波と戯れるように  風に揺れるように

波と戯れるように 風に揺れるように

2006年03月18日
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テーマ: 寂寞の中で(1008)


毎日 楽しく野山を駆け回っていました。

そろそろ 大人になり一人立ちの日が近づいてきました。

でも 二匹とも離れる事がどうしても嫌で悩みました。

「ねぇ 私 コン太のお嫁さんになる」

「だめだよ 僕たちはキョウダイなんだから 出来ないよ」

「でも 私 コン太の側を離れるのはいや」

「大丈夫だよ コン子が安心して暮らせるように僕が見守っていてあげるから」

しかし、二匹は親狐から離れ 一人立ちをして離れ離れになりました。

ある日 コン子は美味しそうな乾し肉を見つけました。

「こんな所に 美味しそう。 全部私が食べたら、
 そうだ コン太に持っていってあげよう。」

コン子は乾し肉を集め始めました。

「あ こっちにも ここにも」

夢中で集めているうちに なんと 人間の仕掛けた檻わなに入ってしまいました。

慌てたコン子は叫びました。

キャィィン キュウッゥゥ  キャキャィィン

悲しい叫び声は山々を越え コン太の住む山まで響きました。
コン太は慌ててコン子の住む山へ走りましたがコン子の様子を見て驚きました。

檻わなの中のコン子。

コン太は夢中になって檻の周りを走り回りましたがどうする事も出来ません。
そうだ穴を掘ろうとコン太は檻のすぐ側を掘り始めてあともう少しのところで
ワナの点検に来た人間に見つかってしまいました。

「しめた 二匹の狐だ」

猟師はコン太に銃をむけ 一発。

キャィィン と 一声あげて コン太はその場に倒れこみました。

猟師はコン太を担ぐと コン子に縄をつけ家に連れて帰りました。
コン子は猟師から餌をもらい 飼われる事になりましたが、猟師の餌に
口をつけようとしません。どうしても餌を食べようとしません、餌どころか
水さえも飲もうとしないのです。
コン子は日増しにやせ衰えてきました。

意識がもうろうとする中でコン子はコン太の夢を見ました。
懐かしい野山 遊びまわった茂みの中 始めて見て驚いたヘビ
コン太が優しく笑いかけます。

「むかへに行くよ もう 一匹じゃないよ いつでも一緒だよ」

夜の戸張が下りて 月が辺りを明るく照らし始めた頃
月が出ているのに 雨がしとしと なにか悲しむように降り出しはじめました。

すると 山の端にポッと揺れる火が 
二つの火が嬉しそうに 寄り添いながら山の上の方へ
その道すがら いくつモノ火が 点 てんと 

キツネ火です。

キツネ火がいくつも いくつも 揺れて 二つのキツネ火を
優しく包んでいるようです。

コン子の手には宵待ち草の花束がしっかりと握られて 
嬉しそうにコン太と並んで歩く姿が月の光に照らし出されて、
二匹の結婚式です。

お月夜なのに雨が降ることがあったら それはコン太とコン子の結婚式。

そんな晩はそっと静かに耳を傾けてみて。

二匹のささやかな笑い声が聞えてきますよ。

そして 山の端にはきつね火が。





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最終更新日  2006年04月02日 02時56分02秒
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