色季彩

2007.03.21
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何年か前の9月のある日

ソフトボール大会だったと思う。

早朝から主婦たちは
公民館に集まりおにぎりや
漬物などをモロブタ(四角い箱)に
入れて昼食の準備をする。

大会が終わると公民館で打ち上げをする
三つに分かれている集落で


大体50人くらい集まっていたと思う。
皆が揃うと大きなたるに氷を入れて冷やし
ビールのケースはだんだんと
空のビンになってしまう

私たち若い方の主婦は
次々と栓を抜いて注いで回る

その日の話題などで盛り上がり
男の人たちは役員さんの家で
二次会にでまた飲む。

かなりのビールが消費される。

みんなで飲んでいるときは

帰ってくると
気に入らなかったことを思い出すのか

家でも飲みながら
話をしているうちに急に怒り出す。

どこの何が気に入らなかったのか


そして私への不満をぶつける
あまり良い顔をして聞かないし
聞かない風にしていると怒り出して
食卓をひっくり返して
食べ物や食器類をばら撒く

毎度のことなので
黙って片付けていくと
「お前まで俺をバカにするのか」と
殴りかかってくる

それからは引きずり回し殴る蹴る
それでもどこか冷静な部分があるのか
顔など目に付くところは手を出さず
肩から足にかけて
あざだらけ擦り傷だらけになる。

私は娘たちが出てこないように声を出さずに
ただうずくまって耐えて
この時間が過ぎるのを待つだけだった。

不思議と慣れていくと痛みはさほど感じなくなる

「これは私じゃない違う人のことで
私はそこに立って見ている」

そんなことを考えているうちに本当に
別人格のようなものができて
殴られ蹴られしている私を私が冷静に見ている
姿を見るようになる。

私の日頃の接し方が悪いからと思い
かいがいしく尽くしてみる。

日頃のやりくりが悪いと思い
仕事に出てみる

自営業の仕事に私の仕事に家の仕事
子供たちの学校や子ども会の行事などで
自分の事を冷静に考える余裕など無くなってくる

どうやったら飲まなくなるのか
いろいろと思案し
しらふのときにくどくどと
言っていたこともあったと思う。

何をしてもだめだとあきらめたときには
会話もほとんどなくなっていた。
今思うと子供の人生に傷をつけていたと思う。

それが一番辛い

長男が荒れだして
夫と一緒に喧嘩したり
暴力を振るうようになると
家庭は崩壊していた。

行事が終わり二次会も終わり
二人の酔っ払いが帰ってくる
恐怖と戦慄の時間が来る。

夫は言いたいことだけ怒鳴り、
寝てしまったので
一人は片付いたと安心。

もう一人が帰ってくる
身構えて時間を過ぎるのを待つ

恐怖でおびえる私の様子が
気に入らないのか面白いのか
暴れ周り、車を蹴る、窓ガラスを割っていく
あまりのことに長女も出てきてとめる。

娘にとめられるはずも無いのだから
出てきてもらいたくなかった。
娘たちに暴力を振るわれるのが一番憎らしかった

長女の顔を殴りつける
なんという情けないことだろう。

夫は酔いつぶれて、起きないので親戚を呼んでくる
親戚も度々のことなので良い顔をしないが
頼るところといえば主人の親戚しかいない。

親戚の人に病院に連れて行ってもらう
手の傷を何針か縫ってその日は入院する
医師は筋が切れているかもしれないといっていた。

手を使えなくなるとかわいそうだなぁ
などと考えていたが
酔って汚い顔を見ると私の感情も死んでいた。

家に帰るとガラスが散らばり
それを片付けていくうちに
心の中に何かが沸騰した

娘に手を出した長男が憎らしくてたまらなかった。
それを止められもせずに酔いつぶれている夫
殺意が沸いてきた。

殺してやろうこのガラスで夫を殺してやろう
ガラスを握り締めると
手のひらから血が滴り落ちてくる。

長男を帰るのを待ってあいつも殺してやろう。

まずは夫の傍らに座って
のどを掻ききってやろうと顔を見てしまった
顔を見てしまうと
飲まなければ良いお父さんである
この人を殺すわけには行かない。

自分が死のうと思った
手首とのどに当てて引いてみた

思うほどに切れなかった

娘たちごめんね
しんのすけ君ごめんね
もうお母さんは限界だよ

このままではいつか殺人者になる
あるいは私が殺される

それよりもこのまま身を隠そう

妙に冷静な気持ちで車を出す
トランクにはいつも着替えと
仕事着を入れていた。

そのまま現在まで
その家には帰っていない

娘の話では
雑草や植えてある木が生い茂り
家の中も荒れて足の踏み場も無く
とても素足では入れる状態ではないらしい。

長女がしんのすけ君を連れてきてくれた
そのときは
ただ預けるだけだから
私が飼える様になったら返して

と言っていたが
今更しんのすけ君を手放す気持ちは毛頭ない。
それなら死んだ方がましだ。

二回死に損なっているから
死ぬこと自体には抵抗は無い

一度薬を全部ビール三本で飲んで
病院に強制入院させられたときがある。

医師が家にいると危険なので
入院を勧められて何度か入院もした事があるが
退院してまたもとの生活に戻る
恐怖感の方が精神的に負担だった
入院は患者さんたちに気を使って
何の役にも立たなかった。

今でも寝た不利をして
布団をかぶっている自分の
硬くなってじっと時間が過ぎ去るのを待つ
恐怖心からの鼓動と震えを
感じるときがある。

手が震えるときがある

手首や腕には傷痕がある

アルコール依存症と戦った
証のようなものだ。

なんと考えようと
自分だけが助かるために
娘をそんな環境に捨てた
自分勝手な母親だ

ゆったりと暮らしていけるはずも無い
自分を許すことができたのはほんの数日前
妙に吹っ切れた瞬間があった。









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Last updated  2007.03.21 06:59:19
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