山口県のある街から彼女を載せて
車で大分県の別府市から大分市のほうに
向かっていた時にシェルブールの雨傘が
ラジオから流れてきました。

もう思い出すのも難しい遠い昔の話です。
宮崎市で彼女と一緒に暮らそうと
約束をしていました。
その人が隣に座っています。
いざ行動を起こせば二人とも希望よりも
不安が大きく黙りこくっていました。




まあ、この頃20歳を少し出た頃で世の中を知らぬがゆえに
恐れも知らない時期でした。会社も家も嫌で全てを
投げ出して全く違う場所で違う人生を歩きたいと
思っていました。




折しも、丁度雨が降ってきました。
車のラジオから流れてくるシェルブールの雨傘は
サウンドトラックでなくて、アンディーウィリアムスか
フランクシナトラだったような気がします。

彼女がふいに泣き始めました。
大分市の駅近くで車を留めてコーヒーを
飲みながら彼女が泣き止むのを待ちました。
彼女は家に病気の父親を置いて出てきたのでした。

察しが悪い自分でも彼女が何を思っているか、
なぜ泣いているのか、くらいは分かりました。

結局、彼女と宮崎までは行かずに引き返しました。
父一人、娘一人の家庭ではあまりに
辛すぎる宮崎行きでした。そんなこと、何度も話したのに・・・
何度も納得していた筈なのに・・・
やはり出来ないことでした。

映画「シェルブールの雨傘」は恋人が2年間兵役にとられ、
その間に彼女が別の男と結婚、二人は互いに違う人生を
歩き始める・・・という物語であったと思います。


当時のことも曖昧になるくらい時間が過ぎてしまっています。
しかし、シェルブールの雨傘は当時の辛い思い出が
蘇る曲です。思えば無謀なこともしてきたものです。
今、少し酔っています・・・・・そんな時代もありました。

昨年10月に大分にバイクで行った時に大分市内を少し
走りました。当時、車をどこに留めてどこで話を
したのか、全く思い出せず、やはり際限のないほど
時間が経ったのだと、あらためて思いました。
忘却を叶えてくれるのは時間だけなのでしょうか?


のこされし者のうた  浜田真理子さん

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