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勝負哲学 岡田武史 羽生喜治






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熾烈な勝負の世界で勝つこと、勝ち続けることを求められてきた二人の、討論形式の一冊。

日本のサッカーを世界のベスト16まで導いた勝負師、元日本代表監督岡田武史氏。

フランスワールドカップではカズ(三浦知良)を代表から外したり、南アフリカワールドカップでは中村俊輔をスタメンから外したりと、ここぞというところで大胆な采配をし、それなりの結果を残してきた。

賛否両論あるだろうが、個人的に好きな監督だ。この本を読んでさらに好きになった。

ぜひ、欧州などの中堅クラブなんかで指揮をとってもらって更なる高みを目指してほしい。

そして日本人監督のステイタスもあがればいいのになあと思っている。



一方、中学3年でプロデビューをして、数々のタイトル、永世称号、賞金王を獲得してきた羽生喜治氏。

1996年に将棋界初の7タイトル(竜王、名人、棋聖、王位、王座、棋王、王将)を独占するという前人未踏の偉業を達成。

2012年には通算タイトル数が歴代1位になった、稀有の天才棋士。

自分にとっては、小さい頃、将棋を遊びの一環として、祖父に教わった将棋。

テレビに映る彼の破竹の勢いは、将棋の深みも面白さもわかってなかった子供にとっても、地味な日本人の姿を借りたとんでもない異性人にも見えた。


ただ、本書で氏曰く、
「プロの棋士は何百手も先まで読んで最善の一手を指す−将棋指しに対して、そんな超人的な抱いてる人が少なくないようですが、それは美しい誤解にすぎません。実際には十手先の局面の予想さえ困難なんです。
というのは、将棋ではひとつの局面で平均八十通りくらい指せる手があるといわれますが、その中から次の手の候補を三つくらいに絞ったとしても、十手先の局面は三の十乗で六万通り近くなってしまいます。しかも、相手があることですから、互いの予想を裏切る手、互いの有利性を消す‘意表の手‘をくり出しあいます。すると盤面は幾何級数的に複雑化していき、正確に先を読むことなど、たとえ十手先でもほとんど不可能になってしまいます。
*中略*
ほんとうの勝負が始まるのはそのロジックの限界点からなんです」

これは、ほんとに意外だった。

先の先まで読むからこそ、正座をし難しい顔をして長考するものなのだと思っていた。

それに、加えて結局は直感なのだというから、驚きだ。

ただ、もちろん、その感は今まで打ってきた多くの経験から、醸造されたものでしかない。

あとで、振り返ってもどうしてあの手をさしたのか覚えていなかったり、うまく説明できなかったりするらしい。

いわゆる、ゾーンというやつにはいっているのだろう。



岡田さんもあらゆるケースをアクシデントを想定して、指揮する理論派なのだが、結局、最後のところは、直感なのだという。

偶然やアクシデントが起こる可能性は、将棋よりはるかに高い。

攻守がめまぐるしくかわり、審判や風向き、怪我など、あげればきりがなく、スポーツの中でもフロックによるところが大きい。


そこにはやっぱり、選手時代の経験から、いろんなチームでの監督経験、選手との信頼関係、哲学、ありとあらゆるピースが重なりあって、ひとつの直感力を形成しているのだろう。

将棋とサッカー、全く異次元の競技でのつばぜり合い、一読の価値ある。

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