「莫妄想」という禅語があります。その意味は、「妄想することなかれ」ということ。しかし、全で言う妄想は、もっともっと広く深い意味を含んでいます。心を縛るもの、心に棲みついて離れないものは、すべて「妄想」です。「あれが欲しい」という我欲も、「これを手放したくない」という執着も妄想です 。他人が羨ましいという気持ちも、自分ではダメだというおもいも、実はすべて妄想なのです。
禅に「 喜捨 」という言葉があります。「 惜しむことなく喜んで捨てる」ということですが、お寺や神社でお賽銭を投げることを、こう表現するのです。 大切なお金を、なぜ、喜んで捨てられるのか? それは、「ひとつ捨てることは、執着からひとつ離れること」だからです 。
それらが“居すわっている”ことを正当化する弁明の代表格がこれ。しかし、たとえば、三年間、見向きもしなかった洋服をもう一度着る機会がその先に訪れると思いますか? 五年間、使うことがなかったバッグをふたたび手にすることがあるでしょうか?答えは例外なく、「ノー」だと思うのです。
自分の立場や地位に固執することなく、時機到来と見たら、潔く譲り渡すことの大切さをいったものでしょう 。
みなさんのまわりの「あたりまえ」のことを、一度、見直してみませんか? 朝、起きたら朝食が準備されている。会社に行けば自分のデスクが変わらずにある。なにかあったときひと声かけたら酒につきあってくれる友人がいる。寝顔を見るだけで元気になる子どもがちゃんと育ってくれている……。「いま」「ここ」にある「あたりまえ」のことにどれほど自分が支えられているか、あるいは、癒されたり、励まされたり、勇気づけられたりしているか—— 。
中国古典だったと思いますが、「 一日一止 」という言葉もあります。「一止」という字を見てください。「止」のうえに「一」をのせると「正」という字になります。一日に一回、止まって自分を省みることは「正しい」ことだというわけです。 前を走り続けている同僚や友人の背中を見ながら、自分の歩を止めるのは不安なことかもしれません。しかし、禅も中国古典も「大丈夫だ」と請け合っています。 安心して止まって、さまざまなことを「考える時間」をつくってください 。
「 雲無心にして岫を出ず 」 という禅語があります。文字どおり、雲はなにものにもとらわれず、風が吹くままに形を変え、いざなうままに動いていきながら、雲であるという本分を失うことはない、という意味。まさに、無心を現じているのです。
「 閑古錐 」という禅語があります。「閑」は閑古鳥が鳴くという言葉もあるように、閑(ひま)ということ。「古錐」は古くなった錐のことです。つまり、古びて先が丸くなり、使われなくなった錐を閑古錐というのです。 人間も歳を重ねると、若い世代ほどの機動力も行動力もなくなります。新技術といったものも習得できないかもしれません。しかし、長年にわたって積み重ねてきたさまざまな経験の厚みがあります 。
「 逆境もよし、順境もよし、要はその与えられた境遇を素直に生き抜くことである 」
まさに至言です。素直に生きていたら、よい境遇も悪い境遇もないのです。そこにはただ、一生懸命に生きる「場所」があるだけです。
「 日日是好日 」 これは毎日がよい日ばかりだという意味ではありません。人生には晴れの日もあれば、雨の日もある。穏やかな日差しに包まれる日もあれば、吹き付ける寒風に身をすくめることもあります。しかし、いずれの日にも、あなたはその日でなければ出来ない実体験をする、かけがえのない経験を積む。ですから、全てが有意義な「好日」なのだ、というのがこの前後の意味するところです。境遇があなたの生き方を左右するのではありません、あなたの生き方によって境遇はどんなものにでもなるのです。
「 歳月人を待たず」という言葉は誰でも知っているでしょう。時間は人の都合に合わせてはくれない、どんどん過ぎて言って人は置き去りにされる、といった意味です 。
禅語に「本来無一物」という言葉があります。人間は本来、何一つ持たずに生まれてきたのだ、それが人間の本来の姿なのだから、執着するものなどどこにもない、という意味です。
稲盛和夫「 世の中に失敗というものはない。チャレンジしている内は失敗はない。諦めた時が失敗である 」
禅には「調身、調息、調心」という言葉があります。それ俺の意味には、順に姿勢を整える、呼吸を整える、心を整える、ということです。これらは三位一体ですから、互いに深く連動しあっています。つまり、呼吸を整えるためにはまず、姿勢を整えなければなりません。
私は、「お先にどうぞ」と言える2番手が、最も良いポジションだと思っています。前に出るのはまず置いといて、自分を磨くこと、仕事なら知識や技術、ノウハウを身につけることに一生懸命になる。力のある2番手なら、自分が動かなくても、いずれは周囲から押し出されることになります。これが最高の強みなのです 。自分から先頭に立とうとする人とは違って、押し出された人は、足を引っ張られることがありません。それどころか、周囲は喜んで手を貸してくれる。気が付いたら、統率力のあるリーダーになっているのが、2番手の特徴です。
「おのれの欲せざるところ、人に施すなかれ」自分がして欲しくないことは、人にもしてはいけないということです。これが「恕」の精神です。
「門を開けば福寿多し」という禅語があります。何もかも包み隠さず、あからさまにしてしまえば、良いことがたくさんある、という意味です。
「 清風明月を拂い、明月清風を拂う 」
【感想】
禅語を例に出しながら、心のサプリメントになるような言葉が綺麗に紡がれた1冊。仕事、プライベートなどでどうしても心配事を抱てしまう人は多い。そんな人はこの本を読めば少しでも心を軽くするヒントが見つかるかもしれない。
「日日是好日」「歳月人を待たず」とか、「世の中に失敗というものはない。チャレンジしている内は失敗はない。諦めた時が失敗である」「「お先にどうぞ」と言える2番手が、最も良いポジション」など、個人的に救われた言葉も幾つかありました。本当におすすめの本です。
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