買い物がない、というのはけっこう時間をもてあますものだ。
旅先の時間をもてあましてもしかたがないだろう。
貴重な時間を割いて旅している人々には怒られそうだ。
別に観光名所がキライでもなく、
名物や名産に興味がないわけでもない。
アンダルシアではアルハンブラ宮殿に半日以上も浸っていたし、
ヴェトナムではフォーばかり食べていた。
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どちらかというと名所旧跡を巡るよりも、普通の暮らしにめり込んでみたい。
地元の人が食べてるものを同じように口にして、
その土地の人が楽しんでいることを覗いてみたいだけなのだ。
ローカルに暮らしに入り込むなど無理な注文だということはわかっている。
一瞬で通り過ぎる旅行者であることは避けられないし、
どんなに仲良くなっても、その土地の人にはなれないのだ。
たとえその場で仕事を持ち、居を構えても、その土地の人にはなれない。
シンガポールで暮らしてみて、そのことを体感した。
それでも上澄みでなく、もう少し沈殿した部分を覗いてみたい。
いつもそう思って旅をしている。
叶わぬ思いであることはわかっている。
地元の人の濁りに入り込むと自分が日本人であることを痛感させられる。
あるいはそれを再認識するために旅を続けているのかな。
旅先の平日の昼間、コーヒーを飲みながら、
ポカーンとそんなことを思ったりしている。
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東大門エリアから隣駅の「東廟」へ。
ソウルの場合、都内の地下鉄と同じように、
一駅歩くのはそんな苦にならない。
うっすら汗ばみながら、宿で教えてもらったサウナを目指した。
やっぱり地元の人の暮らしの中にズブズブ入っていくのが性にあっている。
東廟の駅からすぐの場所、12階建てのビルの最上階にサウナはあった。
なんで最上階に? と思いながら、エレベーターのボタンを押す。
エレベーターを降りると、そこがサウナの受付だった。
「SPAREX」という名のこの店は、
日本人観光客の間でもけっこう有名らしいのだが、
受付には日本語どころが英語の案内もなかった。
ハングル・オンリー、万全の守備力だ。
ソウルの旅行ガイド
ハングル解読力はレベル0なので、説明を読むことはあきらめ、
受付の男性に話しかけた。
ハングル会話力ならレベル2ぐらいの破壊力は秘めている。
小石を左手で投げるぐらいの威力だ。
「いくらデスカ?」
「6,000wです」
宿で聞いた金額より、かなり安いので、面食らってしまった。
サウナがついてないのか?
タオルは別料金なのか?
なぜかはわからなかったが、レベル2だとそれ以上切り込む攻撃力がない。
うなずいて、いわれた金額を払うと、カギを渡してくれた。
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