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マリアビートル 伊坂幸太郎

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以前読んだグラスホッパーの登場人物が何人か出ていて、「殺し屋達の狂想曲」ていかにも伊坂ワールドのコピーがついたので即買いしてしまった。

ただ今回は、何故だかわからないけど、読むのに時間がかかってしまった。


王子と呼ばれる、心理を巧みに操る中学生が悪の権化として登場しているのだが、あまりに上手に大人の心を手玉にとり、リアリティーに乏しい感じに違和感を感じた。

特に、手玉に取られる側があまりに簡単に服従してしまいい、普通なら切れてもおかしくないて所もすんなり従ってしまう。
他の登場人物にもリアリティーに欠けるとこは多々あるが、しっかりとキャラクター設定がされててスマートでかっこよく、王子みたいな違和感を感じなかった。
ただ王子がいないとこのストーリーは成り立たないし、もしかしたら、読者に特に意識させるための作者の狙いかもしれない。

最後の七尾《天道虫》のスーパーでの抽選会での落ちは、落語みたいに綺麗にまとまっていて最後まで読んで良かったと思わせる内容だった。

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それから、槿「アサガオ」のてんとう虫に対する描写が素晴らしかったので以下引用、

「マリア様の七つの悲しみを背負って飛んでいく。だから、てんとう虫はレディビートルと呼ばれる。
七つの悲しみが具体的に何を指すのか、槿は知らない。が、あのてんとう虫が、世の中の悲しみを黒い斑点に置き換え、鮮やかな赤の背中にそっと乗せ、葉や花の突端まで昇って行くのだと言われれば、そのような健気さを感じる事はできた。てんとう虫はこれより上に行けないというところまでいくと、覚悟を決めるためなのだろうか、動きを止める。一呼吸開けた後、赤い外殻をぱかりと開き、伸ばした翅を羽ばたかせ、飛ぶ。見ている者は、その斑点ほどの小ささではあるが、自分の悲しみを持ち去ってくれた、と思うことができる。」


平易な文章でここまで文学的に書ける技術は作者ならではだ。


自分が読んだ伊坂作品の中では、あまり評価できなかった(他が素晴らしすぎたので)が、
文章にも会話にも、さりげない比喩や真理が詰まっていて、それを探すのも伊坂作品の醍醐味だ。




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