夜は宿のスタッフと待ち合わせていた。
長期滞在の日本の人と「ハナシしがてら、ご飯にいきましょう」ということになり、
ついでに宿のスタッフにも声をかけた。
昼番と夜番が切り替わる時間、
仕事が上がる時間あら都合がいい、ということで、その時間に約束を交わした。
日が落ち、写真も撮れず、街歩きを終え、宿に戻る。
フロントにいるはずの彼がいなかったので、
キッチンでコーヒーを飲んでくつろいだ。
待ち合わせまでまだ時間があるので、野暮用で出ているのかもしれない。
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「さっきからいないんですよ」
出かける支度を整え、キッチンに下りてきたひとりがいう。
「時間あるからでかけてるのかな」
「まあ、待ってましょう」
と、コーヒーを淹れながら、四方山バナシに花を咲かせた。
ところが約束の時間になっても戻ってくる気配がない。
携帯にかけてもつながらず、話しをしている間に30分が過ぎた。
「なんだろうね?」
「どうしたんだろう、あいつ」
多少の時間のレイジーさはアジアではよくあること。
「アジアン・スタイル」はここ韓国でも似たようなものだ。
日本人の時間に対するシビアさは世界中でも例をみない。
たぶんあの国は「アジア」じゃないのだろう。
一時間が過ぎようとしている頃、さすがにシビレを切らせた。
なにせ携帯電話もつながらないので、どうしようもないのだ。
オナカの具合はアジアン・スタイルとはいってられない。
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「店、閉まっちゃうね」
一人じゃ食べられない焼肉がいい、ということで
このハナシが持ち上がったのだ。
「夕食、食いっぱぐれちゃかなわないから、もう行こう!」
連絡の取れないスタッフはあきらめ、宿を出た。
宿の前には東大門から鐘路へ抜ける大通りが走っているので、
通り沿いに比較的店が多い。
なかには24時間営業の食事場所もあるが、
ほとんどの店は早めに閉めてしまうので、慌てて、目当ての焼肉店を目指した。
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「まだやってます?」
「片づけはじめちゃってるけど、いいわよ」
おばちゃんの声に導かれながら、焼肉店の中に歩みを進めた。
するとそこには思いがけない事態が待っていた。
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