6日目も朝から雨が降り続いた。
時計の針が午後を指すころになって、
ようやく雨雲も休憩時間をとることにしたらしい。
この雨雲はこの後、
西日本で死者を出すほど猛威を振るったツワモノだった。
ソウルでも漢江(ハンガン)の一部が決壊し、
浸水の被害を出すほどに暴れ、ようやく息を潜めたようだ。
市内を流れる漢江は茶色く濁り、満々と水を湛えていた。
【あんまん-10個入】横浜中華街で行列が出来る人気店『世界チャンピオンのお店皇朝』
通りの店で大きな蒸し釜が派手な湯気を上げている。
それに吸い寄せられるように蒸かしたての饅頭を買い求めた。
日本の肉マンの倍は軽くあり、ひとつ1,000W(¥80弱)。
横浜中華街のそれの上をいくサイズでこの値段。
中に何が入っているかはハングルが読めないので、出たとこ勝負。
まあ、この値段なら気軽な勝負だ。
「おばちゃ〜ん、マンドゥ(饅頭)一個ちょうだい」
店番のおばちゃんに声をかけると、
大きな蒸し釜のふたを開け、蒸かしたてを紙に包んでくれた。
「あ、でかいのしかない」
声をかけてから気がついた。
饅頭のサイズではない、お金の問題。
世界チャンピオンの肉まん5個・チャーシューまん5個セット
海外を歩くとき、いつもポケットにお札を突っ込んでいる。
そのつど、財布を出し入れしなくて済むように、
どこの国の通貨でも2〜3千円は、
コインと一緒にポケットに直接放り込み、
大きなお金だけ財布に入れていた。
小銭、小額のお札を切らしていた。
さっき使い切ったのをうっかり忘れていたのだ。
100W硬貨が数枚あったが、饅頭の値段に見合う枚数はない。
しかたなく財布を取り出し、50,000w札を取り出す。
この春に導入されたばかりの新登場の紙幣。
差し出すと、おばちゃんは首を振り、受け取らない。
饅頭の入った小袋を持ちながら、反対側の手で空を切る仕草をした。
どうやらお釣りがないようだ。
「これしかないんだよお」
財布とコインを見せて、日本語で語りかける。
おばちゃんはお釣りが入ったカゴを見せて、首を振った。
化粧箱入手ごろな100gの饅頭セットです★横浜中華街 聘珍樓
うちも細かいのがないのよ〜、
おばちゃんはたぶんそういっているのだろう。
言葉はわからなかったが、身振り手振りがそれを表していた。
ガム一個買うのに一万円札出すようなものだもの。
こちらが無粋でございます。
お釣りがないんじゃ仕方ない、商取引は不成立。
「ごめんね〜」
ハングルでそういうとおばちゃんもこう答えた。
「ごめんね〜」
お互い笑顔で別れる饅頭屋の店先、雨上がりの午後。
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