湯村温泉 夢千代日記 吉永小百合
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2010年03月19日
大家族
支え合い 統合ケア
乳児とふれあい、目を細めるお年寄り(赤磐市のたけのこの家で) 赤磐市の大規模ニュータウン・岡山ネオポリスの一角にある「たけのこの家」は、赤ちゃんからお年寄りまでが集い、まるで大家族だ。積み木やボールで子どもと遊ぶお年寄り、「ばあちゃん、けるよ」と弾む声——。ひとしきり遊んだ子どもがお年寄り一人ひとりに手を振り、握手をして別れを言うと、お年寄りは「またね、さよならね」と目尻を下げ、しわしわの手でぎゅっと握り返す。 運営するのはNPO法人元気交流クラブ。デイサービスを受けるお年寄りと乳幼児、その親が交流する「統合ケア」の場として2004年に開設した。現在、要介護度が軽いお年寄り46人と親子22組が通う。「日ごろから幅広い世代と接し、褒められることで、子どもは、自分が必要とされていると感じることができる。そして、大人も、子どもから良い影響を受けている」と理事長の沢健さん(55)は話す。 ■ □ 沢さんの父と祖父は、官僚だった。沢さんも当然のように東大を出て旧国鉄に入社、エリートコースを突き進んできた。そんな時、出向先で、後に妻となる陽子さん(47)と出会った。陽子さんに誘われて入った混声合唱団の活動が沢さんの人生を変えた。 団員30人は、空気の良い練習場所を求めて、岡山ネオポリスに共同出資で家を購入、大阪から毎週末に通い、寝食をともにしながら声を合わせた。「組織の人間関係はヒエラルキー(序列)が基本。合唱団はフラット(対等)で、そこにいる人が何をしたいかが重要になる」と沢さん。団員は、意見を対立させながらも妥協点を模索、調和を目指す。「今まで社会的価値観(肩書)を基準に生きてきた」という沢さんは、地位や名誉とは無縁のコーラスの世界で意見を戦わせている時、自分が本当にやりたいと思っていることを、主張していると気付いた。新たな自分を知り、35歳の時、“国鉄官僚”を辞めた。 沢さん夫妻は03年に岡山ネオポリスに移り住んだ。住民約1万5000人は、県内外から集まり、核家族が多かった。地域のつながりは希薄で、子育て世代の親たちも、高齢者世帯も、閉じこもりがちに感じられた。合唱を通じて知った、互いを支え合う大切さを地域に広げていきたい、それが、たけのこの家の出発点になった。 ■ □ いつもは親子で遊ぶ様子をほほ笑みながら見守るお年寄りだが、時に、ちょっとした変化が起きる。 子どもとボール遊びをしていた小山利志恵さん(79)は「わが家よりここの方が楽しいわあ」とけらけら笑い、不自由な左足が動くのではと思わせるほど、勢い良く右足でボールをけった。家に閉じこもりがちのため、スタッフが来るように誘ったある母親は、笑顔にあふれたお年寄りを見ているうちに「ほとんど訪ねていなかった夫の両親の近くで暮らしたい」と転居していった。60〜70代後半で、1日1000円の有償ボランティアも大活躍。夫を24年前に亡くしてから一人暮らしの対梨(ついなし)すみさん(73)は「みなさんの『ありがとう』が生きがいなんです」と笑う。 ある日、自転車に乗った高齢の女性が沢さんに声をかけた。「私も、たけのこの家に行きたい。でも要介護の認定がないから無理だって、嫁に言われたの」。「要介護ではないお年寄りが集う場も必要。多様なコミュニティーが出来たらいいと思う」と沢さんは言う。 「高校生の時、ろくに口も利かなかった父から『お前は、国のために尽くすつもりがあるのか』と尋ねられたことがありました。今になって、国のため、地域のために尽くそうという父のDNAを、遺産としてもらったような気がします」。晴れやかな顔で、沢さんは話した。(黒田聡子)
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素浪人将軍
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