まで持ったふたりは、当然のように大荷物です。
空港まで約1時間半。
肩身の狭い思いをしながら汗をかいていたホトケが車内で忘れものに気が付いたとき、
私たちは乗換えを終え、出発してから30分ほどの時間が経過していました。
「デジカメの防水プロテクタ、忘れた…」
「!?」
なんとなんと。
それは屋久島での雨天撮影に備えて、方々手を尽くして取り寄せた一品ではありませんか。
しかも出発直前に急遽手配して、滑り込みで入手できたもの。
届いたときはあんなに喜んでいたのに、それをうっかり忘れますか~!?
取るべき手段を冷静に考えるために途中下車しようかと思いましたが、
なぜか涼しい顔(に見えた)の本人にその意志はなく、電車は空港を目指してまっしぐら。
わたしは混乱してしまいました。
(あなたの心の中で、いったいどういう処理が行われているの?)

実は前前日には、地下鉄の駅でコンタクトレンズを紛失していたホトケ。
家にスペアがないこともあって、あきらめきれずに構内を探すわたしに対して、
このときも本人は週明けの月曜に眼科へ行って仮のレンズを借りるよ、と見切りが早かったのです。
念願の屋久島旅行を前に、可能な限り万全の態勢をとろうとしていたわたしには、
ホトケのこだわりや対処の仕方は、少し軽すぎるように思えました。
はがゆい気持ち…というのかな。

空港には結局、指定の集合時間よりかなり早く到着したため、
落ち着いて話そうとベーカリーカフェに入りました。
そこで、トラブルが起こってもそのときできるベストを選択しようとするわたしと、
まず冷静になって、マイナスにフォーカスしないホトケの姿勢の話になりました。
最低限の装備で無人島でも生きていけるであろう彼は、
「なくても平気」という独自の美学を持っています。
それはすてきなことだけど、「足るを知る」というのとは、少し違うのです。
人のことにはことのほか熱心なのに、自分のことは何でも後回しにしがち。
わたしは、彼のそんな欲の薄さのようなものがずっと気になっていたのでした。

人は脳で想像したことを、未来に現実化する動物です。
自分にとって最高の状態や、
これ以上ないほどのうれしい状態をイメージすることがなければ、
そんな未来は決して訪れません。
ホトケは徳がある人なので、驚くような不運に恵まれることはそうそうないでしょうが、
「なくても平気」という、
ある意味「欠けた状態を肯定し、積極的に受け入れる」メンタルなたたずまいが、
彼が成長していく上での壁になっているような気がしました。
正直な気持ちを話していく中で、ふたりとも
最もうれしい状態をイメージし、求めることの大切さや、
自由な発想にブレーキをかける内的要因に気が付くことができました。
防水プロテクタという忘れ物は、
このカフェの時間を与えるためのきっかけだったのかも知れません。
私たちは、時間どおりにやってきた航空機に乗って、
晴れやかな気持ちで鹿児島へと飛び立ちました。

■上陸危うし!?

鹿児島空港は、南国を思わせる空港です。
降り立つとすぐ、フェニックスやガジュマルといった亜熱帯植物が迎えてくれます。
9歳だったわたしが初めて家族と一緒に鹿児島空港を訪れたときも、
横浜とは違う、その温かさに驚いたことを覚えています。
市街地に位置する港へは、高速を走るリムジンバスに乗って約1時間の移動となります。
鹿児島本港から高速船のトッピーを使って、約3時間の船旅で屋久島へ上陸、となるはずでした。
バスからタクシーを乗り継いで港へ着くと、なぬ!?
トッピー欠航との表示が。
沖縄方面から台風が近づいているため、途中の種子島までしか行かないというのです。
聞けば波の高さ3mで欠航になるとのこと。
そういえば、空港に着いたときは青空だったのに、
すでに雨粒が落ち、台風らしい風も吹き始めています…。
しかしワタクシmasazuu、編集稼業丸5年。
こういうときは、普段お花畑を浮遊している脳が仕事脳へと切り替わり、
なぜか冴え冴えと活躍してくれます(笑)。
というか、旅行ガイドブック編集で鍛えた情報収集力を役立てるのは、
こんなときでなくていつだというのでしょう(笑)。
傍らでは、鹿児島まで携帯を追いかけてきた会社からの
ややこしい電話対応に追われているホトケ(気の毒…)。
波のためにフェリーも出ない、となると、島への可能性が残るのは飛行機のみです。
「欠航証明書を出しますから、詳しくは旅行会社にご連絡ください」
と港の女性が言えば、
「この分だと明日も船は出ないと思うよ。今日は市内に泊まるんだね」
と観光案内所のおじいちゃん。
いえいえ。まだ日も高いのだから、なんとしても本日中に屋久島入りしておきたい…!
旅行会社から当日の連絡先としてもらっていた電話番号は
レコーディングされた音声電話で意味がなく、
何ヶ所かの電話に掛けてつないでもらって、ようやく
まだ飛んでいた鹿児島空港発屋久島行き飛行機の予約を入れてもらいました。
飛んでいてよかった…。
船より飛行機が島へのアクセス手段として確実なんだと知った瞬間でした。
空港へのとんぼ帰り。
もちろん費用はすべて自前。
移動する前に港に電話して、船の確認をしておけばよかったのですね~。
羽田からの便が飛んだので、安心してしまっていました。

旅行会社のツアーを利用すると、お膳立てされている分だけ、変更等のリスクには対応しにくくなるのかな。
旅の勘が鈍くなるというか。
例え旅行会社のお世話になったとしても、
一つひとつを自分で選択したことを意識する旅のほうが、充実感が高いような気がする。
だからあくまでツアラーではなく、トラベラーでいることが、旅を楽しむ秘訣なのだと思います。
レンタカーや現地のガイドさんは自分たちで手配していたので、
連絡等の手間はありましたが、おかげで旅を作る楽しみを経験することができました。

屋久島行きの飛行機は、
きれいな客室乗務員さんが2名も乗っていることが不思議なほど小型でかわいい機体でした。
約40分の空中遊覧。
海上の波は思ったより穏やかで、海は青く、南国の島へ行くのだという気持ちを高めてくれます。
小さな小さな屋久島空港に初めて降り立ったとき、
むっとする湿度の高さが印象的でした。
きっと台風が近づいているからでしょう。
とにかく無事に上陸できたことに喜びながら、
レンタカーの受け渡しを終え、いよいよ島内散策に出発します!

(続く)





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最終更新日  2004/10/06 09:54:51 PM
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