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人工知能が2040年に中国でしでかす「あること」について本を書く準備をしています。(小説という形式になるでしょうね。) 「ハーバード・ビジネス・レビュー」誌の小論文を掲載した本書から若干抜き書きしておきます。『人工知能 機械といかに向き合うか』(ダイヤモンド社、平成28年刊)≪上級の辯護士は法律を熟知しているが、法律のあらゆる細かい点を探求する専門家であることは稀である。彼らは労力の大半を新規案件の獲得――昇進に直結する実績と見なされることが多い――に傾けており、クライアントの懸命な相談相手として振る舞う。もし機械が法律文書を読み取って行動や議論の方向性を示すことができれば、彼らがそれ以外の仕事に向けられる余力は増えるだろう。このことは、その他の専門職、たとえば上級の会計士、建築士、投資銀行家、コンサルタントにも当てはまる。≫ (23頁) なんとまぁ、パートナークラスの辯護士の目下の主業務は “営業活動” かよ、とまずビックリです。≪(ある財務アドバイザーの言)台本を読むだけならばもちろんコンピューターにもできますが、クライアントを説得して投資額を増やしてもらうには、それ以上のスキルが必要です。現にわたしは株式仲買人というより精神科医のような役割を果たすこともしばしばあります。≫ (34頁)≪人間は前例のない状況でも、普通には利かないアナロジーを利かせ、見立てていく。1回や2回の経験からも即座に気づき、学ぶ、これは生命にとってのある種のサバイバルスキルといえる。≫ (52頁)≪AIは問いを投げかける力を持たない。人間の知性の源といえる「複数の視点から本質的なポイントを見つける」「コンテキストに合わせた現象の総合的な理解とその意味合い出し」というような広く深いパターン認識も期待するのは困難だ。」 (52~53頁) そうとも言えないんじゃないの? 人間だって、けっきょくは「あてずっぽ」「下手な鉄砲」の積み重ねでやってるだろう。≪これまでは人間の手で現実世界の森羅万象の中から変数を取り出し、それをコンピューターに与えていた。たとえば、ビールの売上と気温の関係を重回帰分析するとしよう。このときは気温が変数だが、気温ではなく湿度や曜日を変数に置くことも考えられ、何を変数に定めるかは個人の判断で変わる。人間の勘と経験に依存していたともいえる。機械学習ではこうした変数を「特徴量」と呼ぶ。特徴量に何を選ぶかで予測、分類、回帰、分析の精度は大きく変化する。人間のばあい、同じ作業を何度も繰り返すなかで適切な特徴量を決めるコツをつかむ。同様の作業を視覚でもやっており、子供のころから目の前に何があるかを理解するためにさまざまな特徴量を無意識のうちに導き出している。従来のコンピューターは、何が特徴量かを自発的に構成することができなかった。これが機械学習における最大の問題であったと言っても過言ではない。そうしたなか、2012年にカナダのトロント大学が開発した Super Vision が大きな衝撃を与えた。データをもとにコンピューターがみずから特徴量を作り出す機械学習の方法であり「表現学習」の1つとされる「深層学習」(ディープラーニング)によって、驚異的な画像認識の精度を実現したのだ。AI の研究が始まってから約50年刊、コンピューターが自動的に特徴量を探し出せることなど想像もされていなかった。それをディープラーニングが可能にしたことで、「人間の知性はコンピューターで再現できる」という当初の仮説の証明に向けて大きな前進を迎えた。≫ (108~109頁) コンピューターに、特徴量の候補をそれこそ“やみくもに”列挙させ、それぞれを試しに特徴量と置いて“下手な鉄砲”よろしく分析させ、その分析結果を比較させてはどうだろう。 そうすれば、実態にもっとも適合する結果を生む特徴量を選択させることができるのではないだろうか。 コンピューターに“決め打ち”を期待してはいけない。 ムダな作業を厭わないことがコンピューターの取柄なのだから、人間ならやらないようなムダをさんざん繰り返させればよい。≪デジタルの進歩の多くがGDPに勘定されない。たとえばウィキペディアは、昔ながらの『ブリタニカ百科事典』とは違って無料です。つまり、はるかに多くの人々に付加価値をもたらしても、GDPの数値には含まれない。≫ (206頁) であれば、Gross Domestic Product に替えて Gross Domestic Convenience のような概念を打ち出してはどうかな。≪初等・中等教育では、適切で有益なスキルを教えなければなりません。つまり、コンピューターが得意としないもの――創造性、対人スキル、問題解決などです。≫ (211頁) そう、けっきょく人間に残るのは「対人スキル」なのだと思う。 ぼくは、自分が対人スキルにおいて からきしダメなのか ほどほどなのか、じつはよくわからない。
Nov 23, 2016
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核融合による発電についてわたしの最大の疑問は、1億度以上の桁はずれの高温の熱源をどう取り扱うのかということ。最終的には熱交換器で700~800度の水蒸気をつくり、蒸気タービン・発電機を回して発電するのだろうと想像する。1億度の熱源からの熱は、熱交換器が輻射熱の形で受けるのだろうけど、受けた温度が1千万度、100万度、いや10万度、いや1万度としても、すべての物質が瞬時にとけてしまう。どういう物質をつかって熱交換器を作るのか、何を読んでもまったく書かれていない。書いてあるのはもっぱら、1億度のプラズマをいかにして長持ちさせるかということだけだ。*2月20日まで無料で読める「日経エレクトロニクス」平成27年2月号の記事がある。「核融合発電、再燃する開発競争: “地上”の太陽にあと一歩、2020年代前半にも実用化か」わたしの長年の疑問への答えは、この記事にも書いてないが、注目したのは開発コストについての記述だ。国際熱核融合実験炉(ITER)の開発には、すでに約2兆円かかっていて、最終的にはその数倍になるとの見通しもあるとのことだが、その過程では医療や送電に応用できる技術も開発されているし、比較論でいえば高コストとはいえないというもの。「インターネットやiPhoneの開発には累計1兆米ドル=約120兆円規模の資金が投入されている。それに比べればずっと安い」(カナダの核融合ベンチャー企業General Fusion社創業者のMichel Laberge氏の言)も、もっともだと思う。目下の原子力発電を停めたばかりに、毎年3兆円の余分な燃料代を払って天然ガス・石油・石炭の輸入を増やしている日本である。その燃料代に比べたら、核融合炉の開発にかけている費用(そのかなりの部分は技術者に支払う給料だ)は安い。核融合技術を、発電にどうつなげていくのだろう。なっとくのいく絵姿を見せてもらえれば、世間の支持はもっと高まると思うが。
Feb 16, 2015
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二酸化炭素が地球温暖化の主犯と決めつけられて、そのため 「二酸化炭素を減らすため」という無味乾燥な目的のために巨額のカネが使われている。そのカネを教育や文化活動支援、あるいは飢餓対策のために使えれば、人類はもっとずっと しあわせになれると思うが。わたしが かねてより どうにも疑問に思っているプロジェクトが、二酸化炭素 「回収貯留」、英語でいうcarbon dioxide capture and storage (CCS) だ。火力発電所で石炭などを燃やしてできる二酸化炭素が煙突から排出される前に、二酸化炭素を溶剤に溶け込ませるなどして回収し、最終的に地下の巨大な穴に貯め込もうというもの。初期投資と運転電力を喰う二酸化炭素貯留システムをセットにすると、火力発電所は えらくコスト高になるし、全体として見た発電効率が激減する。最新の研究では、二酸化炭素を水素と反応させることで燃料メタンガスと水を作る技術が開発されつつあるという。「貯留」 ではなく 「再燃料化」 するのであれば、まだしも救いがある。「日本経済新聞」 平成26年4月1日16面 ≪CO2をメタンにJAXAと富山大 効率合成する技術宇宙航空研究開発機構 (JAXA) と富山大学の阿部孝之教授らは、火力発電所や工場から出る二酸化炭素 (CO2) を燃料のメタンに効率よく変える技術を開発した。石油や天然ガスの代わりになる燃料を確保し、地球温暖化対策にも役立つ。数年後に実用化する予定だ。メタンは天然ガスの主成分で、メタンから作るメタノールはプラスチックや合成繊維の原料になる。CO2 はすでに一部で工業原料として使われているが、特殊な条件や多量のエネルギーが必要だ。コスト面でも間題がある。合成反応を促す触媒として、レアメタル (希少金属) のルテニウムを直径2~3ナノメートル (ナノは10億分の1) の微粒子にし、酸化チタンの表面に付けたものを使う。火力発電所や工場から出る CO2 を効率的に分離して濃縮。セ氏150度に熱してから水素と反応させると、メタンと水ができた。CO2はほぼ全てが合成反応に使われていた。従来はセ氏400度以上に加熱する必要があった。ルテニウムの粒子を微細にすることで、合成反応が進む温度が大きく下がり、実用的な水準になった。火力発電所や製鉄所、工場から出る廃熱や水蒸気から、反応を進めるために必要な熱や水素を取り出して使える。将来は、JAXA が宇宙船に搭載し、宇宙飛行士の呼気に含まれる CO2 の処理に使うことも検討している。≫
Apr 4, 2014
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研究開発に成功した立役者として、30歳の小保方(おぼかた)晴子さんの姿がテレビでも紹介されていた。こうして、実際に手を動かして苦労した若い人の顔が出るのはとてもいいことだ。会社ならありがちのことだが、彼女の上司が手柄をうばって「わたしが指導しました」といって老醜をさらすことだって、ありだろう。今回はハーバード大学も関わった国際研究だったから、上司が手柄を奪ってしゃしゃり出れば国際的に顰蹙を買うところだった。研究も然り、企業のプロジェクトも然り、政府の政策も然り、実際に手と頭を動かしている人に対して広報もメディアも光を当てるべきなのである。*ところで、万能細胞 「作製」 と報道文にはあったが、「作製」 というのがいかにもモノっぽいのがイヤ。ブログのタイトルでは、ぼくの好みで 「生成」 と言い換えてみた。業界では万能細胞 「作製」 というのだろうけど。
Jan 30, 2014
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「バック・トゥ・ザ・フューチャー」 の車は、バナナの皮も燃料にできる進化ぶりだったけど、それに似たものを感じたのがGEの新技術。粉末と水を注ぐだけでエネルギーを充填できるというもの。急速充電でも何十分もかかるのが今の電気自動車の電池の欠点で、だからサービススタンドで電池そのものを交換するというシステムも検討されているが、それって現実的でないだろ。粉と水を注げば充電状態になるのなら、いまのガソリンスタンドと同じだ。いや、粉をもっていてテキトーなところで水を調達すればいいんだから、ガソリン車より便利だ。この技術が実用化されれば、電気自動車は爆発的に普及するな。問題は、魔法の粉のお値段と製造プロセスだけどね。この原料次第では化石燃料枯渇を乗り越える手段のひとつになるのかどうか。この基本特許をとった GE は、近未来でも安泰だな。電気新聞 平成25年9月5日、4面≪米GEが新蓄電池開発 注水だけで充電可能米ゼネラル・エレクトリック (GE) はこのほど、水を注ぐだけでエネルギーを充填できる新型の電池を開発した。現行型の蓄電池は、電気エネルギーを化学エネルギーに変換して貯蔵するが、今回開発した電池は水と化学物質の反応により化学エネルギーを作り出し、電気として出力できる。同社では電気自動車 (EV) の課題のひとつとなっている 「充電時間の長さ」 を解決できる技術として、実用化を目指す方針だ。GE は技術の詳細は明らかにしていないが、瓶(びん)の中に粉末と水を注ぎ込むと電圧が発生する模様を収録した動画を公開した。同社の研究者は「現在主流の EV 車載蓄電池と比べ4分の1の価格で、3倍の走行持続距離を確保できる」としている。米エネルギー省のエネルギー高度研究計画局 (ARPA-E) は走行持続距離240マイル (386 km) を実現する蓄電池の開発を推進しているが、これをクリアできる見込みとしている。同社は来年にかけて試作品を製作したい考えだ。水は既存インフラであり、あらゆるところで入手でき、安全性も確保しやすい。現行の EV は急速充電でも200 km走行に30分近くの時間が必要。仮に実用化できれば、家庭で水を注ぐという短時間の操作で長距離を走行できるため、EV の普及加速につながりそうだ。≫
Sep 10, 2013
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日本近海の海底のメタンハイドレート。昔から 「未来のエネルギー源」 と言われながら、一向に掘り出されないのはなぜだろうと思っていた。「電気新聞」 の3月27日の記事で、理由がわかった。いまのところ、「採取管に砂が入り込んでポンプが詰まる」 といったレベルのところで、まずは難渋しているらしい。本気でヒトとカネをかけて取り組めば何とかなりそうに思う。瞬間的な超高温しか出せない核融合よりは、よほど現実味がある。核融合とメタンハイドレート採取に、それぞれどのくらいヒトとカネをかけてきたか公開してくれれば、答えはいっぺんに出るのではないか。「電気新聞」 平成25年3月27日2面≪メタンハイドレート産出試験続かず 砂の流入が一因次世代のエネルギー資源「メタンハイドレート」の実用化に向け、天然ガスの主成分メタンを世界で初めて海底から採取した政府の産出試験が今月中旬終了した。採取機関は過去最長の6日間に達したが、目標の2週間には及ばなかった。実験の継続を阻んだ原因の一つはまたしても 「砂」 だった。メタンハイドレートはメタンと水が結び付いた氷状の物質。1気圧ならマイナス80度以下、0度なら23気圧以下で安定的に存在する。ガスとしての採取には、温度の上昇か、圧力の低下が必要で、政府は技術の改良を10年以上重ねてきた。世界初の採取は2002年3月にカナダの永久凍土地帯で行われ、温水が循環する採取管を使う 「加熱法」 で約470立方メートルのメタンを回収した。しかし、取り出したメタンのエネルギーより 「加熱などに要したエネルギーの方が大きかった」 (経済産業省・資源エネルギー庁) という。この反省を踏まえ、2007年4月の実験では圧力を下げてメタンハイドレートを分解する 「減圧法」 に切り替えたが、地層中の砂が採取管に入り込み、ポンプが半日で止まるトラブルに見舞われた。採取管にフィルターを設置して2008年3月に再挑戦すると、採取量は一気に27倍になった。≫
Apr 3, 2013
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JAXA (宇宙航空研究開発機構) が、NOx (窒素酸化物) の排出を現在より8割減らせるという画期的な基盤技術を開発した。今後は三菱重工など国内メーカーとも協力して研究を進め、実用化にこぎつけたいということなのだが、信じられない悠長さにたまげた。≪排出規制強化の流れを先取りし、20年後をめどに 「エコエンジン」 として実用化を目指す≫ とある。日経の3月12日17面の報道。本気で実用化したいなら、最初に掲げる錦の御旗はまずは「5年後」ではないのか。「20年後」と言われた途端、ほとんどの関係者は「そのころ自分はこの世にいない、この会社にいない、この部署にいない」と考える。「20年後」 という数字は、技術研究にかかる人工(にんく)、つまり 「人数×日数」 を毎年得られるであろう予算 (=毎年の研究者人数) で割って出したものだろう。担当研究者の発想としては、「あぁ、これでわたくしも20年間ほそぼそと、仕事が確保できた」ということなのだろうか。技術の実用化よりも、研究者の雇用確保のほうが前面に出ている感じだ。ほんとうに良い技術なら、人とカネを集中させて短期決戦すべきなのだが、エンジンの改良に20年かけるという発想に強烈な違和感を感じた。日本経済新聞 平成25年3月12日17面≪「エコエンジン」 宇宙機構が技術 旅客機用実用化でNOx排出8割減宇宙航空研究開発機構 (JAXA) は、大気汚染の原因となる窒素酸化物 (NOx) の排出を大幅に減らすジェットエンジンの基盤技術を開発した。旅客機用に実用化すれば、排出量を現在より8割減らせる。今後、三菱重工業など国内航空機エンジンメーカーに協力を呼びかけて研究を進めて、出力や燃費などを実用レベルに引き上げる。排出規制強化の流れを先取りし、20年後をめどに 「エコエンジン」 として実用化を目指す。旅客機のジェットエンジンは圧縮した高温の空気に燃料を噴射して燃やす。燃費をよくするために空気を強く圧縮すると温度が上がり、NOx の発生量が増える問題がある。新技術は自動車などに使われる技術を応用した。少ない燃料と空気をあらかじめ混ぜる「希薄予混合燃焼」方式を採用。燃料と空気を混ぜて混合気をつくるノズルを2つ組み合わせ、燃焼室に送り込んだ燃料の濃度を均一にし、今度が上がり過ぎないように工夫した。……米ゼネラル・エレクトリック (GE) などは航空機エンジンの NOx 排出量技術を進め、希薄予混合燃焼方式のエンジンが B787 に採用された。JAXA によると、新技術は NOx をさらに減らせるという。≫GE のスピード感と JAXA のスピード感のちがいがそのまま、民と官の落差、米国と日本の落差を象徴しているのではないか。
Mar 13, 2013
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原子力発電所用の機器を製造する工場を初めて見学したのは、昭和59年(1984年)。勤務先の新人研修のときだ。高低差のある床を6本足で歩けるロボットの実演を見せていただいた。1本の足が動くと、忘れたころに次の足が動く緩慢さ。コンピューターの情報処理量が今とは格段に違うから、この遅さ。研究に携わっているのは、ごく数名のように思われた。数ある研究課題のなかに埋もれそうな、片手間の扱いだった。それから30年経ったのだが、原子炉格納容器 (containment building)のなかを人間の代わりにロボットが動き回るという世の中にはならなかった。2足歩行では脚を1本やられたらアウトなので、6本脚とか4本脚のほうがむしろいいのだろうと思うが、そういうロボットが這い回る世界をそもそも研究者たちは想定して来なかったのではないだろうか。科学技術の他の分野にくらべて、人間の代わりに危険地におもむかせるためのロボットの研究は明らかに遅れている。たぶん、カネと人材を本気でかけて来なかったのだろう。つまるところ、ロボットの研究に1,000億円注ぎ込むより、人間に高めの給料を支払い、不幸にも死傷者が出たら補償金を払うアプローチのほうが経済的なのだろう。でも、やはり、ロボット開発には本気で取り組まねばならない世の中になってきたと思う。「人間にカネを積んだほうが安上がり」 というホンネを口に出しにくい世の中になっているからだ。と、こんなことを書いたのは、最近の廃炉作業・災害対応ロボットの開発状況の報道があったから。日本経済新聞 平成25年2月21日≪急な階段上り下り、水陸両用… 廃炉ロボット勢ぞろいNEDO、報道陣に公開 東電に活用提案へ 東京電力福島第1原子力発電所の廃炉作業向けに原子炉メーカーや大学が開発した様々なロボットを新エネルギー・産業技術総合開発機構 (NEDO) が2月20日、千葉県内で報道陣に公開した。 千葉工業大学と日立製作所は狭い急階段も上り下りできる放射線カメラ付きの小型ロボットを開発。三菱重工業は折れ曲がる腕を持つロボットを使い、8メートルの高さにあるバルブを遠隔操作で開く作業を公開した。 東芝は汚染水で水没した場所にも潜れる水陸両用ロボットを開発した。現在使われているロボットではたどり着かない場所にも入り込める。 これらのロボットは通信規格をそろえてあり、助け合いながら作業に当たる。今後、各社は福島第1原発の廃炉を手掛ける東電にロボットの活用を提案していく方針。≫日経産業新聞 平成25年2月21日≪災害ロボ、アーム8メートル 三菱重など、新型機を公開。 三菱重工業など大手電機、機械メーカーが2月20日、災害対応用ロボットの新型機を公開した。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が主導する 「災害対応無人化システム研究開発プロジェクト」 の一環。 東京電力の福島第1原子力発電所での作業を想定し、遠隔操作や狭い場所での旋回ができる。放射線量の調査やバルブ開閉などの用途を見込んでいる。 三菱重工業はロボットアームが8メートルの高さまで伸びる高所作業用のロボット 「MHI-スーパージラフ」 を開発し、公開した。高所にあるバルブの開閉や荷物を高所に上げる作業などができる。 千葉工業大学発のベンチャー企業、移動ロボット研究所が開発した移動型ロボット 「櫻(さくら)」 とも連動し、櫻が撮影した映像とスーパージラフのカメラで撮影した映像を見ながら遠隔操作できるようにした。スーパージラフは一部の技術を公開し、他社との共同開発も進めていく。 このほか、東芝が水中の状況も確認できるロボットや、最高30メートルまで最大4トンの荷物を持ち上げられるシステムなどを公開。千葉工業大学が、自動でバッテリー充電場所に帰る機能がある移動ロボットなどを発表した。 日立製作所は、広域で使える無線通信技術などを公開した。NEDOの今回のプロジェクトで開発したロボットなどは日立製作所が開発した同じ通信方式に対応し、連携作業を可能にした。今回、公開されたロボットは今夏をメドに福島第1原発などで実用化される見通しだ。≫
Feb 27, 2013
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ヘリウムが枯渇、ですと?遊園地の風船につかわれるヘリウムが、どうやって製造されているか。考えてみたこともなかった。あ痛っ!空気中から抽出するわけはないから、ヘリウムの化合物を掘り出して炉で熱して気体のヘリウムを分離するのかな、とアホなことを考えた。正解は、三宅常之さんが Tech-On! (登録無料閲覧サイト) 平成25年2月14日に書いた記事をお読みください:http://techon.jp/article/COLUMN/20130213/265511/?ref=ML一部、引用してご紹介しましょう:≪ヘリウム枯渇 東京ディズニーランドも風船販売を中止 (三宅 常之) ヘリウム (He) が足りない状況が続いている。2012年11月に東京ディズニーランドがヘリウムを詰めた風船の販売を中止したほか、ガス販売会社が相次いでヘリウムの供給を一時停止する事態に追い込まれた。 いずれもヘリウムの安定調達が難しくなったことによる。≫たしかに、東京ディズニーランドのサイトを見ると、「【バルーン販売休止のお知らせ】現在、バルーンの中に入れている原料が調達困難なため、11月21日 (水) より販売を休止しております。販売再開については未定です。再開の見通しについて分かり次第、このページにてお知らせをいたします」とありますね。≪ヘリウムの埋蔵量は、既存技術によって生産可能な範囲で約70億m3。現在のペースで消費を続ければ25年後に枯渇する。 消費量を大幅に減らすとともに、枯渇するまでに新しい生産技術を確立しなければ、近いうちに使えなくなる日が訪れる。ヘリウムについて調べた。 ■ 光ファイバや半導体の製造に利用 ■ ヘリウムの工業原料としての特徴は、特異な性質のために代替が難しい用途が数多くあること、供給源が限られていることにある。 この意味で、水素 (H) に次ぎ2番目に多い元素であるにもかかわらず、レアアースと同じ供給問題を抱えるリスクがある。 特異な性質の一つは、沸点が約 -269℃と元素の中で最低であること。比熱が大きく熱伝導率が高い特徴もあって、冷却用途に適している。 光ファイバの製造工程において、溶融して成形したガラスの冷却、半導体製造のスパッタリング工程で高温になったシリコンウエハーの冷却などに使える。≫あぁ、そういうことだったのか。たくさんあるけど貴重な元素。≪さらに直径が小さいため気密性の検査に利用されている。肺に吸い込んで話すと、甲高い 「ドナルドダッグ・ボイス」 になるのは、音が空気中よりも速く進む性質による。≫え!? これも知らなかった。ドナルドダック・ボイスで検索したら、「雑学大陸 ~命どぅ宝~」 というサイトに「ヘリウムは血液に溶けにくく、人体への影響は少ないので安心して使えます。が、純粋なヘリウムのみを吸うと、呼吸困難になり、最悪の場合死に至ることがあります。パーティ用のヘリウムガスのような、酸素との混合気体になっているものではないと危険です」とありました。これが正しいか、確かめようとするとキリがないので、三宅さんの本論に戻ります。≪冷却だけを目的とする用途では窒素 (N)、不活性だけを生かす場合はアルゴン (Ar) など、代替元素は存在する。しかし、複数の特徴を生かした光ファイバや半導体の製造などの用途ではヘリウムを代替することは難しいという。■ 空気からは採取できない ■ ヘリウムの生産は、比較的高い比率で含む天然ガスから採取することで行う。 天然ガス田は数多くあるが、供給元は大きく増えない傾向にある。ヘリウムを採算に合うコストで取り出せるガス田が限られているためだ。 最近採掘が進んでいるシェール・ガス田からはヘリウムを採取できていない。また、これまで市場へ潤沢に放出されてきた在庫が底をつき始めている。≫これはたいへんなことになりました。≪主な生産国である米国は、1960年代に軍用の戦略物資として大量に備蓄、その後に方針を転換し1990年代からは民間へ継続的に放出したが、この放出が2015年に終わる。 代替が難しいために安定的な需要があり、新興国での需要が増えている一方、供給が限られる状態が続いたことで特に2000年代後半から、構造的に需給が引き締まった状況に陥っている。 こうした中、2012年11~12月に極めて深刻なヘリウム不足に陥ったのは、主力生産工場での定期修理が長引いたことによる。この時期までにシェール・ガスの採掘が増えたことなどで天然ガス需要が低迷したことも影響した。 直近の平均輸入価格は、2000年代前半までの需給が比較的安定していた時期と比べて2倍になった。 ただし2013年後半には、少なくとも日本では深刻なヘリウム不足は解消へ向かう見込みである。調達先を米国以外に広げる動きが出てきたためである。≫あんまり引用しすぎて申し訳ないので、ここから先は Tech-on! でお読みください。
Feb 15, 2013
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地球がサイコロの形をしていたら?考えたこともなかったけれど、もしそうなら、四角い平面の大海原の端っこは、巨大な滝になって水がどうどうと落ちているのかな。コロンブスの時代に西洋人が考えていたみたいに……。これがなんと! そうではなくて、海の水は四角い平面の真ん中のあたりに集まり、凸レンズみたいに盛り上がるのだそうだ。地球の形が円かろうが四角かろうが、重力の中心から等距離にあるところは重力の働きも同じ強さだ。つまり重力の働きに素直に従う液体や気体は、球状に凝り集まるってことだね。だから、大地がサイコロ形だったとしても、水や空気は宇宙空間から見れば巨大な球の形にまとまるわけだ。サイコロ形の大地の表面は、幾何学上の平面ではあるけれど、そこに人間が立つと平面どころか四方がはるか宇宙空間に突き抜けるほど高い山に見えるんだろうね。幾何学上は、まっ平(たい)らでも、実際にそこに立つと、平面の端に行けば行くほど急峻な坂として感じられるはず。だから平面の端に向かって歩くとは、けっきょく、1万メートル、10万メートル、100万メートルの山に登るようなもので、やがて大気圏をぬけて真空になってしまう。だって、平面の端のほうは、重力の中心からどんどん遠ざかろうとしているわけだから。現実世界でエベレスト山が重力の中心からもっとも遠ざかった大地であるように。まぁ、よほど硬質の金属でできていないかぎり、サイコロ形の地球は維持できないだろうね。万有引力に対していちばん素直な形は、球なんだね。地球のかたち、太陽のかたち。……と、こんなことを書いたのは、日経でこんな記事を読んだから。日本科学協会のつくる短篇映像、たのしみにしています。日本経済新聞 平成25年2月3日30面≪地球が立方体だったら… 空想の世界 教材に 日本科学協会が映像作成「もしも地球が立方体だったら、重力や気象、環境はどうなる?」。子供たちに科学への関心を持ってもらおうと、公益財団法人「日本科学協会」(東京都)が、地球が立方体になった様子を全篇コンピューターグラフィックスで描いた小中学生向けの短篇映像を作成した。気象学が専門の木村龍治・東京大名誉教授ら8人の専門家が監修。宇宙船が木星から帰還する途中、突如として地球が一辺1万キロの立方体に姿を変えてしまうというストーリーに仕立てた。四角い地球では、大気や海水が、重力の影響で各面の中央部に凸レンズのように盛り上がって集まる。地上には、月のような真空の場所や、金星のような高温高圧の環境が混在した。人類が生存できるかどうかは続篇で明らかになる。木村名誉教授は「現実にはあり得ない世界を科学的に空想することで、球体だからこそ豊かな地球ができていることが分かった。教材を見て、地球環境に対する理解を深めてほしい」と話している。映像は4月から日本科学協会のホームページで公開する。≫
Feb 9, 2013
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最近 目を疑って再読三読した科学記事がある。「おなかがすくと記憶力が上がる現象をショウジョウバエで発見した」 というもの。たしかに経験的にも、朝起きたすぐというのは勉強の効率がいい。高校生のころ、試験前の追い込まれた状況では、朝早く起きて勉強していた。それを生涯の習慣にしていたら、いまごろ大人物になっていたと思うが、ふつうの日には眠たくてギリギリまで寝てしまう。「おなかがすくと記憶力が上がる」 といっても勿論、程度問題であって、血糖値が下がってフラフラの状態ではそもそも脳の働きがにぶる。いや、それとも 「新発見」 の言わんとするところは、「血糖値が下がると思考能力が下がるかもしれないが、記憶力は上がる」 ということだろうか……。しかしそもそも、「おなかが空くと記憶力が上がる」 かどうかは、人間をつかっていくらでも実験できそうなことだ。NHKの 「ためしてガッテン」 あたりで取り上げそうなテーマだ。大学のゼミの研究テーマにも持って来いだし、卒論のテーマにしてもいい。それが、なぜ、猩々蠅(しょうじょうばえ)で実験、なの?語学の勉強を いつ したらいいか、猩々蠅に教わるのかね。なんか、割り切れない思いを持ったんだなぁ。皆さんは?日本経済新聞 平成25年1月25日38面≪おなかすくと記憶力アップ 都医学総研、ハエで確認東京都医学総合研究所のチームは、おなかがすくと記憶力が上がる現象をショウジョウバエで発見した。空腹で血糖値が下がりインスリンの出る量が減ってくると、記憶に必要な蛋白質が活発に働いた。人間でも同じ仕組みが働いている可能性があり、朝食前の空腹時に勉強するとより効率よく記憶できるかもしれないという。成果は1月25日に米科学誌サイエンスに掲載される。平野恭敬主任研究員と斉藤実参事研究員らが研究した。9~16時間絶食にしたハエに、あるにおいと電気ショックを同時に与えて嫌なにおいと記憶させた。1日後、嫌なにおいと別のにおいを嗅がせてどちらに近づくか調べると、食事をしたハエに比べて嫌なにおいから遠ざかる率が約2倍に上がった。脳の神経細胞には CRTC という記憶に必要な遺伝子を働かせる蛋白質があり、インスリンが少ないとたくさん作られる。空腹でインスリンが下がると CRTC がよく働き、記憶力が上がると考えられるという。≫いま読んでも改めて冗談記事のような思い。とにかく、はやく、ホモ・サピエンスをつかって実験してみてくださいませと、専門家の皆さんにはお願いしたいです。ところで記事のなかで 「インスリン」 とあるが、ぼくはずっと 「インシュリン」 と言ってきたのだけど。Google 検索してみると、インスリン 2,110,000件インシュリン 1,070,000件Wikipediaの 「インスリン」 によれば、≪従前は 「インシュリン」 という表記が医学や生物学などの専門分野でも正式なものとして採用されていたが、2006年現在はこれらの専門分野においては 「インスリン」 という表記が用いられている。一般にはインスリンとインシュリンの両方の表記がともに頻用されている。≫とあった。
Feb 4, 2013
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業界紙なので、一般の皆さんはご存知ないと思いますが、これはすごい発見。福島原発事故のあとの除染にたいへんな費用がかかっていますが、阿蘇山周辺からとれる阿蘇黄土リモナイトを撒けば、放射線が遮蔽されて除染の目的をかなり達成できるそうです。調べてみると、阿蘇リモナイトは消臭効果があって、これを混ぜた犬の餌も販売されています:http://www.lala-house.com/default.php/cPath/22電気新聞 平成25年1月24日1面の報道をご紹介します。≪阿蘇鉱物で線量低減 東京理科大 地表、最大7割減確認東京理科大学の矢島博文教授らの研究グループは1月23日、鉄の酸化物を主成分とする 「阿蘇黄土リモナイト (LM)」 が放射線の遮蔽効果を持つことを発見したと発表した。LM に多く含まれる鉄がガンマ線を減衰させるため、ホットスポットなどに散布すれば6割程度の線量低減効果が見込める。実証実験では厚さ2センチメートルの散布で地表の線量が最大約75%低減し、効果が持続することが確認された。今後は汚染地域の線量低減や放射性廃棄物の処理、原子力発電所の廃炉への活用に向けた研究開発を進める。LM は熊本県の阿蘇山周辺から産出される鉱物。火口湖中に溶出した鉄分を多く含んでおり、埋蔵量は1億トン以上とされている。矢島教授らは LM に含まれる鉄の遮蔽効果に着目し、茨城県内のホットスポットで LM の散布実験を実施。実験では汚染土壌1平方メートルに LM を厚さ2センチメートル散布したところ、毎時 0.58 マイクロシーベルトの放射線が 0.15 マイクロシーベルトに低下した。解析では、厚さ2センチメートルの LM に対するガンマ線の減衰率は約 65% になるとの裏付けが得られた。汚染地域の線量低減に向け、吸着剤などでセシウムを回収する除染が実施されている。矢島教授は「除染に加えて LM による放射線遮蔽を実施すれば、いかなる場所でも年間被曝線量1ミリシーベルト以下の環境を実現することが可能だろう」と話す。今後は LM の焼成で遮蔽効果の向上を図るほか、散布方法や施工方法を検討。ホットスポットの放射線量に適合した散布量の面積、渥美、場所などの最適化を図る。≫神さまは、解決法をちゃんと用意してくれていたようです。それに気づくかどうかが、人間の努力しだいということなのでしょう。
Jan 29, 2013
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いまだにこれを超える設定のサイボーグはいないと思われるのが 「エイトマン」 だ。ぼくはエイトマンが好きで、テレビアニメは欠かさず見たし、学生のころ飲み会での唄はエイトマンの主題歌だったし (もちろん振り付けつきで) 、その後 原作漫画の復刻版が出たときも狂喜しながら買った。実写版のエイトマンもビデオで観た。ブレードランナーのような暗さが合っていた。ハリウッドでもっと予算をつけてリメイクしたら確実にブレークするヒーロー。エイトマンの動力は胸部の小型原子炉で、ということは胴体は小型発電所だったわけ。超スピードのエイトマンが受ける外部衝撃にも堪えるタービン発電機をつくるのは、技術者にとって大きな試練だ。IHI (=かつての石川島播磨重工業) が自走ロボット用の電源にも使える超小型ガスタービン発電機を開発したという記事を読んで、エイトマンにまた一歩ちかづけたような気がして、うれしくなった。日刊工業新聞 平成24年2月17日≪IHI は12月16日、手のひらサイズの超小型ガスタービン発電機を開発したと発表した。試作タイプで発電実証運転に成功した。世界最小・最軽量のガスタービンを使い、同程度の大きさの発電機や燃料電池を上回る出力・連続使用が可能。災害・救難時の携帯用電源をはじめ、自走ロボット用電源などへ採用を見込む。同発電機は超小型ガスタービンに高速発電機を組み込んだ。直径8センチメートル、長さ12センチメートル、重さ1.2キログラム。定格出力400ワットで定格回転数は毎分40万回転。潤滑油を使用しておらず、燃料にはプロパンや軽油、灯油などを利用できる。試作した発電パッケージでは、発電機内蔵ガスタービンに冷却ファン、消音器、燃料タンク、電装系・補機類、エンジン起動用電池などを組み合わせた。連続運転時間は3時間で、起動時間は約30秒、冷却停止まで約2分半と起動性も高い。≫出力400ワットだから、ヘアドライヤーも動かせないけれど、でもうれしい。起動時間が約30秒というのがすごい。毎分40万回転、毎秒約6,700回転のタービンを、自走ロボットの衝撃にも堪えられるように作るのは高度な技術だ。IHI のサイトを見たら、創業の嘉永6年(1853年)12月5日は 「水戸藩 徳川斉昭が幕命により江戸・石川島の地に造船所を創設した日」 とある。石川島播磨重工業が、まぶしく見えた。
Feb 23, 2012
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発電用の風車を10基ほど載せた巨大なイカダを洋上の風の強いところへ遊弋させて効率よく発電させる構想を NEDO が研究していた。送電線がつながっていないから風車からの電気は送電できない。かといって蓄電池に蓄電するとコストが大幅アップ。そこで、風車からの電気で海水を電気分解して水素にして貯め、定期的に母港に戻って水素タンクへ移す、というのが NEDO のアイディアだった。その後、研究の進展が聞こえてこないのだが、蓄電方法として水素を利用する仕組みがとても気になっていた。そんなわけで、下の記事には注目した。電気分解で得た水素をトルエンに固着させて、メチルシクロヘキサンという化学物質の形で貯蔵する。液体水素にして貯めようとすれば、冷却と高圧維持のために大量のエネルギーを浪費するのが経済上のネックだ。それを克服する技術なのだろう。見出しや本文中に 「水素発電」 とあるが、目玉は 水 素 蓄 電 の技術にある。それにしても、南極観測船の積荷の半分が燃料だったとは驚き。たしかに、燃料が尽きたら即、死が待っている。日刊工業新聞 平成23年11月8日≪日立、極地研から水素発電システムを受注日立製作所は11月7日、風力発電を利用した水素発電システムを国立極地研究所から受注したと発表した。受注額は7,050万円。風力で発電した電気を水素に変換して備蓄し、必要時に発電に使う仕組み。2011年11月から2012年3月まで、極地研が秋田県にかほ市で実験中の風力発電機に接続する。将来は南極の昭和基地での利用を想定しているという。日立が担当するシステムは水の電気分解で水素を発生し、これをトルエンに固着してメチルシクロヘキサン (MCH) の形で貯蔵する。必要時には水素を分離し、軽油に混合してディーゼル発電機で発電する。水素発生量は毎時480リットルで、変動の大きい風力発電でも対応できる。またMCHは通常の燃料タンクで貯蔵可能という。南極観測船の運搬物資のうち半分は燃料が占めるという。輸送量に限りがあるため自然エネルギーへの転換が求められており、風力発電を貯蔵できる日立のシステムが採用された。≫
Nov 15, 2011
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太陽電池の置き方は、できるだけ直射日光に垂直な角度にするのが効率がいい。それでも稼働率は15%ほど、つまり1日に得られるのは [公称の最大出力] × [24時間] × [15%] ほどの電力だ。だって、最大の出力が得られるのは昼の晴れ間だけ。朝・夕は光の角度が合わないし、夜は発電ゼロ。理想は、太陽の動きを追ってパネルも動くようにすること。これだと、稼働率は20%を超える。朝・夕の日光もいい角度で受けられるからね。でも、設備代が高い。直射日光を受けることにこだわらず、とにかく明るければ何がしかの発電はあるのだからと、パネルを垂直に立てて両面に太陽電池を貼るという発想の転換を知って驚いた。これだと、今まで考えられなかったところに敷設できる。日経産業新聞 平成23年6月2日 2面≪太陽光パネル 両面型販売 東京太陽光建材 発電量2~3割増太陽電池関連部材を販売する東京太陽光建材 (東京都台東区、仁村利尚社長) は表と裏の両面で発電する太陽光パネルの国内販売を始める。年内に大規模生産を始めるイスラエル企業などから太陽電池を調達し、2011年度中に年1万キロワットの販売をめざす。学校の屋上の柵や高速道路の遮音壁など光が四方から当たる場所に設置することを想定している。主な調達先になるのはイスラエルの太陽電池メーカー、bSolar(ビー・ソーラー)。同社はドイツの太陽電池工場を買収しており、今夏にも量産を開始する。東京太陽光建材は同社に出資もしている。出資額は明らかにしていない。国内の独立系太陽電池メーカーであるハイナジー (岩手県北上市、田村達朗社長) とも連携し、両面発電型の太陽電池を確保する方針。旭硝子子会社の AGC硝子(ガラス)建材などが太陽電池をガラスで挟んだパネルに加工し、最終製品にする。両面発電型の太陽光パネルの本格販売は国内で初めて。販売目標の1万キロワットは、屋根に設置するタイプの住宅用太陽光パネルで換算すると約3,000戸分に相当する。両面に光が当たるよう地面に対して垂直に設置するのが特徴。電力不足の懸念などから自然エネルギーへの注目が高まっていることを受け、これまで太陽光パネルの設置対象外だった、建物の転落防止柵や高速道路の遮音壁とパネルを一体化させる形などでの需要を見込んでいる。裏面は表面よりも発電効率が低いが、年間を通した発電量は通常の太陽光パネルより2~3割増えるという。パネルを屋上に敷き詰める必要がなくスペースを有効利用できるといったメリットもあり、価格は通常のパネルの1.5倍程度を想定している。北日本など降雪地帯では冬場に太陽光パネルに雪が積もって発電量が落ちることがある。このため、太陽光発電の導入が比較的遅れているが、垂直に設置する両面発電型は雪が付着しにくく導入しやすいとみている。東京太陽光建材は、太陽電池メーカーのスペースエナジーの社長だった仁村氏が2010年11月に設立したベンチャー企業。スペースエナジーは2010年3月に旧新日本石油 (現JX日鉱日石エネルギー) の子会社となり、仁村氏は社長を退いていた。◆用語解説◆ 両面発電型の太陽電池:結晶シリコンの表面だけでなく、裏面も光を取り込めるように加工した太陽電池。地面などに反射した光も裏面で受けられ、太陽エネルギーを発電に有効利用できる。ビー・ソーラーのほか、中国のインリーソーラーや韓国のハンファなどが生産をめざしている。国内では日立製作所が製造技術を開発したが、コストが割高で商用生産に至らなかった経緯がある。≫今年度は1万キロワット分だそうで、もちろん電力不足の解消にはまったく役に立たないけど、発想は買いたいね。
Jun 3, 2011
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見出しは小さかったが4月25日の日本経済新聞11面に、未来をがらりと変える大発見の速報があった。太陽電池が光エネルギーを電気エネルギーに変換する効率を3倍以上に引き上げる原理。商品化するにはしばらく時間がかかるのだろうし、いまある太陽電池に比べてコストがどのていどになるかも分からない。けれど、これまで太陽電池に対して冷笑的だったぼくも、いよいよ宗旨替えをする時期が来たようだ。蓄電池のコストを下げ小型化する画期的な発明が続けば、太陽光発電+蓄電池は現実的なエネルギー源になりうる。念のため言っておくと、そういうわけでぼくは、現在の遅れた技術にもとづいた太陽光パネルをじゃんじゃん敷きつめて補助金を注ぎ込むことには反対なのである。大々的に太陽光発電に投資するのは、技術の進歩をもう少し待ったほうがよいと思っている。この発見に伴う基本的な特許は東大とシャープでしっかりおさえてくれているものと信じる。日本の繁栄を支える技術として開発が進みますように。日本経済新聞 平成23年4月25日 11面≪太陽電池変換率75%へ構造解明 東大東京大学の荒川泰彦教授らとシャープは、現在20%程度にとどまっている太陽電池の変換効率を、75%以上にできる構造をコンピューターによる解析で突き止めた。化合物半導体でできた数ナノメートル サイズの 「量子ドット」 を敷き詰めた面を何層も重ねる。4月25日付の米国物理学会 (American Institute of Physics) の論文誌 Applied Physics Letters に発表する。考案した太陽電池は量子ドットを敷き詰めた面を積層して厚さを数~10マイクロメートルにし、両面に電極を取り付ける。量子ドットの配置を最適化することで従来の太陽電池では素通りする赤外光も電気に変えることができ、変換効率を大幅に引き上げることが可能になるという。≫
Apr 25, 2011
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特許には関心があるほうで、拙著 『中国人に会う前に読もう』 でも66~77ページに 「特許件数が物語る <国の底力> 」 と題して、米国特許商標局に登録された中国の特許件数が平成15年にわずか424件だったこと (ちなみに日本は37,250件) などを書いている。最近読んだ本のなかでは「知財戦記」 とでもいうべき 『インビジブル・エッジ』 (文藝春秋・刊) と警世の書 『「科学技術大国」 中国の真実』 (講談社現代新書) が興味深かった。いずれも特許を正面から扱った本だ。 『インビジブル・エッジ』(文藝春秋・刊) 『「科学技術大国」 中国の真実』 (講談社現代新書)ところが、そもそも 「特許」 って何なのか、じつは何も知らなかったということに、この新刊書を読んで気付かされた:泉 通博(みちひろ)・吉田武弘 著 『研究開発プロフェッショナルのための発明バイブル』 (社団法人発明協会・刊、2,000円+税)。書名がえらく専門家限定を前面に打ち出しているのだけど、むしろ文系のひと向きの本ではないか。数式や化学式など1行もなく、すいすい通読できた。メーカーの経営陣や、産業記事を書く記者など、特許とは何か知っておいたほうがいい人がじつは沢山いるはずだ。番組の内容に合わせて料理や花の香りなどをふりまくテレビ!?昔からある冗談アイディアで、まじめに発明・製造に取り組んだひとがいるかどうか知らないが、たとえばこれをほんとに発明したとしたら特許申請はどんな切り口で行うべきか、といった親しみやすい例で読者を引き込む。Aという発明が特許をとったら、その技術を使って科学実験を行うこともできなくなるのだろうか?(答: 特許が成立した技術を盗用して製品をつくるのは違法だが、その技術で科学実験を行うのは合法。さもないと、特許が科学の進歩を妨げてしまう。)発明を、特許出願前に学会で発表してしまったら、特許は取れるか?(答: 発表をしてしまったばかりに、出願時点に 「公知」 の技術になってしまい新規性がなくなったので、苦心の発明でも特許は認められない。)新しい手術の方法を開発したら、特許は取れるか?(答: 特許があるばかりに、必要な治療ができず人命が失われるといったことがないよう、医療行為に関する発明は特許権が認められない。)特許という 「制度」 もまた、人間の知恵の結晶であることを知らされた。人間ってのがどういう行動をしがちかを見据えつつ、どういう制度設計にすれば科学技術の進歩に役立つか考えた結論が、特許制度には反映されている。そう思ってみると、特許の中身は理系の牙城でも、特許制度のつくりは極めて文系の世界である。*著者の泉 通博氏は、ぼくの弟です。大学卒業後キヤノンで働いていましたが、おととし突然、特許事務所に転職したという知らせをもらってびっくりしたのが昨日のことのよう。今年ぶじに辨理士資格も取りました。
Dec 31, 2010
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中国とインドの成長の限界は、水不足によってもたらされる。水が絶対的に少ない中東で、いくら資本があっても工業が育たないのを見れば分かる。水不足がもたらす限界点の向こうは、中東の砂漠・土漠をイメージすればよい。これがぼくの持論で、変えるつもりはないが、すでに膜技術の進歩で淡水を工業的につくるコストがどんどん下がっている。下に転載した日経産業新聞記事が紹介しているように高度な防水シートで農業用水が節約できるようになれば、問題解決はさらに進む。当分は高コストだから中国・インドの貧しい農民が使えるものではないだろうけど、では日本で爆発的普及がありうるか。この技術をつかえば、従来から農業が抱え込んできた日本の水利権(みず・りけん)が放出されるだろうか。わがふるさと松山市も、水不足に苦しまずに済むようになるだろうか。日経産業新聞 平成22年8月23日 「水の世紀」 第6部 農の源泉 (上) ≪培地に高分子膜、95%節水最も水の利用が多い産業は――。製紙や製鉄など重厚長大の工場ではなく、正解は農業。国内でも世界でみても水使用量の約7割は農業用水だ。水不足が深刻な地域が増えるなか、少ない水で多くの実りが得られる農法へのニーズは高い。「水の世紀」 第6部 は 水を有効利用する独自技術やアイデアで 「豊作」 の持続へ挑む企業の姿を追う。 千葉県旭市でトマトを栽培する農事組合法人和郷園のハウス。鈴なりにトマトがなっている苗の根元をめくると、薄いビニール状の膜が出てくる。その下の土壌とは防水シートで遮られており、栽培に使う土は膜の上にある厚さ1~2センチメートルの培土のみ。薄い膜がトマトの根に適度な量の水を供給し、成長を支えている。■ 1株1日300ミリリットル ■ 根は膜に密着し、その下に適量垂らされた水分と養分を吸い上げる。実を大きくするため、培地に直接水を与えることもあるが、それでも1株が1日に必要な水は200~300ミリリットルで済み、土に直接植えた場合に必要な4~5リットルの5%ほどに過ぎない。 この膜は4年前、農業資材ベンチャーのメビオール (神奈川県平塚市) が開発した。社長の森有一氏は東レやテルモで人工透析用の医療用膜などを開発した膜のスペシャリストだ。「水処理や医療に多くの高分子膜が使われているのに、なぜ農業に使われないのか」。自らその可能性を探りたくて、15年前に53歳で起業した。 良い農作物作りはまず土作りから――。そう信じてきた農家は 「膜で農家を土作りから解放する」 という森氏に当初、懐疑的だった。2008年に千葉の和郷園が “膜農法” を初めて導入。高糖度のトマトを安定栽培できると分かると、利用する農園が急増。この2年で、全国の3ヘクタールを超える広さのハウスに、膜が敷き詰められている。 膜の販売は国内にとどまらない。世界気象機関によると世界の水使用量の約7割は農業用水。水不足が深刻な中東などへ、大企業と組んだ進出にも取り組み始めている。 大阪市内のビルの地下の一室。図書館を思わせる可動式の棚に、培地に植わった野菜の苗が敷き詰められている。大手商社・丸紅の大阪支社内で、植物工場システムの実験場が昨年11月から稼働している。 培土には保水性の高い特殊な土を使う。無駄な水やりが要らないため、1株のレタスができ上がるまでに必要な水は2リットルのみで、土での栽培の1割以下となる。室内で使いやすいように培土は通常より重さが11分の1と軽い。 カブやイチゴなど、栽培実績のある品数は40種にもなる。「都市部にスペースが多い流通事業者や電鉄会社などに利用を働き掛けたい」 (宮地博明・副支社長) とし、3年後に20億円の売り上げを見込む。 人工の光を使った 「図書館型農業」 には海外からの関心も強い。丸紅の実験場にはシンガポールの政府関係者のほか、オーストラリアやアラブ首長国連邦 (UAE) からも視察団がやってきた。■ 水耕にも注目 ■ 水耕栽培も節水面で注目を浴び始めた。大成建設が北海道浦臼町に建設した植物工場では、水槽に発泡スチロールを浮かべ、その上に植物を載せている。培養液は地中に染み込まないだけでなく、水面からもほとんど蒸発しない。「水使用量は通常の1割程度」 (新規事業グループの山中宏夫課長)。南国の果物マンゴーも、水耕用の培養液を供給する配管を敷いた薄い培土を使えば、北の大地でも栽培できる。 水耕栽培の弱点は根が分泌する生育を抑える物質が培養液内に徐々にたまること。フィルターなどで除去できず、一定期間で全量の入れ替えが必要だ。 そこで明治大学の早田保義教授は、培養液を完全に循環利用する農法を研究中。二酸化炭素 (CO2) の微細な気泡と光触媒を併用して養液を浄化する。今年度中には川崎市内のキャンパスに実証プラントを立ちあげ、4~5年後の実用化を目指す。産学の技術が日本発の節水農法の可能性を広げそうだ。≫
Aug 24, 2010
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地球軌道を高速で周回する宇宙ゴミが、イタい問題になっている。JAXAが 「掃除衛星」 の研究開発に本格的に取り組むと、2月17日の日刊工業新聞1面トップ記事が伝えていた。宇宙ゴミをばら撒いた張本人は、まずソ連・ロシアや米国、そして無謀にも自国衛星を宇宙空間で爆撃してみせた中国だ。日本からこれまで打ち上げた人工衛星や探査機は平成20年2月時点で138基。ソ連・ロシアや米国はそれぞれ2,000基以上だ、と同じ2月17日の日本経済新聞3面の囲み記事にあった。だから、宇宙の掃除にも責任をもって悩むべきはまずはロシアや米国だが、彼らはどうしているのだろう。(利己主義中国からは、そもそも何らの貢献も期待できないが。)有人宇宙飛行も達成しないうちに黙々と掃除のことを考えるとは、いかにも日本人らしい。正直者がバカを見る、ことにならないよう、国際貢献がカネになって返ってくる仕組みができないだろうか。温暖化ガスの害をドラマチックに演出報道させることで、温暖化ガス削減で儲ける仕組みをつくった (悪)知恵者たちがいる。宇宙ゴミが通信衛星に衝突して社会が大混乱におちいったり、監視衛星に衝突して安全保障のさまたげになったり……。宇宙遊泳中の、地球より重いいのちの宇宙飛行士が、宇宙ゴミに激突されて殉職する……。 SFふうの映像演出で、宇宙ゴミを掃除せよという世論を盛り上げ、宇宙ゴミは原因元の国が掃除すべしという国際条約をめざせないか。日本が掃除衛星の最先端を走れば、ロシアや米国・中国から宇宙の掃除を請け負って儲けることができるのだが。日本と米国が儲け、ロシアや中国からカネを搾り取るかたちがよい。かりに民主党政権がつづけば、排出権取引にともなう日本の国富の流出が10年後に予想される。その惨憺たる被害に比べれば焼け石に水だが、宇宙でニッチの先端技術で他国の富をもぎとる仕組みをつくれないか。*日刊工業新聞2月17日1面報道:≪JAXAが “掃除衛星”ロボアームで宇宙ゴミ処理 10年後、小型機実用化宇宙航空研究開発気候 (JAXA) は廃棄した人工衛星やロケットの残骸、破片などの宇宙ゴミを取り除く “掃除衛星” の研究開発に本格的に取り組む。本体に搭載したロボットアームを伸ばして宇宙ゴミをつかみ、大気圏に引きずり下ろして一緒に燃やすという衛星だ。世界中で衛星の打ち上げが増えるなか、宇宙ゴミが軌道上で運用する衛星に衝突する危険性が高まっている。JAXAは掃除衛星として2020年度をめどに小型機を、次いで大型機の実用化を目指す。JAXAの掃除衛星は高度1,000キロメートル前後に打ち上げ、画像解析などで宇宙ゴミの動きをとらえ、そのゴミが激しい運動をしている場合でも運動を弱めて捕獲する。本体のロボットアームを伸ばして宇宙ゴミをつかみ、5キロメートル程度まで伸びる強度の高い網目状の導電性のひも (テザー) を取り付ける。ひもでゴミを引っ張りながら地球の磁気圏を周回。強い電磁力がブレーキの役割を果たし速度を低下させ、1年程度かけて大気圏に落下させて掃除衛星とともに燃やす。まず、小型の掃除衛星を2020年度をめどに実現を目指す。小型機は50センチ~70センチメートル角、重さ百数十キログラムで、1基につき宇宙ゴミひとつを処理する。小型機の実用化後、導電性テザーを複数個搭載した大型機を開発し、大型ゴミの処理もできるようにする。JAXAは小型掃除衛星の製造費を数億円と見込んでいるが、大型機の製造費は数百億円規模となるため、コスト負担軽減などを図るため国際協力で実現を目指す。現在の試算では年間5基ペースで大型掃除衛星を打ち上げると、想定される宇宙ゴミを取り除くのに約20年かかるという。≫
Feb 22, 2010
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スーパーコンピューターは、そもそも何の役に立つのか。計算能力が高いコンピューターを使うと、製品開発するときに高度のシミュレーションが短時間でできるので産業を大いに支援でき、有効活用すれば国全体の経済が潤う。そのあたりをもっとうまくPRすればいいのだが。財務省の緊縮財政主義者の代理人らが予算縮減と “仕分け” したが、12月10日の日経1面報道を読むと、政府の総合科学技術会議では次世代スーパーコンピューター開発事業を 「確実に推進すべきだ」 と位置づけられた。わたしが読んでためになったのは、次の記事。教えられることが多かった。科学技術開発が、つまるところ 「ひと」 への投資であるところもポイントだ。『日経産業新聞』平成21年12月9日、11面≪迷走する次世代スパコン開発(中)「競争力失う」広がる困惑――影響、ソフトにも 「まさか凍結とは」。11月13日、次世代スーパーコンピューター (スパコン) 開発の事業仕分け作業の様子をネット中継で見ていた東京大学生産技術研究所の加藤千幸教授は耳を疑った。産業界向けのシミュレーションソフトウエアの研究開発を進めるが、「このまま凍結されると企業に開発中のソフトウエアを渡せない」と危機感を募らせた。 加藤教授らは、国が計画する次世代スパコン向けに車体や車両の開発用シミュレーション (模擬実験) ソフトを、自動車メーカーや鉄道会社などと共同で開発中だ。「苦境に立つ日本の製造業にとって、(試作しないと性能が分からない) 最先端製品の開発では、ペタ級マシンで動くシミュレーションソフトは大いに役立つのに」と加藤教授は悔しそうに話す。 円高やコスト競争が激しさを増す中、製造業では数値シミュレーションを使って試作品を減らし製品開発の期間を短縮する動きが急速に広がる。発電所向けタービンなどの開発でソフトを利用する三菱重工業の青木素直副社長は「アジア諸国などの低コストな製品に対抗するにはシミュレーションは欠かせない」と強調する。主に毎秒1テラ (テラは1兆) 回を超える計算能力を持つスパコンだが、毎秒1ペタ (ペタは1千兆) 回以上の超高速スパコンによるシミュレーションは従来に比べて精度が上がり試作品を作る回数が大幅に減らせるという。 半導体開発では手間やコストがかかる試作品を作らずスパコンでのシミュレーションに依存する傾向が強い。世界の半導体メーカーなどが使う年間の研究開発費は約5兆円だが、シミュレーションを採用すれば4割削減できるとの試算もある。 ただ現在、国内の製造業企業が利用するシミュレーションソフトのほとんどは欧米製。まだ超高速スパコンで使えるソフトは世界中に存在しないが、「欧米のソフト開発を待っていたら、企業は競争力を失う」と加藤教授は指摘する。 このため、次世代スパコン開発計画はスパコン本体とソフトウエアの開発を同時進行で進めてきた。文部科学省は開発が始まった2006年度から今年度までにソフトの研究・開発に約70億円を計上、計算機が稼働する2012年度まで合計 100億円を投入する計画だ。 ソフト開発費はほとんどが人件費。次世代スパコン開発が凍結されれば直接雇用される研究者 300人弱が失業し、1千人規模の研究者の研究費がなくなる。日本のソフト開発が巻き返す機会を失いかねない。 ただ、次世代スパコンが利用できるかどうか疑問視する声は産業界にある。これまで政府が作ったスパコンでは民間企業がうまく活用できていないからだ。 かつて世界最速だった海洋研究開発機構の 「地球シミュレータ」 も地球温暖化の長期予測計算などで成果を上げてきたが、「フルに動かした研究テーマは気候変動と地球内部を調べる2テーマだけ」と、同機構にいた佐藤哲也兵庫県立大学教授は振り返る。ソフトなどが特殊で企業には使いにくかったという。 ある素材メーカーの担当者は「地球シミュレータの完成時も企業はなかなか手が出せなかった。ペタ級のスパコンを企業が開発に使いこなすには相当の訓練と、知財や契約の面で使いやすい仕組みが必要」とこぼす。 日本国内にあるスパコンで世界 500 以内に入るのは16台。高性能スパコンを使える大学や企業は少ない。次世代スパコンの計算速度は地球シミュレータを 100倍近く上回る。理化学研究所の次世代スーパーコンピュータ開発実施本部の平尾公彦副本部長は「最先端のデバイスや創薬、材料開発など産業界にも十分に活用してもらえる仕組みを作りたい」と民間への活用を促す考えだ。 巨額の予算を投入して開発する次世代スパコン。十分な成果を出すシナリオ作りにも国民の厳しい視線が注がれている。≫
Dec 11, 2009
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山林に人の手入れが行き届かなくなって、竹林がはびこり問題になっている。では、そもそも人が手入れをする前の原生林は、竹だらけだったろうか?人の手が入らなくなると竹がはびこる今日の環境の仕組みそのものに、きっとどこかおかしなところがあるのだろう。『北國新聞』に、竹退治のことが取り上げられていた。企業ボランティアで取り組みやすいアイテムだと前から思っている。竹退治ボランティアが企業のトレンドになれば、日本の景観は確実に守れると思う。『北國新聞』 社説 平成21年7月7日付≪“竹退治” に助っ人 里山の再生を加速させたい 石川県などが開発した竹林分布を正確に把握する新手法を活用し、県内の山林で急速に広がる竹害を食い止め、里山景観の再生を加速させたい。今回の手法は、最先端の航空機観測技術を使い、他の樹木と混在している竹の分布を把握することで、優先的に駆除が必要な場所が分かり、竹害の拡大を効率良く防ぐ効果が期待できる。新手法を竹林整備に生かし、官民が協力して里山再生の先進県をめざしたい。 国内の竹林は、物干しざおなどの竹製品の生産やタケノコの収穫が主だが、プラスチック製品の普及や安価な中国産タケノコの影響で、国全体で16万ヘクタール程度と言われる竹林面積のうち、かなりの部分が放置状態という。繁殖力旺盛な竹は、杉などを枯らし、生物多様性を脅かすことで知られる。さらに地表から浅い部分に根を張るため土壌を固める力が弱く、土砂崩れとの関連も指摘されている。 このため全国各地で密林状態の竹林を伐採し、日光を山の斜面に当ててカエデやクリを植樹する取り組みが行われている。県内では、曽野綾子さんをリーダーに金沢市の山林で実施された日本財団の「竹切りボランティア」などの活動が推進力となって、地元有志が竹林整備に当たっているのをはじめ、竹粉を使った土質改善策や炭として加工するなど、多方面から竹の再利用に取り組んでいる。 整備された竹林と多種多様な樹木との織りなす里山の景観は、日本の原風景とも言えるだけに、林野庁の事業から草の根まで、活動の領域を広げていきたい。 今回の新手法は衛星などと比べて小回りがきくことから、場所を絞り込んで一層正確に分布状況が把握できるメリットもあり、時間を置いて同地点を観測することで、竹林が拡大する速度を把握し、重要地点の基礎情報を提供できる点に期待が高まる。 進行する竹害に、人力での駆除は 「焼け石に水」 との指摘もあるが、伐採や再利用に取り組むボランティアは、県などと連携を密にして、観測で得た情報を有効活用してほしい。活動を展開する中から 「里山を使いこなす」 発想を広げる意識も高めていきたい。≫
Jul 10, 2009
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「海水からウランを採取する」 という、神様からの贈り物みたいな技術の研究が進んでいる。産経6月29日の1面記事で見て、勤務先の商社に入社したてのころ直属のT課長から聞いた話を思い出した。昭和50年代後半。サウジアラビアに納入した海水淡水化プラントが動きだしていた。(サウジアラビアでは燃料が安いので、減圧蒸留方式、つまり海水を減圧室で加熱して効率的に水蒸気を生み出し、これを冷やして蒸留水に変える方式です。)T課長の上司が思いついた。「海水には金(きん)などの希少性の高い金属が溶け込んでいる。普通の海水から採取しようとしたらコスト高になるが、海水淡水化プラントからの排水なら、水をかなり取り去った濃縮状態の海水だから、金属採取が効率的にできるのではないか」T課長の上司のすごいところは、思いつきを即座に行動に移したことだ。「ただちに、海水淡水化プラントからの排水を取り寄せて、金属採取が可能か確かめよ」と指示を出し、実験させた。結果は「金属採取は、とても無理」ということで、それっきりになったのだけど、絵に描いたような商社マン像で、若いころ聞いて以来わすれられない話になった。*海水からウランを採取する本格的実験の実施場所として、沖縄が候補地になっている。水温が高いほど化学反応が起きやすく、ウラン採取の効率が増すそうだ。7月4日付け 『沖縄タイムス』 の 海水から原発用ウラン採取/沖縄候補地に検討 開発機構 という報道を転載します。≪【東京】 独立行政法人 「日本原子力研究開発機構」 が原子力発電に使用するウランを海水から捕集する実験を沖縄で行うことを検討していることが3日、分かった。同機構は内閣府が公募する最先端研究開発支援プログラムに研究費90億円の補助申請を予定しており、具体化すれば2009年度中に5年間で100キログラムのウランを捕集する実験計画に着手するという。 国内の原子力発電で使用するウラン 8,000 ~ 9,000 トンのほとんどは海外からの輸入に頼っているが、今後価格の上昇が見込まれるため、国内でのウラン採取が課題となっている。 同機構はポリエチレンを加工して海水に化学反応を発生させ、ウランを吸着する捕集材を開発。2001年から3年間、恩納村沖で実験した結果、30日間海底に沈めた1キログラムの捕集材で 1.5 グラムのウランを吸着するデータを集めた。 今後の実験では海底に捕集材を60日間沈め、陸地の施設内でウランを取り出す作業を行う。1回の実験で捕集するウランは約2グラムと予想している。 同機構は恩納村での実験について「黒潮が流れる沖縄は水温が暖かい。水温が高いほど化学反応は起きやすい」と説明。 新たな実験場所として沖縄のほか、九州や四国を候補地に挙げているとした上で、「採取したウランが自然の放射量を超えることはない」 と安全性を強調した。≫*産経新聞6月29日1面報道も転載しておこう。実用化の目標は8年後というから、たのもしい。≪国産ウラン、現実味 低コストで海水から採取 原子力機構 原子力発電の燃料となるウランを海水から採取する技術が実現に近づいている。日本原子力研究開発機構は、最大の課題である採取コストをウランの実勢価格の3倍弱に引き下げる技術を確立した。さらにコストダウンを進め、平成29年の実用化を目指す。日本には年間8千トンのウラン需要があるが、全量を海外に依存している。実現すれば、国産ウランに道を開き、日本のエネルギー安全保障にとっても朗報となる。 ウランは海水1トンに 3.3 ミリグラムの割合で溶け込んでいる。海水中のウランを合計すると、ウラン鉱山の埋蔵量の1千倍にあたる 45 億トンに上るとみられている。 同機構は、放射線を当てることで素材にさまざまな機能を付加するグラフト重合法の応用を進めてきた。その結果、布状のポリエチレン製捕集材を海中に漂わせるだけで、ウランを取り出す技術を確立した。捕集材1キログラム当たり4グラムのウランを採取できる。 最大の課題であるコストは捕集材を8回繰り返して使うことで低減し、ウラン1キログラム当たり 32,000 円程度に引き下げた。ウラン価格は1キログラム= 13,000 円程度で推移しており、採取コストは3倍弱。耐久性の面で、これ以上、捕集材を繰り返して使えないが、捕集材の改良などでさらにコストを引き下げられるとみている。同機構では90億円の費用をかけ、来年からの5年間で100キログラムのウラン採取を目指す実証実験を沖縄で行う計画だ。<注>【グラフト重合法】 繊維や布などの素材に放射線を当てることで、接ぎ木(グラフト)のように、さまざまな性質を付け加える技術。特定の有害物質を付着することもでき、クリーンルーム用のケミカルフィルターなどがこの技術でつくられる。日本原子力研究開発機構はポリエチレン素材にウランを吸着する性質を持つアミドキシム基と呼ばれる機能を付け加えた。≫
Jul 4, 2009
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職場の4人が豚カツを食いながら考えた。飛行機のジェットエンジンに鳥が吸い込まれないように、なぜエンジンの前面に金網を付けないのだろう。ラガーディア空港を飛び立ち、左右のエンジンに鳥を吸い込んで推力を失い、ハドソン川へ不時着したUSエアウェイズ機のニュースがあった日の昼飯時のことである。時速500キロのスピードでドーンとぶつかって来る肉塊。1羽ていどなら一瞬のうちにミンチにしてオシマイだ。ジェットエンジンが止まるほどだから、鳥の群れに突っ込んだのだ。次々にぶち当たる肉塊の衝撃に、ジェットエンジンのブレードが耐えられなかったのだろう。それならジェットエンジンの前面に金網をつけてやるか、あるいはもし金網では鳥の衝撃に耐えられないのであれば、頑丈な棒でできた防護用の格子(こうし)をジェットエンジンの前面に付ければいいではないか。それとも、防護用格子をつけると気流も阻害されて吸気が十分でなくなり、ジェットエンジンの機能に悪影響があるとでもいうのだろうか……。……ふと、4人のうちの1人が言った。「金網や防護用の格子柵が鳥を撥ね返せているうちはいいけれど、1ヶ所でも壊れて金属片が後ろに飛んだらどうなる?」みな、即座に理解した。4人はみな、発電事業に従事している。仕事柄、発電所の蒸気タービンやガスタービンが回転しているところに異物が混入するとブレードが がたがた に損傷して大トラブルになることを、身に沁みて知っている。回転するタービン翼に鳥の肉塊がぶち当たる分には、空飛ぶ挽き肉マシンとして働き続けられればよい。しかし、肉塊をジェットエンジンに入れまいと金網なり格子なりを設けたとして、99羽までうまく撥ね返せたとしても、100羽目の衝撃で金網や格子が壊れて金網のかけらや格子の破片がエンジンに飛び込んだらどうなるか。金網のかけらなどの金属片がブレードに当たれば、致命的だ。ジェットエンジンはあっという間に壊れる。だから、世界中で何百羽、何千羽の鳥を吸い込もうとも、ジェットエンジンの前面にカバーを付けたりせず、オープンなままなのだ。腑に落ちたから、豚カツが一層うまかった。
Jan 16, 2009
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ウルトラ警備隊の隊員が怪獣と戦闘中に地形図が見たくなったら、腕につけたテレビ電話の画面に本部から画像を送ってもらうことになる。腕時計型のテレビ電話というのは、40年前には窮極の情報メカのように思えた。ところが今や、コンタクトレンズの表面に画像を送り込んで、肉眼の視野に地形図を浮かび上がらせることができる……ような新発明の研究が進んでいる。もちろん地形図のみならず、映画であろうがテキストであろうが、テレビ画面に映し出せるものなら何でもOKだ。窮極的には、肉眼の視野すべてをヴァーチュアルなゲームの世界に変えることもできるはずだから、実用から遊びまで需要は無尽蔵だ。普通の人間でありながら、ミュータントかサイボーグみたいな視覚が得られるわけだ。TIME誌の平成20年11月10日号の特集記事 The 50 Best Inventions of the Year (今年の発明ベスト50) に紹介されていた bionic contact lens である。研究チームを率いる、ワシントン大学(シアトル)の Babak Parviz氏:コンタクトレンズの表面に発光ダイオードを埋め込んで、それを光らせて画像を作り出す。いまはまだ試作品だから発光ダイオードの密度も粗いし、画像というには程遠いが、ナノテクノロジーが後押しすれば成功は案外ちかいところにあるのではないか。目下、兎の眼に装着する実験をしているそうだ。平成20年1月17日のものだが、ネット上で詳しい英文記事を見つけた。写真はそこから転載しました。わくわくする発明の可能性って、まだまだあるんだ!
Jan 12, 2009
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「都市鉱山」。携帯電話をはじめ、家電製品などに含まれている様々な稀少金属の資源価値を言ったものだが、具体的にどうやって取り出すのだろう。『日経産業新聞』 の特集企画記事 「持たざる国反撃」 の第2篇 「廃家電こそ鉱山 ― 秋田にリサイクル工場群」 を読んで認識を新たにした。≪ピカピカの新しい炉が二十四時間もくもくと煙を上げている。秋田県北部の小坂(こさか)町で140億円を投じて、DOWAホールディングス子会社の小坂製錬(こさかせいれん)が今春稼働した新製錬設備。ベルトコンベヤーで次々と炉に投入されるのは鉱石ではなく、3センチ角に破砕された携帯電話、工場から出たリードフレームなど電子部材、他の製錬所からの粘土状の残渣物(ざんさぶつ)などだ。≫DOWAホールディングス という社名を知らなかった。グループの総従業員数 4,166名。「同和鉱業」 (こちらは聞いたことがある) が平成18年に改名した。「せいれん」 といえば専ら 「精錬」 と思っていたが、今頃になってようやく学んだ。鉱石からまず 「製錬」 して金属を取り出し、それを 「精錬」 することで純度を上げる、のであった。小坂製錬株式会社 は従業員182名の会社だ。その会社が≪インジウムやビスマスなど希少金属(レアメタル)を含め現在 17種類の金属を回収する。回収量は年間金7トン、銀800トンを計画し、銀では国内需要の約3割を供給する。同様の施設は世界でベルギーのユミコア社などまだ数例という。だがDOWAの構想はそこにとどまらない。目指すのは世界に類をみない 「リサイクル・コンビナート」 の構築だ。小坂町から車で約 40分の秋田県大館(おおだて)市。ソニーなどの電機メーカーと共同出資したエコリサイクル社では、倉庫いっぱいに使用済みのエアコン、テレビ、冷蔵庫、洗濯機が置かれる。≫株式会社エコリサイクル は、DOWAグループが60%、家電メーカー6社 (三洋電機、シャープ、ソニー、日立アプライアンス、富士通ゼネラル、三菱電機) が40%出資している。≪「この部分は銅分が多い」 「こっちは鉄だ」。作業着姿の男たちがドライバーなどの工具を手に黙々と廃家電を解体する。冷蔵庫は銅パイプやアルミ製の熱交換器など10~15の部品に分類。銅やアルミなどの金属分は小坂製錬に運ばれ、地金に生まれ変わる。鉄スクラップも製錬工程で脱酸材として活用する。さらに廃家電から出るウレタンやフロンガスを隣接するグループ会社、エコシステム秋田社に運び焼却。焼却灰は大館市と小坂町の自社の最終処分場で埋め立てる。≫エコシステム秋田株式会社 は正社員67名の会社。サイトを見ると、じつに様々な廃棄物の処理を手がけている。≪廃棄物に含まれる金属資源を指す 「都市鉱山」 では日本は資源大国だ。物質・材料研究機構によると日本には世界埋蔵量に比べ、金が 16%、銀は 22%、レアメタルもインジウムの 61%が製品や廃棄物に存在する。金や銀は世界消費量の2~3年分が眠る計算だ。≫“都市鉱山” でいまグーグル検索すると 66,000件が出た。英語の “urban mine” は3,030件。“廃家電” は 83,400件。ちなみに “廃車” が 5,270,000件、 “廃船” が 49,700件。たぶんこれから 「廃家電」 の検索件数は 「廃車」 並みに激増するはずだ。≪これを掘り起こす技術も持つ。DOWAの前身、藤田組が1884年に政府から払い下げを受けた小坂鉱山は、多種多様な金属を含む 「黒鉱」 と呼ばれる鉱石が主体なのが特徴。耐熱温度などの異なる各金属の効率的な回収に 「丸1世紀努力を積み重ねてきた」 (小坂製錬の山田政雄社長)。鉱山は1994年に閉山したものの、蓄積した技術を廃家電からの金属回収に生かした。≫こうして日本の本領(そこぢから)が都市鉱山の採掘へも生かされる。ぞくっとする。≪天然鉱石のほぼ全量を海外に依存する日本にとって国内資源の活用は生き残りの道でもある。日鉱金属は来年3月までに約100億円を投じ茨城県日立市に 16種類の金属回収工場を建設する方針。三菱マテリアルや三井金属もリサイクル原料の比率を高めている。最大の課題は原料の安定調達。秋田県ではデジタルカメラなど小型家電の回収実験を開始したものの、家庭などに滞留する家電はまだ多い。秋田県北部が 「世界最大の鉱山」 となるには、 「まだ発展途上」 (DOWAの河野正樹社長) のリサイクル技術や回収網の構築などの革新が不可欠だ。≫稀少金属の意図的な輸出制限を、遠からず中国が外交の武器にするに違いないから、稀少金属の備蓄と社会的な再利用システムの確立は国家的課題。そこに、1世紀に及ぶ日本の産業界の技が生かされるというのは、とてもいい話だと思うのだ。
Dec 13, 2008
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中学生のころの夢。サハラ砂漠に太陽電池を並べる。周囲には防砂林。灌漑用水を送るポンプも太陽電池がつくる電力で動かす。できた電気は、石油タンカーならぬ蓄電池船に貯めこんで日本をはじめ電力需要地へ運ぶ。これで、石油が枯渇しても、太陽と土地があるかぎり中東諸国は外貨獲得の道を失わずにすむ。……これを医者志望の同級生に語ったら、こいつがまことに夢のない男で、「だいたい太陽電池というのは、製造のためにつかうエネルギーを太陽光発電で回収できないうちに製品寿命が来るのだ」といって一笑に付しやがった。たしかに当時、今から35年前の太陽電池は、そんなものではあった。*誰に言っても馬鹿にされてきた 「サハラ砂漠の太陽光発電所の夢」 だけど、10月26日の 『日本経済新聞』 科学面を見て、小躍りした。地中海を囲むかたちで基幹送電ケーブルを敷設し、北アフリカ一帯の大規模太陽光発電所から地中海周辺諸国・ヨーロッパ諸国に電力を供給する想像図が描かれているではないか。≪国際エネルギー機関 (IEA) の作業部会が……来年にもサハラ砂漠やゴビ砂漠を舞台に実際の建設を想定した詳細計画を作る。≫≪ユーラシア大陸に広がるゴビ砂漠の半分に太陽電池パネルを敷き詰めれば、地球全体の年間エネルギー需要すべてを賄える――。作業部会はこんな試算をまとめた。≫これも知らなかったが、大阪府の堺市で出力2万8千キロワットの世界最大級の太陽光発電所を来年着工する計画があるという。シャープと関西電力が。狭い大阪府の陸上にそんな空き地はないから、発電所は海上にぷかぷか浮かべるのだろう。これはいい!波の穏やかな瀬戸内海など、浮かぶ太陽光発電所を作るのにもって来いの場所ではないか。未来派イラストレーターの真鍋 博さんの世界だ。
Nov 2, 2008
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燃料用アルコールを、トウモロコシや砂糖キビからではなく雑草から作り出す研究。今年の 「日経地球環境技術賞」 大賞の受賞が決まったと、10月13日の 『日本経済新聞』 が発表した。調べたら、2年前の平成18年9月14日に 「セルロース系バイオマスからのエタノール製造新技術を共同開発」 と題してプレス発表された技術だった。開発したのは、経済産業省認可の特定公益増進法人の地球環境産業技術研究機構 (RITE) と、自動車の HONDA 子会社の本田技術研究所。RITE のバイオ技術を、HONDA が汗をかいて形にした。官民共同研究の鑑だ。雑草などから燃料用アルコールを作る技術は、デュポン社も開発に力を入れていて米国政府から補助金を得ていると 『ニューヨーク・タイムズ』 紙で読んだことがある。RITE と HONDA で先進諸国から正当なる特許権料を得て次の研究につなげてほしい。まともな農作物が作れない湿地に生える葦のような植物がアルコールに変わるわけで、結構なことなのだが、収穫・運搬・製造にかかるエネルギーのほうがアルコールのエネルギーよりも多かった、なんてことになりませんよう。たぶん、これからコストをいかに下げるかの闘いなのだろう。
Oct 14, 2008
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患部は切り取る、作物が病害虫に苦しめば遺伝子操作で別の作物をつくるという発想でいけば地球温暖化対策には 「核の冬」 にあたるものを人工的につくってしまえばよいということになる。「核の冬」 は、核戦争のあと燃え砕けた文明の塵(ちり)がはるか上空まで覆いつくし太陽光が届かなくなった後の寒冷状態。一時期、テレビで想像映像が流されたことがある。ミニ「核の冬」 が阿蘇山ほどの火山の大噴火。火山灰の塵が上空を覆い、地域的な気候を変える。*Geo-engineering という単語を9月20日の 『ニューヨーク・タイムズ』 紙の記事で知った。International modification of the earth’s climate(地球気候の国際的改変)と定義してある。記事は、題して Blocking the Sky to Save the Earth(地球を救うために空をブロックする)地球温暖化対策のために核戦争をやったり、人工的に火山を噴火させたりするわけではない。火山の大噴火と同じ状態を人工的に再現する。成層圏に硫化塩 (sulfate) の粒子を撒き散らして太陽光をさえぎるのである。まことにロジカルで安上がりな解決法だが、強引さに引いてしまう。この研究に補助金を出す政府はほとんどないそうで、科学者の間でも激しい賛否両論がある。オゾン層が破壊されるのではないか。寒冷化と乾燥が行き過ぎたらどうする?いっぽう硫化塩でなく金属やセラミックスでつくった別種の粒子を撒いたらどうか?粒子の流れをうまく制御して、おもに北極と南極の上空を覆わせたらどうか?……という推進派の意見もあるという。地球温暖化は太陽系におかれた地球の数百年単位の気候の周期だろうと、ぼくは思っているのだが、地球の気候を人工的に調整する方法論にはいろいろあるということだ。
Sep 26, 2008
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自動車を炭素繊維でつくる。7~8年以内に量産技術を確立して、コストダウン。車は4割軽量化。きょうの『日本経済新聞』1面トップ記事は、すごいインパクトがある。産業地図が一気に塗り替わることになるかもしれないということだ。今後も永遠に鉄の需要が伸びることを前提に、鉄鉱石の鉱山や原料炭の炭鉱開発に巨額投資している商社だって、これからは炭素繊維とその原料となるアクリル繊維関連にカネを張っておいたほうがいい、という話だ。鉄鉱石や石炭の価格が暴落し、鉄鋼関連の株が暴落し、東レや三菱レイヨン、東洋紡などの株が急騰する。車の軽量化による二酸化炭素削減を、どういうかたちで「日本の成績」として国際社会に認めさせるか。そこが政府の頑張りどころだ。(↑Jul 24, 2008 08:18:44 AM)== 7月26日 追記 ==書いたものを後から見ると、鉄鋼株が即日暴落し、東レ・三菱レイヨン・東洋紡の株が即日急騰すると言っているように読めるから、こわい。24日の朝には、10年がかりの産業地図の塗り替えの果てをイメージしながら書いていたのだが。気になって、実際の株の動きを調べてみた。7月23日終値 → 24日13:15 → 7月24日終値。日経記事言及の、炭素繊維を共同開発する繊維メーカーの株:東レ 562 → 585 → 589三菱レイヨン 339 → 358 → 366東洋紡 207 → 211 → 212同じく日経記事言及の、炭素繊維共同開発参画の自動車メーカーの株:日産自動車 832→835→842ホンダ 3700 → 3790 → 3840トヨタ自動車は共同開発企業に入れられていないが、記事のなかでは≪車体軽量化はトヨタ自動車が車種ごとの数値目標を打ち出すなど各社の最重要課題に浮上。≫という形で言及がある。トヨタ 4870 → 5060 → 5120なんのことはない、ここがいちばん株価を上げている。いっぽう、鉄鋼株はどうか。新日鐵 620 → 619 → 627JFE 5650 → 5580 → 5640後日の理解のため日経記事のリード部分を引用しておこう。≪東レや日産自動車、ホンダ、東京大学などは自動車向けの炭素繊維材料を共同開発する。2010年代半ばをめどに量産技術を確立、車体重量の4分の3を占める鋼材のほとんどを新材料に置き換え現行車より最大4割軽い「炭素繊維カー」の実用化につなげる。ボディーや部品の生産コストを鋼材製並みに引き下げ、車体の軽量化で燃費を約3割改善する。≫記事によれば、経済産業省が5年間で20億円をご支援たまわっちゃうそうだが、不要ではないか。高い実現性・収益性が感じられ、錚々たる大企業が参画する本件に、補助金など要らない。カネをどうしても出したいなら、無言で出資して配当収入を待っていてほしい。なまじっか、ご支援たまわっちゃうと、共同出資会社側が何人もの官僚を高給+秘書+車つきで役員として迎えなきゃいけないんじゃないのかね、日本村の掟では。共同出資会社側は、もらう補助金より官僚受入の負担のほうが大きくて、でも逆らえない……なんてことが、とかくありがちだが、本件ではどうなのか。24日の書き込みでも書いたが、経済産業省をはじめとする日本政府の役目は別のところにある。民間が汗をかいてCO2削減につながる技術を事業化した際に、これをいかに日本国としてのCO2削減貢献の得点としてカウントさせるか。これを多国間で交渉するのが、政府の役目だと思う。いまどき、補助金など、邪魔である。(↑ 補助金をもらいたい会社は、どうか反論してほしい。)
Jul 24, 2008
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あれは小学校の理科だったか、それとも中学校の化学だったか、教科書に出ていた実験がけっきょく実演されなかったのがいまだに残念だ。木炭を太いガラス管に入れて下からアルコールランプで蒸し焼きにする。すると、ガラス管の端からガスが出てくる。火がつく。たぶん、木炭からしみ出るタールがガラス管にこびりついて、後始末がたいへんなのだろう。それを大規模にやろうとしているのが、石炭ガス化だ。石炭をそのままボイラーで燃やして蒸気をつくって蒸気タービンを回すのが従来の石炭発電。新方式は、石炭を反応炉のなかでガス化して、そのガスを吹き入れてガスタービンを回し、余熱で蒸気をつくって蒸気タービンも回すという「1粒で2度おいしい」世界を目指している。効率アップで、二酸化炭素排出が相対的には減る。だから、先進国の発電プラントメーカーはこの「石炭ガス化複合発電」技術の実用化に全力を挙げている。従来型の、石炭を微粉にしてボイラーで燃やすタイプの技術は、1世代前に開発研究が頂点に達してしまい、今では中国メーカーでも最高仕様のものが作れる(基幹部品は日本などから輸入するのだけどね)。だから先進国メーカーは石炭ガス化複合発電に活路を求めている。もちろん、それを売る我々の目も飛び出る高価なものだけど。開発費用を回収しないといけないからね。「石炭をガス化する」化学プラント的な新規部分がお高いのである。日本経済新聞6月17日夕刊1面に、石炭を地中でガス化する次世代技術開発のことが報道されていて、発想の転換にあっと驚いた。石炭というのは、確かに地中でも燃えるのである。中国の山西省では、地表ちかくにある地下の石炭に火がついてくすぶり続け、これを消火することができず手がつけられない状態になっている地域があると、『ニューヨーク・タイムズ』紙で読んだことがある。日経報道の次世代技術は、もっと深い地下にある石炭鉱脈に酸素を吹き込み不完全燃焼させ、水素と一酸化炭素などからなる燃焼ガスを発生させて取り出そうというもの。石炭層の上下にある硬い岩盤が、天然の圧力容器となってくれる。これには、うならされた。≪採掘した石炭をガス化する従来手法に比べ、初期投資は10分の1で済む。5年後をメドに実用化を目指す。≫≪地下深く採掘の難しい石炭を有効活用できる利点もある。≫≪2010年までに試験設備を国内の炭坑に設置し、実効性を確かめる計画で、利用価値の高い天然ガスや水素の割合を増やす技術を開発する。地下水汚染や地盤沈下の防止技術も手がける。≫自分が商社にいるうちには商業化は間に合わないが、こういう未来技術の開発に一生懸命取り組む人たちの息づかいが聞こえるような気がして、わくわくさせられた。
Jun 19, 2008
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低開発国の飢えたる子供たちへの援助食糧として最良のものは何か。現状では、栄養強化した小麦粉が援助食糧の主力だ。国際機関による援助で使われる標準品になっている。栄養からいえば、とりわけ3歳までの子供たちには粉ミルクが望ましいのだが、不衛生な水に溶かしてそのまま飲んだり、溶かしたミルクが腐敗したのを飲んだりすることになり、そのためにかえって命を落とす子供がいる。ミルクは援助に使えないのか?10年前にフランス人のアンドレ・ブリアン(Andre Briend)氏が考案した画期的な栄養食品がある。粉ミルク、すりつぶしたピーナッツ、油脂、砂糖、ビタミン、ミネラル類を混ぜ合わせたもの。保存も容易で、食べるとき水を加える必要もない。(宇宙食みたいですね。)パウチ包装から直接食べられるから、栄養不良の子供を入院させることなく、家で養生(ようじょう)させられる。これが大事なポイントで、救える子供の数が格段に増えるのだそうだ。栄養不良の子供に与えると、9割以上の子供が回復に向うというからすごい。まことにいいことずくめなのだが、栄養強化小麦粉に比べてコストがかかることもあって、「粉ミルク+アルファ」のペースト食品を与えるのは栄養不良が深刻化した子供たちに限定するよう、国連も米国も指針を定めているのだという。低開発国の栄養不良児2千万人のうち、ミルクペースト食品の恩恵にあずかれるのは、わずか3%の60万人だ。援助食糧の質的向上を図ってほしい……と、国境なき医師団(Medecins Sans Frontieres, Doctors Without Borders)のスーザン・シェパード(Susan Shepherd)さんが訴えていた。ちょっと古いが今年1月30日の 『ニューヨーク・タイムズ』 紙。記事によれば、米国は援助用食糧の世界最大の供給国なのだという。きっと、援助用の小麦粉の買い上げが、米国では政治的支出として確立していて、今さら品目を変えられないのだろうなぁ。日本も、国内の酪農農家と米作農家の援助を兼ねて、粉ミルクと米の粉などを混ぜた援助用ペースト食品が作れないものだろうか。パウチ包装には直接、日本の国旗とAID FROM JAPANの文字を印刷しておく。どう横流しされても、パウチ包装から食品を摂取するわけだから、PR効果は絶大だ。ODA予算を使って、日本国内の酪農家・米作農家・食品メーカーを潤しつつ、製品は政府広報の尖兵としてよく働いてくれるだろう。いけると、思いませんか。
Jun 15, 2008
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思い出したのは、NHKが長年かけて開発していたアナログの「高品位テレビ」がデジタルの「ハイビジョン」に席を譲ったときのことだった。デジタルコンピューターと通信が融合することが見えたところで、アナログの高品位テレビの負けは決まった。しかし、せっかくの投資が無駄になるという「メンツ」の次元に議論は堕ちた。アナログ高品位テレビの研究は、いっときずるずると続いた。水素を使う燃料電池車も、アナログ高品位テレビのようなものではないかと思えてきた。白金(はっきん)などの高価なレアメタルの使用が災いして、燃料電池車は1台1億円とさえささやかれている。レアメタルの稀少性は増すばかりだから、燃料電池車というのは原理的に無理なのではないか。6月7日の日経夕刊1面で、まったく別の発想の水素カーが紹介されていた。コストの観点からも実現性に手が届く発明だ。「水素を混ぜることでガソリンの燃焼性能が増し、二酸化炭素の排出量を減らせる」という原理が出発点になっている。ガソリンに3%だけ水素を混合すれば、通常のガソリン車に比べて二酸化炭素を約3割削減できる、とある。どういう原理なのだろう。勉強してみたい。既存の車をガソリン・水素の混合燃焼車へと改造する費用がわずか20~30万円というから、ちょっと行政が支援すれば爆発的に広まる可能性を秘めている。カギになる「水素の運び方」も優れている。液体水素を運ぼうとすると冷却コストがかかる。だから、水素をトルエンなどと化合させて液体化した「有機ハイドライド」を車体に積む。車体の底には小型の水素発生装置が装着され、車の走行時の廃熱で有機ハイドライドから水素を取り出しガソリンに混ぜる。高価なレアメタルをつかった触媒によるのではなく、エンジン廃熱を利用するところがミソだ。この有機ハイドライドが、ガソリンと同じようにタンク車で輸送でき、ガソリンスタンドで供給できるようなシステムを作ることも可能だ、というのも気にいった。高度すぎないから、いまの社会システムをちょっと改造すれば受け入れられる発明。こういうのを待っていたのだ。日経記事によると、≪水素製造装置などを販売する フレイン・エナジー (札幌市)と北海道大学の市川勝名誉教授がいち早く実用化に着手。岡崎市に拠点を置く伊藤レーシングサービスに委託し、自動車への適用を進めてきた≫という。革命より、漸進がいい。これはノリだ。ぼくが商社の経営者なら、いかにしてこの技術応用に商社として食い込むか、担当部門に直ちに投資の伺いを書かせるね。
Jun 7, 2008
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人間や家畜の口に入るべき玉蜀黍(とうもろこし)や砂糖黍(さとうきび)を、車輌のエンジンで燃やす材料に使うという今日の「バイオ燃料」のありかたは、偽善的で嫌いだ。ところが、その代替作物(?)としてもてはやされている植物も、そらおそろしい問題を抱えているという。ひとつが、暖竹(だんちく)ないし葦竹(よしたけ)と呼ばれる、高さ3~7メートルにまで伸びる多年草。こんな植物です(写真は Wikipediaから)。英語では giant reed(巨人葦 きょじんあし)と呼ばれる。欧州連合(EU)は、この栽培に補助金を出していて「バイオマス作物のチャンピオン」と持ち上げている。米国フロリダ州でも大々的な栽培の計画がある。ところが5月21日『ニューヨーク・タイムズ』紙の Elisabeth Rosenthal 記者の記事 New Trend in Biofuels Has New Risks (バイオ燃料の新流行に新たなリスクあり) によると、暖竹はけっこう怖い作物らしいのだ。猛烈に水を吸って、想定外のところに根を広げる。そして燃えやすい。ふつうの農作物が作れない湿地帯めいた荒地に暖竹を植えた途端に大繁殖して、水は干上がり排水路は詰まる……ということになりかねないという。もうひとつ、もてはやされているのが南洋油桐(なんようあぶらぎり)。英語では jatropha という。手元の辞書には出てなかったけどね。↑ こんな植物です(写真は Wikipedia から)。この作物の種子が30~40%の油分を含んでいて、これを絞って化学処理して精製すると、ディーゼル油として使える。まことにけっこうな話なのだが、じつはこの種子が毒を含んでおり、かつ農地や牧草地に植えると爆発的に広がる可能性があるという。↓ こんな種子ですが。価値観の転換に乗った新たな農作物というのは、いろんな落とし穴を抱えているということ。複眼の目で対処しないと、こわい。
May 23, 2008
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「動物を倫理的に扱おう会」(People for the Ethical Treatment of Animals) という団体が100万ドルの懸賞つきで 人工培養肉の商業化を と訴えている。後述のとおり、賞金をもらうための条件を読むとものすごくハードルが高いが。構想は手塚治虫の漫画『火の鳥』の人工生命工場の一場面よりも気味が悪い。大豆から合成する肉では満足できない一般人のために、ぷよぷよとした食肉を生物学的に培養することで、大脳つきで生きていた生きものの肉と組成的に変わらないしろものを作れないか ――それができれば、食肉用に劣悪条件で飼育され残酷に殺害される家畜の悲劇をこの世からなくすことができる ――『ニューヨーク・タイムズ』紙の4月23日の社説が 「百万ドルの肉 Million-Dollar Meat」 と題して論じていたが、味があった。飼育と屠殺の条件改善という根本の趣旨には賛成しつつも「食肉が培養タンクで製造されることで、家畜の群れがこの世から消えてしまうとすれば、それも味気ない殺伐とした世界だ。いま存在する家畜たちがこの世に生まれ育てられてきたのもまた、人間の営みあればこそなのだが」と結んでいる。「この世に存在する」 こと自体がひとつの幸せなのであるという基督教の常識を下敷きにして論じているように思えた。食肉が人工培養で作られるとなると、屠殺というゴールのためとはいえとにかくもこの世に生をうけるしあわせを、畜獣たちはもう得ることができないのか?さて、「動物を倫理的に扱おう会」の懸賞金100万ドルの条件は厳しい。細胞分裂が進んで機能分化する前の原初的な細胞(幹細胞 stem cell)を培養する実験は生物学の世界で行われてはいる。それを大規模に商業ベースで行えるようにしてくれというのだが、懸賞期限は4年後の平成24年6月30日。フライドチキンにして試食しても本物と区別がつかないようなものを、一般販売可能なコストで作れるようにし、必要な認可を得たうえで少なくとも10の州で実際に販売するのが、懸賞の条件だ。懸賞金の100万ドルを採算に織り込んでもとても難しいと思うが、世の中の研究開発を加速するきっかけをつくる提案にはなっている。工場のなかでぷよぷよと培養肉が育つ光景を想像すると不気味だ。だが、考えてみると醤油や酒の醸造だって液体のなかで微生物がうごめきあふれている。われわれがウルトラマンの目をもっていれば醸造桶のなかも同じように不気味かもしれない。
Apr 24, 2008
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心臓をスキャンすると、まるで本物を体内から切除して目の前に取り出してきたみたいに、“もこっ”とした内臓のようすを全方向から観察できる。心臓表面に這う太い血管まで鮮明に見わけられる。……そんなすごいCTスキャン装置(電脳断層撮影装置)をオランダのフィリップス社が開発した。どのくらいすごいか、↓ ちょっとこの絵を見て!http://www.hearttalks.com/research/brilliance-ict-scanner-new-super-heart-scanner/X線の照射時間は1回あたり数ミリ秒(千分の数秒)。1つの立体画像のために、撮影対象を256層に切り分けて映像化する。つまり、撮影部位を少しずつ移していきながら数ミリ秒の照射を256回繰り返すことで立体画像を得るわけですね。上に紹介したサイトによれば、256回のX線照射を終えるために必要な時間がわずか0.3秒ということなので、そうすると0.3秒あたり1コマの動画として体内臓器の動きを見ることができるということなのかも。商品の名前は 256-slice Brilliance iCT scanner というのだそうです。このニュース、わたしは11月27日付『自由時報』(台湾の大手紙)の国際面で見ました。ネット検索しても、どうも日本での報道がないようですが。↓ さらに驚きの画像をどうぞ。http://www.healthjockey.com/2007/11/26/phillips-brilliance-ict-scanner-offers-3d-images-of-human-body/骨盤のあたりを撮影したものは、脚部へ延びる動脈や“もこもこ”とした大腸のようすまで、まるで人体模型のようにはっきり見えています。頭部のスキャン画像では、頭蓋骨とその表面を這う血管まで見えて、おそろしくなります。肺のスキャン画像など、禁煙したくてもできない「屁ヴィー・ス猛家ァ」諸氏に見せてあげると効果覿面(てきめん)でしょうね。
Nov 27, 2007
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