死んだ父の、趣味のひとつが水墨画だった
たっぷりと水を含ませた絵筆に、ちょこちょこっと墨を付けて
ダーーーーーッっと色紙の上に踊らす
絶妙な濃淡をたたえながら
花が咲き、凧が舞い、ウサギが跳ねて、竹はその葉を藪かせた
僕は地方の芸術大学に学んだが
いつまでたっても独学だった父のデッサン力には敵わないような気がしてる
夕暮れの車窓から眺めると
遠くの山に、雨をたたえた雲が幾重にも幾重にも覆いかぶさっている
水分をたっぷり含んだモノトーンの景色を見ていたら
30年も前の、父のタッチを思い出した
雨なのか、
雲なのか
霧なのか
わからない
とにかく、靄(もや)が掛かっている
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ken_wettonさんComments