2014年07月28日
おとうと 山田洋次監督
2010年、松竹配給原作幸田文、山田洋次監督の映画で興行収入は21億円。
第60回ベルリン国際映画祭特別功労賞(ベルリナーレ・カメラ)受賞。
吉永小百合はそれにしてもすごい。
時代が自分らの世代とはかけ離れた、往年の大女優なのに、少しも古臭くなく、奥ゆかしさと魔力を持っている。
吟子(吉永小百合)が酒癖の悪い弟の鉄郎(笑福亭鶴瓶)に小春(蒼井優)の結婚式を台無しにされ、おとうとの借金130万をなけなく肩代わりをし、一時は縁をきると言って突き放してしまったが、そんなどうしようもない弟が気になり、捜索願を出し、再開をはたす物語。
淡々と進んでいくストーリーの中に、侘び寂びがあり、退屈する事無く、一気に観る事が出来た。
東京の郊外でほそぼそと薬局を女手一人で営む吟子の、昔ながらの商店街や近所との付き合いは、話の筋とは関係なく観ていてホッコリする。
縁を切ったはずの弟が、病院に運ばれたという連絡を受け、小春の制止を振り切り、大阪に向かう。
そこで変わり果てた姿を、見られたくないと、吟子を遠ざけるが、やっぱり嬉しかったのだろう、次の日には打ち解けわだかまりがとれる。
そこには、離れていても姉弟の見えない絆の存在が、はっきりと表れていて、弟と離れて暮らす自分もすごく共感出来た。
弟の最期、吟子は鉄郎の食べたいといって注文した鍋焼きうどんを一緒に食べ、夜中に目が覚めるという鉄郎の手と吟子の手を、リボンで繋ぐ。
このシーンは、山田洋次監督が、1960年に『おとうと』を撮った市川崑監督にオマージュとして捧げられた。
リボンで結びながら「おおきに」「おおきに」と何度もいう鉄郎には、吟子はもちろん、観ている人もみんなつい許してしまう。
どんな人生を送ろうが、死ぬ間際にみんなに「頑張ったね。お疲れ様」といわれる人生の最期は決して悪いものではない。
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