商談で度々日本を訪れるという30代の米国人ビジネスマンは、心底感心した様子でいう。
「日本は公共の場所に必ずゴミ箱があるし、観光地ではゴミを持ち帰るルールも浸透している。本当にどこへ行っても街がキレイですね」
何気なく暮らしていると気付きにくいことも少なくない。
「日本人はエレベーターで見ず知らずの人にも『開』ボタンを押して先を譲りますよね。エスカレーターなら、どこにも何も書いてないのに片側をきちんと空けて急ぐ人のための道をつくっている。オ・モ・テ・ナ・シの国なんだなって思います」(シンガポール出身の女子学生)
たとえば東京は物価の高さからいえば、決して暮らしやすいとはいえない都市だし、満員電車や渋滞でも悪名高い。それでも、感心することは多いという。香港から赴任している40代の証券マンの声だ。
「車列に入れてもらったり、道を譲ってもらった時に多くのクルマがハザードを点けてありがとうのサインをしますね。最初は意味がわからなかったのですが、みんな渋滞でイライラしてるはずなのにあくまで協調性を失わない。
有名なお店に並ぶ時の行列もそうですね。誰もインチキして順番を飛ばそうとしたりしないで大人しく待ってる。素晴らしいですよ」
近頃はベビーカーで電車に乗ることの是非が論争になったりもしたが、外国人にとっては電車内でのマナーも概ね好評といえそうだ。前出の米国人ビジネスマン。
「朝のラッシュ時でも知らない人同士が見事に綺麗に並んでまず乗客を先に降ろし、間髪入れずに乗り込む。流れを阻害する要因が極めて少ないからこそダイヤは正確なわけですからね。夜は迷惑な酔っ払いをたまに見ますが(笑い)絶対数はすごく少ないし、女性が深夜にひとりで乗っても問題ない。みんな譲り合って坐ってますものね」
日本人のモラルの低下が叫ばれることもままあるなか、外国人からみればまだまだ品位は保たれているようでひと安心である。
外資系予約サイトがかつてホテルの従業員に行なったアンケートによると、宿泊客としての日本人のマナーはイギリス、カナダ、ドイツ人らを抑えて圧倒的な1位だった。もともとの意識の高さに加え、ルールを順守する精神も強いがゆえなのだろう。
日本人の適応性が顕著に現れているといえそうなのが、分煙ルールではないか。
まだまだ満足するレベルにはないとする手厳しい向きもあろうが、千代田区で路上喫煙が禁止されてからのこの約10年 、喫煙環境は様変わりし、駅のまわりや飲食店等でも様々なかたちの分煙環境を目にするようになった。それとともに、一昔前と比べれば、喫煙者のマナーも向上している。
日本駐在となった夫ともに8年前に来日した米国人女性はこんな言い方をした。
「日本人が分煙に取り組むスピード、その緻密さは凄いと思います。 アメリカでは、建物内を全面禁煙にしても屋外には特に厳密な制限は設けていないので、ニューヨークでもLAでもビルの外ではみんな適当にプカプカやってますし、ポイ捨ても少なからずある。でも、日本人はいったん分煙すると決めたら、喫煙所をきっちりつくってそこに集まって本当にお行儀よく吸いますよね。
コンビニに行けば携帯灰皿は必ず売ってますし、空港や高速道路のサービスエリアの最新型の喫煙所なんてアメリカとは違って、屋外であっても、きっちり屋根や壁もあり、空気清浄機まで入っている所もありますよね。 あれを見るとクールジャパンを実感しますよ」
2020年の五輪は、東京が世界のモデル都市であることをアピールする場になる。「日本人のマナー劣化」は避けたいものだ。
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