2014年08月11日
好きだ、 監督 石川寛
自分が映画監督だったら、こんな作品をこんな役者を使い、こんな演出で、一度は撮ってみたい、観賞後、そう思わせる作品だった。
評価や興行成績は、監督にとってどうでもよくて、こんな作品を撮ったんだぞ、というのを一部の理解者だけに、嫉妬されることを望んでるかのように自分には感じた。
僕も嫉妬した一部の理解者だ。
ちなみに作品は、2003年撮影・2005年製作の日本映画。第1回ニュー・モントリオール国際映画祭のコンペティション部門に出品され、監督賞を受賞している。
17歳の頃の二人の日常と、34歳になってからの再会を描いたもの。
ストーリーは、変化や展開が少なく、台詞も少なく、単調で退屈な部分がある。
後で調べえたら台本はあってないようなものだったらしい。
ワンシーンは長めなのだが、そのワンシーンを撮るのに数時間費やしたりしたみたいだ。
作品を生産という点においては、極めて効率が悪い。
けれど、宮崎あおいと瑛太のキスシーンは、この手法でないとあそこまでの透明感は出せないと思う。
役者も演じてるというより、本人達のリアルストーリーにさえ感じる力を画面に感じた。
恋愛青春映画の青い空、爽快感、そういうものとは真逆で、曇り空と陰鬱、横顔を写す影、そんな空気感がある。
34歳になってからもこの空気感は続く。
「好きだ、」というタイトルと宮崎あおいや永作博美、瑛太、西島秀俊という豪華なキャストで釣られて観た方で、想像と違うと思った方もいるだろう。
その裏切りさえも、自分には心地よく感じた。
この映画は、17歳が観る映画ではなくて、34歳が観るべきだろう。
人生に光と影があるなら、影の部分を突き詰めようとしている。
けれど、ラストにわずかながらの光も照らされて救われる。
どことなく村上春樹の「ノルウェイの森」の世界観を思い起こさせた。
いずれにしても、この作品に自分は嫉妬し続けている。
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