必要以上に蓄えられている内臓脂肪

赤ちゃんが寒さで震えているのを見たことはないと思います。なぜなら、赤ちゃんは内臓脂肪のかたまりだからです。同様に、冬眠する動物も内臓脂肪のかたまりで、食べるものの冬の間じゅう洞窟の中で眠って過ごして凍死することがないのです。
 冬眠する動物は、冬眠に入る前にドングリなどの木の実を沢山食べます。ドングリはイベリコ豚のエサになることからもわかるように大変高カロリーなのです。内臓脂肪をたっぷり体に蓄え、雪の洞窟の中で内臓脂肪を燃やしながら体温を上げて、ひと冬過ごします。

 絶えず飢えや寒さの危機にさらされていた私たち人類の祖先も、同様でした。過酷な環境を生き抜くためには、体内にどれだけ内臓脂肪を蓄えるほど、生存に有利だったわけです。
 ところが、現代の私たちは、寒ければ厚着をし、いろいろな暖房の手段もあります。冬の間も、寒さに震えるという環境は、ほとんどなくなりました。それにも関わらず、私たちの体はは食べすぎて内臓脂肪をたくさん蓄えてしまっていますから、暑さ寒さに関係なく1年じゅう内臓脂肪を燃やし続けなければなければならない状態にあるとも言えます。
 電車の中で、冬でも大汗をかいているメタボ体型の人を見かけます。そうした人は、一生懸命に内臓脂肪を燃やしている最中というわけです。更年期の女性が熱くもないのに、突然カーッとのぼせて汗をかくのも、体が男性化して内臓脂肪を燃やしているからです。

 このように、本来、内臓脂肪は一時的な「飢えや寒さ」の備えて体内の蓄えておくべきものでした。ところが飽食の時代の現代では、過剰に蓄えられた内臓脂肪が、四六時中、燃え続けるようになっていました。
 そのたっめ、余分な内臓脂肪をため込んでいる人は、季節を問わず、しょっちゅう汗をかくわけですが、ここで問題になるのは、それだけではありません。物が燃える時には、必ず、スス(煤)が発生します。内臓脂肪も例外ではありません。このすすが、実は私たちの体に、大きなダメージを与えているのです。
 内臓脂肪が燃焼する際に発生するススを、伊賀的には「サイトカイン」と呼びます。そのサイトカインはそもそも原始的な動物に備わっている免疫物質です。
 外から菌や毒物などが買い内に入ってきたとき、リンパ球はこのサイトカインという攻撃物質を出して、それらの敵に立ち向かいます。サイトカインは、外から悪者に体の中から対抗するためいわば「武器」ともいうべきものです。
 ところが、このサイトカインには、自己と外的との見分けがつかないという弱点があります。そのため、敵が体内に入ったときに、敵に向かって放った弾で、時分自身をも傷つけてしまうということになるわけです。 体内で内臓脂肪が燃焼している最中にも、内臓脂肪から「アデイポサイトカイン」というススが発生し、私たちの血管の内皮細胞を盛んに傷つけています。傷ついた血管にできたかさぶたは血管を硬く変化させて「動脈硬化」を起こすのです。アデイポサイトカインには、血管の柔軟性を保ち、動脈硬化を予防する『善玉アデイポサイトカイン(アデイポネクチン)と血栓(血液のかたまり)を作りやすくし、動脈硬化を促進させる(悪玉アデイポサイトカイン」があります。
 正常な状態では、善玉の分泌量が減り、悪玉が過剰に分泌されています。メタボ体型の人が動脈硬化を起こしやすく、心臓病や脳卒中を起こす割合が非常に多いというのも、内臓脂肪を燃やす際に出るススである悪玉アデイポサイトカインが、身近らの血管を痛めつけているからにほかありません。
 人類を飢えや寒さから守るために発達した内臓脂肪が、飽食という新たな環境下で何勝した結果、寿命をちじめるというのは、本当の話です。<
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